トランプ政権と日本・アジア 2017

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尖閣諸島国有化5年 活発化する中国のサラミ戦術

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地図出典:外務省HP http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/senkaku/

 9月11日で、尖閣諸島を国有化してから5年になります。

 しかし、日本と中国がこの島と周辺の海域の領有をめぐって争う構図は全く変わっていません。

 那覇にある第11管区海上保安本部によれば、10日にも中国海警局の4隻の船が尖閣諸島近辺の領海の外にある接続水域に入りました(そのうち1隻は機関砲らしきものを搭載)。

 本年5月には尖閣諸島近辺に小型無人機が飛行するなど、最近は、中国側の活動が過激化しています。

 中国船を映した動画では「CHINA CORST GUARD  中国海警」と書かれ、その中には機関砲を備えた船も混じっているのですが、日本にとって一番まずいのは、こういう出来事を「よくあることだ」と見てしまうことです。

 北朝鮮のミサイル発射実験と同じように、「いつもの出来事」としか見なされなくなると、いつのまにか状況が取り返しのつかない事態にまで悪化してしまうからです。

 今回は、尖閣国有化5年に合わせて、この問題を取り上げてみます。

尖閣諸島近辺の中国船の数をグラフ化すると・・・

 2016年の8月5日、中国海警の船が尖閣諸島近辺で領海を侵犯した時、接続水域に230隻あまりの中国漁船がいました(※領海は12カイリ内、接続水域は追加12カイリ内の海のことです)。領海侵犯とは別に、230隻もの漁船が迫ってきたことに、驚きを感じた方もいたかもしれません。

 ただ、その後は多少、尖閣から離れた場所で活動しているので、中国の船は、近づいたり遠ざかったりしながら、自国の活動範囲を広げているようにも見えます。

 中国船の活動には熱心に領土アピールをする時期と沈静化する時期があります。いつも多数の船を動員して相手の警戒心を高めるよりも、数に増減の波をつくり、数が減った時に相手を油断させながら、少しずつ、活動範囲を広げることを狙っているのかもしれません。 

 こうした「中国船」の領海侵犯の記録を海上保安庁HPでは整理しています。

 2012年から17年までのデータを見ると、領海侵入した船の数は同じぐらいの数ですが、接続水域に現れた船の数はかなり乱高下しています(以下、出所は海保HP「尖閣諸島周辺海域における中国公船等の動向と我が国の対処|海上保安庁」)。f:id:minamiblog:20170911075003p:plain

尖閣諸島領海にのべ600隻以上の中国船が侵入

 海保の前掲HP記事では、月別の中国船の隻数のデータは2012年(平成24年)9月から2016年(平成28年)2月までのデータしかありません。2月で月別データの公開を止めてしまったのは怠慢としか思えないのですが、その数字を見ると、15年1月から16年2月までは以下のように推移しています。

【1月】(※15年)

接続水域入域:12日、のべ34隻

領海侵入:3日、のべ8隻

【2月】

接続水域入域:8日、のべ21隻

領海侵入:2日、のべ5隻

【3月】
接続水域入域:17日、のべ56隻

領海侵入:3日、のべ9隻

【4月】

接続水域入域:25日、のべ82隻
領海侵入:3日、のべ9隻

【5月】

接続水域入域:28日、のべ97隻
領海侵入:3日、のべ11隻

【6月】

接続水域入域:21日、のべ59隻
領海侵入:3日、のべ9隻

【7月】

接続水域入域:21日、のべ59隻
領海侵入:3日、のべ9隻

【8月】
接続水域入域:25日、のべ147隻
領海侵入:6日、のべ23隻

【9月】

接続水域入域:14日、のべ54隻
領海侵入:2日、のべ8隻

【10月】

接続水域入域:9日、のべ29隻

領海侵入: 2日、のべ 8隻

【11月】
接続水域入域:13日、のべ56隻

領海侵入:3日、のべ 12隻

【12月】

接続水域入域:10日、のべ35隻
領海侵入:3日、のべ 10隻

【1月】(※16年)

接続水域入域:12日、のべ34隻
領海侵入:3日、のべ 8隻

【2月】

接続水域入域:8日、のべ21隻
領海侵入:2日、のべ 5隻

 中国公船の接続水域侵入にも繁忙期があるのか、2015年には4月と5月、8月には異常に数が増えています。

 産経新聞(2017年9月9日)によれば、領海侵入は199日に及び、延べ633隻。海警は軍艦に準ずる重装備船(駆逐艦の主砲並みの76ミリ砲を搭載した船さえある)を含んだ200隻を保有。中国の党校機関紙「学習時報」では「(2013年秋に)東シナ海に防空識別圏を設定し、巡視船による航行を常態化させたことで日本による長年の『実効支配』を一挙に打破した」と自慢しているそうです。

 これに対して、向田昌幸氏(日本水難救済会理事長)は「『警察権』に基づく外国公船への対処には限界があるし、法執行上の対処方針や法制面で課題がある。政治・外交的に有効な手立てがとられないまま時間が経過すれば、日本の有効支配がかすんでしまうだけだ」と警鐘を鳴らしています。

尖閣領海を「サラミ戦術」で狙う中国船

 中国船の領海侵犯はよくニュースに出るので、みな、なれっこになっていますが、一度、月あたりの数が減ったと思ったら、忘れたころに猛烈な勢いで増え、少しずつ活動範囲を広げてきます。そのため、これに対応する日本の側は、きちんと数字ベースでその変動を押さえておく必要があります。

 中国は接続水域と領海に侵入する船の数を増減させながら、少しずつ「領海」の拡大を狙ってくるからです。

 中国には陸の国境でも同じようなことがあるらしく、かつて中国兵は国境線の柵を一晩ごとに数mずつ移動させ、少しずつ国境を広げてきたという話を、筆者は元自衛官から聞いたことがあります。

 これを海に展開したら、領海侵犯する船の数を増減させて、適度に油断させながら、勢力圏を少しずつ拡大させるという戦術になるわけです。

 こうした、少しずつ切り取っていく手法は「サラミ戦術」と呼ばれています。

 日本国民が油断していると、尖閣近海がサラミのように切り取られることになりかねないので、この問題については、飽きずにアラートを鳴らし続ける必要があります。

 何しろ、海保さえ2016年2月にHP上での月別の中国船の記録更新を止めてしまったからです。