トランプ政権と日本・アジア 2017

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森友・加計学園問題の背景 根本原因は何か

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(出所はWIKI画像)

  森友学園問題を巡って、その当事者の籠池夫妻(籠池泰典氏と諄子氏)が国の補助金詐取容疑で逮捕されたことが各紙で報じられています。

 二人は黙秘権を用いていますが、朝日デジタル(2017/8/1)では特捜部等をソースとして、以下の容疑があると指摘しています(「森友学園」籠池夫妻を逮捕 国の補助金詐取容疑

  • 二人は「豊中市の国有地への小学校舎の建設にあたり、木材建築の普及を目指す国土交通省の補助金を申請」
  • 「2016年2月下旬、設計業者らと共謀して工事の請負金額を『23億8464万円(税込み)』と水増しした契約書を中間実績報告として提出し、補助金計約5644万円をだまし取った疑いがある」
  • 「設計費も約1億1千万円水増しした」
  • 「両容疑者らは15年12月3日付で金額の異なる3通りの契約書を作成。府には7億5600万円、空調設備の補助金を申請した関西エアポートに約15億5千万円とする契約書を提出していた」

 つまり、本来の額は15.5億円なので、上増し分が詐欺に当たると見たわけです。

 今回は、森友学園問題と加計学園問題に関して『VOICE 2017年8月号』(高橋洋一氏「森友・加計学園問題はフェイクニュース」)を参考にして理解を深めてみます。

森友学園問題の「起承転結」とその真相

  この問題は、国会で証人喚問まで行われ、挙句の果てに補助金詐取容疑という、異例の事件で終わりそうな雲行きになっています。

 ここで問われたのは「総理の関与」でしたが、大騒ぎのわりには、決定的な証拠が見つかっていません。

 大部分の方はご存知でしょうが、一応、経緯を簡潔に整理しておきます。

【起】:国交省(大阪航空局)が伊丹空港の騒音対策のために管理していた土地(8770㎡)を学校法人「森友学園」に払い下げる際に9億5600万円と評価された値段が、結果的に1億3400億円で売却された(8億1900億円は、土地内にあるゴミ撤去費とされた)。

【承】:安倍昭恵氏が名誉校長になっていたので、売却への首相の関与が問われた。首相が「関係していたら、首相も国会議員も辞める」と答えたので、野党は必死に追及を続けた。

【転1】:3月10日に森友学園が建設した「瑞穂の国記念小学院」の設置が不認可となり、籠池理事長が退任。3日には昭恵夫人が森友学園が運営する幼稚園で講演する際に政府職員が同行していたことが明らかになり、14日には稲田防衛相が所属法律事務所と同学園との顧問契約を巡って答弁を訂正するなどの火種が拡大。

【転2】:3月23日に籠池氏の証人喚問。四点が争点となり、政府側は首相の関与を否定。

  1. 2015年9月に昭恵夫人を通じて100万円の寄付金を受け取った
  2. 10万円の講演料をお菓子の袋に入れて昭恵夫人に渡した
  3. 森友問題発覚後、昭恵夫人から籠池氏の妻に口止めのためのメールが届いた。
  4. 昭恵夫人付きの政府職員が口利きに関して現状では希望に添えないというファックスをもらった。

 特に昭恵夫人の言動が問題視されたものの、退陣に至るほど、決定的な証拠は出ませんでした。

【結】:そして、このたびの逮捕で物語の決着がつくのかどうかが注目されています。

 逮捕で終わっていいレベルの話なら、初めから大騒ぎする必要もなかったような気がしてなりません。

 果たして、逮捕後は「国策捜査」だと騒ぎ立てられるのでしょうか。

 しかし、証人喚問を通して、この問題は公式の場で論じられたわけですから、政権の側も一定の配慮は示したとも言えます。そこで大した証拠がみつからず、籠池氏が疑わしい発言をしたために、同氏が信用を失った面があります。

 この問題に関して、高橋洋一氏は本当は近畿財務局に問題があったのではないか?と疑問を呈しています。

 森友学園の東側の土地が「森友学園に先行して豊中市に売却され」、「そこでは土中のゴミが派遣されている」が、関東財務局は「当初、その事実を相手方に伝えていない。ここが問題の本質だ」。「売却が入札であれば瑕疵担保責任となったはずだ」。「トラブルになって、近畿財務局は森友学園の意向を聞かざるをえなくなった。これが、いわゆる『値引き』の正体であるが、これをマスコミは『総理の関与』だと報道したのだ」(前掲誌P59)

 もともと、「事務チョンボ」だったものが、ここまで大きく発火したというのです。現在、火だねを生んだ関東財務局は責任を問われることなく、籠池夫妻の逮捕によって事件は終息に向かっているように見えます。

加計学園のために「総理の意向」は要らなかった?

 一方、加計学園問題も国会閉会中審議が行われましたが、こちらが終息に向かうのも、さほど遠くないのかもしれません。そう述べるのは、いわゆる「総理の意向」文書なるものの信憑性が怪しいことが分かってきたからです。

 「加計学園」問題では、岡山理科大の獣医学部開設(2018年4月)にあたり、国家戦略特区にあたる愛媛県今治市で、約37億の大学用地16.7ヘクタールを市が無償譲渡し、総事業費192億円の約半分を市と県が負担。学園理事長は安倍首相の友人。特区に応募したのが岡山理科大しかないーーという3点に加えて「(文科)大臣ご確認事項に対する内閣府の回答」と題した文書が存在するとされました。

「(文科)大臣ご確認事項に対する内閣府の回答」⇒「設置の時期については(中略)『最短距離で規制改革』を前提としたプロセスを踏んでいる状況であり、これは総理のご意向だと聞いている」(毎日新聞 2017/5/17「加計学園 新学部は「総理の意向」文書」)。

 従来、大学設置や学部新設に厳格な文科省は1966年以来、獣医師系の学部の新設を認めていなかったのですが、16年11月の規制緩和(国家戦略特区)で52年ぶりに新設を認めることになりました。

 そこに安倍首相の友人が理事長を務める学校法人が運営する岡山理科大が入り、他の候補もなかったので、「怪しい」という話になったわけです。

 しかし、その文書の信憑性を疑う声も出始めています。

 これに関して、前掲のVOICE記事で高橋洋一氏は、文科省文書と国家戦略会議の議事録の双方を比較し、後者のほうが信憑性が高いと述べていました。

 その理由の第一は、議事録は文科省と内閣の双方がチェックしているのに対して、文科省文書は他省庁のチェックが働いていないこと、また、議事録が先に書かれたので、文科省文書はそれを受けて内容が改ざんされる可能性があることを挙げています。

 さらに、高橋氏は、「国家戦略特区ワーキンググループ ヒアリング(議事要旨)2016/9/16」では、規制改革を推進する委員側の勝利で論争が終わり、その1年前の閣議で決まった需給見通しの挙証責任を文科省を果たしていない。政策論としては、わざわざ総理の意向を利かせるまでもないレベルの決着がついていると指摘しています。

 前掲議事要旨では獣医の需給見通しや規制の正当性について、文科省の浅野課長は十分に答えられていません。

  • 本間委員:「獣医師の試験を受けようか、受けないで別のところの職場に行こうか等々は、まさにそういうことのマーケットを踏まえて受験生が決める話であって、そこは定員管で縛る話ではない」
  • 八田座長:「どんな新しい分野も既得権を持った大学の中だけで、やっていきましょうということはあり得ない。新しい工夫をしたところが伸び、旧態依然のところが退出していくのが基本だ」「獣医師が新たに必要な分野における研究者の需要を計測すべきだと思います。外国だって恐らく伸びているでしょうから、日本だってこういうニーズは増えているのを計測可能でしょう」
  • 浅野課長:「ただ、獣医学部を出た卒業生は、獣医師国家試験の受験資格が与えられますので、当然そこの需給の問題というのはかかわってくる」
  • 八田座長: 「能力があるかどうかを検査すべきで、そこで仮に数が多過ぎて競争によってだめな獣医師が退出して、優秀な獣医師に置きかえられるのは大いに歓迎するべきことです」「例えば日本はバイオに関する研究者はすごく不足しています。医者が制限しているため不足しているので、結局、理学部の出身の人がバイオ研究を支えているわけですけれども、獣医からも来てほしいわけです。日本のバイオの研究の根底がそういう、医学部や獣医学部の既得権を持った人による供給制限で押さえられているわけです。文科省はそんなところを見るべきでない」

  規制改革の専門家である八田達夫座長の厳しい追及に応えらず、文科省側が劣勢だったことが分かります。この体たらくなので、規制改革を推進する側は、わざわざ「総理の意向」を持ち出す必要もなかったという見方が出てくるわけです。

森友・加計問題で誰が得をしたのか?

 どちらも出処があやしい問題ですが、結局、誰が得をしたのでしょうか。

 やや陰謀論風になってしまいますが、一番、得をした人物が発信源である可能性が疑われるのは世の常です。

 得をする可能性がある人物は、まず、「安倍一強」を崩したい野党関係者。その次は、自民内で安倍氏に対抗する石破氏等が代表ですが、筆者はそれだけではないと考えます。

 以下は仮の想定ですが、安倍退陣となれば、結局、次の消費税増税延期が難しくなるので、安倍政権崩壊は財務省にとっても悪い話ではないのです。さらに、財務省とご縁が深い麻生副総理も安倍氏がいなくなれば、再登板のチャンスが巡ってくる。

 これは仮説ですが、政界は魑魅魍魎としているので、何があっても不思議ではありません。

 本当の問題の出元はどこにあったのかが気になるところです。 

森友・加計問題から分かること:学園建設の大変さ

 結局、「森友学園」問題は用地の払い下げ、「加計学園」問題は学部新設が問題になりました。

 この背景に「学校/学部の新設が難しい」という問題があることは見落とせません。

 まず、設置認可を試みる前に、お金と土地、建物をそろえなければなりません。

 その後、文科省が大学設置認可を諮問機関にその是非を諮るわけですが、この際には、学部や学科の名前、個々のカリキュラムの内容、担当教員、募集人数等を細かく審査します。

 看板倒れになっていないか。学科相応のカリキュラムか。カリキュラムを担う教員の資格は十分か。募集人員や採用計画は適切かーーこんなことが問われます。

 諮問機関のメンバーは、既存大学の要職者などが多いので、経済学的にはあまり望ましいメンバーが揃っているとは言えません。なぜかというと、すでに市場にいる供給者が、新しい供給者の参入の審査にかかわる構図になってしまうからです。

 そして、文科省の裁量に基づく判断という、新規参入者から見ればよくわからぬ難敵をかいくぐり、何とか設置認可にたどりつかなければいけません。資金、設備、人員、ソフトを揃えても、認可が下りないと「大学」とは認められないので、それまでの莫大な労力が水の泡になりかねないのです。

 こうした経緯を見ると、大学や学部の新設にあたり、有力政治家や大臣、首相の口利きが得られないかどうかーーという誘惑が出てくることは、さほど不思議ではありません。

 その意味では、森友学園問題も加計学園問題も、起きるべくして起きた問題だと言えそうです。

 根本原因を解決するためにも、やはり、規制改革が必要なのではないでしょうか。