トランプ政権と日本・アジア 2017

米国株や為替に影響する時事問題を中心に政治動向をウォッチ。今さら聞けない常識も再確認。

フォーブスが世界で「最も革新的な成長企業」&「最も評価される企業」のランキングを公開

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(イタリアのローディ・ガルガーニコ。出所はWIKI画像)

  フォーブス誌のHPで「世界で最も革新的な成長企業」(Most Innovative Growth Companies)のランキングが5月17日に公開されました。

 今回のランキングの対象になるのは企業価値が20億~100億ドル(約2200億~1兆1200億円)の公開会社で、もっと大きな企業を対象にしたランキングが6月にアップされます。

 これは、今後、大きくなると見込める有望企業のランキングなので、すでに十分に大きくなった企業とは別のカテゴリーになっているようです。

 ランキングを作成したのは、ブリガム・ヤング大学のジェフリー・ダイアー教授(戦略論)とマサチューセッツ工科大学リーダーシップ・センターのハル・グレガーセン氏(エグゼクティブディレクター)です。

 何をもって革新的な成長企業とするかの評価は人それぞれなので、このランキングに必ずしも納得できるわけではないでしょうが、その中に自分が今まで気づかなかった有望企業を発見できれば、一見の価値はあったと言えるのかもしれません。

 元記事には企業の紹介がついていないので、ランキングに簡単な企業の説明をつけた形で、そのリストを見てみたいと思います。

世界で最も革新的な成長企業?:1位~6位

 第一位に輝いたのはイギリスのオンライン不動産仲介サービスの大手であるライトムーブ(Rightmove)社。

 フォーブス社の記事では、「ネットワーク効果(新規ユーザーが1人増えるたびにプラットフォームの価値が増すという考え方)により成功を収めた」ことと、ピーター・ブルックスジョンソンCEOが「従業員に対しては何かアイデアを思い付いたらすぐに共有するよう促している」ことに着目しています(一人でアイデアを練ると周囲から問題点が指摘されにくくなるため(参照記事:「世界で最も革新的な成長企業」ランキング 日本トップは5位のエムスリー 2017/5/18)。

 第二位は、米サンディエゴの医療機器メーカー、デクスコム(Dexcom)社。糖尿病管理機器をつくっています。

 前掲記事では、製品に少しずつ細かな改良を加えることよりも、大幅な刷新を行ったことが功を奏したと指摘しています。そのほか、アルファベット(グーグルの親会社)傘下のベリリー・ライフ・サイエンシズと提携していることにも言及されています。

 第三位は、イギリスのASOS社。この企業はオンラインショッピングサイトASOS.comの運営と自社ファッションブランドを展開しています。

 第四位は、米国の製薬・医療企業であるInsulet Corp社。インシュリンの管理や注入を司るシステムを販売しています。

 第五位でやっと日本企業の医療情報サイト大手のエムスリーが出てきます。

 第六位のモノタロウ(工具通販大手)も日本企業です。

 そのほか、日本企業では、21位にカカクコム、25位に日本M&Aセンター、30位にスタートトゥディ、34位に朝日インテックがランキングに名をつらねました。

世界で最も革新的な成長企業?:1位~40位の顔ぶれ

※以下、「企業名(国名)5年平均売上高成長率/5年平均純利益成長率/時価総額(B=10億ドル)/業種」を表記。完全版は以下のページ(英語)で公開されています。

(出所:The World's Most Innovative Growth Companies List) 

  1. ライトムーブ(英国)14.6%/19.3%/ $4.6B/ITソフトウェア&サービス
  2. デクスコム(米国)52.4%/?/$6.7B/ヘルスケア機器とサービス
  3. エイソス(英国)19.1% /17%/$6.1B/不動産
  4. インシュレットコープ(米国)18.2%/?/$2.6B/ヘルスケア機器とサービス
  5. エムスリー(日本)23.3%/19.2%/$8.1B/ヘルスケアテクノロジー
  6. モノタロウ(日本)15.9%/28.2%/$3.7B/工業用資材
  7. ウルティメイトソフトウェアグループ(米国)23.5%/39.5%/$5.7B/ITソフトウェア&サービス
  8. パンドラメディア(米国)38.7%/?/$2.7B/ソフトウェアサービス
  9. アテナヘルス(米国)28%/3.5%/$4.5B/ヘルスケア機器とサービス
  10. 達安基因(中国)30.1%/7.7%/$2.4B/製薬、生化学、ライフサイエンス
  11. ACAD(Acadia Pharmaceuticals:米国)12.8%/?/$4.5B/製薬、生化学、ライフサイエンス
  12. カーセールスコム(carsales.com:豪国)10.4%/6.2%/$2.1B/ソフトウェアサービス
  13. ジロー・グループ(Zillow Group:米国)69.1%/?/$6.6B/ビジネスサービス&サプライ
  14. YOOK(Yoox Net-a-porter Group Spa:イタリア)35.2%/19%/$3.1B/不動産
  15. コースターグループ(米国)27.2%/51.5%/$6.7B/ITソフトウェア&サービス
  16. GSK(Glaxosmithkline Pharmaceuticals:インド)3.9%/17.1%/$3.6B/製薬、生化学、ライフサイエンス
  17. オプコヘルス(米国)109.4%/?/$4.5B/製薬、生化学、ライフサイエンス
  18. Procter & Gamble Hygiene & Health Care(米国)11.6%/14.8%/$3.4B/家庭用品
  19. 広東奥飛動漫文化(中国)26.5%/33.5%/$4.1B/耐久消費財
  20. 新松機器人自動化(中国)19.4%/21.4%/$5.1B/ロボットメーカー
  21. カカクコム(日本)9.5%/13.5%/$3.1B 71.3%/ITソフトウェア&サービス
  22. タイラーテクノロジー(米国)19%/30.6%/$5.7B/ビジネスサービス&サプライ
  23. アビオメド(米国)28.3%/94.5%/$5.4B/ヘルスケア機器とサービス
  24. ドミノピザ(米国)24.6%/23.7%/$3.9B/ホテル、レストラン、レジャー
  25. 日本M&Aセンター 16.3%/20.9%/$2.6B/M&A仲介サービス
  26. ネスレインディア(インド) -3.9%/-12%/$9.2B/食料、飲料、タバコ
  27. 杭州聯絡互動信息科技(中国)15.4%/65.2%/$3.3B/ITソフトウェアとサービス
  28. 同方国芯电子股份有限公司(中国)34.1%/51.5%/$2.7B/電機69.7% ハードウェア機器、テクノロジー
  29. 浙江衆成包装材料(中国)6.2%/-5.2% /$2.6B/包装資材メーカー
  30. スタートトゥディ(日本)8.9%/19.7%/$6.6B/アパレルのオンライン販売
  31. コルゲート・パーモリーブ (インド) 4.8%/-0.3%/$4.1B/日常用品製造、販売
  32. 重慶智飛生物製品(中国)-5.6%/-23.3%/$4.1B/医薬品メーカー
  33. ログミーイン(米国)23.8%/1.9%/$5.1B/ソフトウェア(遠隔接続サービス)
  34. 朝日インテック(日本)13.7%/27.8%/$2.5B/医療機器、サービス
  35. REAグループ(豪州)14.5%/22.3%/$5.9B/ ネットコンテンツ制作
  36. ユナイテッド・ブリュワリーズ(インド)0.8%/9.7%/$3.1B/食料、飲料、タバコ
  37. Seek(豪州)15.2%/18.5%/$3.9B/求人ウェブサイト運営会社
  38. 衛寧健康科技集団(中国)40.9%/56.9%/$2.2B/医療系ソフトウェア開発
  39. ライトメディカルグループ(米国)19.3%/?/$3B/整形外科専門事業
  40. シブステッド(ノルウェー)-7%/-1.6%/$6B/新聞、メディア

 何となく、医療系企業とネット系企業が多いような気がしてなりません。

 これはランキングをつくった人の好みなのか。それとも時代のトレンドなのか。

 5年単位ではかっているので、16年秋からのトランプ相場でヘルスケア株が上がったことだけが要因ではなさそうです。

 いずれにせよ、参考情報の一つなので、過度な信用を持たずに、自分が見落としている企業をチェックする程度にとどめておいたほうが無難でしょう。

「世界で最も評価される企業」ランキングの7要件

 前掲ランキングとは別に、フォーブスはアメリカにあるレピテーション・インスティテュート社(以下、RI社と略)が作成した「世界で最も評価が高い企業」のランキングを紹介しています。

 このコンサルティング会社は、約17万人を対象にして、毎年、企業に関して以下の七要件を調査し、「世界で最も評価が高い企業」を割り出すべく調査を行っています。

  • 製品とサービス
  • 革新性(イノベーション)
  • 労働環境
  • 企業統治(ガバナンス)
  • 市民性≒企業の社会的責任(シチズンシップ)
  • 指導力(リーダーシップ)
  • 業績

 ただ、選考の対象になる企業は、1)経済規模の大きい15カ国で存在感を示していること、2)本国で平均的に高評価を獲得していること、3)世界的に好感度で40%以上の評価を獲得していること、の三要件でスクリーニングをかけられています。世界各国の企業数を足すとは途方もない数になるからです。

 スマホ発火で世界を騒がせたサムスンのランキングが17位から70位に下落するなど、世相の動きも反映されているので、顧客の企業評価の動向を探る上で、このランキングは目を通す価値があるように思えます。

 むろん、一企業の見解なので、あくまでも参考意見ですが、これは非常に気になるテーマなので、 今回はこのランキングを抜粋で紹介してみます。

 このレポート自体は無料ですが、RI社のHPにて、氏名やメールアドレス等を記載するフォームを経てダウンロードする形式になっています(前掲リンクで取得可能)。

「世界で最も評価される企業」ランキング:1位~20位

 この企業ランキングは100点満点の形式になっています。ベストテンを見ると、かなり僅差で、1位~10位までのポイントの差が3点ほどの範囲に収まっています。ベスト20位でも74.94ポイントなので、トップのロレックスとの差は5.5ポイント程度です。

  1. ロレックス(スイス/高級時計): 80.38
  2. レゴ(デンマーク/玩具):79.46
  3. ウォルト・ディズニー(アメリカ/エンタメ):79.19
  4. キヤノン(日本/事務・映像機器等):78.28
  5. グーグル(アメリカ/IT):78.22
  6. ボッシュ(ドイツ/自動車部品等):78.12
  7. ソニー(日本/電機等):77.74
  8. インテル(アメリカ/半導体):77.74
  9. ロールスロイス・エアロスペース(イギリス/航空機エンジン):77.66
  10. アディダス(ドイツ/スポーツ用品):77.27
  11. マイクロソフト(アメリカ/PCソフトやIT等):77.12
  12. BMW(ドイツ/自動車):76.93
  13. ミシュラン(フランス/自動車タイヤ)13 Michelin 76.75
  14. リーバイ・ストラウス(アメリカ/アパレル):76.70
  15. ナイキ(アメリカ/スポーツ用品):75.74
  16. 任天堂(日本/ゲーム):75.72
  17. フェレロ(イタリア/菓子等):75.45
  18. アマゾン(アメリカ/ネット通販等):75.33
  19. IBM(アメリカ/PC) 75.29
  20. アップル(アメリカ/電化製品やソフトウェア):74.94

 この顔触れを見て気づかれた方もいるとは思いますが、RI社のランキングは、どちらかと言えば、売上高等の「規模」よりも「質」を重視した評価になっています。

「業績」は七つの評価項目のうちの一つという位置づけなので、RI社は株の売買等で指標となる売上高や利益率だけでなく、数字には出にくい企業の潜在力を評価することに重きを置いているように見えます。

 RI社のランキングでは、ベスト20まで見ても、売上高ベスト5に位置するウォルマート、チャイナペトロイアムアンドケミカル、ペトロチャイナ、ロイヤルダッチシェル、トヨタ自動車が出てきません。

 顧客に質の面から評価されると厳しいのか、見事なまでに中国系企業が出てきません。韓国系企業もわりと低評価になっています。

 日本系企業はランクインしていますが、RI社ランキングではソニーが7位、トヨタが34位なので、筆者の脳裏には「ソニーがそんなによいのかな~」という疑問が残りました。このあたりには、多少、偏見が働いているような気がしないでもありません。

(ちなみに、存亡の瀬戸際に立たされている東芝はまだ前掲ランキングではまだ70位に入っていました・・・)

 RI社のランキングでは重厚長大の企業がやや低めになる傾向が出ています。ボーイング社も49位でしかないのに対して、前掲のベスト20には、顧客が実際に購入して商品を手近に触ったりサービスを体感できたりする企業(ロレックスの時計やレゴのおもちゃ、ディズニーの映画等)が上位に入っています。

 RI社のランキングは、企業を評価する際に、売上高や利益率など、財務諸表だけでは読めないデータを考える上での参考材料として使うべきものなのかもしれません。

部門別のトップ企業はどこ?

 そして、前掲七部門で見ると、以下の企業がトップになりました。

  • 製品とサービス ⇒ロレックス
  • 革新性(イノベーション)⇒グーグル 
  • 労働環境 ⇒グーグル
  • 企業統治(ガバナンス)⇒レゴ
  • 市民性≒企業の社会的責任(シチズンシップ)⇒グーグル
  • 指導力(リーダーシップ)⇒グーグル
  • 業績 ⇒グーグル

 七部門で見ると、グーグルがトップになるような気がするのですが、17万人の調査対象者は「製品とサービス」と「企業統治」を重視する割合が高かったので、前掲のランキングではロレックスとレゴの評価が高めに出ています。他の要素を勘案した場合は、グーグルのほうがバランスよく高評価を得ていると言えるのかもしれません。

世界各地域でベスト3の企業はどこ?

 なお、世界の各地域のランキングでは、以下の企業がベストスリーを占めています(前から順に1位、2位、3位)

  • 北アメリカ:ロレックス/グーグル/ソニー
  • ラテンアメリカ:グーグル/BMW/任天堂
  • ヨーロッパと中東:レゴ/ボッシュ/ディズニー
  • アジア:ロレックス/ディズニー/インテル

 北米ではソニー、南米では任天堂が高評価になっています。

 ロレックスはヨーロッパ及び中東では5位なので、北米やアジアほどの高評価を得ていませんでした。

 今の日本でのソニーの評価は「一度、斜陽化したものの、何とか浮上してきた企業」というイメージなので、本国でトップ3入りは厳しそうですが、北米ではトップ3に顔を出しています。これは「遠来の商品は良く見える」ということを意味しているのかもしれません。要するに「隣の家の花は赤く見える」という人間心理です。

 RI社は企業ランキングのほかにも、国の評価ランキングなど、気になる調査を発表しているので、たまにチェックしてみると、意外な発見があるかもしれません。