トランプ政権と日本・アジア 2017

米国株や為替に影響する時事問題を中心に政治動向をウォッチ。今さら聞けない常識も再確認。

ロシア疑惑の争点とは

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(米司法省。出所はWIKI画像)

 トランプ政権が発足してから7か月以上が経ちましたが、その支持率は低空飛行を続けています。

 発足直後(1/23~1/25)の支持率は46%。4月下旬に就任100日後となった時、ワシントン・ポストとABCニュースが行った調査では支持率42%、不支持率53%。

 半年が経過した7月20日にはCNNが支持率36%、不支持率58%という数字を弘めていました。

 そして、8月15日には米調査会社のギャラップ社は支持率が34%にまで下がったことを報じています。

 現在もなお反トランプ運動は根強く、議会では、トランプ・ジュニアの過去の行状が「ロシア疑惑」の一環として追及されたりもしています。

 今回はトランプ支持率の低空飛行の背景とロシア疑惑の経過を追ってみます。

ロシア疑惑の背景:トランプ政権の低支持率

 フォーブス誌(2017/7/19)が「トランプ大統領、好きと嫌いの「5大理由」 支持率は戦後最低」と題した記事を公開しています。ギャラップ社がが7月5~9日に米国人1021人を対象に実施した調査をもとに「トランプ支持と不支持の5大理由」を紹介しているのです。

  【支持しない理由】

  1. 大統領にふさわしくない/気性が荒い/傲慢/不快── 29%
  2. 経験不足/自分の行動を理解していない── 10%
  3. 行動を支持できない/仕事がなっていない── 7%
  4. 独り歩きしている/国民のニーズを考慮していない── 6%
  5. ソーシャルメディア/ツイッターの使い方── 6%

  【支持する理由】

  1. よくやっている/厳しい状況下で最善を尽くしている── 12%
  2. 約束を守っている── 11%
  3. 米国にとって最善のことをしている── 10%
  4. 引き下がらない/強力な指導力を示している── 9%
  5. 既存の政治とは一線を画している/政治家ではない── 7%

 支持しない理由を見ると、「独り歩きしている」「SNSの使い方」(突然出てくるツィート等)など、「人格」面の理由が並んでいます。

 これはトランプ氏に原因があるので、自業自得と言えばそれまでですが、支持する理由が今一つわかりにくいのも特徴です。「約束を守っている」と言いますが、トランプ政権は結構、政策が変わっているので、恐らく、自分が期待した政策が幾分かは実施されたと見た有権者が支持しているのでしょう。

ロシア疑惑の論点

 こうした低支持率とマスコミのアンチキャンペーンを背景に、議会ではトランプ政権のロシア疑惑が追及されています。

 ロシア疑惑では、幾つかの論点で真偽が問われています。

  • 大統領選中にトランプ陣営がロシアに「選挙干渉」を通して支援をもちかけ、その見返りに対露制裁緩和を裏で協議したのか。
  • ロシア関連で怪しいカネの流れがあったのか。
  • ロシアに機密情報を漏らしたのか。
  • 5月のFBI長官(コミー氏)解任は司法妨害ではないのか。

 16年夏に民主党全国委員会へのサイバー攻撃で同委員会幹部らのメールが流出し、クリントン敗北後にオバマ氏がロシアはサイバー攻撃を行ったと断定しているので(根拠は情報機関の調査)、これは、ある意味では、選挙で敗れた民主党とマスコミの報復に近い様相を呈しています。

(「ロシアゲート」とも言われるのは、トランプ政権とロシアとの怪しい関係を1970年代にニクソン大統領が対立候補を盗聴して辞任した「ウォーターゲート事件」になぞらえるためです)。

ロシア疑惑の渦中の人:トランプジュニア

 最近、やり玉にあがっているのは、大統領選の頃にトランプ・ジュニア氏がロシア政権の意向を受けた面々と接触し、選挙を歪める情報工作を行ったのではないか、という疑惑です。

 トランプ・ジュニア氏は7月11日に、クリントン元国務長官に不利な情報を提供すると称して接近してきたロシア人弁護士のナタリヤ・ベセルニツカヤ氏と16年6月に面会するまでの経緯を記したメールを公表しました。

 そこでは、トランプ大統領の知人であるロブ・ゴールドストーン氏(音楽プロデューサー)がクリントン氏に不利な情報をロシア側が提供すると提案し、トランプジュニア氏が”I love it"と答えていました。

 さらに、トランプタワー建設で提携しようとしたアラス・アガラロフ氏(ロシアの資産家)やその息子(エミン氏)もその試みに加わっていたのです。

  この件は上院司法委員会にて非公開で委員会スタッフが質問する形で9月7日に取り上げられました。

 ナタリヤ氏はロシア政府に近く、大統領選干渉において、ロシア政府とトランプ陣営との「共謀」があったかどうかが疑われていましたが、同氏はずっと潔白を主張していたため、トランプジュニア氏の取り調べで真相が判明するのではないかと「期待」されていたわけです。

 しかし、トランプジュニア氏は、この事情聴取で「ロシアとの共謀を否定」(時事ドットコム 2017.9.8)します。

「大統領候補の適性、性格、資質に関してはできる限り情報を聴取すべきだと考えた」が、「私はいかなる外国政府とも共謀しておらず、共謀した人物も知らない」と答えています。

  この件では、ナタリア弁護士ら3名と、トランプ・ジュニア氏とクシュナー氏(トランプ氏娘婿)が面会していたのですが、実業家のクシュナー氏は10分程度でそそくさと退席。

 その後、クシュナー氏もロシア疑惑で糾弾され、弁明せざるをえなくなったのですが、即座に退席したのは「ドラ息子のバカ騒ぎには付き合いきれぬ」と判断したからなのかもしれません。

※クシュナー氏は7月24日に上院情報委員会で2時間半の証言を行い、前掲のナタリア氏の件で潔白を主張。2016年4月と11月の駐米ロシア大使(セルゲイ・キスリャク氏)との会合でも記憶がなく、電話記録もないこと、ロシア国営の開発対外経済銀行(VEB:米の対露制裁の対象)のトップ(セルゲイ・ゴルゴフ氏)との政策協議の存在を否定しました。

ロシア疑惑の次の争点:米大統領の司法妨害

 そのほか、ロシアゲートに関しては、モラー特別検察官が米大統領の「司法妨害」に重大な関心(産経ニュース2017/9/8)を抱いていることが報じられています。 

モラー氏は、今年5月にトランプ氏がロシア疑惑捜査を担当していたコミー前連邦捜査局(FBI)長官を解任したことが疑惑捜査への「司法妨害」に当たるかに注目しているとされ、トランプ氏がコメント作成によってロシア疑惑の隠蔽を図ったかに関心を持っているもようだ。

  ロシア疑惑では、トランプ大統領がコミーFBI前長官に「忠誠心を期待している」
「フリンはいい奴だ」「見逃してやってくれ」「国のためのディール(取引)が妨害されている」等と述べたこともやり玉にあげられました。

 次の争点はトランプジュニア氏から「司法妨害」に移ることになりそうです。

 大統領選から1年もたつのに、延々と「反トランプ運動」が議会でも続き、予算も決まらないまま放置されているのはノーマルな姿ではありませんが、トランプ氏の低支持率を見る限り、今後も反トランプのお祭りは続きそうです。

 日本の森友学園問題や加計学園問題と同じように、議員もマスコミもアンチ与党キャンペーンで人気や支持率、読者を稼げると判断すれば、目の色を変えて頑張るということなのでしょう(ニューヨークタイムス等もアンチトランプで読者が増え、儲かっているそうです)。

ロシア疑惑でトランプ弾劾ができない理由

 しかし、それでもまだ議会は「トランプ弾劾」を行っていません。

 それは、まだ、トランプ氏を追い詰めるに足る決定的な材料が足りないからです。

 ニクソン辞任の際には「録音テープ」という決定的な材料があったのですが、「ロシアゲート」ではそこまでの資料が出てきていません。

(ニクソンは大統領の任務のために情報保持ができる「執行特権」を理由にテープ提出を拒否して辞任した)

 もろもろの話は「ロシア関係者と会った」「(うさんくさい話に)それは素晴らしいと言ってしまった」「圧力をかけられたと指摘する者がいる(第三者の証言や反対尋問の検証はまだない段階。法的には水掛け論的段階)」というレベルの話なので、まだ共和党議員が民主党議員からの弾劾に同意することは考え難いとも言えます。

 そのため、米マスコミも、安倍首相の粗探しに励む日本のマスコミのように、必死にトランプ政権の失点を捜しているわけです。

 トランプ弾劾が難しいのは、大統領弾劾の手続きが厳格であるためです。

 米議会で、大統領や副大統領を含むすべての文官を弾劾する際には、下院と上院で出席議員の3分の2の賛成が必要となります。

 今の下院の定数は435。議員数は共和党が240名、民主党が193名、欠員が2名なので、トランプ氏を弾劾しても過半数を取るのは困難です。

 また、上院の定数は100.共和党が52名、民主党が46名、無所属が2名なので、こちらは下院以上にハードルが高くなっています。

 米国建国以来、弾劾裁判が始まっても、たいていは下院で終わっていますが、トランプ弾劾は、下院さえ通らない可能性が濃厚なのです。

 過去、クリントン大統領、ジョンソン大統領、チュース最高裁判官は下院で弾劾されたものの、上院で有罪にはなりませんでした。弾劾裁判で大統領をクビにするのは、それだけ難しいのです(有罪になったのは、下級審の裁判官ぐらいで、大統領や副大統領、連邦最高裁判事などが有罪とされた先例はない)。

  これは、それだけ、米国民が「大統領選」の結果を重視しているからでもあります。

 マスコミの評価はさんざんですが、筆者は、低支持率ながら、トランプ氏は意外に「頑張っている」のではないかと考えています。

 目立った効果は出ていないものの、北朝鮮への強硬姿勢を採ったことや、結局、日米同盟が強化路線になったことなどは、我が国にとってプラスです。

 米中交渉もさほど成果があがらず、中国に北朝鮮対策をやらせてもダメだとわかれば、中国についても、今後、ある程度厳しいスタンスに戻るはずです。

 前任者のオバマ氏があまりにも中国と北朝鮮に宥和外交をやりすぎ、歯止めが利かなくなっていたので、日本にとって、トランプ氏の出現にはプラスの効果もあると考えています。

 日本で見るトランプ氏の姿は、アンチトランプの米マスコミ情報を、偏見の色濃い日本メディアが切り取って報道する、という二段重ねのバイアスがかかっているので、この種の報道は、米国民の本音を拾いつつも、ほどほどに見ていきたいものです。