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北朝鮮ミサイルが落ちたらどうなる? その破壊力とは

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(スカッドミサイル。出所はWIKI画像) 

   9月9日は北朝鮮の建国記念日です。そのため、再び北朝鮮のミサイル発射が行われるのではないかと警戒されています。

 3日には北朝鮮の弾道ミサイルが日本上空を飛んで太平洋に落ちましたが、「もし、このミサイルが日本の都市に落ちたらどうなるのか」「その威力はどの程度なのか」という疑問を持たれた方も多いのではないでしょうか。

 今回は、この素朴な疑問について考えてみます。

 核弾頭を搭載していた場合は、その性能次第で破壊力はいくらでも変わるので、今回は、通常の火薬を搭載した場合はどうなるかを考えてみます。

北朝鮮のミサイルは改良が続いている

 北朝鮮のミサイルの精度は近年に急上昇しましたが、過去を振り返ると、2009年の頃でも「ミサイルの精度向上 7発中5発が同地点に落下」(毎日新聞 2009年7月5日)という報道が出ています。

 8年前のミサイルでもかなり目標に当たっているので、近年の北朝鮮のミサイル技術をバカにすべきではありません。

「韓国の聯合ニュースは5日、北朝鮮が4日に東部の旗対嶺(キテリョン)付近から日本海へ発射したミサイル計7発のうち、5発が発射地点から約420キロ離れた同じ地点に落下したと報じた。北朝鮮がミサイルの性能を向上させ、目標への命中精度を高めているとみられる。政府消息筋の話として報じた。また、同筋によると、7発のうち最後の2発は、飛行速度が他のミサイルより速かったため、短距離弾道ミサイル「スカッド」の改良型か、射程を抑えた中距離弾道ミサイル「ノドン」の可能性があるという。ノドン(射程約1300キロ)は日本のほぼ全土を射程内に収めている」

 2015年1月13日には「朝鮮日報」日本語版が、北朝鮮軍は液体燃料の改良に成功し、燃料を注入した後も、長期間、待機状態を維持できるようになったと報じています。弾道ミサイルに入れる液体燃料を改良し(揮発性の高い液体燃料の保存期間を延ばした)、他国に事前に探知されることなく、いつでも奇襲発射できるようになったというのです。

 液体燃料のミサイルは発射までに時間がかかるので、偵察衛星などで探知される可能性が高いのですが、あらかじめ燃料を入れておくことで、発射時間を縮めることができます。 

 北朝鮮には、主に韓国を狙うスカッド、日本を狙うノドン、グアムを狙うムスダンなどのミサイルがありますが、これらの約1000発の弾道ミサイルの奇襲攻撃についての警戒が必要です。

北朝鮮のミサイルの命中精度

 さて、このミサイルの精度と破壊力はどの程度なのでしょうか。

 北朝鮮のミサイルに注意を喚起してきた北村淳氏(米海軍アドバイザー)は、北朝鮮のミサイルの性能を分析しています(『米軍が見た自衛隊の実力』)。

「ミサイルの命中精度はCEP(半数必中半径)という単位で示される。ある目標をミサイルで攻撃した場合、弾頭が実際に着弾する地点と攻撃目標の誤差を小さい順に並べて、誤差が少ないほうから半数の着弾地点の距離をこれで示すのだ。CEPの小さいものほど精確であるということになる。

 CEP(半数必中半径=半数必中界)を見る場合は、ミサイルの目標を中心にした円を描き、ミサイルの半数が内部に落ちると想定できる範囲の半径が何kmになるかを計ります。だから、CEPが小さければ小さいほど、当たる可能性が高いわけです。

東風21型のCEPは400メートル程度、ノドンの場合は2キロメートル以上と見られている。つまり、国会議事堂を狙って10基の東風21型を発射した場合、国会議事堂の中心点から半径400メートル以内に、少なくとも5発の弾頭が着弾するということだ。これがノドンの場合は半径2キロメートル以上になるため、国会議事堂を狙ったといっても、どこに着弾するかわからない状況になってしまう(P99~100)」

 東風21号は中国の準中距離弾道ミサイルであり、日本を攻撃する時に使われると見られています。

 他の書籍を見ると、ノドンのCEPを「1.5km以上」と見ている人もいるようです。(『北朝鮮特殊部隊 白頭山3号作戦』高永喆著 P131)

 1.5平方キロメートル、2平方キロメートルという数字だとイメージがわきにくいのですが、皇居の面積は1.42 ㎢(パナホームHP)とも言われています。

  • 半径564 mの円の面積が約1㎢、
  • 半径680mの円の面積=約1.45 ㎢
  • 半径2kmの円の面積=約12.56㎢

 2009年時点で、ノドンの精度は、半径二キロメートルのどこかに当るぐらいのレベルでした。ざっくり言えば「東京等のビルが多い地域(丸の内等)に打ち込んだら、どこかのビルにあたる」というレベルかもしれません。

北朝鮮のミサイルがもし当たったら・・・

 そのミサイルが不幸にも当たってしまったら、どうなるのでしょうか。

「CEPが2キロメートルとなれば、特定の建物に対する攻撃は不可能であり、都市部に対する無差別攻撃に用いられることになる。一方、CEPが400メートル程度である東風21型の場合、特定の建造物だけに限定することは困難だが、ある程度広い敷地を持った軍事基地、石油コンビナート、発電所のような施設や、破壊対象が集中している官庁街、工業地帯などを攻撃することは可能である」「1000ポンド爆弾や2000ポンド爆弾と同等の破壊力を持った東風21型やノドンの直撃を受けた現場には、人間の原型をとどめない死骸が累々と横たわり、建造物や車両の残骸が散乱する状況が現出することになる」

「東風21型のHE弾頭(通常弾頭)がコンクリートの路上に着弾した場合、半径10メートル程度のクレーターができ、半径25メートル程度の範囲内にいた人は間違いなく即死する」

「1000ポンド爆弾が直撃した場合、鉄筋コンクリートの建造物も大きく破損する。500ポンド爆弾でも、建造物の構造にもよるが、一般の鉄筋コンクリートビルの屋上に直撃した場合は、40メートル以上の下層階すら破壊してしまうこともある(前掲書P98 米軍関係者発言)」

 北村淳氏は、09年、12年、14年に発刊された書籍において、再三、中国や北朝鮮のミサイルは日本の原発を狙っていることに注意を喚起しています。別に核攻撃をしなくても、原発攻撃に伴う放射能漏れが生み出すパニック効果を狙えるからです。

 「もしミサイルがあたったら・・・」というのは怖い想定ですが、現実に中国や北朝鮮は日本にミサイルを向けています。

 この問題に真正面に取組まなければ、日本の安全保障は、空理空論になってしまうので、もはや「仮定の話」という説明にエスケープすることはできません。

(防衛省の電話窓口等に安全保障について質問すると、「仮定の話には答えられません」と言われることが多い)

 日本国民の生命と財産を守るためには、こうしたシリアスな想定にもとづいて、あるべき対策を考えなければならないでしょう。