トランプ政権と日本・アジア 2017

米国株や為替に影響する時事問題を中心に政治動向をウォッチ。今さら聞けない常識も再確認。

北朝鮮が弾道ミサイルを発射 文在寅大統領はどうする 米韓は連携できるのか

f:id:minamiblog:20170514074320j:plain

(スカッドミサイル。出所はWIKI画像) 

 北朝鮮が14日午前にミサイルを発射したと韓国の連合ニュースが報じています。

 韓国軍合同参謀本部の情報として、北朝鮮の北西部にある「平安北道・亀城(クソン)一帯から弾道ミサイルと推定される飛翔体1発を発射した」と述べています。飛行距離は700キロとされているので、2月のミサイル発射(500キロ)よりも遠方に向けた発射です(日本の防衛省は、飛行距離800キロ、高度は2000キロ超と分析した)。

 これに対して、菅義偉官房長官は北朝鮮北西部から午前5時28分ごろに弾道ミサイル1発が発射されたとの認識を示しました。30分程度飛行して日本海に落下したのですが、その地域は日本のEEZ(排他的経済水域)内ではないと推定されています。特に被害報告はありませんが、菅長官は国連安全保障理事会決議等の違反だと批判しています。

 北朝鮮側は労働新聞を通じて13日に「核は朝鮮の尊厳と力の絶対的象徴であると同時に最高の利益である」「米国が対朝鮮敵視政策を放棄しない限り、核戦力を中枢とする朝鮮の自衛的国防力強化措置は倍加される」等のメッセージを公にしました(出所:北朝鮮メディア「核は朝鮮の尊厳と力の絶対的象徴」…核開発の強化をアピール | DailyNK Japan(デイリーNKジャパン)

 14~15日には中国で「一帯一路」フォーラムが開催され、多数の関係国が北京に集まっているので、北朝鮮はこれに合わせて金政権の威信を高めようとしたのかもしれません。

 チキンレースが再開されましたが、今後はどうなるのでしょうか。

本年の過去のミサイル発射との対比

 本年2月にもクソンから1発の弾道ミサイルが発射され、500キロ東の日本海に落下しました(北朝鮮は「固体燃料エンジン」を用いた発射実験の成功を発表)。

 撃ち方は似ていますが、日本のEEZ内には入れなかったので、今回のミサイル発射は、文在寅大統領の就任以降、初めてのミサイル発射なので、同大統領の動きを見極めるための牽制とも考えられます。

 文大統領は条件次第では平壌訪問もありうるとし、宥和路線を見せていたので、この大統領のもとで韓米同盟が強硬策を取れるのかどうかを伺っているのかもしれません。 

 北朝鮮は4月には5日と16日、29日に三度ほどミサイルを発射しましたが、これはいずれも発射後に爆発(これは、米韓共同軍事演習中だったので、意図的に爆発するようにしたともいわれている)。29日にはミサイル発射に合わせて北陸新幹線(上越妙高-金沢間)や東京メトロでも一時運転停止となりましたが、今回は、そうした動きは見られていません。 

 トランプ政権が5月の外遊日程を明かすなど、他の問題に関心を移し始めていたので、金正恩政権は、その隙をつこうとしたものと推測されます。文氏とトランプ氏の首脳会談も予定されていますが、このミサイル発射に対して、米韓の足並みがそろうのかどうかが、今後の米韓関係にとって、非常に重要なポイントになるはずです。

文氏当選で本性をあらわにした北朝鮮

 トランプ政権の方針は4月28日のロイター社のインタビューに示されています(「インタビュー:トランプ氏、北朝鮮と「大きな紛争」の可能性」2017/4/28)

  • 「最終的に北朝鮮と大きな、大きな紛争が起きる可能性はある」「外交的に解決したいが、非常に困難だ」
  • (習近平氏は)「精一杯力を尽くしてくれていると確信している。混乱や死は決して見たくないだろう」「そうは言っても習氏が愛情を持っているのは中国であり、中国の国民だ。何かを実行したいと思ってもできないということも恐らくあり得る」
  • (金正恩氏が「理性的かどうかについて私は意見を持たない。彼がそうであることを望む」
  • 新型迎撃ミサイル(THAAD)について、韓国側に10億ドルの支払いを求めているが、文在寅氏(大統領候補)の外交顧問を務める金基仲・延世大学校教授は韓国の費用負担に関して「ありえない」と述べた
  • トランプ氏は米韓FTAを「ヒラリー(元国務長官)が結んだ、受け入れられない、ひどい協定だ」と批判。同協定を「再交渉もしくは停止する」と語った。

 米軍が北朝鮮への限定攻撃などを行うのかどうか、また、THAAD配備を巡って米韓関係が連携できるのか等が、今回のミサイル発射後の一つの注目点となります。

 文大統領が米軍の北朝鮮攻撃を支持するかどうかは、トランプ政権の判断にも影響を与えます。なぜかと言えば、紛争が大きくなった時に、米軍といえども韓国軍の支援が必要になるからです。 

(米軍が戦争を行う際には、基地の使用や兵站等の後方支援体制も重要な判断基準になります。また、韓国側に戦意がない中で、米軍が先んじて北朝鮮軍に戦うのは、米国民にとって容認しがたい話です)

 北朝鮮は文氏の当選を期待し、ミサイルを自国内で爆発させていたのかもしれませんが、大統領選が終われば、その「自重」も要らなくなり、”観測気球”のように「ミサイル」が打ち上げられることになりました。

プーチン訪中に合わせたミサイル発射か

 ロシアのプーチン大統領は5月14日~15日に北京で開催される「一帯一路」フォーラムに参加し、習近平主席とも会談します。

 このフォーラムは中国が国を挙げて成功を目指す大イベントなので、14日のミサイル発射は米国だけでなく、習政権に向けた金政権の意思表示であるようにも見えます。

 北朝鮮の代表団は「一帯一路」フォーラムのために13日に北京に到着しています。これに対して米国は不満を示していたので、習政権はこのたびのミサイル発射への返答として、北朝鮮代表団を追い返す等の措置を取る可能性もあります。

 さらには、中国が北朝鮮への石油禁輸にまで踏み込むかどうかも重要なポイントになるでしょう。

 JETROが貿易統計から割り出したところ、原油輸出がゼロになったはずの2014年でも、各国の数値から試算すると、北朝鮮には50万トン程度の石油が輸出されていました(ほとんど中国からの輸入)。

 そして、中国が北朝鮮に石油を送るパイプラインに関して、2014年頃の調査で「最低でも50 万トンは送り続けなければ詰まりが生じてしまうパイプラインは、段階的な輸送量の増減には機能的に対応していない」とも言われていました。(出所:堀田幸裕「中国の対北朝鮮援助 中朝石油パイプラインを中心に」一般財団法人霞山会、愛知大学国際問題研究所)

 これが改良されていなければ、中国は石油輸出を止めるか、流すかの二択しか選択肢がありません。

 石油輸出が止まれば、北朝鮮軍が動けなくなるのは時間の問題なので、同国が座して死を待つのを拒んで暴発する可能性が高まります。すでにイラクやリビアが滅ぼされたのを見た金政権が黙って白旗を挙げるとは思えません。

 習主席は、プーチン大統領との会談後に、石油輸出禁止を決断できるでしょうか。

 ただ、4月末の北朝鮮のミサイル発射後、ロシアは5月からウラジオストクに貨客船「万景峰(マンギョンボン)」号の寄港を認め、定期航路を開設する方針を固めています。過去、北朝鮮がマカオの秘密資金口座が金融制裁で凍結された後、2007年に露政権から露中央銀行などを経由した資金の返還を受けた経緯もあるので、ロシアは北朝鮮擁護に回る可能性もあるわけです。 

 中国が石油を禁輸し、ロシアから石油が輸出されるなどの猿芝居が現実化したら、日米にとって笑えない事態になります(ロシアには石油が有り余っている)。

 国連での北朝鮮制裁に関してはロシアも拒否権を持っているので、14日~15日の中露首脳会談で、北朝鮮問題がどのように扱われるのかが、非常に重要な注目点になります。