トランプ政権と日本・アジア 2017

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世論調査「豊洲移転」VS「築地再整備」の意外な結果 都議選はどうなる?

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東京タワー。出典はWIKI画像(筆者トリミング)

 

 毎日新聞が5月27日と28日に行った電話世論調査(有効回答1016人)で「豊洲移転」VS「築地再整備」のどちらを支持するか、という問いを有権者に投げかけたところ、どうやら「豊洲移転」のほうに軍配が上がったようです。

 以下、毎日新聞(2017/5/29)記事「豊洲市場『移転すべきだ』28% 」を参照。

  • (豊洲市場に)「移転すべきだ」:28%
  • 「移転を中止し築地市場を再整備すべきだ」:21%

男性は「移転」が4割で「再整備」の約2倍だった。これに対して女性は54%が「どちらとも言えない」と答えた。小池氏の支持率は男性の57%に対し、女性は69%と高い。豊洲移転については小池氏が可否判断を示しておらず、こうした態度が女性の「豊洲か築地か」の判断に影響を与えている可能性もある。 

 もっとも、態度を決めかねている有権者も数多いので、最終的な都民の判断がどちらに傾くかはまだ決まっていません。しかし、豊洲移転に否定的な毎日新聞調査で、この結果ですから、一応、この数字を重く受け止めて考えてみたいと思います。

朝日、読売、日経の調査ではどうなる?

 なお、4月1~2日に朝日新聞社が電話で行った論調査でも、「築地市場の豊洲市場への移転を今後も目指すべきか」という質問に対して、「今後も目指すべきだ:55%」「やめるべきだ:29%」という結果が出ています(朝日デジタル4/5)。

 他社の最近の世論調査の結果は以下の通り。

 ★読売(5/22)
「さらに安全対策を行い豊洲に移転する」:42%
「できるだけ早く豊洲に移転する」:24%
「移転せずに築地市場を改修する」:24%

★日経(5/28)
「移転させるべきだ」:50%
「移転させるべきでない」:37%

やはり、築地でも汚染物質が出ている

 5月25日には「築地市場の土壌から基準上回る5種類の有害物質」(NHKニュースWEB)が出たことが報じられました。もともと米軍が使用していた汚染地域だったために移転したので、これは当たり前の話です。

  • 100か所余りの調査地点のうち30か所から、環境基準などを上回る鉛や六価クロム、ヒ素など、5種類の有害物質が検出された
  • このうち鉛は4か所で最大で基準値の4.3倍、六価クロムは6か所で最大1.4倍、ヒ素は20か所で最大2.8倍、水銀は1か所で1.8倍、フッ素は3か所で最大1.5倍が検出された。
  • 都は、検出地点は土壌がアスファルトなどで覆われていることなどから、市場の安全性に問題はないとした
  • 1か所の地中のガスから、有害物質のベンゼンが検出された

 この事実が改めて周知され、その後に世論調査を取ったら、「だったら、投下費用をフイにしてまで築地再整備なんて馬鹿げている。豊洲のほうがましでは」と考える人が増えたのかもしれません。

 都の調査は、築地はアスファルトで覆われているので汚染物質があっても問題なしとしましたが、これは豊洲市場でも同じです。結局、豊洲でも問題なくなるため、合理的に考える人であれば、予算と手間がかからないほうを選ぶのは、至極当然の話ではあります。

なぜ豊洲になった? 築地移転の経緯

   いちおう、そもそも、どうして移転先が豊洲になったのかを振り返ってみます。   この経緯は、東京都中央卸売市場のHPに書かれていました(※以下、Q&Aの「なぜ移転整備が必要なの?」の要旨)

  • 〔用地〕高度な品質管理・衛生管理が可能な卸・仲卸売場だけでなく、広い駐車場や荷さばきの場を配置できる約40ヘクタールの敷地
  • 〔交通〕高速道路や幹線道路にアクセスしやすい交通条件
  • 〔商圏〕築地が築いた商圏に近いこと。機能・経営面での継続性。

    この三要件を満たす場所が豊洲しかなく、その候補地は「豊洲地区、晴海地区、有明北地区、石川島播磨重工業豊洲工場跡地、中央防波堤内側の5地区」とされたのです。

  そして、当時の責任者だった石原慎太郎氏は週刊新潮のインタビュー(2017/3/2号<小池百合子は総理の器にあらず 「石原慎太郎」独占インタビュー第1弾(上)>)で環境面に関しても検討が行われたと述べています。

     土壌の汚染についての議論はあったと記憶しています。移転関連費を盛り込んだ予算案を巡っては都議会も紛糾して、63対62という僅差で可決された経緯もある。

 そのため、都の幹部が『議会の承認が得られたので裁可をお願いします』と言ってきた際、私は『汚染の問題があるようだけど、本当に大丈夫なのか』と尋ねています。

 その時、都の幹部は『いまの日本の技術をもってすれば問題ありません』と答えた。

 そして、豊洲移転は青島知事時代から既定路線となっており、築地市場には環境面の問題があったというコンセンサスがあったことを指摘しています。 

(※豊洲移転は)就任した1999年4月の時点で既定路線となっていました。先代の青島(幸男)君からの『引き継ぎ事項』があって、そのなかに豊洲移転に関する項目も含まれていた。

  築地市場は老朽化して、冷暖房の整備も覚束ないため衛生面の不安も残る。それに、工期・工費そして、アスベスト問題もある。

   結局、豊洲市場移転に関しては、用地、交通、商圏、環境の四要件の考慮が必要だったわけですが、環境面の説明が分かりにくく、意思決定の過程にはいろいろと不透明なところがありました。そのあたりが有権者の反発を招いたのでしょう。

 ただ、 昨年以降の豊洲報道は、環境面に偏りすぎているのかもしれません。

    環境が悪いという理由で豊洲市場移転をなくした場合、前掲の十数年がかりの議論をゼロから差し戻すことになるおそれがあります。それは膨大な行政コストを生むので、きわめて「もったいない」結果になりかねないーー。そうした見方も成り立つと思います。

石原氏は小池知事には「不作為の責任」があると批判

 石原VS小池の論争は3月~4月にかけて続きましたが、3月3日の両者の応酬でほぼ内容は尽きています。

  • 石原氏:消費者の不安は高まったが、科学的に見て豊洲移転の「安全」は揺らいでいない
  • 小池氏:消費者の「安心」のみならず、科学的に見た「安全」も揺らいでいる

 ここで両者の主張がぶつかったわけです。

 石原氏は、豊洲移転を止め、多額の損失を発生させた小池知事には「不作為の責任」(なすべきことをしなかった責任)があると批判しています(以下、産経ニュース〔2017.3.3〕の発言詳報からの抜粋)。

「やるべきことをやらずにことを看過して、しかも日々、築地で働いている人を生殺しにしたままほったらかしにして、ランニングコストや築地で働く人への補償にべらぼうなお金がかかる、こんな混迷迷走の責任は今の都知事、小池さんにある」

「米田さんという京大の最高権威の話をじかに聞きました。また、彼から紹介された女性の中西さん、その方の意見も、『豊洲の現況は全く危険がない、なんで豊洲に早く移さないのか、風評に負けて豊洲がこのまま放置されるのは科学が風評に負けたことになる。国辱だ、世界に日本が恥をかくことになる』という忠告、コメントもいただきました。小池さんは今、権限をもって豊洲に移転すべきだと思いますし、しないなら告発すべきだと。要するに不作為の責任だ」

(産経ニュース【豊洲問題 石原元知事会見詳報(1)】3/3) 

 地下水で環境基準を超えた汚染物質が発見されても、その水を直接飲むわけではないし、水はコンクリートで遮られます。それが万一、地表で蒸発しても健康被害が出るレベルになるとは考えにくいからです。

小池知事は「安全」も揺らいだと言っているが・・・

  小池都知事は、石原氏の「小池知事は安心と安全を混同して迷路に迷い込んでしまっている」という発言について反論しています。

(※以下、出所:小池知事「知事の部屋」/記者会見(平成29年3月3日)|東京都

 小池氏は安全は「科学的、法律的な根拠」をベースにすべきだとし、安心に関しては、都民に消費者として信頼を持ってもらうことが大事だと述べています。豊洲の現状について安全確認の重要性を強調しました。そして、豊洲のモニタリングによって安心と安全が崩れたと述べています。

「あのような数字が出てしまって、この安心の部分、ましてや安全の部分でさえ、かなり崩れてしまったわけであります」「だからこそ再調査をするのであって、さもなければ、きちんとした安全も安心も得られない」

  石原氏は、豊洲の地下水で環境基準を超えても、現状では都民の健康に影響が出るわけではないから、「安全」は崩れていないとみているのですが、小池氏のほうは、現状で「安全」の部分が崩れていると考えています。

 その意味で、両者の見解はすれ違っています。

 石原氏は、小池氏が豊洲移転を止め、業者に実害を負わせたことを批判していますが、小池氏はその被害には補償を行っていると反論(そのお金も都民の税金から出ているのですが・・・)。

 そして、最後に、小池氏は石原氏への問いとして、費用負担の問題の経緯が不透明であることを批判しました。

「なぜこのように、この土壌対策費用がかかり、そしてまた、それを都の市場の方で負うようになったのか」「瑕疵担保責任の部分というのが一番大きな部分ではないか」「お金、建設費も、途中から、もううわーっと膨らんでいくわけです」

 確かに、石原氏の過去の発言を見ると、このあたりはあいまいです。石原氏の主張にも理に適った部分はあると思うのですが、この不透明感が、同氏の印象を非常に悪くしているように思えます。

 ただ、その後、豊洲市場問題を巡り、百条委員会が設置されましたが、確たる成果は見えないまま終了しました。意外と石原氏がまともなことを言っていたことが、冒頭の世論調査にも反映されたように思えます。

未だに豊洲移転について結論を出さない「都民ファーストの会」

 筆者がいちばん疑問を感じているのは、結局、「都民ファーストの会」が大騒ぎの渦中となった「豊洲移転」の是非について、明確な結論を持っていないことです。

 都民ファーストの会の「政策」が書かれたページの記述を見てみましょう。

基本政策13 都民の食の安全と安心を守ります

5800億円を投じながら、行政、議会が求めた環境基準以下の約束は、いまだに果たされていません。さらに、毎年約 100 億円もの赤字発生が懸念される市場計画の甘い見通しなど、「市場のあり方戦略本部」で総点検し、持続可能な市場の確立を総合的に判断し、知事の立場を尊重します。

 お役人のように「総合的に判断します」と述べ、「私たちは知事のポチです」と言っているだけにしか見えないーーこれは、筆者の偏見のためなのでしょうか。

 本当に政治家であるなら、きちんと党としての結論、政治家としての明確な判断をもって選挙に臨んでいただきたいものです。結論がどちらだか分からない人に政治を任せることはできないからです。

(筆者は共産党を支持していませんが、主張が明確だという点で共産党のほうが、都民ファーストの会よりも「わかりやすい」と考えています。都民ファーストの会の前掲の記述は結論がないため、その是非を都民が判断できません)

 そして、「議会の役割を正しく理解していないのではないか?」という疑念も残ります。

 日本の地方自治は三権分立の大統領制に近い仕組みなので、議会の仕事は「知事の立場を尊重する」ことではありません。各党とそこに所属する議員が独自の見解と政策を持ち、自治体のために「何が正しいか」を考え、賛否を含めて率直な議論を交わす場だからです。

 費用面の記述も出ていますが、筆者は5800億円を投じたのなら、「安心」を求めるうえで最善ではないにせよ、「安全」が守られる範囲で決めてほしいと思います。しかし、都民ファーストの会は「豊洲移転に際して、これ以上、意思決定の遅延でコストを増やさないでください」という都民の声にこたえる気はないようです。

 結局、あいまいな政策で都政を戦おうとする「都民ファーストの会」のスタンスには「小池人気というムードに乗じて選挙に勝ちたい」という政治的打算が透けて見えるような気がしてなりません。 

都議会勢力図の現状(5/10時点)

 新聞報道では省略されがちですが、都議会(定数127名、現員126名、女性議員25名)の会派は以下の構成になっています。

  • 東京都議会自由民主党:56人
  • 都議会公明党:22人
  • 東京改革議員団:18人
  • 日本共産党東京都議会議員団:17人
  • 都民ファーストの会 東京都議団:5人
  • 都議会生活者ネットワーク:3人
  • 無所属(新風自民党):1人
  • 無所属(深呼吸のできる東京):1人
  • 無所属(東京みんなの改革):1人
  • 無所属(日本維新の会 東京都議会):1人
  • 無所属(都民塾の会) 1人
  • 現員 126(うち女性25)人
  • 定数 127人

 「深呼吸のできる東京」という謎の呼称が気になりますが(こんな会派があったのか・・・)、現状では都議選を前にして既成政党に動揺が広がっており、都民ファーストの会への”亡命者”が続出する可能性が高まっています。

防衛戦に追い込まれる既成政党

 小池氏の躍進ぶりを見て、すでに昨年12月の時点で公明党は自民党との都議会における連立を解消しました。

 炎上中の自民都連から手を引き、小池氏支持を表明することで「守り」に入っています。

 そして、民進党のほうにも勢いがありません。

 2月14日には、都議会の民進党2会派が「東京改革議員団」に統一され、小池知事の東京大改革への支持を表明しましたが、小池氏には足元を見られています。小池氏は都民からの支持率がふるわない「民進党」全体と連携せずに、候補者ごとに政策や資質、人望などを判断し、個人ベースで協力するか否かを決める方針だからです。

 小池氏は区長選で内田茂都議に勝利し、都議選勝利の弾みを付けました。これに関して、ネット版のNEWSポストセブン記事(2015/2/15)では、政治評論家の有馬晴海氏の分析が紹介されていました。

「千代田区長選の出口調査では小池都政への支持が8割以上に達し、自民党支持層でも6~7割が小池系候補に流れた。この勢いが都議選まで続く」「都民ファーストの会は都議選で各選挙区1議席を獲得するにとどまらず、定数8の大田や世田谷、定数6の杉並、練馬、足立などに複数の候補を擁立し、圧勝する可能性がある」(「都議選 小池新党から70人擁立なら民進党は壊滅的危機に」)

 そして、都民ファーストの会が70人候補者を擁立した場合の未来図を描いています。

「無党派票の大部分は都民ファーストの会に流れる。支持基盤が固い公明党は一定の議席を維持するでしょうが、そのあおりを一番受けるのが選挙基盤の弱い民進党です。現在、民進党都議や候補が小池陣営に鞍替えする動きが出始め、さらに加速する流れもある。民進党は選挙前に壊滅的危機を迎える可能性があります」(同上)

  既成政党は、都議選で議席減を防ぐための戦いを強いられる可能性が高まっています。

 都議選は次期衆院選の前哨戦でもあるので、ここで大敗すれば民進党の士気が大きく下がってしまいます。

 現在、蓮舫代表の支持率は下がっているので、7月の都議選で負ければ窮地に追い込まれるのは必至です。

 豊洲移転騒動を延々と長引かせると経済的な実害が発生するので、筆者はこれを政治劇に用いた都知事の手法には一定の疑問を持っています。

 ただ、PR戦術としてみると、小池氏は見事な「成果」を収めているようです。

 マスコミはネタを欲するので、従来の都政の怪しい部分を際立たせる「豊洲の盛り土」は、世の耳目を引く絶好の材料だったとも言えます。

 しかし、今後は都議選があるので、小池氏と「都民ファーストの会」の「政策の中身」を注視しなければいけないでしょう。