トランプ政権と日本・アジア 2017

米国株や為替に影響する時事問題を中心に政治動向をウォッチ。今さら聞けない常識も再確認。

トランプ初参加のG7シチリアサミット終了 「保護主義と闘う」そうです・・・

 

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(出所はWIKI画像)

  イタリアのシチリア島で開催されたG7サミットが5月27日に終わり、北朝鮮の核開発やテロ、気候変動、世界経済等についての声明が発表されました。

 参加者は以下の通りです。

  • 日本:安倍総理
  • アメリカ:トランプ大統領
  • フランス:マクロン大統領
  • ドイツ:メルケル首相
  • イギリス:メイ首相
  • イタリア:ジェンティローニ首相(議長)
  • カナダ:トルドー首相
  • EU:トゥスク欧州理事会議長及びユンカー欧州委員会委員長

 声明の全文は、抽象的な内容が多いのですが、今回のサミットはトランプ氏初出席なので、自由主義と保護主義の兼ね合いをどうするかが注目され、結果的には「保護主義と戦う」ことが明記されたのです。

 今回は、このあたりに力点を置きながら、サミットの内容を概観してみます。

「保護貿易と闘う」ことが明記されたG7首脳宣言

 外務省の翻訳で声明の「貿易」に関する箇所を見てみます(「G7 タオルミーナ首脳コミュニケ」)

  • 「自由で,公正で,互恵的な貿易及び投資は,相互的な利益を創出しながら,成長及び雇用創出の主要な原動力である」
  • 「我々は,不公正な貿易慣行に断固たる立場を取りつつ,我々の開かれた市場を維持するとともに,保護主義と闘うという我々のコミットメントを再確認する」
  • 「我々は,貿易が必ずしも常にあらゆる人の利益のために作用してきたわけではないことも認める。このため,世界経済が提供する機会を全ての企業及び市民が最大限享受できるような適切な政策を採用することにコミットする」

 大統領就任演説で産業に関して「保護」を掲げたトランプ氏と従来の自由貿易の路線がぶつかり合い、両者の主張が複雑に混ざり合っています。

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(参考:トランプ大統領の就任演説)

We must protect our borders from the ravages of other countries making our products, stealing our companies, and destroying our jobs.

他国の犯罪者から私たちの国境を護らなければならない。我々の生産物をつくり、我々の企業と雇用を壊そうとする者から護らなければならない。

Protection will lead to great prosperity and strength.

保護によって偉大なる繁栄と強さを導くのだ。

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 トランプ政権のロス商務長官は、就任前の上院公聴会で、「私は反貿易主義者ではない。貿易を支持している。しかし、私が支持するのは良識ある貿易だ。アメリカの労働者や製造業拠点に不利な貿易は支持できない」と述べていたので、トランプ氏は「良識ある貿易」に合意した、ということなのかもしれません。 

    3月のG20では「保護貿易に対抗」という文言が削除されたので、今回、トランプ氏はかなり軟化しました。

 過去、朝日新聞は、以下のように報じていました。

昨年7月に中国・成都で開かれたG20財務相会議の共同声明は、「我々はあらゆる形態の保護主義に対抗する」と明記していた。しかし、複数の関係者によると、今回の声明原案には入っておらず、代わりに「公平で開かれた貿易システムを維持する」という米国の主張に近い表現を盛り込むことも検討されたという。ただ、最新の案では、この表現も削除され、調整が続いている。

(G20声明案、「保護主義に対抗」を削除 米国に配慮か」3/15)

 トランプ氏は訪欧の機会に、最大限、可能なリップサービスを行ったと言えます。

G7サミット 外交問題はどうなった?

 そのほかの課題を見てみます。

    温暖化対策の枠組みを定めた「パリ協定」に関しては、トランプ政権の離脱路線のために議論が難航しましたが、最終的には他の6カ国が「理解」を示し、協定を履行する方針を固めました(トランプ政権は来週に離脱の是非を判断をする)。

 北朝鮮の核・ミサイル開発は「国際的課題の最優先事項」とされ、「安保理決議の即時かつ完全な遵守や核・ミサイル計画の放棄に向け,G7として措置を強化する用意があることを確認しました」。

 安倍総理は「中国の役割の重要性を指摘し,北朝鮮に圧力をかける上で更なる役割を果たすよう促したい」と指摘し、拉致問題の即時解決を呼びかけています。

   対テロに関しては、イギリスのテロ事件を非難した上で「国際協力,インターネット上のテロ対策,テロ資金源になり得る組織犯罪対策等」を進めるとし、声名を出しています。

    東シナ海と南シナ海問題では中国の一方的な行動に反対。

「仲裁を含む海洋に関する紛争の平和的解決」をめざし、全当事者に「係争のある地形の非軍事化を追求するよう求めること」を呼びかけています。安倍総理は「中国が国際社会で建設的な役割を果たすよう促すべき」だと発言したようです。

 ロシアに関しては、ウクライナ東部紛争の停戦合意を完全履行するまで制裁を維持することになりましたが、「G7として,利益になる場合には,ロシアと関与していく用意がある」ともしています。

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 全体的に見ると、七か国の合意でまとめた文書なので、内容は平べったく、トゲが抜かれたような文言が並んでいます。典型的な外交的表現で彩られています。

 南シナ海で全当事者に平和的解決を呼びかけるーーそれは別に悪いことではありません。ただ、強制力ゼロの麗しい文言を並べて何になるのでしょうか。

 現実には、そんな文言を百回並べるよりも、米国の駆逐艦等で「航行の自由」作戦を一回やったほうがよほどましです。

 外交・安保面では、さほど見所がないような気がしてなりません。