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ゼロからやりなおす「政治と経済」

政治と経済について、いまさら聞けない知識を整理しつつ、ニュースがよりよくわかるデータを紹介していきます。

文在寅氏当選確実 どうなる韓国 親北・反米・反日の”ベストミックス”がついに実現?

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(米韓の懸案となるサードシステムに含まれるAN-TPY-2 radar。出所はWIKI画像)

  韓国大統領選も9日に投票が終わり、文在寅氏(「共に民主党」前代表)の当選が見込まれています。

 時事通信(2017/5/9)では、KBSテレビなどの出口調査を根拠にした予想得票率を報じていました。

  •  文在寅氏(「共に民主党」前代表):41.4%
  •  洪準杓氏(「自由韓国党」保守系旧与党):23.3%
  •  安哲秀氏(中道系野党「国民の党」の元共同代表):21.8%

 安候補は保守層に見限られてしまったのか、いつのまにか洪準杓氏が台頭し、票割れによって文候補の勝利が確実視されることになりました。そして、文氏が9日に語った言葉も紹介されています。

「出口調査で大きな差で圧倒的勝利を収めた。まだ開票状況を見守らなければならない」「きょうの勝利は全面的に国民のおかげだ」と語った。また、「次期政府は文在寅政府ではなく、われわれ『共に民主党』の政府だ」

(出所:時事ドットコム「文在寅氏大幅リード=革新系に政権交代の公算-韓国大統領選、開票始まる」2017/5/9)

 ところで、「共に民主党」がどんな政党なのかというと、これは、金大中元大統領を中心にした民主化運動の流れをくんだ政党です。全羅道地域を地盤とする民主党と、文在寅氏を中心にした市民統合党が統合し、そこに安哲秀氏の新政治連合が加わってできた最大野党だと言われています(安氏はその後、離党)。

文在寅(ムン・ジェイン)氏の経歴

 ご存じの方もいるかもしれませんが、一応、その人物像の概要を確認してみます。

 文在寅(ムン・ジェイン)氏は1953年1月に生まれました(現在64歳)。

 両親は朝鮮戦争の戦火を逃れ、1950年の終わりごろに、朝鮮半島の北東部から米軍艦艇に乗って釜山に近い巨済島の難民キャンプに逃れました。食糧にも事欠くなかで文在寅氏は苦学し、名門の慶南高校を卒業してソウルの慶煕大法学部に進学。大学生の頃に朴正煕政権に対抗する「民主化運動」に参加しました。朝鮮戦争が終結していない(今も停戦中)韓国では軍政の保守政権に、左派系の闘士が民主化運動を挑む構図が長らく続いていたので、文氏から見れば、そうした「革命運動」が、このたびの大統領選で朴槿恵政権崩壊に伴い、ようやく「実を結んだ」ことになるわけです。

 文氏は大学生時代から政治活動に邁進し、何度も逮捕されています。

 卒業後は弁護士になりましたが、司法試験の合格通知を受け取ったのは、なんと、留置場の中なのだそうです。

 紆余曲折の後、盧武鉉(ノ・ムヒョン)元大統領の選挙活動を秘書として支え、その後、大統領府で秘書室長になります。

 こうした経歴を見る限り、今回の選挙は、まさに朴父子との「因縁の対決」という感じがしてきます。

 2012年の大統領選挙では朴槿恵氏に4%差で敗れましたが、朴氏のその後の体たらくをみて、「やはり、文氏のほうがよかった」という「民意」が台頭し、このたびの大統領選ではダントツの支持率を得ることになりました。

 廬武鉉大統領の頃は親北外交、反日、反米外交の三点セットが揃う時代でしたが、その頃に秘書官(日本で言えば官房長官みたいなものです)をしていた文氏が当選することで、同じ悲喜劇が繰り返されるのかどうかが注目されています。文氏は「盧武鉉の影法師」とも呼ばれていましたが、その言動を見る限り、すでに怪しい兆候が濃厚に出ているので、注意が必要です。

文在寅(ムン・ジェイン)氏の外交スタンス

 旧政権時代には「親日派財産没収法」の成立を主導(2005年)し、国連での北朝鮮人権決議案採択時の韓国棄権で影響力を発揮(2007年)し、2016年7月には、竹島上陸を行って反日アピール。「共に民主党」の政策に沿って、15年の慰安婦合意反対、日本総領事館前の慰安婦像撤去反対、16年11月に日本と締結した秘密情報保護協定(GSOMIA)への反対等の主張を展開しました。

 米国との関係がこじれそうな高高度迎撃ミサイルシステム(THAAD)配備にも、当初は反対。北朝鮮と米国との関係が緊張してからは世論の風向きを見て、挑発を続けるならばTHAAD配備は不可避になると政策を転換しました。しかし、トランプ氏がその費用負担(10億ドル)を韓国に求めたことから、再び否定的なトーンに戻りました。

 トランプ政権が出した米韓FTA見直しの方針も、大きな対立点になりそうです。

 北朝鮮へのスタンスは、韓国との協力事業である開城(ケソン)工業団地と金剛山(クングンサン)観光の再開を主張しているところによく出ています(これは北朝鮮にとって年間1億ドルの収入源になっていた)。 

 米国と北朝鮮との関係が厳しくなる時に、新北/反米/反日という究極のポリシーミックスが実現した時に、何が起きるのかを考えると、空恐ろしいかぎりです。

とりあえず、中道左派で政権運営をスタート?

 ただ、韓国の議会と世論の趨勢は、文氏が外交をやりたい放題、しまくれるほどの状況ではないとも言われているので、日本人としては、そのあたりに望みをつなぐしかないでしょう。

 ニューズウィーク日本語版(2017/5/16 ※発売は9日)のコラムニスト(ロバート・E・ケリー釜山大教授)は、韓国政治の現状について、以下のように述べていました。

「韓国国会では中道左派が過半数の議席を占めており、文はリベラルな政治を推し進めることができるだろう。ただし、社会主義や左派路線に踏み込むことは不可能だ。文の得票率は40%にとどまる見込みで、急進的な姿勢をむき出しにはできない」(P23)

  中道左派のあたりに狙いをつけ、文氏は少しずつ政策を実現していくことが予想されています。

 なぜかというと、適度に妥協をしないと、現在の議席数(計299)では、国会で文氏の思う通りに政策を実現するのは難しいからです。

  • 共に民主党(中道左派):120人
  • 国民の党(中道左派):40人
  • 正義党(保守系):6人
  • 無所属ほか:7人
  • 正しい政党(保守系):20人
  • 自由韓国党(保守系):106人

 前政権の行き過ぎた反日外交はオバマ政権の介入を招き、廬武鉉時代の太陽政策(親北政策の呼称)も結局、失敗に終わったことを考慮すると、文氏は、ややマイルドな形で、親北・反米的な言動を積み重ね、やがては本音をあらわにするのかもしれません。もっとも、反日に関しては遠慮がないのでしょうが・・・。