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ゼロからやりなおす「政治と経済」

政治と経済について、いまさら聞けない知識を整理しつつ、ニュースがよりよくわかるデータを紹介していきます。

米エネルギー産業に追い風? トランプ大統領が新大統領令を発令 

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(海洋資源開発のプラットフォーム。出所はWIKIパブリックドメイン画像)

  アメリカでは政府閉鎖の危険性がささやかれていましたが、4月30日夜(日本時間5月1日)に共和党と民主党が9月末までの予算案で合意に達したことが各紙で報じられています。この包括歳出法案によって1.1兆ドル(約123兆円)の予算が決まり、秋までの間、政府閉鎖はなくなったわけです。

 民主党の要望に沿った内容なので、「国境の壁」建設などのトランプ大統領の公約は入っていないわけですが、とりあえず、政争による国民へのサービス停止という事態の回避が優先されました。

 人工妊娠中絶等を行う「米国家族計画連盟」や不法移民に寛大な政策を取る「聖域都市」への補助金は削除されなかったわけですが、共和党陣営は、これは税制改革やヘルスケア改革への審議に集中するための措置だと有権者に説明するようです。

 不毛な政争による政府閉鎖が回避されたことは国民や投資家にとっての朗報ではありますが、共和党陣営は17年中の公約実現が遠のいたため、今後は減税政策やインフラ投資といった大型政策の実現に力を注ぐことになります。

(※要するに、多くの共和党議員は「国境の壁」をはじめとしたトランプ氏の過激政策はどうでもよいと考えていたのでしょう)

 トランプ政権成立から100日が経ち、成果が少ないとマスコミはこき下ろしていますが、トランプ氏が掲げた15%への法人税減税が実現すれば、かつてない規模の大型減税になるため、これ一つだけで過去の失敗を吹き飛ばすだけのインパクトはあると思います(共和党案の20%でも最高税率が半分近くになる)。

 選挙戦の頃からトランプ氏は何度も失敗していますが、最終的には勝っているので、筆者は、今回の「勝負」でも異様な勝負運が発揮されるのではないかと思っています。

米国沖合での資源開発が加速される? 新大統領令を発令

 とはいえ、今回の記事で取り上げるのは、議会の議決を要さない政策の話です。

 トランプ氏が4月28日に出した「アメリカ第一のオフショアエネルギー戦略の実施」に関する大統領令を見てみます(出所:Presidential Executive Order Implementing an America-First Offshore Energy Strategy | whitehouse.gov)。ここでいうオフショアは「沖合」という意味合いなので、海洋油田開発等の規制を緩めるための措置です。

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 外縁大陸棚法(Outer Continental Shelf Lands Act)を含む憲法と米国法が大統領である私に与えた権限によって、エネルギーの革新、探鉱、生産における世界的な指導力を維持すべく、以下の事柄を命じる。

1節:所見

 米国はまず、米国の家計や企業のエネルギー需要を考え、何十年にわたるエネルギー安全保障と経済の活力を確保する計画を実行し続けなければならない。

 連邦政府の管理下にある土地・水域から生み出されるエネルギーや鉱物は、活力ある経済と国家安全保障にとって重要なものだ。

 連邦政府の土地・水域でのエネルギー生産の増加は国の安全を強め、輸入エネルギーへの依存を減らす。

 米国のエネルギー供給増加がもたらすエネルギー価格の低下は米国の家族に利益をもたらす。それは米製造業と雇用の成長をも活性化させる。国防総省は米国最大のエネルギー消費者の1つでもあるので、国内のエネルギー生産は国軍の即応能力を改善するものだ。

2節:方針

 エネルギーに関する指導的な国家としての地位を維持し、米国民の利益のためのエネルギー安全保障と回復力を促進するため、米国は外縁大陸棚を含んだエネルギー探査と生産を促す。そうした活動が安全かつ環境に配慮されていることを保証する。

(※あまりにも長く、見づらいので、今回は英文省略)

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 このあたりは、トランプ政権が発足時に掲げたエネルギー政策と似たようなことが書かれています。

 次節(3節~11節)以降に、もろもろの規制を緩和するための条項が並んでいます。全部書くと細かい話になりすぎるので、以下は概略で並べてみます。

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  • 国防長官と協議し、提案されている石油・天然ガスのリース販売計画の見直し(地域はメキシコ湾、チュクチ海、ビューフォート海、クック・インレット、大西洋中部、南大西洋等)
  • 商務長官は、特に明示されない限り、米国海洋保護区法(National Marine Sanctuaries Act 16 U.S.C.)の下、国家海洋保護区の指定・拡大を控える
  • 内務長官は海洋エネルギー管理局(BOEM:Bureau of Ocean Energy Management)長官に財務保証規制の政策が適正か検討し、必要があれば見直しを行う。外縁大陸棚での環境規制等を検証する。
  • BOEMは空気品質の管理等の規制を見直す。
  • 商務長官は大気管理に関する基準の見直しを行う。
  • 内務長官は北極大陸棚における探査掘削に関する規制を見直す。

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 これは、要するに、オバマ政権が大好きだった環境規制などを緩和する措置です。国防総省、商務省、内務省などが管轄する規制が緩和されます。

 株価を見ると、あまり大した規模ではないものの、エクソンモービルの株価が微増していました。

  • 4/27:81.26ドル
  • 4/28:81.65ドル
  • 5/1:81.97ドル

 トランプ政権はエネルギー規制の緩和に前向きだが、そもそも原油価格は上がるんだろうか・・・。

 そんなことを考えながら米エネルギー大手のエクソンモービルとシェブロン、欧州系のロイヤルダッチシェルB(RDSB)等のデータを眺め、うんうんとうなっていたのですが、今回の大統領令はすでに市場は織り込み済であるようにも見えます。

5月上旬の投資行動はハイリスク? ルペン勝利の可能性も

 米政府閉鎖がなくなったり、新しい大統領令が出たことが気になったのですが、結局、筆者は5月上旬時点での投資行動は控えたほうがよいと考えました。

 それは、北朝鮮と米国との緊張関係だけでなく、フランス大統領選の第二回投票日(5月7日)というリスク要因が近づいてきているからです。

 軍事株などは北朝鮮と米国との緊張の高まりを受けて上がりましたが、他の銘柄は買い時に見えても、ルペン氏が勝った場合には欧州発株安の余波が及ぶかもしれません。

(米中首脳会談以後のノースロップグラマン(NOC)を例にとると、239ドル(4/10)⇒249ドル(4/24)⇒244ドル(5/1)へと変動している。普通、国家主義者は国防強化を目指すため、防衛需要は減らさない可能性が高く、ルペン氏の路線がトランプ政権と似ていることを考えれば反IS等での米仏連携が崩れることも考えにくい。防衛系はあまりルペンショックが起きないのではないか?)

 仏EU離脱で直接的に被害を被らない企業でも、この種の大規模ショックが発生した場合は、とばっちりを受ける可能性があります。

 世間の予想とはうらはらにルペン勝利の可能性は無視できなくなってきています。5月上旬~中旬の投資行動はリスクが高いと見たほうがよいのではないでしょうか。

 ハンフィントンポスト(5/1)に不幸の予言のような記事が出ています(「一部の有権者に決選投票「棄権」の動き広まる メランション氏支持者らの間で」)

4月20日の時点でメランション氏支持者の39%が、5月7日の投票を棄権する意志、あるいは投票に行くか決めかねている心境を表明している。これはその週の月曜日(4月17日)と比べて9ポイントの上昇。フィヨン氏の支持者の31%も同様の意志を示しており、こちらも5日間足らずのあいだに5ポイント増加している。

 そのほか、社会党の候補者の支持層にも棄権者が広まっていると書かれていました。棄権者続出になれば、熱心な支持層を抱えるルペン氏が有利になるとみられています(いわゆる「マクロン勝利のシナリオ」なるものは、他の支持層がある程度、反ルペン票を入れてくれることを前提としている)。

 恐らく、何か買いたい株がある方は、欧州の影響を受けにくい銘柄を探し、ルペンショックで割安になってから買ったほうが儲かるではないでしょうか。