トランプ政権と日本・アジア 2017

米国株や為替に影響する時事問題を中心に政治動向をウォッチ。今さら聞けない常識も再確認。

H-IIAロケットで準天頂衛星「みちびき」を打上げ JAXAと三菱重工業の挑戦は成功するのか?

f:id:minamiblog:20170601062445j:plain

 (H-IIAロケット。出所はWIKI画像)

  宇宙航空研究開発機構(JAXA)と三菱重工業は準天頂衛星「みちびき」2号機をのせたH2Aロケット(34号機)を6月1日に種子島宇宙センター(鹿児島県南種子町)から打ち上げることを発表しました(発射時間は午前9時17分です)。

 今回は、この打ち上げを取り上げ、日本の主力ロケットである「H-IIAロケット」と「イプシロンロケット」を比較し、今後の宇宙開発について考えてみます。

順天頂衛星って何?

 衛星の種類は分かりにくいのですが、順天頂衛星は、日本のほぼ真上を通り、ぐるぐると地球の周りを巡る衛星です。信号を送って移動中の船や航空機、車等に対して、正確に現在位置を教えることができます。

 衛星測位システムは、人工衛星を用いて現在位置を計測するシステムであり、その典型はGPSです。

 GPSでは複数の衛星から発進された時刻信号を地上で受信し、電波のわずかな遅延の差を測り、地上の座標を測定します。そのため、広い範囲に多数の人工衛星が配置されると、測位の精度が上がるのです。 

 アメリカのGPS(全地球測位システム)を補完し、今回の準天頂衛星「みちびき」2号機の打ち上げで、現在10m程度の誤差を数cmにまで縮めることを目指しています。「みちびき」は2010年9月に1号機が稼働しましたが、今年度には、これに続く2~4号機を打ち上げ、18年度から4基体制でGPSを運用します。

 H-IIAロケット:液体燃料推進の主力ロケット

 H-IIAロケットは、日本で用いられている主力ロケットです。このバージョンでは日本初の純国産ロケットであるH-IIロケットを改良し、低コスト化しました。

 設計を簡素化し、製造と打ち上げを効率化することで打ち上げコストを半分以下にし、重量の違う衛星に合わせて4形態のロケットから選べるようになっています(打ち上げのバージョンで費用規模は変わるが、約85億円から120億円程度なので、H-IIロケットの費用〔140億円~190億円〕に比べると安くなった。

 大きさはH-IIA(標準型)の場合、全長53mで、4トンの衛星を打ち上げることができます。

 ロケットは289トンの質量を持ち、二段式のエンジンを備え(第1段エンジンがLE-7A、第2段エンジンがLE-5B)、2本の固体ロケットブースタ(SRB-A)を用いて飛びます。

  ロケットは液体燃料(液体水素と液体酸素が推進剤)で飛び、左右2基の固体ロケットブースタ(SRB-A)だけでなく、積載重量に合わせてSRB-Aや固体補助ロケット(SSB)を追加することも可能です。

  H-IIAロケットは2001年以来、17回の打ち上げ実績があるので、平均値で見ると、だいたい、年に一回程度は打ち上げているようです。 

イプシロン:固体燃料推進で低コスト化が図られたロケット

 いっぽう、イプシロンロケットは低コストでつくられた固体燃料式の3段式ロケットです(4段目も追加可能)。数百㎞の軌道に向けて、最大1.2トンの衛星を打ち上げることができます。

 H2Aロケットとは違い、固体燃料ロケットは液体を入れる時間が要らないので、打上げ準備のまま待機でき、構造がシンプルになると言われています。H2Aロケットは54mですが、イプシロンはその半分程度(24.4m)です。

 そして、イプシロンの重さは91トンなので、先代のM5ロケット(140トン)よりも小型化が計られ、M5の3分の2の規模の衛星を打ち上げることができます(M5は1.8トンの衛星を打ち上げ可能だった)。

 M5には約75億円もの打ち上げ費用がかかったので、イプシロンでは低コスト化が進められ、約38億円での打ち上げが可能になりました。

 三段ロケットは既存のパーツを転用しており、第一段はH2Aの下部にある固体補助ロケット、第二段、第三段はM5ロケットのエンジンから構成されています。

 点検操作には人工知能が組み込まれ、作業の一部が自動化されるなど、先進的な試みも盛り込まれました。

 そして、イプシロンにも試験機と強化型の違いがあり、JAXAの解説ページ(JAXA | イプシロンロケット)では、強化型ではコンパクト化と運用性の改善が図られたと書かれています。 

強化型開発の大きな目的は「打ち上げ能力の向上(試験機に比べて30%向上)」と「搭載可能な衛星サイズの拡大」です。試験機ではフェアリングの中に覆われていた2段モータを大型化してフェアリングの外に出すことによって推進薬量を約1.4倍に増加させることが可能となり、また、フェアリング内部に衛星と3段のみを格納することで、より大きな衛星が搭載できるようになります。

 打ち上げ能力が30%改善され、もっと大きな衛星が積めるようになりました。

 フェアリングというのはロケットの先端にある部品です。これが卵の殻のように中身(衛星)を打上げ時の大音響や振動、摩擦熱から守ります。その中にあるモータを別の場所に置き、推進薬を10.7トンから15トンに増やしたのです。

「情報」を米国に依存している日本

 日本は衛星情報に関しては米国のGPSに大部分を依存しており、これを国産化する構想ができていません。本年に北朝鮮は何度も弾道ミサイルを日本海に向けて発射しましたが、この種の情報の多くを米軍に依存しているので、もし、ある日、ある時に「アメリカが日本に情報を流さない」と決めたら、その時から、重要な軍事情報が断絶してしまうわけです。

 そう考えると、自国の防衛のためには、日本は、長い時間がかかったとしても、独自のGPSシステムを持つ必要があります。

 中国では「北斗」計画(※中国版の衛星情報網建設計画)があり、EUには「ガリレオ」計画(※こちらも衛星情報網建設計画)があるのは、やはり、自国を守るためにも軍事情報を自前で取得する必要があるからです。 

宇宙開発予算は国力増進の要

 日本の宇宙予算はだいたい3000億円ぐらいです。市場規模で言えば「宇宙機器産業(衛星、ロケット、地上施設等)は3160億円」ほどだと言われています。そして「世界主要国の宇宙開発予算の30~70%は軍事関係」(米・英は72%。仏は33%、独は31%、日本は5%)であり、「 軍事関係の実績が商用に転用される欧米に対して我が国は国際競争において劣勢」だとも指摘されていました。(日本の宇宙産業の現状と今後の展望

 予算額としては他国よりも少ないわけではありませんが、各国は軍事技術開発の成果を商用に転用してくるので、競争相手としては手ごわいわけです。そして、日本の宇宙開発は、一回打ち上げに失敗したら、予算が打ち切られかねない状況の中で進められてきました。

 2014年には「はやぶさ2」の打上げに成功しましたが、この時は小惑星から物質を持ち帰るという限定戦で技術力の高さを世界に実証しようとしました。

 しかし、中国は前掲の「北斗」計画だけでなく、月に探査機を着陸させていることを考えると、日本にも、もっと安全保障の強化につながるような宇宙開発計画が必要なのではないでしょうか。

 宇宙開発は多くのスピンオフを伴うので、他の産業にも大きな恩恵が及びます。

 衛星放送、天気予報、GPS、車のエアバック、船を守る断熱技術など、宇宙開発から生まれた技術やサービスが様々な方面で生かされているのです。

 すぐに成果が出るわけではありませんが、宇宙開発に遅れを取ると、世界の先進国との競争に劣後してしまうので、日本には、もっと宇宙開発に力を注ぐ余地が残っているとも言えるでしょう。