トランプ政権と日本・アジア 2017

米国株や為替に影響する時事問題を中心に政治動向をウォッチ。今さら聞けない常識も再確認。

特別会計 何が問題? 一般会計と合わせた規模は何兆円?

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(出所はWIKI画像)

  今回は「特別会計」という難物について考えてみます。

 というのは、当ブログ記事(2016/8/15)を読み、「日本の財政ってどうなっているんだ?」という疑問を持たれた方の声を聞いたからです。

  • そもそも、特別会計と一般会計を足した本当の歳入と歳出はどうなっているのか?
  • なぜ、信用力が桁違いの「国」の会計が、一家族の「家計」の議論にたとえられて説明されるのか?

 筆者にも、同じような疑問はかねがね感じてきました。

 政府の説明や新聞の解説を見ても、今一つ腑に落ちないことがよくあります。

 財政に関して、筆者も十分に理解し切れているわけではありません。

 しかし、読者から財政に関する質問をいただいたので、この機会に、特別会計について考えてみます。

※今回は主に「特別会計」の中身を見ていきますが、国の会計を「家計」に譬える、というよくあるアナロジーに関しては、1)個人と国の「寿命」の違い(国は100年を超えても、かつての英国のように債務を引き延ばすことができる)、2)徴税権という強力な権限の存在、3)通貨発行権という個人が持てない手段の保有、という3点から見て、ふさわしくないと言えます。

「特別会計」とは何か?

 まずは基本的な数字の確認から入ります。

 よく新聞に出てくる約100兆円ほどの「一般会計」だけでは、日本の財政の歳出・歳入の規模はわからないからです。

 財政法第13条第2項は、以下の3つの規定に沿って、政府が「特別会計」を組むことを認めています。

  1. 特定の事業を行う場合
  2. 特定の資金を保有してその運用を行う場合
  3. その他特定の歳入をもって特定の歳出に充て一般の歳入歳出と区分して経理する必要がある場合

 要するに、特別会計は、年金や失業保険等のように、政府が行う事業・運用等のための会計です。

 そして、その事業には必ず、所管する省庁が存在しています。現在、存在する特別会計を列挙してみましょう(以下、カッコ内が所管省庁)。

  • 交付税及び譲与税配付金特別会計 (内閣府、総務省及び財務省)
  • 地震再保険特別会計 (財務省)
  • 国債整理基金特別会計 (財務省)
  • 外国為替資金特別会計 (財務省)
  • 財政投融資特別会計 (財務省及び国土交通省)
  • エネルギー対策特別会計 (内閣府、文部科学省、経済産業省及び 環境省)
  • 労働保険特別会計(厚生労働省)
  • 年金特別会計(内閣府及び厚生労働省)
  • 食料安定供給特別会計 (農林水産省)
  • 国有林野事業債務管理特別会計 (農林水産省)
  • 貿易再保険特別会計 (経済産業省)
  • 特許特別会計 (経済産業省)
  • 自動車安全特別会計(国土交通省)
  • 東日本大震災復興特別会計 (国会、裁判所、会計検査院、内閣、内閣府、 復興庁、総務省、法務省、外務省、財務省、 文部科学省、厚生労働省、農林水産省、経済 産業省、国土交通省、環境省及び防衛省)

    特別会計には、所管省庁の「サイフ」のような面があります。

    そのため、予算に伴う利権や、退職後の天下り先確保に悪用される危険性などが、たびたび指摘されています。

「一般会計+特別会計」の規模

   しかし、特別会計の抱える一番の問題点は、その「わかりにくさ」です。

   これを解決したいのですが、それを本格的にやると、記事をあと10個は書かなければいけなくなりそうです。

   そのため、今回は財務省の『特別会計ハンドブック』に沿って概略を見ていきます。

    これを見ると、一般会計に特別会計を加え、重複額と国際借り換え額を抜くと、政府の予算規模は201.5兆円となることがわかります。

    このあたりは筆者の2016/8/15記事でも説明していますが、初めて読む方のために再掲しておきます。

 

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(出所:『特別会計ハンドブック 平成28年度版)

 そして、統合版の予算で、歳入・歳出を見直してみます。

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(出所:『特別会計ハンドブック 平成28年度版「国の財政規模の見方について」』)

 

 歳入は、主に「税金」「保険料」「借金」の三つがメインです。

  • 租税及び印紙収入    61.3兆円(24.8%)
  • 保険料及び再保険料収入 42.0兆円(17.0%)
  • 公債金及び借入金    97.6兆円(39.6%)

  そして、歳出の半分以上は国債費と社会保障関係費で消えていきます。

  • 国債費       92.0兆円(37.6%)
  • 社会保障関係費   86.4兆円(35.3%)
  • 地方交付税交付金等 18.3兆円(7.5%)
  • 財政投融資     17.1兆円(7.0%)

  結局、新しい政策的経費には、あまりお金を回せないわけです。

特別会計の疑問点①:「剰余金」の累計は16.7兆円

 前掲の『特別会計ハンドブック』を見て、筆者が気になったのは、累計16.7兆円の剰余金です。これは、前掲の各特別会計の歳入歳出の差額から発生しています。

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 16.7兆円。消費税の税収に匹敵する剰余金が出ています。この用途は、もっと検証されなければいけないでしょう。

 図表の字が小さくてみづらいので、一応、テキスト化しておきます。

  • 年金特別会計:3.2 兆円 ⇒給付額が予定を下回ったため
  • 外国為替資金特別会計:3.1 兆円 ⇒運用収益(保有外貨資産と円建負債〔政府短期証券〕の金利差)
  • 交付税及び譲与税配付金特別会計:2.2 兆円  ⇒地方交付税交付金の支出残額の翌年度繰越し等。
  • 東日本大震災復興特別会計:1.4 兆円 ⇒地元調整等に時間を要したことによる事業の繰越し等が発生要因。
  • 財政投融資(投資):0.5 兆円  ⇒納付金と配当金収入が予定を上回り、産業投資支出が予定を下回ったため
  • 財政投融資(財政融資資金勘定):0.3 兆円  ⇒調達金利は低水準、残存する長期貸付が高金利のため

 剰余金は機械的に翌年度に繰り入れされていますが、これに関して、筆者には幾つかの疑問点があります。

 例えば、年金給付額が予定より下回っていますが、公的年金の受給総額は53.4兆円(2014年度)なので、誤差は5~6%ぐらいです。

 これは小さな数字ではありません。

 消費税を1%増税すると2兆円程度増収になると言われているので、だいたい1.5%分相当の金額だと言えます。

 前回の増税は「年金(社会保障)のために増税だ」という論理だったので、この数字を見ると、「5%から8%も増税する必要があったのか?」という疑問が出てきます。増税規模の半分程度が「誤差」だったわけですからね。

 また、東日本大震災復興特別会計の1.4兆円。

 これは、もともと、復興のために緊急で集められたお金でした。

 しかし、地元ですったもんだが生じて用途が明確化できず、翌年繰り越しになったと書かれています。

 それは、当年度で使うほど切迫した用途がなかったということを意味しているのではないでしょうか。急ぎで使う必要がないなら、もはや、復興増税も終わりにすべきだと思うのですが・・・。

特別会計の疑問点②:外国為替資金特別会計の存在意義って何?

 外国為替資金特別会計では、円売り・外貨買い介入に伴って取得した外貨を「資産」とし、 円を調達するために発行した政府短期証券を「負債」としています。

 日本の外貨準備は、通貨当局が為替介入で使う資金ですが、これは通貨危機等で他国に対して外貨建て債務の返済が困難になった時に用いられる準備資産でもあります。

 行き過ぎた円高や世界通貨危機等の非常時に備えて、財務省(外国為替資金特別会計)と日本銀行が外貨準備を保有することになっているのです。

 そして、前掲の『特別会計ハンドブック』を見ると、過去の介入の規模と資産・負債のバランスシートが出ていました。

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 日本の外貨準備は130兆円規模で、過去、通貨介入を行った金額の規模は数兆円~30兆円程度です。

   国際通貨基金(IMF)へ最大 1000 億ドル相当の貸付と 600 億ドルの追加資金を行うために活用されたこともありますが、この規模でも20兆円以下です。

 そして、日本の120~130兆円の外貨準備は平時、どうなっているのでしょうか。

 この外貨資産は約 8 割以上が債券で運用されています(債券 84.2%、預金 9.5%、 SDR1.4%、金 0.1%、その他 4.8%〔2016 年 3 月末時点〕)。そして、「債券は、国債約 8 割、政府機関債、国際機関債等約 2 割で運用」されているそうです(『特別会計ハンドブック』)。

 前掲ハンドブックでは、外国為替資金特別会計の解説のくだりで、その貸借対照表も公開されていました。

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 有価証券(外貨建て債券。大半は米国債と思われる)は130兆円規模です。

 結局、外国為替資金特別会計は130兆円もの資産をキープしているのですが、非常時の通貨介入等で用いたお金は、過去30兆円規模が最大ですから、日本の外貨準備は過大なのです。

 原則的には、日本は変動相場制ですから、非常時以外には通貨介入を行わないことになっています。昨今は、介入をやりまくると、トランプ政権から「為替操作国」指定をされかねないご時世でもあります。

 固定相場制の国は、1ドル360円(※戦後初期の日本)、1元あたりXドル(中国)といったレートを守るために、通貨変動に対して為替介入を行わないとレートを維持できません。中国が巨大な外貨準備を確保したがるのは、これが理由です。

 しかし、今の日本は、変動相場制に移行したのに、実際の介入規模よりも過大な外貨準備を持っています。

 米国債売却は、日米同盟を揺るがす外交問題になりかねない難しさを備えていますが、日本国民に消費税増税を強いながら外貨資産だけが膨張しているのもおかしな話です。

 高橋洋一氏(嘉悦大教授)は、外国為替資金特別会計を財源として消費税を減税すべきだとも述べていました。

 日本経済の再建のためにも、本当は、このあたりの適正規模をチェックしなければいけないのではないでしょうか。