トランプ政権と日本・アジア 2017

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長野県南部の地震(M5.6)後に必要な三つの対策

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(木曽の名所、御嶽山。出所はWIKI画像)

  長野県南部で25日の7時2分頃にマグニチュード5.6の地震が起き、震源地付近では震度4~5の揺れが観測されました(以下、地震情報の出所は気象庁)。

 震源の深さは約7kmで、特に長野県で震度が高かったのは以下の地域です。

  • 震度5強:長野県木曽町、王滝村
  • 震度4:長野県上松町、石川県輪島市、岐阜県高山市

 この地震による津波発生の恐れはなく、現時点で人的な被害の報告はありません。

 北陸新幹線にも特に異常はなく、東海道新幹線が「新横浜-掛川間」の上下線で運転を見合わせたものの、7時12分には安全確認を終え、運転を再開しました。

 そのほか、高浜原子力発電所、美浜原子力発電所、大飯原子力発電所、敦賀原子力発電所、志賀原子力発電所、浜岡原子力発電所等では、地震による異常はないと報じられています。

 現在も政府は情報収集を続けていますが、最近は地震が多いので、20日に起きた大分県の地震と合わせて振り返ってみます。

 6月20日には午後11時27分頃、豊後水道を震源としたマグニチュード5の地震が起きました。震源の深さは40キロで各地で震度4~5の揺れが観測されています(地震情報の出所は気象庁)。

  • 震度5強:大分県佐伯市鶴見  
  • 震度4:大分県津久見市立花町と宮本町、佐伯市蒲江蒲江浦と春日町、上浦、弥生、米水津、富後大野市清川町、竹田市荻町、熊本県熊本高森町高森、宮崎県延岡市北川町川内名白石と北浦町古江

 各地の原発等でも異常がなかったことが報じられています。

 こうしてみると、長野県と大分県の地震は、だいたい、同じぐらいの規模です。

長野県の地震後に必要な対策①:インフラ強化

 地震と言えば、インフラは大丈夫かと不安になります。

 4年半前(2012年12月)には山梨県の中央道『笹子トンネル』で天井版崩落事故(※120mの板が落下して三台の車が下敷きになった)が起きました。笹子トンネルは1977年に開通したのですが、当時の読売記事(2012年12月3日社説)は、以下の3点を指摘しています。

  1. 同じ構造のトンネルが全国の高速道路に10か所以上
  2. 70年代以降に整備された高速道路等の建造物の老朽化が目立つ
  3. 国交省によれば高速道路だけで補修を要するトンネルや高架橋などの損傷が2011年に約55万5千カ所で確認された(05年の10倍以上)

 根本裕二氏(東洋大学大学院教授)は民主党政権が「コンクリートから人へ」と訴えた時代に『朽ちるインフラ』(2011年刊)という著書で警鐘を鳴らしましたが、その後、安倍政権ではインフラ補修に政策の舵が切られました。

 現在ではこの本のデータもやや古くなっていますが、同氏は築30年経過の公共施設を老朽施設と見なせば、同書執筆時点の2011年で、全国平均値で5割以上が老朽化していると指摘しました。都道府県の単位で見ると老朽化率が6割程度なのは大阪、東京、埼玉、千葉、神奈川、京都であり、震度6強に耐えられる水道管は全体の3割程度だとも述べられています。

 今回は震度5だったので、大丈夫だったのかもしれませんが、このあたりの記述にはヒヤリとさせられます。

 その後、日本全国のインフラ補修はどの程度進んだのでしょう。

 平成29年度予算を見ると、公共事業関係費は約6兆円程度です。過去の推移は以下の通りになっています(出所は「平成29年度国土交通省・公共事業関係予算のポイント」)

  • 09年:7兆701億円
  • 10年:5兆7731億円
  • 11年:4兆9734億円
  • 12年:4兆5734億円
  • 13年:5兆2467億円
  • 14年:5兆3518億円
  • 15年:5兆9711億円
  • 16年:5兆9737億円
  • 17年:5兆9763億円

 第二次安倍政権になってから公共事業関係費が増えてきました。

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(出所は国土交通省HP)https://www.mlit.go.jp/common/001116547.pdf

 一応、もっと昔の年次の数字を参考値であげると、2000年で9.4兆円程度、1990年で7.3兆円程度です。

「あれっ。バブル期が意外と少ない?」と不思議に思われた方もいるかもしれません。

 当時は好景気だったから、不況期の財政出動が要らず、1991年~2000年よりも少ない数字になっているわけです。

 小泉政権の頃は財政再建の構想があったため公共投資削減に舵を切り、麻生政権になる前の2008年予算では6.7兆円にまでカットされています。

 これからの日本にどれぐらいの公共投資予算が要るのかは、今後も考えていきたいものです。

長野県の地震後に必要な対策②:地震予測や研究の精度向上

 「3.11」(東日本大震災)では未曾有の規模の被害が発生しましたが、専門家もこの大震災と津波の被害を予測できませんでした。

 中西輝政氏(京都大学名誉教授)は『正論』(2011年6月号)にて、震災前に国内各地の原発を見学し、巨大地震の発生を想定しているかどうかを尋ねた時、原発側の説明者は以下のように答えたと記しています。

「『関東大震災はM8.2でチリ(1960年)ではM9.5以上の地震が起きた。そのクラスの巨大地震がきたら、どうなりますか』と質問した。すると、原発側の説明者は、『そんな規模の地震が起きるはずもない』と言わんばかりに軽侮の表情を浮かべ、真面目に取り合おうとはしなかった」(P53)

 これは日米の戦争で、本土空襲や海上封鎖を想定せずに、戦闘機や潜水艦の増産に及び腰だった日本軍のスタンスとよく似ていると嘆いていたのです。

 ただ、自衛隊はこの規模の震災発生がありうると考え、その時のオペレーションを用意していました。

 震災発生時の非常招集は「極めて迅速」に行われたと宗像久男氏(元陸自東北方面総監)が同じく『正論』(2011年5月号)で述べています。

「東北方面隊を中心に海空自衛隊の救難ヘリ部隊など2万5千名に及ぶ災害救援体制を立ち上げ、災害派遣計画に基づき隷下の各部隊は所定の地域に移動を開始した」「『宮城県沖地震』は30年以内に99%の確率で発生すると言われており、それに備えるため日頃から各自治体と災害派遣計画を積み重ねてきた」(P101)

 ただ、震災の被害規模は自衛隊の想定をはるかに超え、その後は悪戦苦闘の日々が続きました。自衛隊は菅首相が指示した「10万人体制」という難題にも応え、国民からの信頼感を高めました。

 現代の学問では震災の予知が難しいのですが、被害の大きさを考えると、研究者には予測精度の向上を目指してほしものです。いつ起きるかの予知は困難でも、歴史の記録から、起きうる震災の最大限の規模は推定できるので、情報収集が無駄であるわけではありません。

 そこで、現在、南海トラフ地震について、政府が想定する被害規模とその対策を見てみましょう。 

長野県の地震後に必要な対策③:南海トラフ大地震被害最小化プラン

 今の日本では、静岡県沖から九州沖の海底にある南海トラフ(水深4200mにある巨大な溝)で巨大地震が起きる危険性があると言われています。

 これに関して、2013年の5月28日に有識者会議がまとめた報告書(「南海トラフ巨大地震対策について(最終報告)【別添資料2】」)では以下の被害が想定され、四地方別の家屋被害と死者数が試算されました(前掲資料P4)。

地方別の被災想定

① 東海地方が大きく被災するケース
全壊及び焼失棟数:約95万4千棟~約238万2千棟
死者数:約8万人~約32万3千人
② 近畿地方が大きく被災するケース
全壊及び焼失棟数:約95万1千棟~約237万1千棟
死者数:約5万人~約27万5千人
③ 四国地方が大きく被災するケース
全壊及び焼失棟数:約94万棟~約 236万4千棟
死者数:約3万2千人~約 22万6千人
④ 九州地方が大きく被災するケース
全壊及び焼失棟数:約 96万5千棟~約 238万6千棟
死者数:約3万2千人~約22万9千人 

被害額の推計

 そして「被害額の推計結果」も見積もられています(P13)。これは「モデル検討会で検討された地震動 5 ケースのうち『基本ケース』と揺れによる被害が最大となると想定される『陸側ケース』」のタイプ別の試算です(※陸側で大きな被害が出るという想定が「陸側ケース」)。

○資産等への被害【被災地】

【基本ケース 】97.6兆円

・民間部門 83.4兆円 ・準公共部門(電気・ガス・通信、鉄道) 0.6兆円 ・公共部門 13.6兆円 経済活動への影響【全国】 ・生産・サービス低下に起因するもの 30.2兆円 ・交通寸断に起因するもの(上記とは別の独立した推計) 道路、鉄道の寸断 4.9兆円 《参考》港湾被害 (10.8兆円)

【陸側ケース】169.5兆円

・民間部門 148.4兆円
・準公共部門(電気・ガス・通信、鉄道) 0.9兆円
・公共部門  20.2兆円
経済活動への影響【全国】
・生産・サービス低下に起因するもの  44.7兆円
・交通寸断に起因するもの(上記とは別の独立した推計)道路、鉄道の寸断  6.1兆円
《参考》港湾被害  (16.9兆円)

※傍線筆者

  被害想定には最小値~最大値まで大きな幅がありますが、これに関する各紙報道では、基本的に最大値が強調されています。

南海トラフ被害想定の最終報告の内容

 日経記事(2013年5月29日:朝刊37面)の記事では、以下の想定が紹介されていますが、これは最大規模の被害が出た時の数字です。

【M9.1南海トラフ巨大地震被害想定】

  • 津波高は最大34m
  • 被害総額220兆円(民間148兆、公共+準公共21兆、経済活動の停滞分51兆)
  • 死者32万人、全壊・焼失棟数238万">棟、避難者数(一週間後の最大値)950万人、
  • 断水3440万人、停電2710万人
  • 食料不足3200万食、飲料不足4800万リットル(食料と飲料は震災後3日間合計)
  • 帰宅困難者 大阪圏660万人、名古屋圏400万人、
  • 対応困難な患者数 入院15万人、外来14万人

 途方もない規模の想定ですが、前掲の【基本ケース】は【陸上ケース】の58%程度の被害想定なので、基本ケースであっても、被害総額は130兆円、死者数は20万人近くの想定となると思われます。

 何しろM9.1の想定(※M9の発生確率は低いとされる)なので、まるで日本終末を思わせるような恐ろしい数字のオンパレードになっています。

 これだけ見ると希望はもうないかのようにも見えますが、この報告書では対策次第では被害は減らせることも指摘していました(以下、概要版を参照)。

 その一つは「事前防災」で、これは「津波防災対策、建築物の耐震化、火災対策、土砂災害・液状化対策、ライフライン・インフラの確保対策、教育・訓練、ボランティア活動、総合的な防災の向上」等を含んでいます。

 二つ目は「災害発生時対応とそれへの備え」であり、「救助・救命、消火活動、緊急輸送活動、物資調達、避難者・帰宅困難者対応、ライフライン・インフラの復旧、防災情報対策、広域連携・支援体制」などを通して被災時の被害を減らすことが可能です。

 対策次第で死者数は32万3千人から6万1千人にまで減るといわれているのです。

災害対策で何をしたらいいのか?

 前掲の二つの対策は政府の側にやるべきことがたくさんありますが、企業と個人にも求められる対策があります。

 企業の対策はインフラ復旧への協力や自前の燃料備蓄、資源調達先分散などですが、個人の場合では、特に生き延びるための食料や飲料の備蓄が大事です。

 読売新聞(2013/5/19:朝刊3面)では、一週間分の備蓄例を紹介しています。

  • 飲料水21リットル(1人1日当たり3リットル)
  • 缶詰やクラッカーなどの非常食
  • カセットコンロ、コンロ用ボンベ14本
  • 簡易トイレ
  • ラジオ、乾電池
  • 携帯電話の電池式充電器

 非常事態では他人を助ける余裕がなくなってくるので、各自が自衛しなければいけなくなります。上記の備品のほか、折たたみ傘や雨合羽、カイロなども必要でしょう。

 前掲の被害想定によれば全員が避難所に入れないと見られているので、その場合でも雨露や寒さをしのがなければいけないからです。野宿になっても耐え忍べる準備が必要になります。

 震災直後の『日経ビジネス』(2011/3/21:P20~21)は、「ローソンでは東北地方と茨城県にある913店舗のうち3月13日時点で半数を超える524店が営業している」とコンビニの強靭さを紹介しながらも、当時は「ダイエー目当てに1km以上の行列」ができたことを紹介しています。

 物資のひっ迫が起きるので、可能な限り、備えておかなければいけません。

 また、安否確認サービスも含めて携帯電話が機能しなくなったので、前掲の日経ビジネス記事(P21~22)では、ネット上でツィッター等を通しての安否確認や情報収集が盛んにおこなわれたとも指摘しています。

 ただ、SNS上ではデマも飛び交うので、情報を注意深く見極めなければなりません。

 最後に一言、付け加えるならば、東京湾にも2.5mの津波が来ると想定されています。そのため、地震発生時に海辺に近づくのは禁物です。

 恐ろしい話ではありますが、対策次第で被害は減らせると信じて、時間のある間に備えを固めておきたいものです。