トランプ政権と日本・アジア 2017

米国株や為替に影響する時事問題を中心に政治動向をウォッチ。今さら聞けない常識も再確認。

やり直し経済学 GDPとGNP、名目と実質の違いなど。

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(出所はWIKI画像)

2017年4~6月期の国内総生産(GDP)速報値が8月14日に発表されました。

 実質GDPの成長率は前期比1%増(季節調整済み)。年率換算で4%増となりました。名目GDPは1.1%増なので、年率換算だと4.6%増。

 日経電子版(2017/8/14)は、その特徴を以下のように説明しています(「GDP年率4.0%増 4~6月実質、内需けん引」)。

  • プラス成長は6四半期連続で11年ぶりの長さとなった。
  • 実質GDPの増減にどれだけ影響したかを示す寄与度をみると、内需が1.3%分押し上げ、外需は0.3%分押し下げた。
  • 成長への寄与が最も大きかったのが個人消費で、6四半期連続のプラスだった
  • 個人消費に次いで成長を引っ張ったのが設備投資だ。建設関係や工作機械、ソフトウエアなどへの投資が伸びて8四半期連続のプラスだった
  • 内需では公共工事も成長を底上げした(伸び率は前期比5.1%増)。
  • 輸出は前期比0.5%減と、4四半期ぶりにマイナスとなった。
  • 輸入は1.4%増と3四半期連続で前期を上回った

 日本経済は順調に伸び続けているとされています。

 今回はGDPにまつわる記事を公開してみます。

GDP成長率はかさ上げされた? 新基準による改定

 しかし、筆者はどうも腑に落ちないものを感じています。

 例えば、2016年はGDPの基準改定が行われましたが、これは、消費税増税の後のGDP減少を取り繕う狙いがあった可能性が濃厚です。

 日経電子版(2016/9/15)では「GDP、基準改定で19.8兆円かさ上げ 内閣府、11年の試算値」と題した記事が公開されています。

内閣府は15日、12月に予定する国内総生産(GDP)の推計方法の見直しで、新たな基準年となる2011年の名目GDPが19.8兆円かさ上げされるという試算値を発表した。これまで付加価値を生まない「経費」として扱った研究開発費を付加価値を生む「投資」と見なし、GDPに加算することが主因だ。

 四半期のGDPは16年7~9月期の改定値から新基準で計算されますが、これだと2011年の名目GDPは491.4兆円(旧基準471.6兆円)になります(研究開発費、特許使用料、不動産仲介手数料等が加算される)。

 これは日本だけでなく、GDPの伸び率が低迷気味のため、リーマンショック後、各国はGDPの計算方法を改定しています。 

  産経BIZ(2016.9.23)では「GDP、各国かさ上げの動き 基準変更 日本は4.2%増」と題した記事を公開しています。

各国に国内総生産(GDP)かさ上げの動きが広がっている。各国とも研究開発費や戦車、艦艇購入費の投資への加算を認めた新国際基準の導入を進めており、それぞれ名目GDPが1~4%ほど押し上げられる見通しだ。ただ、欧州では、麻薬取引や売春といった「地下経済」を取り込む動きもあり、やみくもなGDP拡大を疑問視する声も上がっている。

 この記事では、国連が2009年に採択した算定基準「2008SNA」を導入すると、各国のGDPは大きくかさ上げされるとしています。

  • 日本:2016年/4.2%増
  • 豪州:2009年/1.3~1.7%増
  • カナダ:2012年/1.7~1.8%増
  • 米国:2013年/3.0~3.6%増
  • フランス:2014年/2.4%増
  • 英国:2014年/1.6~2.5%増
  • ドイツ:2014年/2.7%増

 米国も経済成長したことになっていますが、オバマ氏も自分の政権の業績をよく見せようとした可能性が濃厚です。

 日本が2016年にGDP基準を改定したのは、8%への消費税増税で起きた大幅なGDP減少を小幅に見せたかったなのかもしれません。

 14年の8パーセントへの消費税増税に反対した三菱UFJの片岡剛士氏(三菱UFJリサーチ&コンサルティング主任研究員)は、増税によるGDP減少の規模は97年の消費税増税の時よりも大きく、東日本大震災の時のGDP減少に匹敵すると述べています。

 14年4月に消費税を増税した後の3か月(4-6月期)のGDP減少を年率で計算し直した数字は約-7%と言われています(※11月発表では「1.9%減:前期比年率7.3%減」/12月8日の発表では1.7%減(同6.7%減)。

(※97年4‐6月期は前期比年率3.5パーセント減。11年1‐3月期は前期比年率6.9パーセント減」とされている)

 GDP=付加価値の総額

 しかし、こうした経済紙の説明を分かりにくいと思っている人も多いのではないでしょうか。そのため、今回は、やり直しの経済学として、今さら聞けないGDPの成り立ちをおさらいしてみます。

 筆者はつい最近まで、GDPの正確な意味も知らずに、経済ニュースを聞き、新聞記事を読んでいました。自分のほかにもそういう人がいるかもしれないと思い、今回の記事を公開しています。

 公式的な説明を取り上げると、GDP(Gross Domestic Product)は「国内総生産」のことで、一国で一定期間につくりだされた付加価値の総額を指します。
 不勉強な筆者は「付加価値って何?」ということから学び直しましたが、ざっと言えば、これは粗利(売上-原材料費)に相当します。粗利を経済学的に言い直すと、付加価値というもっともらしい言葉になるわけです。

 モノやサービスの価格から中間生産物を差し引くと、付加価値は計算できます。農家がつくったお米がモチになり、モチにアンコが入るまでの過程を考えてみましょう。この三つの段階では、以下のように付加価値が生まれてきます。

  • 農家(お米)の総生産1000万:付加価値1000万
  • 加工業者①(モチ)の総生産2000万:中間生産物1000万/付加価値1000万
  • 加工業者②(アンコモチ)の総生産3000万:中間生産物2000万/付加価値1000万

 前段階での総生産額は、次の段階の業者が原材料費として購入する金額と同じです。そのため、二段階目以降では、総生産額-中間生産物(原材料費)で付け足した価値(コメをモチにする/モチにアンコをつめる)を計ります。  
 この場合、この三品目の総生産額は6000万円です。総生産額から中間生産物の合計を引くと、付加価値は3000万円。この金額は、最終生産物であるアンコモチの額(3000万円)と一緒です。

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(出典:WIKI画像)・・・おいしそうなお餅。


 こんなふうに出てきた全国のモノとサービスの付加価値を足し合わせて計算すると、日本全体の付加価値が分かります。
 その合計を四半期(1-3月/4-6月/7-9月/10-12月)で見たり、一年全体で見たりすると、GDPがカウントしたりするわけです。
 今の日本では、だいたい、一年間のGDPは500兆円ほどです。現実の経済では、サービスを含むたくさんの商品があるので、付加価値の計算は大変、複雑になっていますが、日本では総務省統計局が、これを四半期ごとに集計しています。 

GDP(国内総生産)とGNP(国民総生産)は何が違う?

 経済常識が身についている方は答えられるはずですが、昔の筆者は、「うーん、えーと・・・」と言葉につまってしまいました。
 国内総生産(GDP)は、ある国のなかで、ある期間に生み出された財の付加価値の額を足した値です。
 これに対して、国民総生産(GNP)というのは、ある国の「国民」がある期間に生み出した財の付加価値の累計です。前述の例で説明してみます。 

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※出典:WIKI画像 お餅をつくった米軍人の投稿。米軍人がつくったお餅の付加価値はGDPにカウントされるも、GNPにカウントされず。

  • 農家(お米)の総生産1000万:付加価値1000万
  • 加工業者①(モチ)の総生産2000万:中間生産物1000万/付加価値1000万
  • 加工業者②(アンコモチ)の総生産3000万:中間生産物2000万/付加価値1000万

 これを、「日本国内の活動かどうか」という基準で見るのがGDP。「日本国民の活動かどうか」という基準で見るのがGNPです。
 GDPの場合、この三段階の活動がみな、日本国内でなされていれば、日本国民であろうが、米国民であろうが、すべて加算されます。
 第一段階がタイ人、第二段階が日本人、第三段階が日本人だったとしても、3000万円です。GDPは国内の経済活動で生まれた付加価値の累計なので、この三者は何国人でもいいわけです。
 ところが、GNPの場合だったら、第一段階がカウントされないので、2000万円になります。GNPの場合、この三段階の生産者が「同じ国民」である時に付加価値がカウントされるからです。GNPで見る時は、生産する場所は国内でも国外でもよく、同じ国民がつくったコメであれば、タイ米であってもGNPに加算され(累計3000万円)、日本米でも、それを外国人がつくった場合はGNPに加算されません(累計2000万円)。
 例えば、レディー・ガガが日本に来てライブをした時の売上で生まれた付加価値は、日本のGNPにはカウントされません。ガガは日本人ではないからです。 しかし、これはGDPにはカウントされます。日本国内で生まれた付加価値だからです。
 昔はGNPが経済成長の指標に使われていましたが、国際化が進み、外国人に働いてもらったり、日本人が海外で働いたり、工場が海外に移転したりすることが増えています。日本も、社会の変化に合わせて、1993年以降、国の経済規模を計る指標としては、GDPを用いるようになっています。 

GDPの実質値と名目値の違い

 これを身近な比喩で説明しますと、同じ体重70キログラムでも、おなかがタプタプで70キロなのと、鍛えまくったボクサーで70キロなのとでは、ぜんぜん意味合いが違います。実質GDPと名目GDPの違いというのは、このようなものです。
 GDPの名目値と実質値の違いは、物価の変動をカウントするかどうかが分かれ目です。名目値でGDPが成長していても、同じ比率で物価が上がっているのなら実質値のGDP成長はゼロです。
 例えば、2050年にX国のGDPが1000兆円で、これが2051年に1050兆円に増えれば、一年間の名目GDP成長率は5%です。
 この時、X国の物価が2050年から2051年にかけて5%伸びていたら、GDPの総額が増えていても、物価変動分を引いて、実質GDP成長率は0%になります。

【例1】

  • Yさんの給料は300万円から315万円になりました。
  • しかし、店にある商品はみんな5%値上がりしています(例えば、ラーメン+チャーハン+スープで1000円だった中華定食は1050円になっていたりします)。

 こうなったら、経済成長しているとはいいにくいですよね。単に数字が増えただけで、中身は何も変わっていませんから。これはおなかのお肉が増えただけの”成長”に近いので、うれしくありません。実質的な成長というのは、次のようなケースです。

【例2】

  • Yさんの給料は300万円から315万円になりました。
  • 店にある商品はみんな2%値上がりしています(例えば、ラーメン+チャーハン+スープで1000円だった中華定食は1020円になっていたりします)

 この場合、給料は5%増えて、物価は2%上がっているわけですから、Yさんは3%豊かになっています。実のある経済成長です。これは筋肉がついて体重が増えたようなものでしょう。この二つの成長を国レベルで見たら、どうなるのでしょうか。

【例1】

名目GDP 1000兆円(2050年)→1050兆円(2051年) 5%成長
実質GDP 1000兆円(2050年)→1000兆円(2051年) 0%成長

【例2】
名目GDP 1000兆円(2050年)→1050兆円(2051年) 5%成長
実質GDP 1000兆円(2050年)→1030兆円(2051年) 3%成長

 例1のケースで「0%成長、実質GDP変動なし」になるのは、物価5%上昇によって、2050年の1000兆円は2051年のGDP1050兆円と同じ価値になるからです。
 例2のケースで「3%成長、実質30兆円増」になるのは、物価2%上昇によって、2050年の1000兆円は2051年のGDP1020兆円と同じ価値になるので、名目値の1050兆円から1020兆円を引いた時に、実質の成長分の金額と%が計算できるからです。
 やや乱暴な比喩ですが、人間で言えば、例1のような成長が続く場合は、単に数字が増えているだけなので、延々とおなかの周りに肉が増えていくような感じでしょう。
 例2の場合は、どちらかと言えば、筋肉質のボクサーのように鋼の肉体ができて体重が重くなるようなケースに近いかもしれません。
 毎年の名目GDPの伸び率に物価変動の比率を加えることで、実質GDPの成長率が分かります。

名目GDP成長率 - 物価変動率 = 実質GDP成長率

 例1と2は物価が上昇するケースですが、物価が-2%の場合は物価下落分が実質GDPに加算されます。

5% -(-2%)= 5%+2% = 7%

 GDPの総額と伸び率を計算する時には、名目値に物価変動分を加えた実質値を見る必要があるわけです。 

GDPの三面等価とは

 いままで、生産面からGDPを説明してきました。付加価値(売上-製造原価)の面からGDPを見ましたが、GDPは支出面と分配面からも説明できます。
 付加価値は、企業の利益となるだけでなく、家計を担う労働者の給料にもなりますし、お金の貸し手である金融機関には利子、株主には配当、政府には税金として分配されます。
 仮に1億円の付加価値を生んだパン屋があったとすると、そこから、利益500万円、雇用者への給料(人件費)が6000万円、利子支払いが750万円、配当金が750万円、税金が2000万円……という具合に分配されていくわけです。
 上に上げた項目と金額は便宜上あげているだけなので、実際はもっと複雑になりますが、生み出された付加価値と分配される付加価値の総額は同じになります。そして、この場合、消費者が1億円のパンを買っていますので、支出面でも1億円のお金が動いています。生産面、分配面、支出面の金額がどれも1億円になるわけです。
 これは小さな例ですが、国全体の経済でも、同じ論理が当てはまります。こうした経済活動がみな累計されて、日本で言えば、500兆円のGDPになっているからです。企業がつくった財やサービスが家計で消費され、その代価であるお金が企業の利益や社員の給料に変わります。
 そして、企業の利益が投資に回ったり、給料が株を買うのに使われたり、預金を通じて企業への融資が行われたりします。その結果、生産活動が活発になります。政府のほうも、税金や国債でお金を集めながら、民間の財やサービスを消費し、公共投資をしています。政府からもお金が企業に払われ、民間に流れていくのです。こうした経済活動は、生産・分配・支出の三面のどれかに該当します。 

GDPの公式って・・・?

 かくして、生産という面から見たGDP(付加価値の合計)は、分配という面から見ると、国民や企業、政府などが得た金額と一致します。そして、支出という面から見ると、国民や企業、政府が消費した金額とも一致するわけです。
 生産・支出・分配がみな同じになることが、GDPの三面等価と呼ばれますが、その中で、特によく使われるのが、支出面から見たGDPです。

GDP=消費(C)+投資(Y)+政府支出(G)+輸出(E)-輸入(I

 日本国内の活動は、「消費(C)」+「投資(Y)」+「政府支出(G)」です。これに、外国から日本への支出である「輸出(E)」を足し、日本から外国企業への支出である「輸入(I)」を引きます。こうして「国内総支出」が計算されます。この金額が「国内総生産」と一致するわけです。