トランプ政権と日本・アジア 2017

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「ヒアリ」上陸 毒で刺された時の対策とは 

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(神戸ポートピアホテルからの眺め。出所はWIKI画像)

  神戸にある人工島ポートアイランドのコンテナに入っていた「ヒアリ」(強毒アリの一種)が6月16日にコンテナ保管場所から30mほど離れたアスファルト舗装の亀裂部(3カ所)に潜んでいたことが確認されました(発表は18日)。

 その後、ヒアリは駆除されたものの、その数は約100匹とも言われており、その広がりが警戒されています。

 ちょうど、夏は繁殖期なので、国内でヒアリが増殖する可能性が高まってきています。

 これは、全国に港を持つ日本にとって、これは要注意のニュースです。 

 当ブログは昨日に名前を変えたばかりなのに、筆者の習性(アリのような雑食性)が変っていないため、ついつい気になるニュースを拾ってしまったわけですが、国民の安全に関わる情報でもあるので、「ヒアリ」上陸の経緯と対策等を紹介してみます。

「ヒアリ」上陸と発見の経緯

 その経緯を「神戸新聞NEXT|社会|強毒ヒアリ、刺されたらどうする? 専門家に聞く」(6/16)で見てみます。

 「尼崎市南部で5月26日、中国広州市の南沙港から貨物船で運ばれたコンテナ1個(長さ約12メートル)の中から発見された。環境省外来生物対策室によると『確認できただけで数百匹以上。卵や幼虫、さなぎもいた。コロニー(集団)をつくっていた』。家電製品が入っていたコンテナだった」

 貨物船は25日まで補完され、「神戸から車両で尼崎市南部まで運び、同26日に積み荷を取り出す際に、アリのコロニーが見つかった」。

 その後、サンプル調査が行われ、「神戸市東灘区に陸送し、6月1~5日に業者がアリを死滅させた後、9日、ヒアリと確定した」。

 地元記事なので、ヒアリ発見の恐怖感が伝わってきます。

 その後、6月16日に神戸港の保管場所近辺の舗装亀裂部でもヒアリが100匹発見され、18日に詳細が発表されました。神戸市は対策本部を設置し、県民に警戒を呼びかけています。

 この「ヒアリ」は、まるで「輸出品」のように送られてきたのですが、「故意ではなく、過失で日本に来てしまった」ということを信じたいところです。

「ヒアリ」ってどんなアリ?

 ヒアリは国立環境研究所の「世界の侵略的外来種ワースト100」にもランクインしています。以下、同研究所のデータベースを見てみます(出所:ヒアリ / 国立環境研究所 侵入生物DB

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(出所はWIKI画像)

  • 分類:ハチ目 スズメバチ上科 アリ科 
  • 英名:Red imported fire ant, RIFA
  • 分布地:南米
  • 形態や生息環境等:ワーカーは多型で,体長2.5mm~6mm.体色は赤褐色,腹部が暗色。草地など比較的開けた環境に生息。亜熱帯~暖温帯に適応。
  • 繁殖生態:有翅虫はいつでも繁殖可能だが、繁殖が盛んなのは春から夏。結婚飛行は春から晩秋まで行われる。産仔数は約30~70個

 日本で言えば、生息に適した温度はちょうど今頃。そして、繁殖にも適した季節に初上陸を果たしたことになります。結婚飛行も盛んらしく、なかなか元気ハツラツとした生物です。

 何を食べるのかというと、節足動物やトカゲ等の小型脊椎動物,甘露,樹液,花蜜,種子などが挙げられています。アリなので、やはり雑食性です。

 特に気になるのは、1930年頃にアメリカにヒアリが入ってきた経緯です。

 「船荷に伴って持ち込まれた」とされ、「近年,オーストラリア,ニュージーランド,マレーシア,台湾,中国南部など環太平洋諸国に急速に分布を拡大している」とも書かれています。

 侵入経路は不明とされていますが、恐らく船荷か何かでしょう。

ヒアリに刺されたら、どうなる

 産経ウェスト(2017/6/14)は「ヒアリは、赤茶色で体長2・5~6ミリ。攻撃性が強く、刺されると痛みや発熱、激しい動悸のほか、アレルギー反応によるアナフィラキシーショックを起こす恐れがあり、米国では多くの死者が出ている」と警戒を促しています(「強毒で死亡も 初確認の「ヒアリ」中国→神戸港→尼崎」)

 「アナフィラキシーショック」という謎の言葉が各紙に飛び交っていますが、WIKIでは「I型アレルギー反応の一つ」と説明されていました。

 説明が専門用語の連続なので、筆者には意味不明だったのですが、コトバンクの「知恵蔵」での説明を見ると、「外部からアレルゲンが体内に入ることで急激に引き起こされる全身性の強いアレルギー反応のためにショック状態になること」と書かれていました。アレルゲンというのは、アレルギーを引き起こす物質のことです。 

 解説が全然一般人向けではないため、分かりにくいのですが、ヒアリに刺された場合、ショックで倒れたり命を失ったりする危険性があるわけです。

 NHKニュースWEB(6/14)は、すでにアメリカでは年間100人以上が死亡しているとも指摘していました(※このデータの出元は環境省ですが、その後、同省サイトでは「100人以上死亡」という記述を削除しています)。

ヒアリに刺された時にやるべきこと

 前掲の「神戸新聞NEXT|社会|強毒ヒアリ、刺されたらどうする? 専門家に聞く」(6/16)では、関西福祉大(赤穂市)の勝田吉彰教授(56)が以下のように述べていました。

  • (ヒアリは)「小さな動物なら集団で食い殺してしまうほど攻撃的」
  •  刺された後の反応は耐性で差が出るが、「重度の場合、刺されて数分から数十分の間に声がかれ、息苦しさや激しい動悸、めまいなどを起こすことがあり、昏睡状態になって、生命の危険も伴う」
  • 「ハチ毒アレルギーを持つ人は特に注意が必要」(毒の成分が共通)。
  • 刺された場合は「20~30分程度、安静にし、体調の変化がないか注意するべきだ」。容体急変時は「病院ですぐに治療が必要」
  • 「ヒアリを発見したときは、素手で触らない」
  • 「熱湯をかけて駆除する方法もあるが、まずは近畿地方環境事務所野生生物課や保健所、警察へ連絡をしてほしい」

ヒアリの意外な好物とは?

 FNNニュース「ヒアリの大好物 電化製品を破壊」(7/20)ではアリ研究家の寺山守博氏がその特殊な生態について解説しています。

  • 「ヒアリは油成分が大好きで、パソコン、エアコン、冷蔵庫などの電化製品に入ってスイッチなどを壊し、作動不良にする被害が多発している」
  • 海外で撮影された映像では、エアコンが故障したため、室外機を見に行ったところ、内部にヒアリが侵入し、配線をショートさせていた。
  • 「(アメリカでは過去に)ヒアリによって配線がかじり取られ、ショートしたらしく、そこからビル火災で死者まで出たというニュースに取り上げられた」
  • アメリカでは、年間の経済損失額が5,000億円にのぼるとの試算もある。

 電化製品の中に入り込み、その被害を拡大するという、国内のアリにはない特殊な生態を持っているわけです。

 東京港でもすでに発見されているので、ブログ記事作成に使っている筆者PCも、いつのまにかヒアリに「食べられて」しまうかもしれません。実に恐ろしい話です。

「ヒアリ」の広がりに要警戒

 時事通信では「ヒアリ、遭遇したらどうする?~身を守るための対処法~」と題した記事の中で、東京農工大の佐藤俊幸准教授(行動生態学)へのインタビューを掲載しています。

 佐藤氏は「とにかくヒアリだけは日本に入れてはいけない」と述べていました。一度繁殖を許すと年間5000億~6000億円の経済損失が出る恐れがあり、「生態系にも大きな影響を与える」からです。

ヒアリが定着すると、在来種のアリを襲い、絶滅させてしまう。在来種には、植物の種子を運ぶアリもおり、いなくなると、植物がなくなったり、それを食べる昆虫がいなくなったりと、生態系が崩れてしまう。

 夏が繁殖期なので「水際作戦の徹底が必要だ」と佐藤氏は訴えていました。

  しかし、ヒアリ上陸を防ぐのは、かなり難しい話です。

 何しろ小さく、外見上、素人には即座に見分けがつかないので、日本各地に広がっていく恐れがあります。

 日本各地に港に積み込まれたコンテナの全てに対して、ヒアリがいないことを確認するのは困難です。 

 筆者は10年以上昔に、ペットボトルのフタをつくる企業で検品をしていたことがありますが、コンベアを流れてくるフタの不良品でさえ、検品部門で月に1度ぐらいは致命的なミスの見落としがあり、製品差し止めが起きていました。

 アリが100匹もいれば気づくこともあるかもしれません。

 しかし、数匹ぐらいの単位で入ってきた場合は、気づかずにスルーしても不思議ではないわけです。

 ヒアリはもともとは南米産のアリですが、もはや中国や台湾では上陸を果たしています。日本が水際で完全ストップし切るのは、簡単なことではないでしょう。

追記:名古屋や東京、横浜でもヒアリ発見

 その後、日本各地でヒアリが見つかっています。

名古屋港

 6月27日には名古屋港の鍋田埠頭(愛知県弥富市)でも7匹の「ヒアリ」が発見されました。ターミナル管理会社が中国・広州市南沙港から送られたコンテナの上で発見したと報じられています(「ヒアリ、名古屋港の埠頭にも 中国からのコンテナ上で発見」
朝日新聞デジタル6/30 ※ハンフィントンポストにて掲載)

東京・品川大井ふ頭

 その後、7月3日に東京都品川区にある大井ふ頭にて一匹のヒアリが発見されました。

 荷主が千葉県内で荷物を出した後、7月3日に大井埠頭に返却されたコンテナ内を点検している時、1匹のアリが見つかりました。駆除したアリを専門機関が鑑定した結果、ヒアリであることが判明したわけです。このコンテナは中国・広東省の三山港で貨物船に積み込まれ、6月23日に香港で積み替えられた。27日に大井埠頭に到着し、陸揚げされたと報じられています(日経電子版7/6「東京・大井埠頭でヒアリ確認 被害はなし」)

 その後、環境省は7日に、大井ふ頭のコンテナ内部で新たに100匹以上のヒアリ(働きアリ。女王アリではない)が見つかったことを発表。これらのアリはコンテナ内のベニヤ板上で生きたまま発見されました。8日にはコンテナを開けた場所の周辺の調査が行われます(時事ドットコム7/7「東京港のヒアリ、100匹以上=女王は確認されず-環境省」)。

 この報を受け、東京、名古屋、大阪、兵庫ではヒアリの調査範囲が半径2キロ圏にまで拡大されました。

 その後、13日には、東京の大井ふ頭で100匹以上のヒアリが見つかりました。コンテナ内部の木床で湿気を帯びた部分にヒアリが潜んでおり、周辺の屋外でも約10匹が発見されたのですが、その内訳は働きアリと、卵や幼虫、さなぎなどでした。

 やはり、ヒアリを水際で完全に止めるのは難しそうです。コンテナから内陸に運ばれる貨物にヒアリが入っていた場合は、どんどん広がってしまう可能性があります。

東京・青海ふ頭

 7月14日には東京港にある青海ふ頭のコンテナヤードの亀裂で1000匹以上の「アカカミアリ」(ヒアリより毒は弱い)が見つかっています。

 同じく14日には、横浜市中区にある本牧埠頭でも700匹以上のヒアリが発見されました。

横浜港

 横浜港ではコンテナヤード内のアスファルトにある数十センチの割れ目(深さ10センチ)で、そこに500匹以上の働きアリと、羽をもったオス(5~10匹)、100匹以上のさなぎと幼虫が確認されました。女王アリはまだ見つかっていませんが、巣ができていた可能性が指摘されています。

(※茨城県常陸太田市で21日にコンテナで見つかったアリ24匹に関しては、環境省が、「ヒアリ」ではなく、有毒外来種の「アカカミアリ」だったとの訂正を行っています)

福岡県博多港

 さらに、7月21日には福岡県博多港・アイランドシティ(福岡市東区)でもヒアリと疑われる数十匹が発見され、翌日には30匹が見つかったことが報じられています。コンテナターミナルのアスファルト舗装の亀裂に見つけたアリが殺虫剤で処分されています(読売オンライン「新たにヒアリか 博多港に30匹、福岡市封じ込めへ」2017年7月23日)

 7月27日には、中国から博多港を経て市内倉庫に運ばれた電子機器製品のコンテナ内でも「ヒアリ」が見つかりました。

 30代の男性作業員はコンテナから積み荷の段ボール箱を出す作業中に、腕に痛みを感じ、ヒアリに気付きました。そして、手でヒアリを払った後、コンテナ内の床の上に約30匹のヒアリを発見しました。

 ヒアリは殺虫剤で処分され、そこでは女王アリは確認されていません。左腕を刺された30代の男性作業員は、刺された箇所の周囲に赤い発疹が出、「クラゲに刺されたような痛みを感じた」とも述べています。

調査範囲が拡大された

 7月31日には、全国の港でヒアリが見つかったことを受けて、環境省は、今までよりも調査範囲を発見地の半径2キロにまで広げることを決めました。アリ駆除業者の見回り、捕獲トラップの設置等を進める予定です。

 環境省は見慣れないアリやアリ塚を見つけた時には地方環境事務所に連絡してほしいとも述べています。

 ・・・

 日本内陸にすでにヒアリが入ってきてもおかしくない状況になってきました。

 しかし、大部分の一般市民にとっては、関係者の健闘を祈るとともに、ヒアリを見つけた時に通報するなど、努力するしかなさそうです。