トランプ政権と日本・アジア 2017

米国株や為替に影響する時事問題を中心に政治動向をウォッチ。今さら聞けない常識も再確認。

【北朝鮮ICBM】グアム発射後に米朝開戦? 株価と為替はどうなる?

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(米国のB1爆撃機。有事に北朝鮮を狙う。出所はWIKI画像)

 米韓軍事演習が開始され、8月25日には北朝鮮の先軍節(金正日総書記の軍政開始記念日)があるので、北朝鮮がグアムに向けて中長距離弾道ミサイルを発射する危険性に各国政府とメディアは神経をとがらせています。

 実際にICBMが発射されたらどうなるのでしょうか。

 または、朝鮮戦争が再開されたらどうなるのでしょうか。

 今回は、この問題について考えてみます。

北朝鮮「ICBM」がグアム着弾の時、為替と株価は・・・

 米軍は7月11日に14回目のTHAAD迎撃実験を行い、成功しました。

 ハワイ北方上空で米空軍のC17輸送機が撃った標的(中距離弾道ミサイルを模した標的)をアラスカのTHAADシステムが撃ち落としたようです(今回も含めて全部成功)。

 しかし、実戦でこれがうまくいくとは限りません。

 『週刊現代』(2017年9月2日)の〈米朝開戦「その日」に起きること」〉と題した特集では、北朝鮮「ICBM」がグアムに着弾した際の為替と株価変動の予想が書かれていました。

 その概要は以下の通りです。

 米国のマーケット関係者の間では「キューバ危機」以来の危機が来たという空気が漂っている。ここで北朝鮮がグアムにミサイルを撃てば、投機筋がコンピュータプログラムに組み込んだ有事の「売り司令」が発動されるため、「パニック売り」が始まるのだーー。 

「北朝鮮のミサイルがグアムのクリティカルな場所に着弾した場合、為替は1ドル=100円を一気に割り込み、日本株は1万8000円割れする可能性すらある」(金融アナリスト・倉都康行氏)

 そして、米軍が反撃を開始した場合、北朝鮮が反撃してソウルが火の海になる。1990年8月の湾岸戦争に匹敵する為替と株の大変動が起きる。

「湾岸戦争が始まったあと約2か月間で、日経平均株価が3万799円から2万671円まで約33%も下落した」「単純計算すると、日経平均株価は1万3000円台まで落ちる可能性がある」(絆アセットマネジメント代表取締役・小沼正則)

 普通は非常時にドル安円高が進むとされているので、倉都氏は円高論を想定していますが、米朝開戦の場合、日本にもミサイルなどが飛んでくるので、そうなるとは限りません。

 むしろ「日本ヤバい」という見通しになり、パニック的な円売りが起きると見る人もいます。

「1ドル=150円を超えるような超円安となっていく」「日経平均株価が1万5000円も割る」(日本総研副理事長・湯元健治氏)

 米朝開戦となれば、日本市場で株や為替をやっている場合ではなくなります。

 しかし、一応、この場合に備えた対策がないわけではありません。

 アメリカは戦場にはならないので(現状では、固定式発射台から撃たれるICBMは米軍が先制攻撃で破壊可能)、理屈上は、戦争の時に株価が上がる軍事系企業の株を買っておけばよい、ということになります(具体的には、ロッキードマーティンやグラマン、レイセオン、ジェネラルダイナミクス等)。

 これを見越してか、本年4月以降、延々と軍事系企業の株価は上がり続けています。

北朝鮮と米国が開戦 その被害規模とは・・・

  『週刊現代』(2017年9月2日)の〈米朝開戦「その日」に起きること」〉と題した特集では、米朝開戦の被害規模の想定も書かれています。

 当ブログでも、雑誌や新聞に書かれたシミュレーションを紹介してきましたが、今回の記事では、とりわけグロい内容が書かれていました。

(開戦想定は、北朝鮮がグアムへICBM発射⇒目標外れor米軍が迎撃⇒トランプが報復を決断⇒金正恩が反撃、というストーリー)

  • 「日本に届く北朝鮮のミサイルはノドン約200発+αだが、開戦初期の数時間で発射できるのは最大で50~60発ほど」。まず狙われるのは、三沢、岩国、嘉手納等の米軍基地。自衛隊のミサイル迎撃に対抗して、北朝鮮軍はサイバーテロや原発テロで日本のインフラを狙う(岡崎研究所・村野勝氏)。
  • 「米軍が北朝鮮本土への大規模攻撃やインフラ破壊の工作を続ける選択をするならば、北朝鮮は政権の生き残りをかけて、日本の人口密集地域に対してもノドンを撃つだろう」(カナダ人ジャーナリストのマシュー・フィッシャー氏)
  • 2003年に行われた核戦争のシミュレーションでは、12キロトン級の核爆発が東京で起きることを想定した。この場合、約10万人が爆弾投下後に即死。30日以内に約32万人が放射能や酸素欠乏や火事等で死ぬ。累計被害者は42万人。
  • 38度線の北側では、自走砲550門と放射砲440門がソウル首都圏に狙いを定めている。開戦時に1時間あたり24000発以上の砲弾がソウルに降り注ぐ。
  • 1994年の想定では韓国側死者の想定は150万人。2004年の想定では死者は230万人。生物兵器や化学兵器が発射されれば死傷者500万人・・・
  • 5月と6月に、米国は在韓米人の避難訓練を行ったという。

 日本人の多くは、米軍が日本人や韓国人のために戦ってくれると考えています。

 それは間違いではありませんが、そこには誤解も含まれています。

 同盟国のために戦うとしても、その時には、軍事的に最も合理的な行動を選ぶので、米軍は「第一撃」を避けようとするとも言われています。必ずしも米国が「最前線に立つ」ことは保障しておらず、すでに、在韓米軍第8軍司令部はソウル南方に移転を完了しました。

産経ニュース2017.7.11「在韓米軍主力、第8軍司令部がソウル南方へ移転 「戦闘準備態勢も向上」とバンダル司令官」)

「陸軍第8軍司令部のソウル南方、京畿道平沢への移転がほぼ完了し、平沢のキャンプ・ハンフリーで11日、同司令部新庁舎の開館式が行われた」

(これは)「盧武鉉政権が2003年に米側と合意した在韓米軍の各部隊を平沢に移転・集約する再編計画の一環。第8軍はソウル中心部の竜山基地から移転した。韓国国防省によると、来年中にも在韓米軍の大部分の移転が完了する予定」

 従来、在韓米軍がソウル市やソウル以北に展開していたのは、第一撃を受けてでも米軍は戦い、朝鮮半島を防衛するという「抑止」の強固は意思表示を北朝鮮に示すためでした。

 これはトリップワイヤー(導火線)と呼ばれ、38度線近辺に米軍がいることで、朝鮮半島に必ず米軍が介入することを示す陣容でした。

 しかし、その陣容は2000年代に廬武鉉政権(ムンジェンイン氏は当時、大統領府の秘書官)とブッシュ政権で確執が生じて以来、崩れ始め、米軍は国境近辺に展開する部隊をソウルより南に動かし始めるのです。

 第八軍司令部の移転は「第一撃」を避けるための措置です。

 米軍は同盟国のために戦いますが、必ずしも、「先頭に立って戦う」とは限りません。ミサイル等の飛び道具や空爆を中心に戦い、地上戦を韓国軍にゆだねる可能性が残っています。

  さらに、文大統領とトランプ大統領は6月末の米韓首脳会談で戦時作戦統制権の移管に合意しました。

 朝鮮日報は「韓米首脳会談:戦時作戦統制権の早期移管に合意=共同声明」(2017/7/2)と題した記事を公開しています。

 この合意は文大統領が公約通り任期中の2022年までに移管することが可能にするものです。

 現状を総括すると、表向き、トランプ氏と文氏は仲良くしているように見えますが、「軍」の動きを見ると、在韓米軍は韓国人を守り、そのために犠牲者を出すことを嫌がっています。

「表向きは麗しく装っているが、内面はヒビが入りはじめている」というのが米韓関係の現状だと言えるのかもしれません。