トランプ政権と日本・アジア 2017

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二重国籍問題 蓮舫代表が戸籍謄本の一部を公開?

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司法行政官庁が建ち並ぶ霞ヶ関。警察庁(左)、法務省旧庁舎(手前)、警視庁(右)※WIKI画像

  民進党の蓮舫代表は、7月11日に、自身の「二重国籍」問題をめぐり、日本国籍を選択したことを証明するため「戸籍謄本をいつでも公開する用意がある」と述べました。

 これは東京都議選の敗因を検証するための国会議員会議での発言です。

 この会議では、党勢を回復するためには「二重国籍問題が最大の障害だ」(柚木道義衆院議員)等と説明が不十分であることへの批判が噴出。家族のプライバシーを理由に謄本の公開を拒んできた蓮舫代表は、続投のために、この問題にケジメをつけることを決めました。

 その後、13日に記者会見し、18日に台湾籍離脱を証明する公的資料を発表するとも述べています。

 筆者は必ずしも、これだけが敗因だとは思いませんが、民進党の会議では様々な批判が噴出したようなので、今回は、この問題について考えてみます。

蓮舫代表の「二重国籍問題」を巡って賛否両論が噴出

 産経ニュース(2017/7/12)は民主党内で以下のような意見が噴出したことが報じられています(民進・都議選総括会議(非公開)の主な発言「蓮舫代表は都議選の得票率が低かったところから衆院選に」「党執行部刷新を」)

  • 「旧民主党政権時の幹部は表に出ないことも必要だ。蓮舫代表は次期衆院選で、都議選の得票率が最も低かった選挙区から出馬すべきだ」(篠原孝氏)
  • 「党執行部の顔ぶれを刷新すべきだ。『民共連携』は共産党を利するだけなので、民進党のメリットを第一に見直すべきだ」(階猛氏)
  • 「他の地方選への配慮が必要だ。大都市圏以外からの党勢回復を目指すべきだ」(小山展弘氏)
  • 「都議選で当選した公認5候補は地力があっただけだ。『解党的出直し』は、若手議員の野田佳彦幹事長への申し入れ(執行部への若手起用)などを一例にしてほしい」(高井崇志氏)
  • 「選挙は結果責任を負うべきだ。離党届を準備する議員がいることも考えてほしい」(松木謙氏)
  • 「『解党的出直し』は、世間の期待を良い方向に裏切るべきだ」(田嶋要氏)
  • 「小池百合子都知事が率いた『都民ファーストの会』の国政進出とどう向き合うかを考えなければならない。蓮舫氏の『二重国籍』問題は党最大の障害だ」(柚木道義氏)
  • 「『反自民』の受け皿作り次第では、流れを呼び込めるチャンスはある」(玄葉光一郎氏)

 蓮舫氏は7月25日に党両院議員総会で事実関係を説明するとも報じられていますが、この問題については、賛否両論が噴出しているようです。

 民進党では有田芳生参院議員と原口一博元総務相がツィッター上で論争していました。

  • 「戸籍を公開せよとツイッターで書いた民進党の国会議員は誰だ」
  • 「安倍晋三政権が窮地にある局面で、『敵』に塩を送っている」
  • 「公表を求めることは、社会的・歴史的な『いじめ』で間違っている。長年にわたる被差別部落問題などの闘いへの逆行だ」

 これに対しては、原口一博元総務相が反論しています。

  • 「どの国に生まれたかはどうしようもないこと。しかし公人」
  • 「蓮舫氏は説明責任を徹底するために決断したのだと思う。議員が果たさなければならないことと一般の方と混同して議論している人も見られる」

 そして、外部でも議論が炎上し、山口二郎法政大教授は「これは絶対に譲ってはならない一線だ。公的な活動、発言をするときに、自分は真正な日本人であることをいちいち挙証しなければならないなんて全体主義国家だ」と公開を求める人々を批判。

 八幡和郎教授(徳島文理大)は「生まれてから現在に至るまでの国籍の異動について正確な情報を公開せずに、政治家であることを許す国が世界中にあるとは思わない」と指摘しています。

産経ニュース 2017.7.12「蓮舫代表の戸籍公表宣言で民進党分裂のカウントダウンが始まった!? 有田芳生氏vs原口一博氏…あの山口二郎法政大教授も参戦」) 

蓮舫代表「二重国籍問題」の経緯

 忘れてしまった方のために、一応、経緯を振り返ってみます。

 蓮舫代表は、民進党代表戦で、2016年9月11日の記者会見で台湾籍を放棄したことを主張。

  ところが、民進党の党員とサポーターが郵送で投票する締切(12日必着)が過ぎた13日になって蓮舫候補は改めて記者会見。一転して台湾籍が残っていた事実を明らかにし、その是非が様々に論じられることになりました。

 蓮舫候補の二重国籍疑惑が出た時点で「二重国籍の代表は望ましくない」と考えた方の多くは他の候補者を選んだのかもしれませんが、党員とサポーターの投票後にこれが発覚したわけですから、今回の代表選では「まさか台湾籍は残ってないだろう」と考えて蓮舫候補に投票した方も一定の割合でいたはずです。

 その事実の公表が13日になったのが故意なのか、やむをえない事情があったのかは定かではありませんが、結果的に民主党は「蓮舫候補は二重国籍ではないはずだ」と期待した投票者を裏切る形で代表選を行ってしまったわけです。

 ところで、蓮舫代表が国籍の帰属を明らかにする上で、「外国籍のみを有する人が日本国籍を単独で取得する場合」は、以下の三つの手続きが必要です。

  • 日本国籍を取得
  • 日本籍と外国籍のどちらかの選択を宣言
  • 外国籍離脱+証明書を自治体に送付

 「日本国籍を選択宣言すると、戸籍に宣言日が明記される」が、蓮舫氏の場合、1の国籍取得と3の外国籍離脱は確かだが、現状では2の日本国籍選択の選択宣言の日時がいつなのかがはっきりしません。

 国籍選択の宣言が17歳取得時点なのか、それとも外国籍離脱後なのか、第三者に分かる状態にないので、これは国会議員として望ましくない状態だと言われているわけです。

二重国籍問題について、蓮舫代表が記者会見

 その後、7月13日に、この問題について蓮舫代表が記者会見を行い、台湾籍離脱を証明する資料を18日に公表することを明かしました。

 産経ニュース(2017.7.13)でその詳報が出ています(【民進・蓮舫代表会見詳報(上)】「戸籍関係の質問はここまでに…」 芝博一役員室長が記者団の問いに次々返答)

 --11日の党執行役員会などで戸籍謄本を公表する意向を示したと報じられた。真偽は

「戸籍謄本そのものとは言っていない。特にわが国では戸籍は優れて個人のプライバシーに属するものであり、これまで私も言ってきたが、積極的に、あるいは差別主義者・拝外主義者に言われてそれを公開するようなことが絶対にあってはいけない」「前例にしてはいけない」

「ただ、一私人ではなく、一公人ではなく、野党第1党の党首として、今、特に(安倍晋三)首相に対して強く説明責任を求めている立場からして、極めてレアなケースではあるが、戸籍そのものではなくて、私自身がすでに台湾の籍を有していないということが分かる部分。これをお伝えするのは準備がある」

  しかし、途中からなぜか「司会進行を務める芝博一幹事長代理が立ち上がり、次の質問を受け付ける前に『今日の戸籍関係についての発言(質問)はここまでにさせていただきたい』と発言」してしまいます。

 詳報の続き(「【民進・蓮舫代表会見詳報(下)】「私は多様性の象徴」「差別主義者の声には屈しない」)をみても、ほとんど芝氏が質疑応答をしていることが報じられています。

 詳細は元記事で見ていただきたいのですが、「質問はここまで」というのは、最近、加計学園問題の記者会見で菅官房長官が述べた台詞とよく似ています。

 政治家が自分の聞かれたくない話題を振られた時の返答は、与党・野党を問わず、同じになるようです。蓮舫代表は、菅官房長官を批判していましたが、結局、自分の問題になると、きちんと答えられなかったわけです。

 そして、前掲の蓮舫氏の発言では、同氏が台湾籍を有していないことを明かすと述べていましたが、実際は、これだけでは釈明は不十分になる可能性が高いと言えます。

 なぜかというと、前節で述べたように、「国籍選択の宣言が17歳取得時点なのか、それとも外国籍離脱後なのか、第三者に分かる状態にない」ことが問題の範囲に含まれているからです。

 要するに、「二重国籍を抜けたのが、国会議員になってから後なのか、その前なのか」ということも争点になっており、「自分が二重国籍であることを知らせぬまま、有権者に国政選挙で投票を募っていたかどうか」という観点が残っているからです。

二重国籍の問題点:国会議員や党代表になった時は、どうすべき?

 この疑惑が昨年に浮上した時、共産党の小池晃書記局長は「(台湾人の)父親が外国籍との理由で排除するのは極めて差別的だ」と述べています(産経ニュース9/12)。

 また、蓮舫代表も人権問題という論点を持ち出していますが、国会議員や野党第一党代表のようなケースでは、その判断が公益に影響を与えるので、一私人とは立場が違う面があることは否めないでしょう。

 いちおう、「二重国籍で何が悪いんだ」と感じた方もいらっしゃると思いますので、改めて、それがなぜ問題なのかを考えてみます。

 議員は日本国民の利益を代表し、議決を通して政治的な案件の是非を判断しますが、国会議員になると、その案件の中に、他国と利害関係が衝突するものが混じってきます。例えば、北方領土返還交渉をし、安倍首相とプーチン大統領が条約にサインした後、国会で条約の是非を議決した時、アメリカと日本の二重国籍の議員がいた場合、この議員の賛否の判断は、アメリカ国民の利益を代表してなされたのか、日本国民の利益を代表してなされたのか、よく分からなくなります。

 選挙では日本国民に尽くすために国会に行くと言いながら、この二重国籍の議員がアメリカのために議決の賛否を決めたりしたら、日本国民に対する背信になってしまいます。TPP等の通商・貿易問題や外交や防衛に関しては、他国と利害が一致しない案件が多いので、日本国民の利益を代表する国会議員が二重国籍ではよくないでしょう。

 また、昨年9月に、蓮舫代表は「一つの中国」論を持ち出して二重国籍と言われることに対して驚きの意を表明しました。産経ニュース(9/13)では、「一つの中国論で言ったときに、二重国籍とメディアの方が使われるのは私自身びっくりしている」という蓮舫氏の発言に関して、台湾民進党の管碧玲立法委員(国会議員)から、「『一つの中国』原則に基づき『台湾は国家ではない』と発言した。冷酷すぎる女だ」という趣旨の批判が出たことが紹介されています(13日時点で管氏は「誤解の可能性がある」として発言を取り下げている)。

   この論点について考えてみると、現時点で日本は台湾を「国家」として公式に認めていませんが、実際には台湾は国と言えるだけの実質を持っています。

 外務省の基礎データによれば、台湾の人口は2350万人。正式な外交関係のある国は世界で22カ国。名目GDPは52兆円ほど、軍人は29万人。そして、議会制民主主義が機能し、平和裏に政権交代がなされています。

 アメリカは米中国交正常化を行ったので、台湾を国家として公式に認めてはいませんが、議会で「台湾関係法」を制定し、中国が台湾への軍事行動を取った場合は軍事面を含めた一定の措置を取るとしていますので、これは半ば同盟国に近い扱いです。

 これだけの実体があるので、日中国交正常化後、「一つの中国」に準じて、台湾を公式に「国」として承認できなくなっても、日本は台湾に対して事実上、国に近い対応をしてきました。

 名目上はどうであれ、前節で述べたように、国としての「実体」があれば、二重国籍の議員の場合、外交マター(例えば通商関係や尖閣諸島関連の案件で国会議員としての議決が必要になった場合等)の判断で日本と台湾との利害相反が生じる可能性が出てくるので、「台湾が国として認められていないから、台湾と日本の二重国籍の国会議員がいてもよい」とは言えないでしょう。日本国民の側から見た時に、二重国籍の議員の場合、どちらの国に帰属意識を持って判断しているかが、よく分からないからです。

 蓮舫氏は台湾は国でないからいいんだとはっきり言ったわけではありませんが、そう取られてもおかしくないレベルの発言ではあったので、台湾から批判が出てきたのは当然だとも言えます。

二重国籍の解消:そのための手続きとは

 筆者も近年、「政治家を目指している」というアメリカ人と日本人のハーフの成人男性と知り合いになり、その人が二重国籍のままで何年も過ごしている様を見聞きしていました。

 その折に「日本は寛容なのだろうか、いい加減なのだろうか」と不思議に思ったことがあります。

 法務省のパンフレットを見ると、平成18年に生まれた子どもの100人に1人以上は重国籍者だと書かれています。109万2622人という同年の出生数から考えると、だいたい、年に1万人ぐらい重国籍者が誕生しているのです。

 政府は22歳までにどちらかの国籍を選ぶことを奨励していますが、別に国籍を一つに決めなくても罰則はないので、日本で働く日系人の中には、「そのほうが便利だから」という理由で、二重国籍を解消しない方も多いようです。

 そういう話を聞くと「けしからん」と顔をしかめる方もいます。ただ、世界では二重国籍を容認している国も多いので、なじんだ文化に基づく価値観の相違を埋めるのは、そう簡単ではありません。筆者も、結局、そのハーフの成人男性に国籍選択をする意義を理解させることはできませんでした。

 しかし、二重国籍を解消する人もいます。

 生まれた時から「日本人」でいると、「国籍」の重要性を意識することもないのですが、自分の意思で「どの国の国民になるべきか」を選ぶ方は、まじめに「日本」という国を選ぶケースが多いようです

 筆者の知人でも韓国人と日本人のハーフで生まれ、「韓国の反日教育を経験→米国留学で日韓を客観的に比較→日本に在住して帰化」という過程を辿られた方がいます。その方は、日本国籍を取る前に、神社で一生懸命にお祈りをし、人生の決断をなされたので、非常に真剣でした。この選択は、韓国から見たら「裏切者」と見なされかねないからです。

 ただ、帰化する人は真剣なのに、手続きは役所で書類を書くだけなので、非常に味気がありません。

 中国から日本に来て、日本国籍を取得された石平氏は、法務局に帰化申請に行った時、担当者から質問されたのは、「在日年数がどれくらいか、安定した収入があるのか、そして犯罪歴などの『前科』がないのか」という三点だけだったと述べています(5年以上在日が帰化の要件)。伊勢神宮に参拝してから帰化された石平氏は、「お前はどうして日本人になりたいのか」「お前は日本が好きなのか」「お前は日本の皇室や伝統文化をどう思うか」というアイデンティティに関わる内面的な質問はなかったと残念がられているわけです(「月刊日本」2008年2月後号)

 そうなるのはなぜかと言うと、日本国憲法上、思想・信条の自由に関わる問題に政府は干渉しないことになっているからです。国家権力で「〇〇と△△という思想を持つ者は日本国民と認めない」「XXという思想に賛同できなければ日本国民と認めない」というような要件は、今の日本では法律で決められていません。

 日本において、「国民の要件」が厳格ではないのは、昔のナチスのような国家至上主義にならないためだと思われます。しかし、石平氏が言われるように、帰化する人の日本に対する好感度や文化への理解などが全く問われないのも、味気ない話です。

 日本の帰化制度は事務手続きに近いので、思想的には真逆に位置する、石平氏も蓮舫氏も、等しく日本人に帰化できています。アメリカでは、合衆国に対して忠誠を誓うことが要求されますが、日本では、この種の要件がないからです。

 こうしてみると、蓮舫氏の二重国籍問題は「そもそも、日本国民とは何か」を、考え直させる重要な一例だとも言えます。