トランプ政権と日本・アジア 2017

米国株や為替に影響する時事問題を中心に政治動向をウォッチ。今さら聞けない常識も再確認。

【民進党代表選】前原VS枝野の争点

f:id:minamiblog:20170901063535j:plain

(旧民主党本部。出所はWIKI画像)

  民進党代表が9月1日の臨時党大会で選出されます。

 民進党代表選では、国会議員と公認予定者、地方議員、党員・サポーターが投票します。

 そして、その投票にはポイント数に差があり、国会議員票は2ポイント、公認予定者は1ポイント、地方議員票と党員・サポーター票は得票数に応じて209ポイントと231ポイントに換算されます。党員・サポーター票は30日までの事前投票で締め切られ、前原・枝野両氏の獲得ポイント数は国会議員らの投票前に発表されます。

(※悪名高い、旧民主党の「外国人党員・サポーターの代表選投票権」は2012年の代表選から廃止された)

 本年の代表戦は累計851ポイントの争いとなりますが、マスコミの下馬評では前原誠司元外相が国会議員票等でリードしていることが報じられ、枝野氏は地方議員と党員・サポーター票で多数票を得、逆転を狙っていました。

追記:結果は前原氏が当選。前原氏は502ポイント/枝野氏は332ポイントを獲得。その票数の内訳は以下の通り。前原氏は国会議員166、国政選の公認候補予定者84、地方議員115、党員・サポーター137。枝野氏は国会議員102、国政選の公認候補予定者42、地方議員94、党員・サポーター94)

民進党代表選:前原誠司VS枝野幸男

 日経電子版(2017/9/1)は、このたびの代表選の現況を以下のように報じています(「前原氏・枝野氏が決起集会 民進新代表、9月1日選出 」)。

 31日には決起集会でそれぞれが以下のように発言したと報じています。

  • 「この党を本当に再生させる、そういう思いで頑張る」(前原氏)
  • 「明日どれくらい票が動くか分からないが、最終演説は全力を挙げて思いを伝えたい」「正直、このタイミングで代表選になるとは全く思ってなかった。出遅れがあったのは間違いない」(枝野氏)

 共同通信社によれば「国会議員の6割、公認内定者の過半数が前原氏を支持している」そうです。

 その争点の一つは、「共産党との選挙協力」ですが、これに関して、両者の見解は分かれています。

  • 共産党との関係の「是非を見直す」(前原氏)
  • 選挙協力し、「候補者を1人に絞るために最大限の努力をする」(枝野氏)

 また、消費税増税に関しても、前原氏は容認派、枝野氏は否定派なので、両者の見解は分かれています。

 前原氏優勢と報じられていますが、民進党HPで両者の政策を見た印象では、筆者は今一つ、前原氏の主張がよくわかりませんでした。枝野氏は具体的に「民進党らしい」政策を打ち出していますが、前原氏は元々の政策が自民党に近いので、本音を封印し、抽象的な言葉を並べているようです。

 〔前原氏政策〕

  • 野党第一党の責任として徹底して長期政権の政治や行政のゆがみを正す。
  • All for Allの理念のもと「自己責任社会」と決別し、自由、共生、未来への責任を旨とした将来の社会像・国民の選択肢を明確に示す。
  • 挙党体制を構築し国民に期待され信頼される執行部をつくる。政策論議や国会運営、選挙対策等において我が党の主体性と主導権を確立する。
  • 民進党の掲げる理念・政策の旗のもと、あらゆる勢力との協力関係を構築する。

 今一つ、何が言いたいのか分からない言葉が並んでいます。

 一方、枝野氏の政策では、昔の民主党の政策がそのまま再現されています。

 〔枝野氏政策〕

  • 『多様性を認め合い、困ったときに寄り添い、お互いさまに支え合う。』そんな日本を目指します。
  • 医療、介護、子育て、教育を支援し、賃金底上げで可処分所得を押し上げ、消費を拡大、経済再生にもつなげます。
  • 一日も早い原発ゼロを目指します。再稼働は、その前提条件が満たされておらず、認めることはできません。
  • 専守防衛を逸脱した集団的自衛権は認めません。これを前提とした憲法9条の改悪と、徹底して戦います。

 民進党支持者はリベラル層、旧社会党支持者等が多いので、そうした人々は枝野氏のほうを選好するものと思われます。地方での得票では252ポイント対188ポイントとなり、枝野氏の支持がかなり広がっていました。

f:id:minamiblog:20170901063800j:plain

(政党の変遷図。出所はWIKI画像)

民進党代表選:隠された争点は憲法九条改正

 蓮舫代表が二重国籍問題で辞任し、開始された民進党代表選ですが、次の衆院総選挙に向けた政策論争はあまり盛り上がらないようです。そうなるのは「12年以来、野党は負け続けで、自公政権に代わる建設的なプランがあまりない」と思われているためなのかもしれません。

 しかし、16年の参院選で自公政権とおおさか維新の会などを足した「改憲勢力」が3分の2を占めたため、今後、憲法改正の議論が再燃した場合、野党がどう動くかで、その結果は大きく変わってきます。憲法改正に際しては、その発議の前に厳しいバトルになる可能性があるので、今回の民進党代表選は、今後の政治を見る上では、それなりに重要です。

 その意味では、憲法九条の「窮状」を打開し、護憲を訴えている枝野氏のほうが、スタンスが明確です。

 前原氏は持前の日米同盟と国防重視のスタンスを出すと、憲法改正を意図していると取られるため、本音を封印しています。

 憲法論に注目する産経ニュース(2017/8/7)では前原氏の主張が公明党よりも自民党に近いことに注目していました(前原誠司元外相が政策発表 「尊厳ある生活保障」訴える 憲法9条改正は封印)。

憲法に関しては「立憲主義に立脚した現実的な憲法論議」との表現にとどめた。前原氏は5月の経済誌インタビューでは「9条3項、あるいは10条といった形で(自衛隊を)明記してはどうか」とし、安倍晋三首相に近い見解を示していたが、党内の幅広い支持を得るために持論を封印した格好だ。会見では「拙速な首相のタイムスケジュールには与(くみ)しない」と語った。

 安倍首相が加憲案を打ち出した背景には、このレベルならば野党にも賛同する議員が見込めるという読みがあったものと推測できます。

 筆者は今でも民進党という名前になじめず、ブログを書く時に「民主党」と入力を間違えそうになりますが、そういう方はほかにもいるらしく、2016年の選挙では「民主党」と書かれた無効票が各地に出現しました。

 劣勢なのに知名度を下げてまで新しい政党名を打ち出したのは、民主党と維新の党、改革結集の会と無所属議員を集めて自公政権に対抗するためでした。それでも力が足りないので、従来、連携してきた社民党だけでなく、共産党とまで選挙協力をして、候補者を一本化するなどしたわけです。そして、共産党は、自衛隊や皇室、経済政策などに関して、主張を丸めて「政権を担える政党なんだ」とPRしました。

 この共産党との連携に強く異を唱えているのは日米同盟強化や憲法改正を主張している前原誠司候補ですが、同氏の出自は共産党が敵視する「大企業」がつくった松下政経塾なので、共産党と組めないのは当然でしょう。

 この主張の背景には、民進党の中に、共産党と組んでも結局、大幅に議席数が伸びず、共産党に票をもっていかれるだけだという危惧があるからです。

 もともと、民主党は旧社会党系の議員、小沢一郎氏が引きつれてきた議員、自民党から立候補できなかった松下政経塾系の議員が混ざっているので、政策に関しては一致しない議員が集まっていました。

 これに維新の党などが加わったので、政策面で見ると、さらに毛色が違うグループが増えています。その上に共産党との連携が加わると、個別の政策で見た時に「真逆の主張を掲げる者同士で協力して選挙を戦う」という怪しげな光景が全国に出現します(消費税増税法案を成立させた元民主党の議員が、消費税増税反対を掲げる共産党と選挙協力をして議席獲得を目指す、というのは、いちばん典型的な例です)。

 そうまでして連携したのは、結局、安倍政権による憲法改正を阻止するためなので、この「民進党と共産党の選挙協力の是非」は「民進党が憲法改正をどうとらえるか」という問題ともつながっているわけです。

 枝野氏は「護憲派」ですが、前原候補は前回の代表選でも九条改正を明確に主張(三項新設で自衛隊を認める)していました。これは安倍改憲と同じなので、今回の代表選では「封印」されています。

 このあたりの経緯を見ると、今回の代表選には、政策が合わない民進党の中で「九条改正をどのように考えるか」という問題が潜んでいることがわかります。 

 安倍政権は「憲法改正の議席数が足りるかどうか」という問題で頭を悩ませているのですが、民進党内にも前原氏のような九条改正論者がいます。しかし、仮に前原氏が民進党代表になっても、野党代表の体面があるので、安倍改憲案(9条三項を加憲)を丸のみできないでしょう。

 どうしてこんな奇妙な構図になったのでしょうか。

 その原因を考えると、2008年までの自民党の選挙戦略が若手の立候補者に厳しかったので、自民党に近い政策を持った若手の候補者が民主党に流れて行ったことが思いあたります。

 2009年頃に筆者は30代の元民主党市議の方に聞いたことがあるのですが、その方は「自民党は若手候補者を入れてくれなかったので、政策は違うが、民主党で立候補せざるを得なかった。松下政経塾の人たちが民主党にいるのは、自民党の候補者擁立戦略が原因だと思う」と言っていたのです。

 ややこしい構図が展開していますが、政策が違う議員が同じ政党で国民に票を求めるのではなく、もっと政策の一致度の高い議員同士で政党を運営するような政界になってほしいものです。