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ゼロからやりなおす「政治と経済」

政治と経済について、いまさら聞けない知識を整理しつつ、ニュースがよりよくわかるデータを紹介していきます。

【加計学園】新学部創設は総理の意向? 菅官房長官は文書の存在を否定するが・・・

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(帝国議会議事堂の絵:出所はWIKIパブリックドメイン画像)

 学校法人「加計学園」が運営に携わる岡山理科大の獣医学部開設(2018年4月)にあたり、政策決定の経緯等を玉木雄一郎氏(民進党)が17日に問いただしたことが物議をかもしています。

 国家戦略特区にあたる愛媛県今治市で、約37億の大学用地16.7ヘクタールを市が無償譲渡し、総事業費192億円の約半分を市と県が負担。学園理事長は安倍首相の友人。特区に応募したのが岡山理科大しかないーーという3点に加えて、玉木氏が、そこに「(文科)大臣ご確認事項に対する内閣府の回答」と題した文書が存在すると主張し、国家がまた炎上モードに入りつつあります。

 その文書には、文科省が内閣府から、「総理のご意向だと聞いている」「官邸の最高レベルが言っている」などと言われたとする記録が存在するとされていますが、松野博一文科相は「文書の存在を含め確認していない」と述べ、事実関係を調査する意思を示しました。

 菅官房長官はその事実関係を否定し、作成日時、作成部局、作成者が不明確であるとの理由で、答弁の必要性を認めませんでしたが、民進党の蓮舫代表らは衆参一体で緊急会合を開くべきだと息巻いています。

 現時点ではその真偽は判明していないので、結論が出るのはもう少し先になりそうですが、これが事実であれば、政府の権威失墜につながり、単なるデマであれば、民進党や熱心に宣伝したメディアの側がガセネタに踊らされたというオチになります。

 森友学園問題に似た大騒ぎが繰り返されるのかどうかは未知数ですが、なぜ、文科省の行政判断でこんなに変な話が出てくるのかは気になるところです。

重大事件? それとも怪文書の流布? 

 毎日新聞(2017/5/17)は自社が入手した文書の内容を報じています(「加計学園 新学部は「総理の意向」文書」)。

  • 「獣医学部新設に係る内閣府からの伝達事項」⇒「平成30年4月開学を大前提に、逆算して最短のスケジュールを作成し、共有いただきたい」「これは官邸の最高レベルが言っていること」と早期の開学を促す記述があった。
  • 「(文科)大臣ご確認事項に対する内閣府の回答」⇒「設置の時期については(中略)『最短距離で規制改革』を前提としたプロセスを踏んでいる状況であり、これは総理のご意向だと聞いている」「国家戦略特区諮問会議決定という形にすれば、総理が議長なので、総理からの指示に見えるのではないか。平成30年4月開学に向け、11月上中旬には本件を諮問会議にかける必要あり」

 従来、質の確保のために、大学設置や学部新設に厳格な文科省は1966年以来、獣医師系の学部の新設を認めていなかったのですが、16年11月の規制緩和で52年ぶりに新設を認めることになりました。

 そこに安倍首相の友人が理事長を務める学校法人が運営する岡山理科大が入り、他の候補もなかったので、「怪しい」という話になったわけです。

森友学園問題を振り返ってみると・・・

 いちおう、比較の対象とされる森友学園問題を振り返ってみます。

 こちらが問題視されたのは国交省(大阪航空局)が伊丹空港の騒音対策のために管理していた土地(8770㎡)を学校法人「森友学園」に払い下げる際に9億5600万円と評価された値段が、結果的に1億3400億円で売却されたことでした(8億1900億円は、土地内にあるゴミ撤去費とされた)。

 安倍昭恵氏が名誉校長になっていたことから、売却への首相の関与が問われ、晋三氏が「関係していたら、首相も国会議員も辞める」と答えたので、野党は必死に追及を続けます。

 その後、3月10日に森友学園が建設した「瑞穂の国記念小学院」の設置が不認可となり、籠池理事長が退任の意向を明らかにしました。

 3日には昭恵夫人が森友学園が運営する幼稚園で講演する際に政府職員が同行していたことが明らかになり、14日には稲田防衛相が所属する法律事務所と同学園との顧問契約を巡って間違った内容を答弁したりと、火種が拡大。

 23日には、籠池氏の証人喚問が行われ、以下の四点が争点となりましたが、政府側は首相の関与を否定します。

  1. 2015年9月に昭恵夫人を通じて100万円の寄付金を受け取った
  2. 10万円の講演料をお菓子の袋に入れて昭恵夫人に渡した
  3. 森友問題発覚後、昭恵夫人から籠池氏の妻に口止めのためのメールが届いた。
  4. 昭恵夫人付きの政府職員が口利きに関して現状では希望に添えないというファックスをもらった。

 2はまるでマンガみたいな話です。3にしても、そんなことを記録が残るメールで送る人がいるんだろうか、という疑問が残ります。4に関しては、政府側は口利きはしないと答えただけだとの説明です。

 真実性が疑われる証言も出てきた(資金集めのために首相の名を一瞬使ったといったが、実際は2年用いていた等)ので、籠池氏に関しては虚偽証言での告訴も検討されています。

日本で新しい学校をつくるのは非常に大変

 森友学園も、結局、確たる証拠が出たわけではなく、よくわからない間に北朝鮮問題が急展開する中でフェードアウトしていきました。予算審議をすっぽかし、国防上の一大事を差し置いてまで、民進党は盛り上げようとしましたが、さすがにトランプVS金正恩の騒ぎの中で、国民の関心をそこまでひきつけることはできなかったわけです。

 今回の件に関しては、北朝鮮問題がムンジェンイン大統領当選に伴って様子見モードになったので、民進党が新しい話題をふっかけたくなったという一面もあるでしょう。民進党も来る選挙のために注目度を上げないといけないからです。

 ただ、前回の「森友学園」問題は用地の払い下げ、今回の「加計学園」問題は学部新設ですが、その背景には、「学校/学部の新設が難しい」というややこしい事情があることは見落とせません。

 要するに、まず、設置認可を試みる前に、お金と土地、建物をそろえなければなりません。

 その後、文科省が大学設置認可を諮問機関にその是非を諮るわけですが、この際には、学部や学科の名前、個々のカリキュラムの内容、担当教員、募集人数等を細かく審査します。

 看板倒れになっていないか。学科相応のカリキュラムか。カリキュラムを担う教員の資格は十分か。募集人員や採用計画は適切かーーこんなことが問われます。

 諮問機関のメンバーは、既存大学の要職者などが多いので、経済学的にはあまり望ましいメンバーが揃っているとは言えません。なぜかというと、すでに市場にいる供給者が、新しい供給者の参入の審査にかかわる構図になってしまうからです。

 そして、文科省の裁量に基づく判断という、新規参入者から見ればよくわからぬ難敵をかいくぐり、何とか設置認可にたどりつかなければいけません。資金、設備、人員、ソフトを揃えても、認可が下りないと「大学」とは認められないので、それまでの莫大な労力が水の泡になりかねない怖さがあるわけです。

今のままでは「〇〇学園問題」が延々と続く?

 こうした経緯を見ると、大学や学部の新設にあたり、有力政治家や大臣、あわよくば首相の口利きが得られないかどうかーーという誘惑が出てくることは、さほど不思議ではないように思えてきます。

 一応、認可する側のほうの言い分を考慮しますと、こんなことをしてまで、新設大学に絞りをかけるのは、少子化が深刻化し、大学の定員割れや倒産、統廃合等が本格化する時代が間近であると見られているからです。大学冬の時代が来るのに、安易な準備で新しい大学や学部をつくられては困るーーという論理が構築されていると言えます。

 後者にも理がないわけではありませんが、今のままで行くと、「大学が倒産したら学生が困るではないか」という理由で、供給者保護と大学倒産の回避を図る方向に、今後の大学行政が傾いていく可能性が高そうです。

 別の選択肢としては、「人気のない大学倒産はやむなし」と見切ってしまい、大学側(供給者)にサバイバルを強い、残ったものを是とする、というやり方もあります。この路線を選択する場合は、新規参入を厳しく制約するよりは、廃校や廃部になったところの学生が他大学や他学部に移転できるための措置を図ることに力点を置くことになるでしょう。

 筆者は、あまり国会の政争に興味がわかないのですが、教育を巡る怪しい話が続いているので、その背景は非常に気になります。今の大学行政や学園の認可の仕組みが続く限り、学校の新設を巡る怪しい話が今後も浮上してくることは避けられなさそうだからです。