トランプ政権と日本・アジア 2017

米国株や為替に影響する時事問題を中心に政治動向をウォッチ。今さら聞けない常識も再確認。

米最高裁 入国禁止令の一部執行を容認 トランプ勝利か

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(米最高裁。出所はWIKI画像)

 イスラム圏の6カ国(イラン、リビア、ソマリア、スーダン、シリア、イエメン)からの入国を禁じる大統領令に関して、連邦最高裁は26日に、当面の判断として、その執行を条件付きで認めました。

 バージニア州等、幾つかの高裁等が出した差し止め命令は見直され、10月には最終判断のための審問が開かれます。

 最高裁は前掲6カ国の国民でも、親戚がいたり、米大学への入学許可を受けたり、米企業に雇われたりした場合等、米国との「真正な関係」がある場合は入国禁止令の対象から外すことにしました。「真正な関係」がない場合は国家安全保障のために必要な政府の切実な議論のために有利な判断を下すべきだともつけ加えています。

  トランプ大統領は最高裁判断を喜び、「明白な勝利だ」と宣言しています。

 今回は、1月から大騒ぎが続いているイスラム圏の6か国(※元は7か国。イラクが除外された)からの入国を禁じる大統領令について、今日までの過程を追ってみます。

トランプ大統領の声明(6/26)

今日の満場一致の最高裁判決は、国家安全保障にとっての明白な勝利だ。

Today's unanimous Supreme Court decision is a clear victory for our national security.

 テロの可能性のある6か国と難民に向けた旅行中断の措置を許可した。その執行を大幅に効果的にするために。

It allows the travel suspension for the six terror-prone countries and the refugee suspension to become largely effective.

大統領として、私は我が国に敵意を持つ者の入国は容認できない。

As President, I cannot allow people into our country who want to do us harm.

私は米国と米国民を愛し、勤勉で生産的な人を欲している。

I want people who can love the United States and all of its citizens, and who will be hardworking and productive.

軍司令官としての私の第一の任務は、米国民の安全を保障することだ。

My number one responsibility as Commander in Chief is to keep the American people safe.

今日の判決は、私が国の故郷を守るために大事なツールを使用することを可能にする。

Today's ruling allows me to use an important tool for protecting our Nation's homeland.

私は最高裁判所の判決が9-0だったことを特に喜んでいる。

I am also particularly gratified that the Supreme Court’s decision was 9-0.

最高裁判決までの経緯

  米国内を二分するこの大問題の顛末を整理してみます。

最初の大統領令発令後の混乱

 1月27日にトランプ大統領が七か国(イラク、イラン、シリア、イエメン、ソマリア、スーダン、リビア)からの渡航者に90日間のアメリカ入国を停止し、米国内で大混乱が生じました。

 2月3日にシアトル連邦地裁(ロバート判事)は差し止めを命じ、これが全米に適用されました。大統領はツィッターで反論し、政府は高裁へ提訴。高裁は両者にそれぞれの所論の提出を求めました。

 この大統領令に対しては、アマゾンやアップル、アルファベット(グーグルの親会社)、フェイスブック、マイクロソフト、イーベイ、インテル、ウーバー・テクノロジーズ等を含む約100社が反対し、各社が署名した「法廷助言書」を提出することで抗議しました。

 2月4日に控訴裁は地裁命令の効力の即時停止を求めた司法省の主張を退け、双方の所見提出を求め、トランプ氏がツィッターで地裁判事を批判しました。

  • 「1人の判事がわが国をこんな危機に追いやるとは信じられない。何か起きたら彼と裁判制度のせいだ」
  • 「『いわゆる判事』の意見はばかげている。覆されるだろう」
  • 「人々は国境の安全と究極の入国審査を望んでいる」

 当時の時事通信の記事(「トランプ氏、裁判所との対決姿勢鮮明=入国禁止差し止めに反発-判事個人攻撃も」2/6)は、判事への個人攻撃を行うトランプ大統領を問題視する人々の見方を伝えています。

判事個人を攻撃するトランプ氏の姿勢には、野党だけでなく与党・共和党からも懸念の声が出ている。共和党のマコネル上院院内総務は5日のCNNテレビで「誰しも裁判所(の判断)にがっかりすることがたまにあるが、判事をやり玉に挙げるのは、やめた方がいい」と苦言を呈した。

 この大統領令の顛末で、アメリカが三権分立の国であることが明らかになりました。日本で言えば高等裁判所に相当するカリフォルニア州の連邦控訴裁判所は大統領府からの差止の効力停止の申立てを却下し、双方に自らの主張を提出することを求めました。

 司法省は、大統領が国家の安全保障に責任を負っていることや大統領令の一時差止めを認めた地裁命令は、地裁の判断領域を超えていることを指摘し、ワシントン州の側は大統領令の復活が州内に取り返しのつかない混乱をもたらすと主張しました。

 その後、控訴審は大統領令の一時差し止めを継続したので、政権側が上訴し、最高裁判所にまで戦いがもつれこむ可能性が高まってきています。

  トランプ氏は裁判官への個人攻撃を行いましたが、AP通信は、こうした行為には過去の大統領の言動に前例がないとも述べています。

「大統領による今回の発言は今後さらなる物議を醸すとみられている。トーマス・ジェファーソン第3代大統領からバラク・オバマ前大統領まで米国の歴代大統領は裁判所による判決を批判したことはあっても、判事に対する個人的攻撃はほとんど前代未聞だ」

(2月5日「トランプ大統領、入国禁止差し止めた判事に暴言 司法の独立に暗雲」)

 移民問題を巡って、アメリカが二つに分裂してしまいました。

 その後、トランプ大統領は2月21日に、国土安全保障省に向けて、前掲の大統領令の履行のために捜査機関向けの覚書を出しました。

 オバマ政権では、国家安全保障や治安への脅威となる重大な罪を冒した不法移民を本国に強制送還しましたが、今後はあらゆる犯罪に関わった者が対象となるので、交通違反などの経済で訴追された不法移民も強制送還の対象に入ります。

 また、強制送還が可能な不法移民の滞在期間に関しても、オバマ政権時代の「滞在2年以内」から「14日以内」にまで短縮されました。

 取締りに携わる職員が10000人、国境警備員が5000人ほど増強されることも決まっています。メキシコ国内から越境した不法移民を、国籍を問わず、メキシコに送り返すための体制が整えられています。

 幼少時に米国入りした不法移民に与えた就労許可は継続されるなどの配慮も加えていますが、米国内には1100万人の不法移民がいます。トランプ氏は当選後、強制送還の対象を犯歴のある200~300万人の規模に縮小しました。

 2月28日の議会演説でトランプ氏は移民法制の改革に言及し、カナダやオーストラリア等の多くの国々が能力ベースの移民制度をつくっていることを指摘しました。「自分の生活を養える人々に対して国の門戸を開く」ことを原則としたいと訴えたのです。その後、米メディアで不法移民に対しても就労を合法化し、納税を義務化する道筋を示す意向を明かしたことが各紙で報じられています。

新大統領令発令 

 その後、トランプ大統領は3月6日に新しい大統領令に署名しました。

(以下、ハンフィントンポスト記事「トランプ大統領、入国禁止に関する新たな大統領令に署名 何が変わったのか?」2017/3/7)

  • 入国禁止の対象国リストからイラクを除外
  • 査証(ビザ)非保有者のみに適用。有効または数次用査証(有効期間内であれば何度でも出入国が可能なビザ)を持つ者は、新大統領令の対象から除外。
  • 混乱を回避するため、3月16日まで実施しない
  • 「宗教的迫害を受けている宗教的少数派」(主にキリスト教徒)の例外規定を削除

 この大統領令では「厳格な審査」と「イスラム過激派のテロ」の根絶に関しては明確に触れず、表現が緩和されました。前回の大統領令からのままの内容は以下の通りです。

  • 難民の受け入れを120日間停止
  • 一部の国からの市民は90日間入国一時禁止
  • 2017年会計年度の難民受け入れの上限は、11万人から5万人に激減

  難民受け入れプログラムは120日間停止となるため、新大統領令でもイラク難民がすぐにアメリカに受け入れられるわけではありません。米軍で働くイラク人は特別移民ビザというカテゴリで入国可能になりました。

 永住権やビザ所有者が入国禁止の対象から外されたことやシリア難民の無期限入国禁止が解除されたのも重要なポイントです。

 その後、6月12日には、サンフランシスコの連邦控訴裁は修正版の前掲大統領について、執行差し止めの一審判決を支持しました。ハワイ州を原告とした訴えで連邦第9巡回区の控訴裁判所は大統領令が既存の移民法に抵触するとの判断を示したのです。

 むろん、これに対してトランプ大統領やセッションズ司法長官は反論しました。そして、6月27日には、一転して米最高裁が入国禁止令の一部施行認め、大統領が「明白な勝利」を宣言したわけです。

トランプ氏が出した大統領令の原文を見ると・・・

 最初の入国禁止の大統領令の冒頭部分を抄訳で紹介してみます。この箇所には、トランプ政権の考え方が端的に出ているからです。

(出所:EXECUTIVE ORDER: PROTECTING THE NATION FROM FOREIGN TERRORIST ENTRY INTO THE UNITED STATES | whitehouse.gov

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大統領令:外国のテロリストのアメリカ入国を禁じ、国家を防衛する

EXECUTIVE ORDER: PROTECTING THE NATION FROM FOREIGN TERRORIST ENTRY INTO THE UNITED STATES

(略)

1節:目的

Section 1. Purpose.

ビザが発行される過程は、テロリストと個人とのつながりを認識し、アメリカへの入国を止めるために死活的に重要だ。

The visa-issuance process plays a crucial role in detecting individuals with terrorist ties and stopping them from entering the United States.

恐らく、2011年9月11日テロ以上のアメリカへのテロリストの攻撃は存在しない。アメリカ合衆国の政策は領事館官吏に約3000人のアメリカ人の殺害に関わった19か国のビザの申請を精査させ、妨げる。

Perhaps in no instance was that more apparent than the terrorist attacks of September 11, 2001, when State Department policy prevented consular officers from properly scrutinizing the visa applications of several of the 19 foreign nationals who went on to murder nearly 3,000 Americans.

テロリストとみられる人物がビザを取得することを認知するために、9.11テロ後、ビザ申請の過程は審査され、修正された。しかし、これらの手段はテロ支援国家からのアメリカへの攻撃を止めることができない。

And while the visa-issuance process was reviewed and amended after the September 11 attacks to better detect would-be terrorists from receiving visas, these measures did not stop attacks by foreign nationals who were admitted to the United States.

9.11テロ以降、数多く、外国に生まれた個人がテロリズムに関わる罪で有罪とされた。彼らは観光客、学生、雇用ビザや難民のためのアメリカへの再定住プログラムで入国している。

Numerous foreign-born individuals have been convicted or implicated in terrorism-related crimes since September 11, 2001, including foreign nationals who entered the United States after receiving visitor, student, or employment visas, or who entered through the United States refugee resettlement program.

戦争、闘争、天災、社会不安によって国内の状況が悪化し、難民入国の手段等を用いて多くのテロリストがアメリカに入国した。

Deteriorating conditions in certain countries due to war, strife, disaster, and civil unrest increase the likelihood that terrorists will use any means possible to enter the United States.

アメリカは入国のためのビザの発行と確認において用心深くなければならない。これはテロリズムとつながりをもたないアメリカ人と他の人々の入国を妨げるためではない。

The United States must be vigilant during the visa-issuance process to ensure that those approved for admission do not intend to harm Americans and that they have no ties to terrorism.

アメリカ国民を守るために、敵意によってではなく、定められた原理に基づいて、合衆国はこれらの手続きを取らなければならない。

In order to protect Americans, the United States must ensure that those admitted to this country do not bear hostile attitudes toward it and its founding principles.

合衆国は、アメリカの憲法を支持せず、アメリカの法に敵意を持つ人々の入国を認めることはできないし、そうすべきではない。

The United States cannot, and should not, admit those who do not support the Constitution, or those who would place violent ideologies over American law.

さらに、合衆国は、偏狭な信念や敵意に基づく行為(女性に対する暴力〔結婚前に性関係を持った女性を害する行為を含む)や宗教の違いを理由にした迫害)に関わる人物、人種、ジェンダー、性別によるアメリカ人への虐待に関わる人物の入国を認めることはできない。

In addition, the United States should not admit those who engage in acts of bigotry or hatred (including "honor" killings, other forms of violence against women, or the persecution of those who practice religions different from their own) or those who would oppress Americans of any race, gender, or sexual orientation.

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