トランプ政権と日本・アジア 2017

米国株や為替に影響する時事問題を中心に政治動向をウォッチ。今さら聞けない常識も再確認。

北朝鮮ミサイルが日本の排他的経済水域に落下 制裁効かず 頼りになるのは同盟と抑止力強化のみ

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(NASAが見た日本海近辺。出所はWIKI画像)

  北朝鮮が弾道ミサイルを29日午前に発射しました。

 これに対して、菅義偉官房長官はこのミサイルは5時40分頃に北朝鮮東岸から発射され、日本海の排他的経済水域(EEZ)内に落下したとみられると述べ、北朝鮮に厳重抗議したことを明らかにしました(6時40分頃の記者会見)。

 安倍首相も会見し「北朝鮮を抑止するため、米国とともに具体的な行動を取っていきます」と述べています。

 米太平洋軍は1発の短距離弾道ミサイルが発射され、約6分間飛行し、日本海に落下したと見ていますが、その後、菅義偉官房長官の2回目の臨時記者会見でその詳細が明かされました。

 菅氏は、ミサイルの落下地点に関して、北朝鮮の「東方向に約400キロメートル飛行し、新潟県佐渡島から約500km、島根県隠岐諸島から約300kmの日本海上(※EEZ内)に落下したと推定される」と発表しています。

 これはイタリアのシチリアサミットにて「北朝鮮の問題は国際社会の最優先事項」とされたことへの対抗措置に見えますが、5月21日の中距離弾道ミサイル発射では日本のEEZ外に落下したので、今回は、同国はもう一歩を進め、トランプ政権を刺激しない範囲はどこまでなのかを模索しているようです。

 米太平洋艦隊は5月26日に空母ニミッツ(6/1にワシントン出港)を太平洋北西部に派遣することを発表しているため、6月以降、空母3隻体制になる見込みですが、金政権は「それでも屈しないぞ」と意思表示しているわけです。

  韓国の文政権がどこまで北朝鮮に強硬策が取れるのかが分からず、トランプ大統領が外遊している合間をぬって、北朝鮮が鬼の居ぬ間に洗濯を続けています。

もはや制裁だけではどうにもならない

 岸田外相は国連安保理での対応を米韓両国と始め、中国の国務委員とも協議していることを明かしました。

 日本政府は結局、制裁強化という落ちで終わりそうですが、過去の対策を見ると、硬軟合わせた方策はいずれも成果なしで終わっています。

 90年代の核開発に関して、我が国は1995年~2000年までに累計108万トンのコメ援助を行い、核開発停止を要求しましたが、その返答は1998年のテポドンミサイル発射実験でした。

 2000年代の六カ国協議(03年~08年/日本、アメリカ、韓国、中国、ロシア、北朝鮮)が行われても、結局、2009年の北朝鮮核実験と長距離ミサイル発射実験によって裏切られました。

 日本は14年に一時期、制裁緩和に踏み込みましたが、拉致問題への返答はなく、16年に核実験とミサイル実験という、いつもながらの「返答」で終わったのです。

 制裁の中身は、北朝鮮国籍者の入国禁止、北朝鮮船の入港禁止、北朝鮮への輸出禁止、北朝鮮から輸入禁止などですが、この種の方策は核ミサイル開発の歯止めにならないことが実証されました。

  そのため、残された選択肢があるとすれば、日本の抑止力強化ぐらいしかありません。

 ミサイル防衛システムを強化しても、多方面に百発以上のミサイルが飛んで来たら防衛の限界をあっさり超えてしまうので、結局は、反撃能力を確保して「撃たせない」ようにするぐらいしか選択肢は残っていないでしょう。

 そのため、筆者は、当ブログで、米海軍アドバイザーの北村淳氏が薦める、1000億円で800発の巡航ミサイル(トマホーク)を米国から買う、というプランを採るべきだと主張しています。

(※「何で800発?」という疑問もあろうかと思いますが、攻撃的な国を抑止するミサイル戦力としては、だいたい1000発ぐらいは必要なようです。例えば、イスラエルはイランの核開発抑止のためにオルメルト首相時代に「1000発のミサイルを撃つぞ」と威嚇したことがあります。800発というのは1000億円に合わせた数字にすぎず、1ドル100円時代に、北村氏は1000発保有を薦めていました)

 ミサイル防衛システムで日本を完全に守ろうとしたら数兆円もの予算が必要になりますが、巡航ミサイルは一発100万ドル程度なので、限られた予算で国を守るためには、反撃能力を確保したほうが合理的だからです。

(詳細は北村淳著『巡航ミサイル1000億円で中国も北朝鮮も怖くない』を参照)

 あと一つ、付け加えるとすれば、日本が憲法九条を改正し、自衛隊を「軍隊」として正式に位置付ければ「防衛法制上、決めたことしかできない」という機能不全の自衛隊ではなくなります。

 諸外国の軍隊は、国際法と国内の国防法、ROE(交戦規則)等で禁じられたこと以外は機動的に動けるようにしているので、日本も普通の国のように、いつでも反撃できることが明確であれば、抑止力がもう一段、強化されるからです。

 もはや抗議しても制裁しても、北朝鮮のやることは一緒なので、日本も、もはや「最終手段」に踏み込むしか国を守る道は残されていない、と見るべきなのではないでしょうか。

実はボケっとしている韓国 北朝鮮問題には不感症

 日本では北朝鮮問題への警戒心が高まりましたが、隣国の韓国はそうではないようです。

 筆者も在韓経験ある知人から韓国ニュースチェックの結果を聞いたのですが、その人は、「北朝鮮がミサイルを撃ち続けていても、延々と国内問題(反朴槿恵と格差是正)を巡って大統領選に明け暮れている。春3月~4月は米韓軍事演習に伴って、例年、北朝鮮が口だけで吠えているだけだとしか思っていない」と述べていたのです。

『VOICE 2017年6月号』(P62~69)でも、評論家の宮崎正弘氏が『「同胞は攻撃してこない」危機感なき韓国人の日常」という記事を公開しています。ここではソウル現地の様相が書かれていました。

「もっとも気になったのは、街行く人びとに、北朝鮮からの軍事的脅威という懸念の表情が見て取れないことだった。学生街を歩いても立て看板もアジビラもなく、のんびりとしたキャンパス風景が拡がり、大学病院の蝟集する『学生路』に行ってみて、ようやく若者たちの集会に巡り合った」

 そこでやっていたのは「セヴォル号の行方不明者捜索」が不十分だという反政府活動で、終わった後は歌と踊りに明け暮れていたと報じられています。

 韓国人は北朝鮮問題に慣れっこになっていて、実際は不感症となり、危機意識が薄れているからこそ、対北融和路線の文氏が大統領選に勝てたのかもしれません。 

韓国では「徳政令」開始? そんなことやってる場合なのか

 そして、文在寅(ムン・ジェイン)新大統領の経済政策というのが、空恐ろしい内容なのです。

 韓国で”徳政令”(借金帳消し)が行われるという話が産経ウェスト(2017/5/28)で報じられていました。

 文大統領は「100万円以下の借金を10年以上借り続ける人々(43万7千人)を対象に、その借金と利息の全額を帳消しにする」ことを公約していました。同紙によれば、韓国には「国民幸せ基金」があり「国民約280万人の債権を買い入れ、うち57万人の約6兆3000億ウォン(約6300億円)の元金と利子を減免」してきたのですが、文氏は、この借金を「全額帳消し」し、これを「国が肩代わりする」プランを現実化する試みが進行しているのだそうです(「【世界ミニナビ】韓国でまもなく“徳政令”…借金帳消しは経済崩壊の序曲か」)。

 この記事では、韓国の経済統計のデータが並んでいました。

  • 青年失業率:11.2%(試験勉強中の人を含めると23.6%説あり)
  • 家計債務:約135兆円(過去最高)
  • 国民1人当たりの借金:2600万ウォン(約259万円)
  • 可処分所得に対する家計負債比率:169・0%(OECD平均は129・2%)

 経済の不調に伴って、こうした「徳政令」が浮上してきたわけですが、これこそ人気取りの「ポピュリズム」そのものです。そして、失業問題の解決のために、文氏は公務員を81万人も雇用することを公約していました。

 記事を読んでいる間に、ホラー映画を見ているような気がしてきます。

 日本人が「そんなことやっている場合なのか!」と叫んでも海の向こうの韓国人がこの大統領を選んでしまったので、どうにもできません。

 この後に及んで慰安婦合意見直しとか、THAAD配備の協議のためにわざわざ中国に特使を送ったり、「開城工業団地の再会」(北朝鮮の資金源になる)とか言ったりしている御仁が大統領なのですから、日本としては、もはや韓国には期待できません。

 そのため、日本は、日米同盟を強化しながら、北朝鮮の暴発を止めるべく、可能な限り、抑止力強化を図るしかないのです。