トランプ政権と日本・アジア 2017

米国株や為替に影響する時事問題を中心に政治動向をウォッチ。今さら聞けない常識も再確認。

北朝鮮 再び弾道ミサイル発射 トランプVS金正恩の対決は長期化する?

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(大陸間弾道弾の弾頭。出所はWIKI画像)

  5月21日の夕方に北朝鮮が再び弾道ミサイルを発射しました。

 現在、防衛省をはじめとした日本政府の発表では、以下の情報が公になっています。

  • 発射時間:21日午後4時59分
  • 発射場所:北朝鮮内陸部の平安南道(ピョンアンナムド)北倉(プクチャン)付近
  • 発射距離:約500キロ
  • 高度:約560キロ
  • 落下場所:北朝鮮東岸から東に約350キロ。日本の排他的経済水域(EEZ)の外側(被害はなし)
  • ミサイル:中距離弾道ミサイル?(2月に発射された「北極星2号」か。これは潜水艦発射ミサイルの陸上改造版。固体燃料推進ともいわれる)

 22日に朝鮮中央通信(国営)は中距離弾道ミサイル「北極星2型」の発射実験に成功したと報じました。

 これは事実上の国の発表と同じですが、この実験に関して、金正恩は「百点満点」と評するほどの満足を示し、北極星2型の実戦配備と量産を命じました。

 これはまさに「鬼の居ぬ間に洗濯」ということわざ通りの動き方です(英語では ”When the cat's away, the mice will play."と言うらしい)。

 トランプ氏が中東に出かけてしまったので、その間隙をぬって金正恩氏がミサイル発射の既成事実をつみあげようと画策し始めました。

 トランプ氏が北朝鮮の暴走は許さないと息巻いても、結局、オバマ政権の頃と同じくミサイル発射ができるのならば、金正恩は「大国アメリカに負けなかった」ことになり、自らの威信を確立できます。

 米中首脳会談以降も、初めは国内上空でのミサイルの「爆発」、そして、5月には日本のEEZ外へのミサイル発射と、少しずつ、その範囲を広げながら、着実に実験結果を積み重ねてきていることには注意が必要です。

トランプ氏はサウジで「善と悪の戦い」を呼びかけ

 トランプ氏は5月21日、リヤド(サウジアラビア首都)で開催された「米・アラブ・イスラム代表者会合」(54か国参加)でIS(イスラム国)やアルカイダ打倒のためにイスラム諸国の連携を訴えました。

 テロや過激思想との戦いを「善と悪の戦い」と位置付けましたが、この呼称は、昔、ブッシュ大統領が用いたフレーズを思い出させます。

 そのほか、シリアのアサド政権支援に関してイランを批判。

 NATOの中東版をつくる、等といった実現可能性が低い構想も出ていますが、「原則ある現実主義」と「共通の利益と安全を目指すパートナーシップ」の構築を訴えました。

 NATOはソ連(今はロシア)という共通の敵に対してヨーロッパが一枚岩になる枠組みですが、中東には「旧ソ連的な存在」が見当たらず、もともとスンナ派とシーア派でばらばら。さらにアラブ系とペルシャ系(イラン)、トルコ系の民族が入り乱れています。こうした状況を踏まえれば、中東版NATOの実現はほぼありえず、米国にできることは反イランのパートナーシップを広げる程度が限界とみるべきでしょう。

 今回のサウジ訪問の狙いは、トランプ氏にまつわる「反イスラム」のイメージ払しょくです。そして、イラン核合意を行ったオバマ政権の中東外交を大転換させること。

 各種報道を読んでいるだけだと、中東と朝鮮半島とは関係なさそうに見えますが、実は、今回のトランプ氏の中東訪問には一つの伏線があります。 

 みなが朝鮮半島ばかりを見ていた5月2日にイラン海軍が紅海で巡航ミサイルの発射実験を実施。昔からイランと北朝鮮とがミサイル開発で協力関係にあることは有名です。トランプ政権は2日にプーチン大統領と電話会談。その後、10日にラブロフ露外相と会談。シリアやイランへの対策を協議しました。

 トランプ氏はイランのほうも無視できぬと考えたのか、その後、中東歴訪を発表しています。

 こうした経緯を見ると、イランのミサイル発射でいちばんの得をしたのは北朝鮮だったのかもしれません。

北朝鮮問題は長期化するのか?

 過去の経緯から見れば、すでに十分すぎるほど長期化(20数年で何も解決せず)していますが、一応、米中首脳会談後の「北朝鮮問題」について考えてみます。

 この問題が長期化する要因としては、韓国のムンジェンイン新大統領の宥和外交路線があげられます。

 米軍といえども、韓国軍の協力なしに単独で北朝鮮に攻撃をしかけるのは割が合いません。米軍だけで北朝鮮を滅ぼすことは可能ですが、その場合、一歩的にリスクを背負い込み、韓国側からは何の感謝もされない(「勝手に戦争を起こしやがって」的な反応が返ってくる。戦火の主な被害は韓国が受けるため)という、割の合わないオチになってしまうからです。

 政権交代に伴って、トランプ政権がやや様子見モードに移行しましたが、一応、このあたりで、もともとの同氏の政策を振り返ってみてもよいのかもしれません。

 もともと、トランプ氏は2016年の前半にこんなことを言っていました(産経ウェスト「韓国守る必要なし」トランプ氏に喝采送る米有権者、かつて「敵前逃亡」した韓国軍に“根深い”不信 2016.4.26 )

  • 「凶暴な指導者を阻止するため、2万6千人の在韓米軍兵士が北朝鮮と韓国の間の休戦ライン付近に配置されているが、我々はこれによって何かを得られているのか。金を無駄にしているだけだ。我々は韓国を守っているが、税金を払う米国民に返ってくるものはない」(2016/4/2)
  • 「米国が多額の借金をしてまで世界の警察官を続けることはできない」
  • (韓国は)「自分の身は自分で守るべきだ」

 トランプ氏はすでに大規模な政策転換を図っていますが、実際のところ、支持者への十分な説明は行われていません。もともとの出発点がこれなので、韓国側が北朝鮮に対決する姿勢を持たない時に、米国が単独で北朝鮮と対峙することは難しいでしょう。これだと180度逆の政策転換になるからです。 

北朝鮮の今後の重要行事

 北朝鮮問題に関して、短期間で何らかの結果が出るという見方もありますが、トランプ氏は「大規模戦争が起きる可能性がある」と言ってみたり、「条件次第では話し合いも」と言ってみたりと、どちらが本心なのかが分からぬような「あいまい戦略」を続けています。

 これはやはり、北朝鮮問題はシリアのミサイル攻撃とは難易度のレベルが違うということなのでしょう。

 北朝鮮側も弾道ミサイルのみならず、ソウルを火の海にできる反撃能力があるので、いざ実戦となれば、在韓米国人にも被害が及ぶ可能性もあるからです。

 そう考えると、長い目で情報を追っていくためには、北朝鮮の重要行事をしっかりと押さえておく必要があります。

 今まで、北朝鮮の重要日程として、光明星節(2月16日の金正日誕生日)、太陽節(4月15日 金日成誕生日)、建軍節(4月25日 朝鮮人民軍創設記念日)等が注目されてきましたが、北朝鮮問題が長期化するとしたら、夏から秋ごろにもう一度、無視できない行事が巡ってくるからです。

 7月から9月頃には第二次世界大戦にまつわる重要日程等が並んでいます。現在、北朝鮮は米軍の顔色をうかがいながら少しずつ実験していますが、このあたりで大胆に「もう一歩」を踏み込んで来る可能性もあります。

  • 7月27日:祖国解放戦争勝利記念日(朝鮮戦争の休戦日のこと) 
  • 8月15日:祖国解放記念日(韓国では光復節と呼ぶ。日本の朝鮮支配の終了日) 
  • 8月25日:先軍節(金正日総書記が軍政を開始) 
  • 9月9日:建国記念日 
  • 10月10日:朝鮮労働党創立記念日 
  • 12月27日:憲法記念日(国民の人権を守らない北朝鮮憲法の誕生日)

 迷惑な話ですが、日本はこれを機会に、自国防衛の体制を可能な限り進めるしかないでしょう。