トランプ政権と日本・アジア 2017

米国株や為替に影響する時事問題を中心に政治動向をウォッチ。今さら聞けない常識も再確認。

【G20】安倍首相との各国首脳会談一覧 

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(G20が行われたハンブルグ市の風景。シティホール。出所はWIKI画像)

  訪欧中の安倍首相は、5日に日本・EU首脳協議に出席後、G20ハンブルクサミット(7日~8日)に参加し、さらに、スウェーデン、フィンランド、デンマーク、エストニアを訪問する予定です。

 すでに首相は、プーチン露大統領、文在寅韓大統領と会談し、トランプ米大統領を交えた日米韓首脳会談が行われています(そのほか、日印首脳会談も行われた)。

 今回は、安倍首相の各国へのアピールと、サミットに伴って行われた首脳会談の概要を見てみます。

安倍首相の独紙への寄稿

  なお、日本のメディアにはほぼ無視されましたが、安倍首相はドイツの新聞に寄稿し、日独友好を訴えています。

 外務省HPには「ハンデルスブラット紙(ドイツ)への安倍総理寄稿」(2017年7月5日付紙面,電子版)と題した記事が公開されていました。

 そこでは、日独が価値観を共有し、ドイツ製品が信頼されていることを訴えていました。

「両国は,自由,民主主義,人権,法の支配といった基本的価値を共有することに加え,勤勉さを美徳とし,ものづくり産業の重視,技術力で世界に伸びる産業,中小企業の強さなどの特色をもつ。日本人の間には,ドイツ製品の声望が定着している。例えば,首都東京の中心部に位置し,所得層も高い港区,私の私邸のある渋谷区では,自動車の3割がドイツブランド。毎年,ハノーバー・メッセに参加し,ドイツのパートナーを探す日本の中小企業もある」

 そして、21世紀におけるアフリカの重要性や温暖化対策への協力についても言及しています。

「半世紀近く前,日本は高度成長の中で公害を招いた。しかし,国中が綺麗な空気と水を取り戻し,自然を守りたいと決意し,技術力と社会投資をフルに活用して公害を克服してきた。この技術と投資は,その後の日本の新たな成長エンジンともなった」

「日本は,この技術力を,地球を守るために,未来の世代のために発揮したい。日本自身,もともと他の国より温室効果ガス排出量が低いが,これを2030年度にはさらに26%削減するとコミットした」

 CO2削減幅が大きすぎるので、筆者は経済成長に支障が出ないかどうかが心配です。

 そのほか、地熱発電用タービンを用いた電力供給(ケニア)や森林資源管理や温室効果ガス排出システム管理をする人材育成支援(パプアニューギニア)等の例を挙げ、途上国のインフラ支援を進める意向を明かしています。

 アフリカにおいては「強靭な保健システムの促進」を進めるようです。「今や,アフリカでは,製造業が現われ,「カイゼン」という日本語が広まりつつある」として、アフリカへの支援の拡大を表明しています。

 そして、ドイツ人に「もっと日本を訪問して頂きたい」(訪日外国人2400万人のうちドイツ人は18万人)と呼びかけました。

 確かに、ドイツ人やドイツ文化が好きな人は意外といるのに、訪日するドイツ人はあまりいないのかもしれません。その意味では、ドイツへのPRはもっと拡大の余地がありそうです。

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(ハンブルクの夜景。出所はWIKI画像)

日米韓首脳会談

 外務省HPでは、7月6日の日米韓首脳会談の中身が紹介されています。

  参加者は各国のトップ3名と、野上官房副長官、ティラーソン米国務長官他、康京和外交部長官などです。

 会談のポイントを見てみます。

  • 国際社会の最優先事項は北朝鮮問題(解決に向けた各国の連携)
  • 安倍首相は「北朝鮮とは対話のための対話は意味がなく,北朝鮮に真剣に対話させるために今は圧力が必要であり,安保理においても厳しい措置を含む新たな安保理決議の採択に向けて日米韓で引き続き緊密に連携していくべきと説明した」
  • 首相は「米国が決定した中国の団体等に対する制裁を評価する」とした。

 しかし、文大統領は、条件が揃うなら「いつでもどこでも北朝鮮の金正恩・朝鮮労働党委員長に会う用意がある」とも述べており、その「条件」は明かされていないので、本当は、安倍首相のスタンスとは合わないのかもしれません。その意味では、この会合には一抹の不安が残ります。

 先日は中露首脳会談が行われ、北朝鮮の核ミサイル実験の放棄と同時に米韓軍事演習の停止を呼びかけることで合意していましたが、今の「日米韓」で北朝鮮問題に際して中露に対峙できるのかどうかは怪しいとも言えます。

 日米韓共同声明を見ると「米国,日本及び韓国は決して核武装した北朝鮮を受け入れない。トランプ大統領,文大統領,安倍総理は,北朝鮮に対し,不安定化をもたらし,挑発的で,事態をエスカレートさせる行動には深刻な代償を伴うことを示すため,追加的な制裁を含む新たな国連安保理決議の早期採択を強く求めていくことを決定した」「トランプ大統領は,あらゆる種類の通常及び核戦力により,韓国及び日本を防衛することへの米国の揺るぎないコミットメントを再確認した」等と書かれています。この文章を読む限りでは、結局、核兵器を持つ米国が意思決定者であり、あとの2カ国は追随者でしかないように見えます。

日韓首脳会談

 その後、7日には日韓首脳会談も行われました。 

  参加者は日韓首脳のほか、野上官房副長官,長谷川総理補佐官,谷内国家安全保障局長,金東兗(キム・ドンヨン)経済副総理兼企画財政部長官,康京和(カン・ギョンファ)外交部長官などです。

 両国の関係強化が呼びかけられたほか、北朝鮮問題についての安全保障協力、「隣国であるがゆえに難しい問題がある」両国関係の基盤である日韓合意(慰安婦合意のこと)の重要性等が指摘されています。

 これに関しては、日経電子版(「日韓首脳会談の要旨」2017/7/8)で諸々の会話の抜粋が紹介されていました。

「首相 今は最大限の圧力が必要で対話のときではない。北朝鮮の核・ミサイル開発を止めるには外貨獲得源の遮断が必要だ。

 両首脳 日韓、日米韓で緊密に連携する。

 大統領 朝鮮半島平和統一の要件を醸成するための主導的な役割と南北対話再開は必要だ」

  やはり、首相と大統領の間で立場が一致していません。これで連携したと言えるのでしょうか。

 首相 隣国であるがゆえに難しい問題を抱えていることも事実だが、全体の日韓関係に悪影響を及ぼさないよう適切にマネージすることが共通の利益だ。日韓合意は未来志向の日韓関係を築くための欠くべからざる基盤だ。

 大統領 我が国民の大多数が情緒的に受け入れられない現実を認め、両国が共同で努力し賢く解決していく。両国の他の関係発展に障害になってはならない。

 「情緒的に受け入れられない」というのは、珍しい発言です。歴史認識は「事実関係」をもとに把握すべきなのに、そこに「国民情緒」を持ち出してくるとは・・・。

 ひょっとして、韓国国民がもっと大人になってくれたら、問題は終わるってことなんでしょうか。 

日印首脳会談

 それ以外にも、日印首脳会談と日露首脳会談が行われています。

 「日印首脳会談」(2017/7/7)では、以下の合意がなされました。

  • 「日印米海上共同訓練」(マラバール)を「日印防衛協力,日印米協力の象徴」として推し進めていく
  • 安倍総理は日印原子力協定の早期発効及び原子力協力の具体化を目指す
  • ムンバイ・アーメダバード間の高速鉄道計画を進める
  • 北朝鮮問題での協力 

日露首脳会談

  そして、プーチン露大統領との会談に関しては、日経電子版(7/8)で規定の協力路線が進められることが報じられています(「共同経済活動の推進で一致、日ロ首脳会談」)

 首相は「(北方領土で日ロ両政府が取り組む)共同経済活動や、元島民の自由な墓参への協力を推進し信頼関係をさらに醸成していきたい」と呼びかけた。8月下旬にモスクワで外務次官級の協議を開き、共同経済活動の事業の絞り込みを進める方針で一致した。

 ・・・

 両首脳は共同経済活動に関する日本の官民調査団が今年6月に北方領土を訪れ、漁業や観光施設などを視察したことに関して「有意義で今後の検討加速につながる」との認識で一致した。

  内容としては、日印・日露の双方に関しては、既定路線通りと言えそうです。  

日中首脳会談

 その後、日中首脳会談が7月8日に行われています。

 もはや話し合っても仕方がない、という状況が続いていたのか、それとも、話し合う議題がなかったのか。

 その理由は定かではありませんが、久しく凍結していた会談がハンブルグでのG20の開催に伴って会談がなされたわけです。

 外務省HPには日中首脳会談(2017/7/8)の内容が掲載されていました。

  出席メンバーは安倍首相と習主席のほか、野上内閣官房副長官,谷内国家安全保障局長,長谷川総理補佐官,秋葉外務審議官、楊潔篪国務委員、王毅外交部長などです。

安倍首相と習主席の発言

 双方は以下のように挨拶し、話し合いが行われました。

【習主席】

「本年は日中国交正常化45周年,来年は日中平和友好条約締結40周年である」「双方は,責任感と使命感を持って,日中関係が正しい方向に改善・発展していくよう推進していくべきである」

【安倍首相】

「共に国交正常化45周年を祝したい」「日中両国は,世界第二・第三の経済大国であり,地域や世界の安定と繁栄に貢献する大きな責任を共有している」「北朝鮮の核・ミサイル開発は新たな段階の脅威であり,喫緊の課題である,連携を強化していきたい」

 しかし、双方が合意した内容を見る限りでは、あたりさわりのない外交的言辞に終始しており、具体的な問題が解決に向かう気配は見えません。

  •  これまでの日中間の合意を基礎とし,日中関係の改善を進め,安定的な関係構築を進める。
  • 様々な国際会議の機会や将来的な二国間訪問も念頭に置き,首脳間の対話を強化する。
  • 「45周年」と「40周年」は,国民交流を進める絶好の機会だ。2020年と2022年の東京及び北京におけるオリンピック・パラリンピックの機会を活用する。
  • 金融,観光,貿易,環境・省エネ等,各分野の協力を一層深化させる。特に,日中の金融協力について,関係当局間で積極的に意思疎通を進める。
  • 「一帯一路」を含め,日中両国が,地域や世界の安定と繁栄にどのように貢献していくか議論する。
  • 日中間には様々な課題もあるが,経済は経済,民間交流は民間交流として,発展させる。
  • 日中防衛当局間の「海空連絡メカニズム」の早期運用開始に向けて共に努力する。
  • 両朝鮮半島の非核化を日中共通の目標とし,一層緊密に取り組むこと。

 日中間の現実の問題をどうするのかが見えません。とにかく、話し合ったということが大事なのでしょうか。

 筆者が気になったのは、邦人拘束に関して安倍首相が「前向きな対応」を求めたことに対して、習氏の側からの明確な反応が書かれていなかったことです。これでは日中友好も何もあったものではありません。

台湾について、日本はどう考えるべきか

 そのほか、安倍首相が「台湾に関する日本の立場は1972年の日中共同声明で表明されているとおり」だと述べていますが、この声明では以下のように書かれています。

「中華人民共和国政府は、台湾が中華人民共和国の領土の不可分の一部であることを重ねて表明する。日本国政府は、この中華人民共和国政府の立場を十分理解し、尊重し、ポツダム宣言第八項に基づく立場を堅持する」

 当時、米国は、中国は台湾を併合できる軍事力はないと見て、中国と国交を回復し、台湾と両天秤にかけながら経済交流などを深められると考えました。この72年の声明ではそれに便乗し、「右に倣え」をしたのです。

 この頃、米国側は中国がいう台湾は中国の一部だという主張を「認識」し、日本は「理解し、尊重する」としたわけです。

 しかし、現在の中国は台湾を軍事的に併合しうる戦力を持っています。45年が経ち、状況が大きく変わってきたので、当時の合意を日米が尊重し続けるべきなのかどうかは、疑問が残ります。

 72年の声明を厳守した場合、日本は、中国が台湾への野心をあらわにし、軍事的併合という暴挙に出たとしても、何も言えないからです。

日中関係悪化の主因は「力関係の変化」

 具体的な問題で国益が衝突しているので、話し合って何になるのかが見えないのが日中関係の現状のようにも見えます。

 しかし、日中関係が悪化したのは、結局は、両国の力関係の変化が原因です。

 日中が国交を回復した頃は、中国の側に日本から学び、日本の技術や経済援助を取り入れなければいけない、という事情がありました。しかし、今は世界第二位のGDPを持つ大国になったので、中国は昔ほど日本を必要としていません。

 また、日中が国交を回復した時には、日中は「ソ連」を共通の脅威としていましたが、現在、中国とロシアは友好関係にあります。

 経済面・政治面において状況が大きく変わってしまったわけです。

 今の日中関係は、中国の古典『戦国策』に出てきた「近隣の国と戦い、遠方の国と和睦を結ぶ」という考え方(「遠交近攻」)が当てはまりやすい状況になっています。

 当時、乱世の時代に中国統一を目指した秦が、遠い国と友好関係を結び,近隣の国を攻めるという外交政策を採ったのですが、この論理からいえば、日中双方は「攻め合う」対象となり、両国は米国やヨーロッパ、インド、オーストラリア等を味方につけるべく競い合うことになるわけです(国ごとに度合いの差はありますが)。

 日中両国の力関係の変化に伴い、この二か国の関係は「日中友好」ではなくそれぞれの「遠交近攻」が中心になるのは避けがたいでしょう。

 東シナ海の海底資源や尖閣諸島をめぐる日中の確執なども、こうした大きな力関係の変化を背景として生じているのではないでしょうか。