トランプ政権と日本・アジア 2017

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フランス下院選はどうなる? マクロン率いる「前進」の大勝か?

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(セーヌ川の風景。出所はWIKI画像)

 フランス下院選の第一回投票日は6月11日です。

 そして、第二回投票が6月18日(日)に行われます。

 フランスでは大統領選でも下院選でも、二回目の決選投票を行います。

 同国はナチスのような過激勢力の台頭を警戒して政治制度がつくられているので、有権者に慎重な選択を期するために、二回投票制を設けています。

 ただ、大統領選ではマクロン氏が勝利を収めたので、その勢いに乗じて、一気に議会でも同氏が率いる「前進」という新政党が大勝利するとも言われています。

(追記:産経ニュース(2017/6/19)の選挙結果報道「マクロン新党過半数制す 安定運営に基盤固め」))

 定数577の下院の勢力図は以下の通り。

  • 「共和国前進」:289議席
  • 中道政党を含めた前進陣営は361議席(約6割)
  • 保守系の共和党陣営が126議席
  • 社会党陣営が46議席
  • 共産党等の急進左派は26議席
  • 国民戦線が8議席(マリーヌ・ルペン党首初当選)

 そこで、今回は、仏議会選について考えてみます。

2017年 フランスは選挙が目白押し

 本年は、大統領選だけでなく、上院(元老院)と下院(国民議会)でも選挙があります。

 「フランスのEU離脱が国民に支持されるかどうか」という争点に関しては、マクロン氏の勝利で結論が出たわけですが、下院選と上院選で、その勢いがどこまで広がるかが注目されています。

 今後、仏大統領選(4/23:第一回投票/5/7:第二回投票)を経て、下院に二回、上院に一回の投票日が予定されているのです。

  • 6月11日(日):仏下院選(第一回投票)
  • 6月18日(日):仏下院選(第二回投票)
  • 9月24日(日):仏上院選

 果たして、支持率6割超えのマクロン氏がどこまで勝利の勢いに乗れるのか。

 大統領選勝利の勢いに乗じて議会選挙の勝利を狙う手法は、ある意味では小池百合子都知事にも似ています。

 ただ、小池知事の場合は、当選から10か月以上が経ち、都政のかじ取りに失策らしきものが出始めているのに対して、マクロン氏は就任後わずか1か月。そして、外交デビューを果たして支持率が高止まりしたまま選挙に臨むので、相当、有利な選挙結果になりそうです。 

フランス下院(国民議会)選はどうなるのか

 フランス下院(国民議会)の定数は577。

 改選前の議席数を見ると、以下の振り分けになっています。

  • 中道左派(社会党等):284
  • 中道右派(共和党等):199
  • 国民戦線:2
  • その他:92

 毎日朝刊(ネット版記事:2017/6/11)では「きょう仏総選挙『マクロン新党』優勢 2大政党は失速か」と題した記事を公開し、そこで、調査機関IPSOSの世論調査の当選予測の結果を紹介しています。

 その予測は以下の通りです。

  • マクロン派(前進+中道勢力):397~427
  • 中道左派(社会党等):22~32
  • 中道右派(共和党等):95~115
  • 国民戦線:5~15
  • その他:?(上記4陣営の結果次第) 

 この調査では、共和国前進に投票すると答えた比率は24%(4月)から31%(6/9)に増加しています。

 国民議会選は小選挙区制になっており、選挙区では候補者が一人だけ勝ち残ります(任期5年。18歳以上が立候補可能)。フランスは下院(国民議員)と上院(元老院)の二院制を取っているので、第一回投票では有権者は多様な候補者の中から自分の意に沿った候補者に投票。二回目に上位名のいずれかに投票します。 

 候補者は7880人。そして、第1回投票で過半数を取った候補がいない場合、得票率12.5%以上の候補が集められ、18日に第2回投票が行われるのです。

 フランスの政治権力の配分は、軍事・外交面や行政、国民投票の実施の決定等の権限が大統領に属し、立法や予算承認、首相解任等の権限が議会に割り振られています。

 こちらも米国と同じく三権分立の枠組みなので、マクロン氏の権限がどこまで拡大するのかは、同氏が率いる「前進」がどこまで勝てるのかに左右されるわけです。 

各党の指導者たちの横顔

 一応、各党の指導者の横顔を眺めてみます(党首と大統領選に出馬した候補者を紹介)。

 以下、「」は党名。()内は党首もしくは代表の名前です。

「共和国前進」(エマニュエル・マクロン:39歳)

 ソンム県アミアンに生まれ、パリ第十大学からパリ政治学院、国立行政学院に進学(パリ政治学院、国立行政学院は歴代大統領や首相を数多く出した名門校)。政治家になる前はロスチャイルド銀行で勤務。オランド大統領の側近として大統領府副事務総長(2012~14)、経済産業デジタル相(2014~16)を歴任。

 オランド政権で解雇過程の簡略化や労働時間の規制緩和、長距離バス路線の自由化等を含む、経済改革法案「マクロン法」を議会に提出し、実現させた(強行採決)。左派政権の中で右派的な経済改革を行い、メディア報道では「中道派」とされる。

 主要政策は、法人税減税や週35時間労働制の見直し、年金支給開始年齢の引き上げ、公的部門の人員削減など。EU強化と自由貿易を支持。

 「前進」にはオランド政権で内相と首相を務めたマニュエル・バルス氏も同党に参加。同氏は「社会党は死んだ」と述べたらしい。

「共和党」(ローラン・ヴォキエ総裁:42歳)

 ローラン・ヴォキエ総裁は1975年4月12日にリヨンで生まれた(現42歳)。首相だったアラン・ジュペ氏の秘書でしたが、その後、財務・公会計相等を務める。そのほか、政府のスポークスマン(2007-2008)、雇用相(2008-2010)、欧州問題担当相(2010-2011)、国民教育・高等教育・研究相(2011-2012)等を歴任。

 共和党からはフランソワ・フィヨン(59歳)氏が大統領選に出馬。フィヨン氏はパリ第5大学、国立政治学研究院卒。その後、サブレ=シュル=サルト市長(1983~2000)、労働相(2002~2004)、高等教育・研究相(2004)を歴任。2005年に上院議員に選出される。2007~12年のサルコジ政権誕生に選挙参謀として貢献し、首相を務めている。

「国民戦線(FN)」(マリーヌ・ルペン:48歳)

 国民戦線は創立者である父(ジャンマリ氏)の時代は泡沫政党。84年に欧州議会選に勝利して支持率は1割台に躍進。両親は政治活動に忙しく、青少年時代はやや孤独。家族の愛情を欲していた。パリ大で刑法を学び、弁護士として職歴を開始。私生活ではFN支援者や関係者と結婚・離婚を繰返している。
 2012年に二代目党首に選出され、移民排斥から福祉の充実に政策の力点を移し、ソフト路線を打ち出した。共和制を認め、民主主義を掲げたFNは女性の権利を重視。妊娠中絶や同性愛を容認した。反EU、反移民、反自由貿易を訴え、大統領選ではEU離脱の国民投票の実施。移民の全面禁止。一部輸入品への35%課税等を提唱している。イスラム教徒を治安の脅威と見なす路線は父の時代と同じ。

 3月25日には大統領選投票日を約一か月前に控え、モスクワ市にて、異例のプーチン大統領との会談を行った。

「左翼党」(ジャン=リュック・メランション:66歳)

 左翼党にはマルティーヌ・ビヤルという共同党首がいますが、著名なメランション氏のほうを紹介。

 メランション氏はモロッコ北部出身。両親が離婚したためにフランスのジュラ県の高校を卒業し、フランシュ=コンテ大学で哲学を専攻。卒業後は教師になった。1983年から2001年頃までエソンヌ県のマシー市で政治活動を続け、市長や市長会委員等を歴任。1998年から2004年頃までエソンヌの県政にも参画している(県大評議会副議長、県大評議会議員等)。35歳(1986年)でエソンヌ県から元老院議員に選出され、2000年まで再選を重ね、2000年から2002年に職業教育大臣となる。2008年に社会党を離党して左翼党を創設。

 2012年に大統領選に出馬。さらにはフランス議会総選挙でルペン氏と対決した。政策的には、企業の国有化や環境保護の強化、NATO脱退、反EU等を掲げている。

「社会党」(ジャン=クリストフ・カンバデリス第一書記:62歳)

 カンバデリス氏はパリ19区選出国民議会議員であると同時に欧州担当閣外相を務めていた。2014年以降、社会党第一書記。カンバデリス氏はストロース=カーン、ジョスパン両氏に近く、左派諸党内での政治力が高く評価されている。

 ただ、大統領選に出たのはブノワ・アモン前国民教育相。アモン氏はブレティニー=シュル=オルジュ市議会議員(2001~08)、欧州議会議員(2004~09)社会党報道官(2008~12)を歴任。12年に下院(国民議会)議員となり、その後、経済系閣僚や国民教育相を歴任した。