トランプ政権と日本・アジア 2017

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内閣官房長官の仕事とは 気になる官房機密費(報償費)の用途

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(WIKIのCC画像。Mytho88氏が2015年3月28日に撮影)

  安倍改造内閣が発足して13日が経ちましたが、今回の改造は加計学園問題の対策に菅官房長官が失敗したことが一つの要因でした。

 今後、安倍改造内閣がうまくいくかどうかは、やはり官房長官の影響がかなりの割合を占めるので、今回は、そもそも官房長官が何をしているのかを再整理してみます。

内閣官房の役割:事務担当と省庁間の調整、人事等

 内閣官房は約700名で内閣をサポートし、内閣の事務を切り盛りしています。内閣の政策実現のための環境づくりを行っているのです。

内閣官房は、内閣の補助機関であるとともに、内閣の首長たる内閣総理大臣を直接に補佐・支援する機関です 具体的には、内閣の庶務、内閣の重要政策の企画立案・総合調整、情報の収集調査などを担っています。

(出所:組織図・事務概要|内閣官房ホームページ

 そして、ここは官房長官を筆頭にして、各省庁間の協力・連携を促すための連絡・調整業務を行っています。

 また、内閣が扱う案件について、与党を中心にした国会各会派との調整役も務めます。

 その構成員を見ると、内閣官房副長官には政務担当が2名(衆議院と参議院から1人ずつ)、事務担当が1名(どこかの省の事務次官経験者)います。

 政務担当の副長官は重要な役職で、かつては安倍晋三氏もここで仕事し、内閣の全体観を養っていました。

 事務担当の副長官は事務次官会議を開催します。ここで事案をチェックし、バツがつかなかったものが閣議にあがる仕組みなので、事務担当の副長官の責任は重大です。

 内閣官房は内閣の事務部門であると同時に各省庁との結節点にもなっているので、官房長官には高い調整能力が必要です。

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(出所:組織図・事務概要|内閣官房ホームページ

 その仕事は、財政、社会保障、外交、安保、農政、エネルギー、教育などの全分野に関わり、各省庁の官僚の人事権を担っています(内閣人事局は内閣官房の一部局)。

 さらには、官房機密費(後述)も使えるので「実力者中の実力者」とも言われているわけです。

 重要な役職なので、将来の首相候補が就任するケースもあれば、調整能力を期待してベテラン政治家を起用するケースもあります(菅氏は後者)。

 参考までに今の内閣官房の顔ぶれを入れておきます。

  • 内閣官房副長官 (政務) :西村康稔
  • 内閣官房副長官 (政務): 野上浩太郎
  • 内閣官房副長官 (事務) :杉田和博
  • 国家安全保障局長兼内閣特別顧問:谷内正太郎
  • 内閣危機管理監:髙橋清孝
  • 内閣情報通信政策監:遠藤紘一
  • 内閣官房副長官補:古谷一之
  • 内閣官房副長官補:兼原信克
  • 内閣官房副長官補:中島明彦
  • 内閣広報官:長谷川榮一
  • 内閣情報官:北村滋

官房長官は内閣のスポークスマン

 内閣官房長官は、総理と密に意思疎通し、政府の公式見解を国民にわかりやすく説明する仕事を担っています。

 官房長官は、年がら年中記者会見をしており、何かあればニュースに引っ張り出されます(頻度は毎日午前・午後に1回。その発言は「政府首脳」等と表現される)

 この記者会見が公式見解とされるので、失言をしないことが非常に大事です。

 加計学園問題での「怪文書」発言や2011年の東日本大震災の頃にの枝野官房長官(当時)が「ただちに影響はない」発言などを思い返せば、その重要性がよくわかります。

 日本では官房長官という閣僚が政府方針を説明していますが、意外にも、米国では閣僚ではない大統領報道官が記者会見を担っています。米国の場合は元報道関係者がこの任にあたるので、口達者な人がよく出てくる傾向があるようです。

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(菅官房長官。画像出所:第3次安倍第3次改造内閣 閣僚等名簿 | 首相官邸ホームページ

官房長官は総理大臣の臨時代理になりうる

 官房長官は、総理大臣が倒れた時には、その職務を臨時に代行することがあります。

 今は麻生副総理がいますが、副総理がいない内閣の場合、首相が倒れたら、官房長官が臨時代理を務めるのです。

 極端な例を言えば、首相官邸に北朝鮮のミサイルが落ち、安倍首相と麻生副総理が倒れ、たまたま外にいた菅官房長官が生き残ったら、菅氏が首相代行となるわけです。

 かつてあった例では、2000年4月に小渕首相が脳梗塞で倒れた時には青木幹雄官房長官が「総理臨時代理」の任にあたりました。この時は「病院で臨時代理を頼まれた」と述べたので「ホントか」とマスコミに騒がれるなど、いろいろと物議をかもしています。

 政権運営には非常時での役職の引き継ぎ順位が明確化され、その過程がしっかりと国民にわかるようになっていることが大事なわけです。

官房機密費の用途とは?

 そして、マスコミネタになりがちなのが、官房機密費(官房報償費)です。

 この費用は情報収集や分析、調査に必要な経費とされ、月1億円程度が回されています。 年間約14億円ですが、2億円は内閣情報調査室に回るので、実質は12億円程度とされます。

 この機密費は内閣の交際費として領収書なしに自由に使えるとも言われますが、その真相はなかなか公になりません。

 これに関しては、朝日デジタルが2009年当時に解説記事を公開しています(「官房機密費、毎月1億円 経験者は使い勝手のよさ証言」2009年11月12日)。

 今は昔と同じようになっていないかもしれませんが、当時、90年代の内閣官房長官経験者は以下のように取材に応えていました。

【現金出入れを担当する内閣総務官の説明】

「2億円ほどは内閣情報調査室に振り分けられ、残りの毎月1億円あまりは自由に使えます。一切書類に残す必要は無く、領収書も出納記録も一切必要ありません」

【長官経験者の回想】

「官邸内の長官室に腰くらいの高さの金庫があり、いつも数千万円入っていた。何に、いくら使っても、翌日には同じくらいになるよう、事務方が補充してくれた」

 気になるのはその用途ですが、その答えがなかなかエグイ。

  • 「多かったのは国会対策と餞別(せんべつ)」
  • 元長官は法案対策で「与野党問わず、直接国会の委員長クラスらを呼び、1人200万~300万円を手渡した」という。
  • 餞別の額は、渡航先に応じた「相場」があり「韓国なら1人30万円、東南アジア諸国なら50万円、ヨーロッパなら100万円といった具合」(別の元長官)
  • 首相の外遊時の諸経費で「サミットの時は金庫から2千万~3千万円ほど持参した。現地食事会やお土産代等にあてたと元長官の一人が述べている。
  • 同僚議員の「勤続25周年」「閣僚就任」などの政治資金パーティー券の購入(100万円単位)に使ったと証言する長官経験者も複数いた。
  • 国政選挙で与野党が伯仲している選挙区や、重要な知事選などで、数千万円単位の機密費が「軍資金」として持ち出されたという。

  ここには当時の時代性や、首相と官房長官のキャラも反映されていると思いますが、ヤバい用途がかなり含まれています。

 一応、朝日記事は2000年代の政権のフォローのためか、「01年に発覚した外務省職員による機密費詐取事件を機に、運用・使途ともに見直しが行われた」「02年の新首相官邸の完成後の官邸関係者は「機密費が収められていた金庫はもう長官室には無い」と話す」(傍線筆者)という解説を加えていました。

 ・・・

 こうしてみると、菅官房長官の権限と責任は重大です。

 そのため、加計学園問題などで、官房機密費が動いたのではないか、等の臆測が出てくるわけです。

 改造内閣の行方を占うためにも、菅長官の動向には要注目です。