トランプ政権と日本・アジア 2017

米国株や為替に影響する時事問題を中心に政治動向をウォッチ。今さら聞けない常識も再確認。

都民ファーストの会VS自民党 争点は何?  

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(東京都地図。出所はWIKI画像)

  産経ニュース(2017/6/25)は約1000人を対象にした東京都議選への世論調査(24日~25日)の結果を公開しました。そこでは、投票先として以下の数字が出てきています(【東京都議選】都民、第1党うかがう 「小池勢力」で過半数の勢い 自民は下落歯止めに躍起)。 

  • 都民ファースト:24.4%
  • 自民党:23.2%
  • 共産党:7.5%
  • 公明党:6.7%
  • 民進党:5.8%

(※投票先を決めた人の数字と見られる。投票先を決めていない人は57.2%)

 小池都知事の支持率は66.5%、不支持率は21.7%。

 築地市場と豊洲市場の並立案を評価する人の割合は54.9%、評価しない人は31.4%。

 都議に取り組んでほしい政策は以下の項目が上位を占めました。

  • 医療・福祉:30.6%
  • 雇用・景気:17.9%
  • 都政改革:17.6%
  • 子育て:15.4%
  • 豊洲市場移転問題:7.2%
  • 東京五輪・パラリンピックの準備:6%

 この世論調査の結果は都民ファーストの勝ちのようにも見えますが、選挙は、やってみなければ分かりません。

 前掲の論点で各党の政策を見ると、介護や医療面での弱者救済、教育では無償化の拡大、都政改革は情報公開や透明度の拡大等で、意外と大差がないので、今回は残りの3点を取り上げ、都民ファーストの会と自民党との戦いの争点を整理してみます(以下、都民ファ=都民ファーストの会)。

※追記:7月2日の都議選は都民ファーストの会の大勝。議席数127のうち、都民ファーストの会と公明党だけで78議席を占拠。投票率は51.27%(前回43.5%)。

  • 都民ファーストの会:55(選挙前6)
  • 公明党:23(選挙前22)
  • 民進党:5(選挙前7)
  • 共産党:19 (選挙前17)
  • 自民党:23(選挙前57)
  • 都民ネットワーク:1(選挙前3)
  • その他:1(選挙前5) 

都民ファVS自民①:オリンピック

 過去を振り返ると、結局、五輪も豊洲も何もかもが政争の具になっています。

 自公両党が推した猪瀬都知事の時代にオリンピックが招致され、立候補ファイルでは7340億円だった費用が、今や1兆6000~8000億円。

 この費用の膨張に関して、都民には十分な説明はなく、16年までは2兆、3兆という憶測の数字が飛び交っていただけでした(舛添前知事や森組織委会長が言ったとされるが、両人は著書では否定している)。

 これに対して、「2兆、3兆って豆腐じゃあるまいし」と述べた小池知事がマスコミの寵児となったわけですが、どうもこのあたりには一つのカラクリがあったようです。

 日本に似た五輪の例を探すと、ロンドン五輪では、立候補書類で7500億円だった費用が2兆1000億円にまで膨らんでいます。立候補ファイルには経費としてカウントされない項目が多いので、オリンピックは、もともと、後から費用が増える仕組みになっているのです。都政改革本部オリンピック・パラリンピック調査チームの『調査報告書』(2016年9月29日)によれば、立候補ファイルの段階では都市の個別状況は勘案されず、どこでもかかる共通費用がカウントされることや、テロ対策や公共交通輸送の経費が計上されないこと等が指摘されています。 

 もともと、仕組みとして、後から予算が増えるようにできているのです。

 小池百合子氏がこの程度のことを知らなかったとは考えにくいのですが、都政の闇のなかで費用が膨張したかのように話が喧伝され、費用削減をうたう都知事を後押しする風潮ができてきます(都民に十分な説明や費用内訳の解明がなかったことは、過去の都知事や自民都議の失点ではありますが)。

 しかし、小池知事が出した五輪会場の移転案はひとつ残らず否定され、費用が多少、節約された程度の結果に終わりました。五輪まであと2年半しか時間がないので、本来はこんな議論をするのは時間の無駄だったのかもしれません。

 オリンピックの経費問題に関しては、大して成果がなかったせいか、都民ファーストの会は争点から外しているようです。過去の経緯を見る限り、小池都知事は五輪を政争の具、PRの機会と捉えているのではないか、という疑いがぬぐえません。

★参考記事(16/12/22):東京五輪 経費1.8兆円の内訳判明 都と各県での負担案に知事困惑

都民ファVS自民②:豊洲・築地併用/豊洲移転のみ

 小池都知事は市場を豊洲に移している間に築地を再整備し、5年後に完成したら豊洲の機能の一部を築地に移すと発表しました。築地を運用しながら工事することは、技術的に困難なので、このプランが出てきたのです。

 築地再整備論は、現在、共産党が主張していますが、さすがに整備を終えた豊洲市場を全否定するのは難しく、世論の支持も見込めないため、小池都知事は両者の併用という苦肉の策を出しました。

 前掲の世論調査では、半分以上の都民がこのプランを支持しています。

 ただ、この併用案には疑問点が残ります。

 冷静に考えれば、豊洲と築地を両方使えば維持費と人件費が増えますし、機能を一つにまとめた市場のほうが使いやすいはずです。

 そして、豊洲市場を過剰投資だと批判しながら、築地再整備の費用を増やす都知事の発言には矛盾があります。

 小池氏に近い都のプロジェクトチーム(都PT)の試算によれば734億円の追加投資が必要。豊洲と同程度の設備を作る場合は、1460~1780億円かかるそうです(後者は『Wedge 2017年5月号』を参照)。

 併用プランだと築地跡地を売らないので、豊洲整備にかかった4000億円の都の借金をすぐには返せなくなります。

 都PTは築地市場の土地を50年間の定期借地で貸せば、年160億円の賃料収入が見込めると言っています。

 しかし、これは本当なのでしょうか。

 中嶋よしふみ氏(ファイナンシャルプランナー シェアーズカフェオンライン編集長)はヤフーニュース(2017/6/26)で疑問を呈しています(「築地・豊洲の市場移転問題、知らないと恥をかく数字の読み方~マスコミ・都知事・当選した都議向けのお話~」)。

  • 「売る場合はまとめて現金が手元に入るため、平成32年から38年に発生する3500億円の企業債(=豊洲市場を作るために発生した借金)を問題なく返済できる。ただし、豊洲市場の規模縮小により、徐々に赤字が大きくなり、平成61年には・・・手持ち資金がなくなる」
  • 「貸す場合は・・・3500億円という巨額の借金を返すことは出来ないため、借り換え(期限までに返済ができずに借金を継続すること。闇金ウシジマ君的に言うと「ジャンプ」)で資金ショートを回避することになる。当初は3500億円のうち2/3を借り換える。つまり多額の借金がそのまま残る」

 要するに、赤字・黒字ではなく、キャッシュフローで考えたら、併用プランは借金を抱えながら土地を貸してやりくりするという自転車操業でしかないわけです。

 都民の大半が併用プランを支持したとしても、会計的にリスクが高いことは否定できません。

 都議選前に併用プランを出し、選挙で多数の議席を取ることで、小池知事は「お墨付き」を得ようとしたのですが、そもそも、会計やキャッシュフロー経営が理解できる人は少ないので、経営問題を多数決で決めるのは望ましくないのです。

都民ファVS自民③:景気回復

 景気・雇用面を見ると、自民都連は珍しく減税を打ち出しています。

 個人都民税10%減税/事業所税を50%減額が主な内容です。

 筆者には自民党=増税大好きというイメージ(麻生政権の消費税増税PRの印象が強いせいか)があったので、やや意外でした。

 そして、「緑の党」のイメージが強い都民ファーストの会では「CO2削減目標」がなかったのも意外でした。

 CO2削減目標は自民党の公約で、地球温暖化対策のために2030年までに30%ものCO2を削減すると書かれています。

 ただ、これはかなり無理筋な話です。

 経済成長とCO2排出は連動しているため、30%ものCO2を削減しながら、経済成長を続けるのは困難です。

 当たり前の話ですが、経済活動が活発になればエネルギーの消費が増えるので、CO2の排出も増えます。

 そのため、景気面を考えると、この公約は無視できないでしょう。

 この公約が出てきた経緯を探ると、それはパリ協定に行き着きます。

 安倍政権はパリ協定で2030年までに26%ものCO2削減(2006年比)を約束したので、その目標が日本経済のエンジンになっている東京に反映されたのです。

 しかし、筆者は「ちょっと待ってください」と言いたくなります。

 なぜかというと、パリ協定は、CO2を減らしてきた日本が重荷を負い、大量のCO2を出し続ける中国等の負担が少なくなるようにできているからです。

 その仕組みがひどいので、トランプ政権は不公平だと言って、協定から離脱してしまいました。

★参考記事(6/3):米国のパリ協定離脱 トランプ声名で露わになったCO2削減目標の問題点

 

 削減目標を見ると、日本やアメリカは「排出量」の削減なのですが、中国は「GDP当たりの排出量」の削減でしかありません。GDPが増えれば、排出できるCO2の量が増えるので、経済成長に伴って楽になる目標を定めているのです。

 地球環境産業技術研究機構(RITE)の秋元圭吾氏は、パリ協定の目標を実行した場合、CO2を1トン減らす時にかかる費用は、日本が378ドル。アメリカが85ドル。インドと中国が0ドルだと試算しています(「パリ協定約束草案の排出削減努力の評価」2017年2月7日)。

 結局、日本はCO2削減余地が少ないのに、さらにそこから搾り取る構図になっています。

 しかし、まだ削減を十分に行っていない中国やインドは放置されているわけです。

 そのうえ、世界のCO2排出量(2014年)を見ると、中国が28.3%、アメリカが15.8%。3.6%しかない日本が必死にCO2を減らしても、実際は、どうにもならないでしょう

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(出所:データ集[1] (世界のCO2排出量) - JCCCA 全国地球温暖化防止活動推進センター

 

 結局、自民都連の公約を実行したら、東京の経済成長には大きな足かせがはめられることになります。

 このCO2排出削減目標はきつすぎるので、どこかで見直しをかけざるをえないでしょう。

 不思議なことに、環境問題が大好きな小池都知事と都民ファーストの会はCO2排出削減目標を出さなかったので、このあたりでは自民党との違いが出ています。

 なお、都議選の大きな争点となる教育無償化に関して、当ブログでは以下の記事を公開しています。

※関連記事:都民ファーストの会VS自民党 争点は何?(6/26)