トランプ政権と日本・アジア 2017

米国株や為替に影響する時事問題を中心に政治動向をウォッチ。今さら聞けない常識も再確認。

日本ファーストの会と「輝照塾」が発足 小池氏は都政よりも国政に夢中?

f:id:minamiblog:20170808014010j:plain

(いわくつきの豊洲の風景。出所はWIKI画像)

  小池百合子氏の側近である若狭勝衆院議員は8月7日に記者会見し、政治団体「日本ファーストの会」を設立した(7月13日付)ことを発表しました。代表は若狭氏が務め、国政候補者を養成するための政治塾「輝照塾」が9月16日に開講されます。初回(9/16)は小池氏が講義し、塾は月1回のペースで6回の講座(外交、安保、財政等)が開かれます。

 産経ニュースによれば、若狭氏は「自民党でも民進党でもない政党が求められている」「衆院選や参院選に出る人を選んでいく」と述べ、国政政党を「年内の早い段階でつくっていく」と強調したそうです。希望があれば現職国会議員も受け入れる方針を明かしたようなので、泥船から脱走した民進党議員の何人かが入ってくる可能性もありそうです(産経ニュース〈「小池新党」結成見据え「日本ファーストの会」設立〉2017/8/7)

  塾の形式は都民ファーストの会の候補者輩出の場となった「希望の塾」と似ているので、「二匹目のドジョウ」を狙ったようにも見えますが、これで国政に向けた小池氏の「野心」が露わになったようです。

 国政を目指す野心を持つことは価値中立的で、それ自体がよいとも悪いとも言いかねますが、豊洲と築地の市場移転問題に関して採算の見通しも立っていないのに、「いざ国政へ」というのは気の早い話です。

 小池旋風が消えない間に国政進出を計ろうとしているわけですが、少なからぬ都民が心配しているのではないでしょうか。

いかにも怪しい「日本ファーストの会」

  毎日新聞(2017/8/7)の報道によれば、若狭氏は細野豪志(民進党を離党)衆院議員らとの連携にも言及し、「今の自民党の受け皿になるようなものを作るべきだと強い情熱を持って考えている人、国会議員の現職を含めてこれから協議を進めていく」「(小池氏は)塾の講師としてお願いしたが、新しい国政新党にどのように関わるかは、現時点では言及できない」と述べたと報じています。小池氏が7日に「国政は若狭氏に任せている。改革の思い、志を共有するものだ。国政において大いに活躍されることを心から願っている」と語ったことも紹介していました(「日本ファーストの会設立 国政進出へ布石」)。

 小池氏が関わらないかのようなポーズを見せていますが、筆者には悪い冗談としか思えません。

 都民ファーストの会の時でも、小池都知事は「特別顧問です」と言いながら、結局、最後は選挙前に代表に就任しました。そして、選挙が終わったら、また特別顧問に戻りました。都民ファーストの会は小池氏の威光なしには成り立たないので「小池党」というのが実態に近いはずですが、見え透いた芝居をして、そうでないかのような外見を取り繕ったわけです。

 日本ファーストの会も、小池氏の威光で成り立つ団体ならば、結局、大差はないはずなのに、両者が関係ないかのように装っています。

 そして、7月13日時点で政治団体ができていたわけですから、小池一派は都議選中もしくは都議選直後に政党づくりを始めていたはずです。普通、政党をつくる時には、役職者を決め、発起人に相当する原始党員をかきあつめ、ややこしい書類を幾つも出さなければいけません。小池氏のスタッフは新党づくりに「慣れていた」としても、役所とのやり取りもあるので、短くても10日程度はかかっているのではないでしょうか。

 結局、これは国民と都民の知らぬうちに、いつのまにか国政向け政治団体ができていたことを意味しています。そして、マスコミや言論人はそれをかぎつけても知らんふりを決めていた可能性が高いわけです。

 このあたりが、何とも怪しい雰囲気を醸し出しています。

 そのほか、この「日本ファーストの会」という命名には、幾つかのクレームがついています。

 英語にしたら「日本第一党」(桜井誠氏が党首を務める政治団体)と同じになってしまうことや、発明家のドクター中松氏が2017年4月に「日本ファースト党」の商標登録を出したことを指摘し、自分こそが元祖だとも主張したことも報じられています。 

国政の前に都政はどうなった・・・

 国政政党づくりの芝居の前に都民の多くは、豊洲・築地の市場問題や待機児童の問題、オリンピック準備など、都政の懸案事項を気にしているような気がしてなりません。

 都議選の主たる政策課題は豊洲・築地の市場移転問題でしたが、最近、築地でも結局、ベンゼンが見つかったというニュースが流れていました。

 日経電子版(2017/7/31)は「築地市場 空気中から基準上回るベンゼン」と題した記事が公開されています。

  • 東京都が31日に築地市場の空気中から環境基準をわずかに上回る有害物質ベンゼンを検出。
  • 5月の土壌調査でベンゼンと水銀を検出した一部の地点について、7月中旬に空気を測定。水銀は不検出
  • 土壌調査は敷地内の111地点で実施。30地点で規制基準を上回る水銀や六価クロムなどを検出した。

  結局、多くの識者が築地市場の土壌も汚染されているはずだ、と指摘した通りの結果になったわけです(築地市場敷地には戦後、進駐軍の施設がありました)。築地からも汚染物質が出てくるのなら、環境汚染を理由に豊洲移転を止めてまで築地再開発を選んだ根拠も怪しくなってきます。

もともと問題だらけの豊洲・築地併用プラン

 そして、小池氏が採った豊洲・築地併用プランにも問題があります。

 都の「市場問題プロジェクトチーム」(PT)は6月5日に「築地市場の再整備案と、豊洲移転の両案に加え、両市場をどちらも活用する案」を提言しています。

 そこでは、築地は「食のテーマパーク」に、豊洲は「物流センター」(ITで商品管理)にするとされました。従来は築地再整備に肯定的なPTは、都議選前になって、「豊洲も築地も使います」といういいとこ取りのような「第三の案」を出してきたわけです。PTの報告書は、卸売市場を斜陽産業とみなし、豊洲市場をオープンした場合には「100億~150億円の赤字」になるから「税金に依存しない自立した産業への改革が必要だ」と述べています。 

 その概要は産経ニュース(6/5)でも報じられていました(東京都の市場問題PT、「築地活用」色濃い報告書)

  • 豊洲は高速かつ衛生的な取引を行う「物流センター」として商品をIT管理
  • 移転後の築地跡地に、民間協力で魚市場を新設する
  • ブランド力を生かして観光地化することで収益確保を狙う「食のテーマパーク」化を提案。
  • 改修案は民間企業主導案を盛り込み、工期は3年半~15年、工費は約800億~1388億円の4案をまとめた。

 従来、移転後の築地市場跡地は売り払い、豊洲市場整備の財源を確保する方針でした。しかし、このPTの報告を受け、小池知事は築地市場も一定の機能を残しつつも、移転部分の跡地を民間に貸出し、お金を稼ぐ方針に転換しています。「築地ブランド」を維持し、観光やショッピング等のにぎわいの場として活用する意向なのです。

豊洲はコスト高、築地はコスト安というのは本当か

 しかし、もともと市場の収入と費用がどう見積もられているのでしょうか。

 まず、日経電子版(2017/1/26)の要旨を見てみましょう(「豊洲、年98億円の赤字 都が試算公表 経費は築地の4倍 」※都の発表は1/25)。

  • 豊洲市場開場(2018年想定)は年間98億円の赤字になる
  • 使用料などの収入が68億円。経費は166億円。減価償却を除くと経費95億円
  • 都は築地市場跡地が約4300億円で売却できるため、中央卸売市場会計は「10年以上持続できる」
  • 豊洲市場は低温管理施設や空調設備を備えるため、吹きさらしの築地市場の経費(44億円)の約4倍になる
  • (※前掲記事には記述がないが、築地の収入は50億円程度といわれている)

 これだけを見ると、豊洲市場だけが異様にコスト高に見えますが、豊洲は築地よりも整備を充実させ、品質管理に力を入れています。

 21世紀の市場競争を考えると、食品規格HACCP(ハサップ)やISO22000(品質管理システム)等は不可避なので、これにはいたしかたない面もあります(HACCP非対応だとEU圏への輸出ができない等のデメリットがある)。

 そのため、築地を豊洲並みに整備したら、豊洲はコスト高、築地はコスト安という話は成り立たなくなります。豊洲市場移転を薦める『WEDGE 2017年5月号』(P22~23)では、採算について、以下のように書かれていました。

  • 豊洲整備の費用は「保有資金等(1628億)」+国庫交付金(208億)+「都債(築地市場跡地売却と保有資金等で返却:4048億円)で累計が5684億円
  • 1年のランニングコストは豊洲が75億円、築地が15億円だが、築地市場に豊洲と同じ機能を整備すると1460億~1780億円かかる(工事は11~17年ほど)。
  • 築地に必要な整備内容は食品鮮度保持のためのコールドチェーン、ISO22000、HACCP等。築地は吹きさらしなので、小動物が中に入るなどの問題もあり。

 築地活用は結局、再整備が必要になるので、結局、追加費用がかかります。都PTは過剰なコールドチェーンは要らないとして、その費用を抑える予定でいますが、再整備費用の負担は無視できないのです。

小池都知事の築地・豊洲併用プランで「資金ショート」?

 根本的な問題点としては、小池氏の豊洲・築地併用プランだと、元になるお金もなく、長い間、自転車操業を余儀なくされることが指摘されています。

 BLOGOSで中嶋よしふみ氏が「築地・豊洲の市場移転問題、知らないと恥をかく数字の読み方~マスコミ・都知事・当選した都議向けのお話(2)」(2017/6/30)と題した記事を公開し、既存の試算をもとにした未来図を提示していました。

  • (築地を売れば)現金が手元に入るため、平成32年から38年に発生する3500億円の企業債(=豊洲市場を作るために発生した借金)を問題なく返済できる。ただし、豊洲市場の規模縮小により、徐々に赤字が大きくなり、平成61年には・・・手持ち資金がなくなる。
  • (築地を)貸す場合は・・・3500億円という巨額の借金を返すことは出来ないため、借り換え(期限までに返済ができずに借金を継続すること。闇金ウシジマ君的に言うと「ジャンプ」)で資金ショートを回避する。
  • 当初は3500億円のうち2/3を借り換える。つまり多額の借金がそのまま残る。
  • 築地を貸す場合は借り換えを二度行い、返済が終わるのは平成58年となる。その場合でも・・・平成47年の資金ショートは免れない。
  • 多額の借金が残り、借り換えをしても早期に資金繰りが行き詰る案を戦略本部が「安定的な運営が可能」と評価し、借金を全額返済可能で資金繰りも31年先まで問題がない売却案を「運営自体は継続可能」と不安定な状況であるかのように説明するのは、きわめて不自然である
  • 今後、年々市場の取扱高が予想通り減ってしまい、豊洲市場への税金投入や借金をする必要性が生じる可能性は十分あると思われるが、そういった状況になる理由は「赤字の発生」ではなく「手持ち資金の枯渇(資金ショート)」が発生したときだ。
  • したがって、豊洲市場の利用で問題にすべきは「赤字かどうか?」ではなく「資金ショート」であることは間違いない。企業でも個人でも破産や倒産に陥る理由は赤字ではなく支払いができなくなったとき、つまり資金がショートした時だ。

 つまり、本当に恐れるべきは赤字ではなく、資金ショートだというわけです。これは経営的に見れば、極めて自然な見方です。

 小池氏は、足元の都政で極めて怪しい判断をしながら、国政向けの「日本ファーストの会」を立ち上げています。そんなことをやる前に、都政のほうを何とかしてほしいものです。