トランプ政権と日本・アジア 2017

米国株や為替に影響する時事問題を中心に政治動向をウォッチ。今さら聞けない常識も再確認。

日本に移民政策は必要か 人口統計や世論調査を見て考える

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(ドイツで外国人が書く居住のための書類。出所は総務省HP

 日本に移民受け入れに戦略はあるのか。

 最近の新聞を見ると、読売朝刊(2017/8/4付)にて竹森俊平氏(慶応大教授)が日本が採るべき具体策を論じていました。

 竹森氏は移民が必要となる理由として日本の潜在成長率の鈍化を挙げています。

(潜在成長率というのは、モノやサービスを生産するために必要な資本(企業の設備等)、労働力、ノウハウ等を活かしてGDPをどれだけ高められるかを計る指標のこと)

 日本経済の潜在成長率が06年以降の5年間でわずか0.4%と評価されており、そのうち「労働力」が-0.3%を占めていることを問題視していました(米国1.9%、ドイツ1.1%)。

 日本は2025年に団塊の世代がみな、後期高齢者となり、15年~25年に要介護者が100万人以上増えることから、人手不足になるとも指摘しています。

 しかし、日本は現在、外国人に永住してもらう「移民政策」をとってはいません(移民とは、定住する国を変え、その国に一定期間、暮らしている人を指す)。

 竹森氏は参考事例として、ドイツが1961年にトルコ政府と「雇用協定」を結んで以来、トルコ人労働者が増えた例をあげています。当時、すでにトルコ人労働者の流入が長期化していたのですが、彼らを長期で受け入れる枠組みがなく、戦力になった労働者をトルコに帰らせ、また、ゼロから新しい労働者を教育するーーといったサイクルが繰り返されていました。これに対する解決策として「移民政策」が持ち出されたわけです。

 竹森氏は財政面を配慮し、招来の政府への税金(や社会保険料)等の支払いが見込める25歳~30歳の高所得が見込める外国人を移民として受け入れることを薦めたのです。

 竹森氏の提言は、移民審査で職業や能力を考慮して高い技能を持つ移民を優先的に受け入れる「メリット・ベース」の移民制度とよく似た考え方です。

 トランプ氏も「メリット・ベース」の移民制度に変えたいと言っていましたが、そうしないと、単に社会保障だけをもらいたがるような外国人がたくさん入ってくることがあるからです(米国ではフード・スタンプ〔貧困層に渡す食糧給付のクーポン券〕で暮らす移民の増加が問題になっている)

 昨今、日本でも人口減と外国人の増加がクローズアップされてきましたので、今回は、この人口問題を取り上げてみます

日本に来た「移民」の現状:人数はどのくらい?

 7月下旬には、日本がいつのまにか移民国家になったというレポートがみずほ総合研究所から出されたことが時事通信等で報じられました(時事通信「日本は既に移民国家」=受け入れ拡大、人口対策のカギに-みずほ総研 2017/7/21)。

 なぜそう言えるのかというと、日本人人口が減り続けるなかで、外国人人口が増え続けているからです。

 今回は、人口統計やみずほ総合研究所のレポートを踏まえ、「もはや移民国家」ともいわれる日本の現状を見ていきたいと思います。

 まず、総務省が発表した人口推計(平成28年10月1日現在)の要点を見てみます。

  • 総人口:1億2693万3千人(前年比-16.2万人)
  • 自然減(年間死亡者数-年間出生数):29.6万人
  • 年間死亡者数:130万人
  • 年間出生数:100.4万人
  • 社会増加(入国者-出国者):13.4万人
  • 入国者数:336.1万人(前年比+28.2万人)
  • 出国者数:322.8万人(前年比+24.2万人)
  • 日本人は-2千人の社会減少,外国人は+13.6万人の社会増加
  • 総人口と日本人人口は6年連続で減少
  • 日本人人口:1億2502万人(前年比-29.9万人)
  • 外国人は4年連続の増加

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 (人口統計の推移。出所は総務省HP)

 それ以外には、みずほ総合研究所が人口統計をもとに、日本人と外国人の人口増の推移を試算しています。

(出所:「東京の外国人住民比率約4%、日本は既に移民国家」)

 現在の外国人人口は230万人なので、日本人の総人口の約3%。

 変動数は以下の通りとなりました。

 日本人変動数(増減率)

  • 2014年:-24万4014人(-0.19%)
  • 2015年:-27万1058人(-0.21%)
  • 2016年:-27万1834人(-0.22%)
  • 2017年:-30万8084人(-0.24%)

 外国人変動数(増減率)

  • 2014年:-2352人(-0.12%)
  • 2015年:+5万9528人(+2.97%)
  • 2016年:+11万1562人(+5.41%)
  • 2017年:+14万8958人(+6.85%)

 そして、特に外国人住民の多い都道府県として以下の地域を挙げました。

  1. 東京都:3.59%
  2. 愛知県:2.88%
  3. 群馬県:2.428%
  4. 大阪府:2.427%
  5. 三重県:2.36%

 大都市や製造業の盛んな地域がランクインしています。

 みずほ総合研究所は、日本の製造業はすでに働き手を外国人労働者に依存していることや、人口を増やすためには、日本人を増やすよりは外国人の流入速度を速めたほうがよいこと等を指摘しています。

 このレポートでは、日本は「既に移民国家」と言える状況にあり、「移民受け入れ拡大が長期的な人口対策の鍵である」と指摘しているのです。 

「移民政策」に賛否は相半ば

 しかし、日本ではなかなか移民への抵抗は根強いようです。

 そのため、公式には移民政策が採られないまま、外国人労働者が増えてきています。

 こうした状況については、公に移民受け入れを認めるべきとする意見と、治安の悪化等を理由に反対する意見が相半ばしています。 

移民を巡る世論調査:若年層が6割賛成

 日経電子版(2017/3/21)の世論調査(2/24~26)では、賛成と反対がそれぞれ42%でした(「世論調査、賛否42%で真っ二つ 若年層は6割が賛成」)。そして、年齢別の賛否にかなりの違いがあるようです。 

  • 18~29歳の若年層では賛成が約6割で反対の約3割を大きく上回った。70歳以上は反対45%、賛成31%で対照的な結果となった。
  • 政府関係者は年齢による違いを「将来の人口減少に対する危機意識の違いではないか」とみる。30~60歳代は賛否が拮抗した。

 この電子版記事に反対の理由は特に書かれていません。

(※よくあげられる反対の理由は、治安悪化や雇用減少、文化的伝統の危機などです)

 ただ、移民に関しては質問の仕方でずいぶんと答えの比率が変わるようです。

 2016年2月22日の【産経・FNN世論調査】では「日本が移民や難民を大規模に受け入れること」についての回答の比率が出ています。

  • 賛成:20.2%
  • 反対:68.9%
  • 他:10.9%

 そりゃ、そんな質問したら、みんな「嫌だ」って答えるでしょ・・・。

 この世論調査は産経新聞の色合いが出すぎているようです。

安倍首相「移民は全く念頭にない」

 では、安倍政権はどう考えているのでしょうか。

 安倍首相は2016年の10月18日に、日本維新の会の小沢鋭仁氏にTPPに関して質問され、「移民は全く念頭にない」と述べています。ただし、「高度外国人人材の受け入れ促進に加え、建設分野などで外国人材の受け入れを進めている」と述べているので、これは建前と本音を使い分ける路線です。

 この時、石原伸晃経済再生担当相(当時)は「日本は必ずしも海外から来て仕事をしやすい国とは思われていない。TPP発効後は、規制緩和などを通じ、もっと働きやすい場所になると信じている」とも述べていました。

(出所:【衆院TPP特別委】安倍晋三首相「移民政策は毛頭考えていない」 - 産経ニュース

 それって移民と何が違うの? と聞きたいところですが。

 「移民」がいないと、もう現場は回らない?

 しかし、日本は外国人労働者なしにやっていけるわけでもありません。

 例えば、池上彰氏はコンビニや物流センター、農漁村の技能研修性等の例を挙げ、「日本では公式には移民政策をとっていない」のに、外国人労働者がいないと、「日本の『現場』は人手不足で立ち行かなくなってしまう」ことを指摘していました。

(出所:日本にも「移民局」が必要だ:日経ビジネスオンライン

 日本のずるい建前と本音の使い分けが透けて見える。人手不足だから外国人に頼るしかない。でも、本当は入れたくない。だから、建前としては認めていないけど、移民という名目じゃないかたちで、入ってきてもらおう、と。

 個人的な意見を言えば、私は日本も移民局をつくるべきだと思います。今は、入国管理局が難民の審査をしていますが、彼らの仕事は「不正に入ってこようとする人を入れない」というのが基本スタンスです。つまり、入れることが前提ではなく、入れないことが前提となっている。当然、入国審査は厳しくなる。日本の現実と未来を見据えたら、海外からの移民を受け入れることを前提とした役所をつくるべきでしょう。

 筆者は東京に在住していますが、コンビニやスーパーに行くと、バイトの店員の半分以上が外国人です。

 店員の名札を見る限りでは、中国人や韓国人だけでなく、ベトナムやミャンマーあたりとみられるメコン川近辺の国々の出身者が増えています。

 当ブログは中国の軍拡や韓国の反日思想に批判的ですが、筆者は個人的には中国人や韓国人が嫌いではありません。

 20代にバイト生活をしていたころは、工場等の勤務先でよく中国人や韓国人の方々とも一緒に働いていました。筆者が会った外国人労働者の方々は、豊かで自由な生活を求める普通の市民であることが多かったと思います。

 諸々の反対意見はありましょうが、外国人労働者がいないと現場が回らないという現実に関しては、定量的データ(前掲の人口統計等)や定性的データ(池上氏等が挙げる生活者の実感)から見ても、もはや否定しがたいものがあります。

 外国人労働者たちと共生していくための制度を考えなければいけない時期が来たとも言えます。