トランプ政権と日本・アジア 2017

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AIIB(アジア投資銀行)にムーディーズがAaa格付け その内実は・・・

f:id:minamiblog:20170630071218p:plain(出所はWIKI画像。筆者トリミング)

  中国が世界に宣伝するアジアインフラ投資銀行(AIIB)がアメリカの格付け会社ムーディーズ・インベスターズ・サービスからアジア開発銀行(ADB)と同格の最上位の格付け(Aaa)をもらいました。

 日経電子版(2017/6/29)では、ムーディーズがAIIBについて「ガバナンス(企業統治)の強固な枠組み、妥当な自己資本、流動性の高さを考慮した」と述べたことを報じています(「アジア投資銀、最高格付け 米ムーディーズ」)。

 その理由は以下の通りです。

  • AIIBの自己資本が1000億ドル(約11兆円)なので「同じ格付けの他の開発金融機関よりも厚い」
  • 6月末の投融資は約25億ドルと資本の2.5%にとどまり、大半が低リスクの世銀などとの協調融資である
  • 手元資金の管理も「他の開発金融と同等かそれより厳格」である

 日経電子版は、国際大手からの格付けを得て、AIIBは「海外市場で債券を発行しやすくなる。ドルなど人民元以外の資金も調達が容易になる」というメリットを得、「Aaa」を背景に低金利での債券発行、低金利融資が可能になることを指摘しています。

 ただ、「融資審査やリスク管理が甘くなったり、中国など主要出資国からの支援が弱まったりした場合」には格下げがされるとも付記していました。

AIIBは信用できるのか?

 ムーディーズは5月に中国の信用格付けを「Aa3」から「A1」に引き下げましたが、同国は後押しするAIIBの格付けは最上位の格付け(Aaa)でよい、という謎の判断をしています。

「Aaa」が出ても、根本的な疑問がなくなるわけではありません。

 AIIBには、すでにG7のうち、日米以外の五カ国が参加しています。

 しかし、外交上の問題から、我が国はずっと参加しない方針でした。

AIIBの問題点1:ガバナンス

 例えば、麻生財務相は6月16日に、AIIBについて、理事が北京にある本部に常駐していないことから、「基本的にガバナンスはできないということだ」と諭評し、融資への審査能力に疑問を呈しています。

 産経BIZ(2017.6.29) も、ムーディーズが同じ格付けをしたとしても、AIIBとADBでは大きな差があると論評していました(【中国主導 AIIBの研究】(上)「わざわざ中国で働きたくない」 解消されぬ人材不足、ADBとの差歴然)。

「AIIBの初代総裁は中国の元財政次官でADB副総裁を歴任した金立群氏。ただ、拠点は北京市内の本部のみで職員数はわずか100人ほど(※ADBは26カ国で3100人)。日本なら地銀や信金にも劣るマンパワーだ。融資審査など専門業務は外部にアウトソーシング(委託)する。『21世紀型のガバナンスだ』と金氏は今月17日に済州島で行った記者会見で胸を張った」

(AIIBは)「ヘッドハンティングを続けているが、『大気汚染が激しい上に、わざわざ規制の厳しい中国で働きたくないと考える金融マンが多く、AIIB北京本部は慢性的な人材不足なのが実情だ』(エコノミスト)といわれる」

「AIIB理事ら幹部は総裁以外、北京駐在ではないため、案件審査や承認の理事会は通常、テレビ会議と承認サインをメールなどでもらう“持ち回り”会議が中心。途上国支援でどこまで、国際金融機関としてガバナンスが働き、恣意的な決定がなされない透明性が確保できるかどうか。麻生太郎財務相がなおAIIB参加に慎重姿勢をみせる重大な理由がここにある」

 なかなか”魅力的”な情報が揃っています。

 アウトソーシングというのは、本業ではない付随的な業務を外注することですが、AIIBでは、融資審査という銀行の本業がアウトソーシングされてしまうようなのです。

 おまけに顧問役は鳩山由紀夫元首相なので、その宣伝効果は”抜群”です。

AIIBの問題点2:自己資本

 AIIBの信用に関しては、諸々の識者が疑義を呈してきました。

 例えば、AIIBが本格稼働する前に、産経特別記者の田村秀男氏は 『人民元の正体――中国主導「アジアインフラ投資銀行」の行末』という著書を発刊し、その危険性を指摘しています。

  • AIIBは習近平主席のもとで、中国共産党の指令下にある
  • 当初、中国は資本金の50%出資を表明。出資国が増えた後も40%以上のシェアを維持する構え
  • 総裁は元政府高官で、本部があるのは北京。主要言語は中国語(※国際銀行としてふさわしくない)
  • アジアの独裁国が融資先になる可能性がある
  • 英独仏の出資に対しては「西側諸国のルールが最適とは限らない」(楼継偉財政相)との返答

 ムーディーズが高評価のAIIBの自己資本に関してが、田村秀男氏は産経BIZ(2017.6.17)にて厳しい評価を下しています(「AIIBはインフラ模倣銀行だ 見切りつけた習政権、人民元を押し付け」)。

「ドル建て金融のAIIBの信用の源泉は元締・中国の外貨準備で、残高は3兆ドル余りだが、帳簿上だけだ。海外からの対中投資や融資は中国にとって負債だが、当局はその外貨を強制的に買い上げて、貿易黒字分と合わせて外準に組み込む。外貨の大半が民間の手元にある日本など先進国とは仕組みが違う」

 最近は外貨準備が減少していることを問題視しています。

外準は3年前をピークに急減している。対照的に負債は急増し、昨年末には外準の1・5倍以上だ。外国の投資家や企業が中国から資金を一斉に引き揚げると、外準は底をつくだろう。

AIIB「バスに乗り遅れるな」論の危険性

 日本では、よく「バスに乗り遅れるな」という主張が出てきます。

 戦前で言えば、日独伊三国同盟が典型例ですが、これは、諸外国がAIIBに加入しているから、日本もAIIBに参加すべきだという主張とよく似ています。

 日独伊三国同盟に関しては、結局、フタをあけてみたらひどい内容で、英米を中心とした連合国に勝てるような代物ではなかったのですが、加入前は「バスに乗り遅れるな」という声が強かったのです。

 今回、ムーディーズの格付けでAIIBには「お化粧」がなされました。しかし、その内実は変わっていないことに注意すべきでしょう。