トランプ政権と日本・アジア 2017

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河野外相と安倍首相の歴史認識 一致していることが問題では

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(日本統治時代の京城府庁舎)

  内閣改造が行われましたが、閣僚の顔触れを見ると、やはり、河野外相と安倍首相との関係が気になります。

 安倍首相は3日に記者会見し、歴史認識問題で河野太郎氏と立場の違いはないことを強調しました。

「内閣の一員として、まさに70年談話において、安倍政権、そして閣議決定をしておりますから、私たちの立場は明確となっており、河野氏も完全に一致しているところであります」(産経ニュース【安倍晋三首相記者会見・詳報(3完)】8/3)

 要するに、河野談話の撤回等を行う気はないと主張しているのでしょう。しかし、これに関しては、本当にそれでよいのかという疑問が残ります。

 日本は米国や国連等から慰安婦問題で批判されながらも、明確な検証と裏付けなしに出された「河野談話」の歴史観(安倍談話はこれを継承していることになっている)を守り続けているからです。

 忘れてしまった方のために書きますと、河野談話というのは、韓国の元慰安婦らに対して、93年8月に宮沢内閣の河野洋平官房長官が出した談話です。慰安所の設置や管理、慰安婦の移送について「旧日本軍が直接あるいは間接に関与した」として、元慰安婦に「お詫びと反省の気持ち」を表明しました。

 これがあるがために、研究者等が「日本軍による慰安婦の強制連行」や「慰安所の直接的な設置」等について、明確な検証を経て裏付けられた史料はないと海外の識者や政治家等に指摘しても、「諸外国は日本政府が公式に認めている」という反応が返ってきて、歴史の真偽が問われなくなります。

 その意味では、安倍首相の延命のために、歴史の検証が犠牲にされたと言えなくもありません。

 河野太郎氏を外相に選んだことには、慰安婦問題等を巡って、韓国等からいいがかりをつけられるリスクを伴うため、今回は、この問題の本質がよくわかる過去の報道を紹介してみます。

米政府調査でも慰安婦「強制連行」の証拠は不明

 近年のわかりやすい例は、2014年11月、産経新聞が報じた米政府の「IWG文書」でも慰安婦強制連行の証拠が見当たらなかった、という記事です。

(出所:「慰安婦「奴隷化」文書なし 米政府2007年報告に明記」産経1面:11月27日)

 ここでは以下のような事実が指摘されています。

  • 産経とマイケル・ヨン氏(米ジャーナリスト)などの調査班が「ナチス戦争犯罪と日本帝国政府の記録の各省庁作業班(IWG)米国議会あて最終報告」(2007)等の米国政府の公式文書を調査した結果、IWGが「慰安婦=性奴隷」の証拠は見つからないと述べていたことが判明。
  • IWGは8年ほど日本の戦争犯罪を調査したが、日本が「慰安婦」を性奴隷にした証拠を発見できなかった。
  • 産経とヨン氏らが調べた米国の公式文書は計850万ページ。14万2千ページが日本の戦争犯罪にかかわる文書で、「日本の官憲による捕虜虐待や民間人殺傷の代表例が数十件列記されたが、慰安婦関連は皆無だった」
  • この文書を調べたマイケル・ヨン氏は、これは20万人の慰安婦が性奴隷にされたという主張が嘘であることの証明。日本は、「米議会の対日非難決議や国連のクマラスワミ報告などの撤回を求めるべきだ」と述べた

 クリントン政権~ブッシュ政権の頃の米国が史料を総動員しても、慰安婦に関する日本軍の犯罪の証拠は見当たりませんでした。

「「いわゆる慰安婦プログラム=日本軍統治地域女性の性的目的のための組織的奴隷化」にかかわる文書の発見と報告が指示されていた。だが、報告では日本の官憲による捕虜虐待や民間人殺傷の代表例が数十件列記されたが、慰安婦関連は皆無だった」

 有力な米記者が「慰安婦」を巡り、韓国を批判

 これは海外の事例ですが、日本政府内の資料でも、明白に裏付けられた証拠として、慰安婦強制連行の証拠が出てきたわけではありません。

 韓国から慰安婦の「証言」は出てきていますが、第三者がそれを厳密に検証したわけでもないので、慰安婦問題に関して、日本は反対尋問なしに糾弾されるのとよく似た構図に置かれています。

 この問題に関して、有力な米国の言論人が疑問を持ち始めているということが、前掲記事の大きな強調点になっています。

 マイケル・ヨン氏はイラク戦争、アフガン戦争の報道で有名になったジャーナリストなので、それなりに影響力がある人物です。この人は「米側が慰安婦問題で日本を叩くのは敵性勢力を強め、友邦を弱めることに等しい」などと主張し、靖国神社に参拝し、戦没者に敬意を示したこともあります。

 ヨン氏は「米欧大手メディアの『日本軍が組織的に女性を強制連行して性的奴隷にした』という主張は作り話としか思えない」と述べていました。

「慰安婦」を巡り、反論しない日本 

 前掲記事によれば、「ナチス戦争犯罪と日本帝国政府の記録の各省庁作業班(IWG)」は、もともと、「慰安婦=性奴隷」説の証拠となる文書を発見しようとしていました。

 しかし、その証拠が見つからず、その序文にはIWG委員長代行の「失望」の意が書かれていたのです。

 委員長代行は、この調査を促した世界抗日戦争史実維護連合会(中国系組織)の名を挙げて、「こうした結果になったことは残念だ」とまで述べていました。

    要するに、米国の政府機関が8年かけて中国の期待に応えて日本の戦時の粗探しをしたにもかかわらず、何も証拠が見つからなかったわけです。

    韓国の文政権が「慰安婦の強制連行」説を蒸し返し、大統領自らがプロパガンダを始めそうな雲行きになっている今、この事実は、もう一度、再確認しておいたほうがよいのではないかと思います。

    日本では、「反発を招くから、欧米圏に慰安婦が嘘だと主張しないほうがよい」という考え方が根強く、基本的には安倍政権もこの路線から大きく外れているわけではありません。

 河野太郎氏が外相になったのも、これが原因でしょう。

「河野談話」「安倍談話」の問題点  

  前掲例でいえば、ヨン氏は、日本側は今回の調査を活かして、米議会の対日非難決議や国連のクマラスワミ報告などの撤回を求めるべきだと主張しましたが、結局、安倍政権は歴史認識の見直しには深入りしませんでした。

 結局、日本自らが慰安婦強制連行を認めてしまっているので、どんな資料があっても活かせない状況に置かれているのですが、この問題はずっと放置されたままです。

 安倍政権は歴史認識問題を政治マターからできる限り外そうと試み、延命を図ったわけですが、根本的な問題解決のためには、やはり、「河野談話」の検証は不可避です。

 海外の日本人の子供が慰安婦問題等を理由にしたいじめにあっているという事例もあります。

 この問題を終わらせるためには長い時間がかかりそうですが、河野氏が外相になったことで、歴史認識問題にどんな影響が出るのか