トランプ政権と日本・アジア 2017

米国株や為替に影響する時事問題を中心に政治動向をウォッチ。今さら聞けない常識も再確認。

日中首脳会談 安倍晋三VS習近平のゆくえ

f:id:minamiblog:20170709113410j:plain

(G20が行われたハンブルグ市の風景。シティホール。出所はWIKI画像)

  日中首脳会談が7月8日に行われています。

 もはや話し合っても仕方がない、という状況が続いていたのか、それとも、話し合う議題がなかったのか。

 その理由は定かではありませんが、久しく凍結していた会談がハンブルグでのG20の開催に伴って会談がなされたわけです。

 今回は日中首脳会談について考えてみます。

日中首脳会談の概要

 外務省HPには日中首脳会談(2017/7/8)の内容が掲載されています。

  出席メンバーは安倍首相と習主席のほか、野上内閣官房副長官,谷内国家安全保障局長,長谷川総理補佐官,秋葉外務審議官、楊潔篪国務委員、王毅外交部長などです。

安倍首相と習主席の発言

 双方は以下のように挨拶し、話し合いが行われました。

【習主席】

「本年は日中国交正常化45周年,来年は日中平和友好条約締結40周年である」「双方は,責任感と使命感を持って,日中関係が正しい方向に改善・発展していくよう推進していくべきである」

【安倍首相】

「共に国交正常化45周年を祝したい」「日中両国は,世界第二・第三の経済大国であり,地域や世界の安定と繁栄に貢献する大きな責任を共有している」「北朝鮮の核・ミサイル開発は新たな段階の脅威であり,喫緊の課題である,連携を強化していきたい」

 しかし、双方が合意した内容を見る限りでは、あたりさわりのない外交的言辞に終始しており、具体的な問題が解決に向かう気配は見えません。

  •  これまでの日中間の合意を基礎とし,日中関係の改善を進め,安定的な関係構築を進める。
  • 様々な国際会議の機会や将来的な二国間訪問も念頭に置き,首脳間の対話を強化する。
  • 「45周年」と「40周年」は,国民交流を進める絶好の機会だ。2020年と2022年の東京及び北京におけるオリンピック・パラリンピックの機会を活用する。
  • 金融,観光,貿易,環境・省エネ等,各分野の協力を一層深化させる。特に,日中の金融協力について,関係当局間で積極的に意思疎通を進める。
  • 「一帯一路」を含め,日中両国が,地域や世界の安定と繁栄にどのように貢献していくか議論する。
  • 日中間には様々な課題もあるが,経済は経済,民間交流は民間交流として,発展させる。
  • 日中防衛当局間の「海空連絡メカニズム」の早期運用開始に向けて共に努力する。
  • 両朝鮮半島の非核化を日中共通の目標とし,一層緊密に取り組むこと。

 日中間の現実の問題をどうするのかが見えません。とにかく、話し合ったということが大事なのでしょうか。

 筆者が気になったのは、邦人拘束に関して安倍首相が「前向きな対応」を求めたことに対して、習氏の側からの明確な反応が書かれていなかったことです。これでは日中友好も何もあったものではありません。

台湾について、日本はどう考えるべきか

 そのほか、安倍首相が「台湾に関する日本の立場は1972年の日中共同声明で表明されているとおり」だと述べていますが、この声明では以下のように書かれています。

「中華人民共和国政府は、台湾が中華人民共和国の領土の不可分の一部であることを重ねて表明する。日本国政府は、この中華人民共和国政府の立場を十分理解し、尊重し、ポツダム宣言第八項に基づく立場を堅持する」

 当時、米国は、中国は台湾を併合できる軍事力はないと見て、中国と国交を回復し、台湾と両天秤にかけながら経済交流などを深められると考えました。この72年の声明ではそれに便乗し、「右に倣え」をしたのです。

 この頃、米国側は中国がいう台湾は中国の一部だという主張を「認識」し、日本は「理解し、尊重する」としたわけです。

 しかし、現在の中国は台湾を軍事的に併合しうる戦力を持っています。45年が経ち、状況が大きく変わってきたので、当時の合意を日米が尊重し続けるべきなのかどうかは、疑問が残ります。

 72年の声明を厳守した場合、日本は、中国が台湾への野心をあらわにし、軍事的併合という暴挙に出たとしても、何も言えないからです。

日中関係悪化の主因は「力関係の変化」

 具体的な問題で国益が衝突しているので、話し合って何になるのかが見えないのが日中関係の現状のようにも見えます。

 しかし、日中関係が悪化したのは、結局は、両国の力関係の変化が原因です。

 日中が国交を回復した頃は、中国の側に日本から学び、日本の技術や経済援助を取り入れなければいけない、という事情がありました。しかし、今は世界第二位のGDPを持つ大国になったので、中国は昔ほど日本を必要としていません。

 また、日中が国交を回復した時には、日中は「ソ連」を共通の脅威としていましたが、現在、中国とロシアは友好関係にあります。

 経済面・政治面において状況が大きく変わってしまったわけです。

 今の日中関係は、中国の古典『戦国策』に出てきた「近隣の国と戦い、遠方の国と和睦を結ぶ」という考え方(「遠交近攻」)が当てはまりやすい状況になっています。

 当時、乱世の時代に中国統一を目指した秦が、遠い国と友好関係を結び,近隣の国を攻めるという外交政策を採ったのですが、この論理からいえば、日中双方は「攻め合う」対象となり、両国は米国やヨーロッパ、インド、オーストラリア等を味方につけるべく競い合うことになるわけです(国ごとに度合いの差はありますが)。

 日中両国の力関係の変化に伴い、この二か国の関係は「日中友好」ではなくそれぞれの「遠交近攻」が中心になるのは避けがたいでしょう。

 東シナ海の海底資源や尖閣諸島をめぐる日中の確執なども、こうした大きな力関係の変化を背景として生じているのではないでしょうか。

日中の国民感情の現状

 2016年には「言論NPO」と「中国国際出版集団」が日中双方に対して世論調査を行っています。

(出所:「第12回日中共同世論調査」結果 | 言論外交の挑戦 | 特定非営利活動法人 言論NPO

 この調査は8月下旬から9月初め(※中国は8月)に18歳以上の男女1000人を対照に行われました

  その結果の概要は以下の通りです。

 ★現在の日中関係を「悪い」と判断

  • 日本人:71.9%(前年同値)
  • 中国人:78.2%(前年67.2%)

 ★2016年で日中関係は「悪くなった」

  • 日本人:44.8%(前年37%)
  • 中国人:66.8%(前年48.1%)

 ★今後の日中関係の見通しは「悪くなっていく」

  • 日本人:34.3%(前年24.7%)
  • 中国人:50.4%(前年41.1%)

  そして、「日中関係の発展を妨げるもの」としては以下の項目があげられています。

 ★日本側

  • 「領土をめぐる対立」:66.6%(前年56%)
  • 「海洋資源をめぐる紛争」:35.4%(前年26.6%)
  • 「日中両国政府の間に政治的信頼関係がないこと」:23.7%(前年38.2%)
  • 「中国の歴史認識や歴史教育」:23%(前年26.3%)

 ★中国側

  • 「領土をめぐる対立」:65.3%(前年66.4%)
  • 「海洋資源をめぐる紛争」:30.9%(前年25%)
  • 「日中両国政府の間に政治的信頼関係がないこと」:26.7%(前年25.5%)
  • 「日本の歴史認識や歴史教育」:27.2%(前年31.5%)

 こうしてみると、「日中両国政府の間に政治的信頼関係がないこと」が問題だとしているのは2割程度。日中首脳会談の有無を重視する人も、数としては減ってきているのかもしれません。