トランプ政権と日本・アジア 2017

米国株や為替に影響する時事問題を中心に政治動向をウォッチ。今さら聞けない常識も再確認。

空飛ぶ自動車 2017年に販売開始? 各社の試みを一覧

f:id:minamiblog:20170809030019j:plain

(出所はWIKI画像。ドバイの夜景。ドバイにて空飛ぶ自動車の実験が進んでいる)

  2020年に五輪の聖火点灯者を乗せることを目標として、日本でも「空飛ぶ自動車」の開発が進んでいます。

 今までは日本の技術者の有志団体「CARTIVATOR(カーティベーター)」が勤務時間を終えた後に空飛ぶ車「スカイドライブ」の開発に取り組んでいます。 カーティベーターは2012年に現代表の中村翼氏により創設され、同プロジェクトには自動車や航空機、IT産業などの業界の経歴を持つ有志30人が参加。クラウドファンディングで資金を募っていましたが、5月にはトヨタ等の大手企業が4000万円規模の資金を提供することを決めました。

 スカイドライブはドローン(無人機)技術を利用した3輪式でローター4枚を備えた自動車(前長2.9m/幅1.3m/高さ1.1m)であり、10mの高さを時速100km、陸上では時速150kmで飛べる技術開発を目指しています。カーティベーターは2025年までにスカイドライブ初の商用モデルを納入する目標を掲げました。

 この「空飛ぶ自動車」の開発は世界各地で進められており、日本はこの分野では他国に後れを取っているとも言われています。

 各国で「空飛ぶ自動車」の開発は、どのように進められているのでしょうか。

空飛ぶ自動車の実験場:ドバイが革新の中心地に

  例えば、ドバイでは、17年6月にドイツのヘリコプター製造会社が無人機を用いて「空飛ぶタクシー」のサービスを始めることを発表しました。ドバイ政府は2030年までに全ての移動手段の25%を無人自動走行で対応することを目指しており、17年末までに道路交通局は試運転を始めることを許可しました。

 その後、7月には中国のドローンメーカーであるイーハン社(Ehang:広州億航智能技術)が世界で初めて人を運ぶドローンをドバイで運行することを発表しています。

 WSJ日本語版(2017/4/19)は「空飛ぶタクシーで「交通の未来」体現するドバイ」と題した記事を公開し、そのドローンタクシー構想を明かしました。

  • ドローンタクシーは乗客1人とスーツケース1個分のスペースしかない。時速100キロ近いスピードで飛行し、地上の管制センターともつながっている。
  • 緊急の際は 最も近い安全な場所に即着陸する。ドバイ当局によると、すでにドローン試作機をテスト済みで、4G移動通信ネットワークを使って制御される予定だ
  • イーハン社がつくったバッテリー駆動の空飛ぶタクシーは、テスト結果にもよるが、早ければ年内にアプリを通じて予約可能になる
  • ドバイはハイテク企業にとって、安い税金や東西の間に位置する理想的な立地に加え、官僚主義にとらわれない親ビジネスの環境であり、試作品に合わせて規制を容易に変更できる。
  • ドバイのガルガーウィ内閣担当相は「最終的にはドローンが人類の輸送手段になるだろう」「空想科学小説(SF)が現実になるのだ」「われわれは世界最大の実験室になろうと決めた」と述べている。

 こうした活況を見て、国際政治学者の浜田和幸氏は「中東のドバイは今や空飛ぶ自動車の実験場となりつつある」とも評していました。 

 今の日本で「試作品に合わせて規制を容易に変更できる」とは思えないので、空飛ぶ自動車の開発は、もっと規制の緩い国々が先行することになりそうです。日本政府や企業は一番乗りを狙うことよりも、技術を活かしたビジネスモデルの構築で勝利することを狙っているのかもしれません。

開発が進む「空飛ぶ自動車」の一覧

 そのほかの試みを調べると、2017年には各国で「空飛ぶ自動車」の開発競争が加速しています。その幾つかを紹介してみましょう。

ロシア:バルティニ社/ATMフレート・ドレーン

 空飛ぶタクシーの開発を目指しているのはドバイだけではありません。ロシアもまた開発を目指しています。

(出所:空飛ぶタクシー2018年にも乗客輸送か | ロシアNOW 2017年7月21日 イーゴリ・ロジン)

 ロシアの新興企業「バルティニ(Bartini)」はロシアの「ブロックチェーン・アエロ」コンソーシアムが開発しているプラットフォームを使用します。そして同社の空飛ぶ車は垂直に離着陸し、2~4人を輸送でき、価格は10~12万ドル(約1100~1300万円)になる模様。このプロジェクトは「ウーバー上昇プログラム」の技術要件に適合しました。さらには別のロシア企業「ATMフレート・ドローン(ATM Freight Drones)」が関連法の承認後、2018年に無人飛行タクシーを投入することを約束しました。

 動画を見ると、ややTVゲーム風の世界の中で、2020年をイメージした都市から4つのプロペラを回して飛び立つ「自動車」の姿が描かれています。

gazetarussa.com.br

 ATMフレート・ドローンのアレクサンドル・アタマノフ社長は、これがうまくいけば、モスクワは革新的な都市となり、「陸、高速道路、地下、川、鉄道の10~15メートル上に、細い飛行車列ができる」とも述べました。

スロヴァキア:エアロモービル社:

 東欧のスロヴァキアにも、空飛ぶ自動車の開発を目指す企業があります。その名はエアロモービル(Aeromobil)。同社の動画を見ると、車道を走りながら翼を広げ、短期間に変形して空に飛び立ち、地上へと見事に着陸していました。

www.youtube.com

 エアロモービル社は「パリ航空ショー」(2017年6月)に「空飛ぶクルマ」を出し、世の注目を集めました。建造計画は500機。1機120万ドルで販売されるともいわれています。 

オランダ:PAL-V社「Liberty Sport」が4500万円で予約開始

 3月2日にはフォーブス誌がオランダのPAL-V社が空飛ぶ自動車の予約受付を開始したことを報じています

 同社の「Liberty Sport」は10秒で道路走行と飛行という二種類のモードを切り替え可能な「自動車」。折り畳み式のプロペラで空を飛びます。スペックは最高飛行高度:3500m、最高速度:時速180km。最大500kmの飛行が可能とされていました。

(世界初『空飛ぶ自動車』の予約開始 4500万円から、納期は来年末」3/2)

 ※以下、PAL-V社の動画 

www.youtube.com

 特筆すべきは、運転には自動車免許と飛行機の操縦免許が必要なことです。

 将来的には自動運転で空を飛ぶ可能性が高いのですが、現在では、飛行機が扱える人向けのマシンなので、希少品になっているわけです。

 しかし、技術革新の歴史はお金持ちのための希少品を庶民が持てるレベルに大衆化してきた歴史なので、21世紀中には「空飛ぶ自動車」も自動運転技術等を通して大衆が利用できるようになるのかもしれません。

 昔は貴族しか馬車に乗れなかったのに、現代では庶民が自動車を乗り回しているのですから、やがてはみんなが空を飛べる時代が来るに違いありません。

ドイツ:「Lilium Aviation」社の「Lilium Jet」

 アメフトのボールのような形をした「Lilium Jet」は2017年に世界初の電動垂直離着陸ジェットのテスト飛行に成功しました。「Lilium Jet」は垂直離陸と水平飛行時の両方で電力を用い、離陸に滑走路を必要としないヘリコプターの利点と空中ではジェット機のような固定翼機の高速性能を実現することを目指しています。

 現在は2人乗りのプロトタイプ。これを5人乗りバージョンのデザインとし、空中タクシーや相乗りサービスでの利用を目指しています。 

 

ヨーロッパ:エアバス社が17年内に試験飛行開始

 フランスに本社を持つエアバスは2月にCEO(トム・エンダース氏)が「空飛ぶ自動運転車」のテストを17年内に開始すると表明しました。ReadWrite誌(2017/2/21)はその中身として以下の3点を報じています(「エアバス『空飛ぶ自動運転車』、年内にテスト開始か」2017年2月21日、デイヴィッド・カーリー)

  • "空飛ぶ自動運転車"を導入することで大都市の交通渋滞問題を緩和できる
  • 橋や信号、コンクリート舗装の道路について悩む都市計画のインフラ予算を抑えられる
  • エアバスは昨年、都市空中移動部門を設立。消費者が実際に乗るのは、2020年頃

 タクシー的な感覚で空飛ぶ自転車を使うエアバスの未来構想はウーバー社のプランとも軌を一にしています。

 エアバスは2016年時点で、空飛ぶ自動車の構想をHP上で公開していました(Airbus - Future of urban mobility)。

 ただ、これにはドローンと同じく安全面での規制や、タクシー、バス業界等の抵抗があるので、政治と既得権の壁が薄い地域から順に具体化していくのかもしれません。

イギリス:ネバ・エアロスペース社の「クアッドコプター」

 英国の航空関連企業5社から成るNeva Aerospaceは「AirQuadOne」の製造計画を進めている。

www.youtube.com

 小さなクアッドコプター・ドローンを大型化し、電動ターボファンで移動する。 

アメリカ:キティホーク社が「キティホーク・フライヤー」の動画を公開

 4月24日、グーグルの共同創業者であるラリー・ペイジ氏が設立(ペイジ氏は16年に1億ドルを出資)したキティホーク社は空飛ぶ自動車の試作品の動画を公開しました。「キティホーク・フライヤー」は超軽量機なので、水上から垂直離発着ができ、小型のプロペラで飛行できます。計上は飛行機というより、ジェットスキーに翼をつけたかのようです。米連邦航空局から非密集地域での飛行を許可され、年内には発売可能になります。

(以下、BBCの紹介動画)

www.youtube.com

  現状では湖畔に住むお金持ちが水上を飛ぶためのマシンとなっており、操縦はシンプルなので、操縦士免許は要らないとされています。

※そのほか、空飛ぶ自動車で有名なのはterrafugia社。以下はイメージ動画。

www.youtube.com

イスラエル:アーバン・エアノーティクス社「コーモラント」

 そして、ヨーロッパだけでなく、イスラエルでも、アーバン・エアノーティクス社が小型無人機「コーモラント」を2020年に市場投入することを発表しました(同社HP:動画URLはこちら

 東洋経済社の記事(2017/1/6)によれば、「コーモラントは昨年11月、初めての単独飛行に成功」し、「プロペラではなく内部のローターを利用して飛行するため、ビルの合間や電線の下をプロペラがぶつかるリスクなしに飛行できる」という特色を持っています。

toyokeizai.net

 この「コーモラント」に関しては、ニューズウィーク日本版(2016/11/22)の記事にスペックデータと前掲動画が紹介されています(【動画】イスラエル発の「空飛ぶロボットタクシー」、初の自律飛行に成功 高森郁哉)

  • 全長:6.2m
  • 幅:2.15m
  • 胴体の下部に揚力を生むローター(回転翼)を2基。
  • 後部には前方への推進力を生む小型のローター2基を搭載。
  • 後部ローターを含めた幅は3.51m、車輪を含む全高は2.3m
  • 機体重量:918kg
  • 積載量:500kg超
  • 最大速度:時速180km
  • ペイロードが300kgの場合、400kmの距離を2.6時間で飛行可能

 センサー群を用いて自律飛行を行うことや、イスラエルが軍事利用する可能性なども報じられていました。これが稼働したら、ヘリコプターの役割のうち、人員輸送等が代替されることになりそうです。

    16年7月、イスラエルは世界に先んじてAI(人工知能)による自動運転車を陸軍で配備したので(毎日新聞8/23)、軍民をあげて空飛ぶ自動車の実用化を進めていくはずです。 

空飛ぶ自動車で飛行技術が大衆化される?

 従来の車の開発競争とは別次元のイノベーションが各国で進んでいます。

 2017年~2020年代初期に、空飛ぶ自動車も実用化され、まずは高値の希少品として市場投入されていくでしょう。

 同時期に自動運転車も実用化が並行していきます。

   まずは半自動運転。次に完全自動運転が実現され、その技術が空飛ぶ自動車に転用される可能性が高いのですが、これは空という新次元のワールドなので、実用化には一定の時間がかかりそうです。

 ただ、21世紀の前半のどこかで、我々は、その技術の広がりを目の当たりにするのではないでしょうか。

 20世紀の大きな技術革新の一つはモータリゼーションでした。

    自動車の大規模な普及で我々の社会が変わりました。

 21世紀には、空を飛ぶ技術が大規模に普及することで、社会の仕組みも変わるのではないでしょうか。