トランプ政権と日本・アジア 2017

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モスクワで日露首脳会談 安倍VSプーチン第二ラウンド 共同経済活動ありきで領土交渉は進展なし

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北方領土。 地図出典:外務省HP http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/hoppo/hoppo.html

  安倍首相はプーチン大統領と27日に日露首脳会談を行いました。

 会談はモスクワのクレムリンで行われ、昨年12月に合意した北方領土における共同経済活動の実現のために両国から現地調査団を5月に送ることで合意しました。具体化のために優先事業のリスト化や北方領土の元島民の墓参の拡大なども決まりました。

 首脳会談後の記者会見で安倍首相は、「共同経済活動を大きく発展させたい。その双方の努力の向こうに平和条約がある。新しいアプローチを通じて両国国民の信頼を増進させ、2人の間で平和条約を締結したい」と述べたことが報じられています。

 北方領土での「共同経済活動」は日露の信頼関係深化のために両国による合弁事業(想定分野は漁業やインフラ整備等)を進めるプランです。

 ロシア側はもともと自国法内での事業展開を考える傾向が根強く、日本領内にロシアの法律適用は認められないと主張してきた日本側とは大きな見解の相違がありました。そのため、昨年のプーチン訪日時には、日本法でもロシア法でもない「第三のルール」のもとに進めるとしました。

 しかし、そのルールの中身は不明で、今後、日露双方の法律の違いを埋めるためには延々と調整が必要になるので、今後も両国の交渉が必要になります。

  ただ、今回の会談で話題にのぼったのは、共同経済活動のほか、元島民の往来や北朝鮮問題にかかわる協議等で、領土交渉ではなかったと言われています。

(北朝鮮に関しては、挑発行為を自制するように働きかけることで双方が合意し、プーチン大統領は6カ国協議の再開を提唱しました)

 懸案の領土問題に関しては、もともと、プーチン氏は北方四島は先の大戦を経て正当にロシア領になったと考えています。そして、ロシアでは2018年3月に次期大統領選があるため、プーチン氏は易々と領土で妥協できません。すでに国後、択捉の二島では軍の新駐屯地の建設が進み、樺太と北方領土を結ぶ光ファイバー回線の海底敷設、極東の土地の国民への無償分与なども行われているので、今後の領土交渉は難航が予想されているわけです。

 日本側は日ロ経済活動を契機に、領土交渉を進めたいと考えていますが、プーチン氏は、2016年に「領土を取引するつもりはない」(9/2)とも述べています。

「(日ロ平和条約の交渉に)期限を設けるのは不可能であり、有害だ」(10/27)という発言もあり、この交渉は長期化することが見込まれています。

そもそも、日本は、ロシアとどんな交渉をしてきたのか?

 先の大戦の終わり頃に、ソ連は北方領土の四島(歯舞群島、色丹島、国後島、択捉島)を占領しました。そして、戦後もそれを手放さず、返還を求める日本との交渉が続きました。

 1956年の「日ソ共同宣言」では、戦争状態の終了、日本の国際連合への加盟支持、ソヴィエトで有罪判決を受けた日本人の帰国が明記され、そこでは歯舞、色丹の二島が平和条約締結後に返還されるとしています。日本側は四島返還論を主張したため、これは条約ではなく、宣言という形になりました。
 その後、アメリカが日本に「二島返還で合意するなら沖縄を返さない」と圧力をかけたり、ソ連が日米安保条約の締結を契機に硬化したり(領土問題の存在を否定)と、複雑な関係が続きました。 

 冷戦後には93年の「東京宣言」で四島の帰属問題について交渉し、「歴史的・法的事実に立脚し両国の間で合意の上作成された諸文書及び法と正義の原則を基礎として解決することにより平和条約を早期に締結するよう交渉を継続」することを明記しました。読みにくい文章ですが、ここでやっと四島返還が議論できるようになったわけです。
 エリツィンからプーチンに大統領が変わり、2001年には「東京宣言に基づき、択捉島、国後島、色丹島及び歯舞群島の帰属に関する問題を解決することにより、平和条約を締結」するとした「イルクーツク声明」が出されました。これは親ロ派の森首相とプーチン大統領とで出した声明です。  

北方領土交渉の位置付けとは?

 ほかにも「日ソ共同声明」(91年)や「クラスノヤルスク合意」(97年)や川奈合意(98年)などがありますが、具体的な内容が明確に書かれているのは、前掲の文書です。
 小泉首相とプーチン大統領の間で決めた「日露行動計画」(03年)を見ますと、領土問題に関しては、56年の日ソ共同宣言、93年の東京宣言、2001年のイルクーツク声明が「四島の帰属の問題を解決する」ための過去の外交交渉上の合意文書として、名前をあげて列挙されています。
 この計画によれば、北方領土交渉というのは、「平和条約を締結し、もって両国関係を完全に正常化することを目的とした交渉」だと位置づけられています。

GDP激減のロシアの活路はアジア?

 ロシアの姿勢は強硬ですが、その国内事情を見ると、経済危機が進展しています。

 原油安や欧米からの経済制裁を受け、ロシアは名目GDPが2兆2306億ドル(2013年)から1兆3260億ドル(2015年)にまで激減しているのです。

 ここには石油や天然ガスなどの資源に依存しすぎた経済の弊害が出ています。

 防衛省が2013年に出した資料によれば、当時のロシア政府の歳入の45%は石油・ガス関連収入で占められていたそうです(『東アジア戦略概観2013』)。資源輸出に依存した経済であるがゆえに、2014年頃までは100ドルだった原油価格が16年初めには40ドル割れするほど急降下すれば、それに伴ってGDPも減少してしまうわけです。

 こうした経緯で、ロシアは中国や日本との関係を深め、アジアに活路を見出そうとしてきました。  

ロシアにとっても、中国は油断ならない軍事大国

 最近のニュースでは中ロ接近を印象づける報道も多いのですが、ロシアにとって、今でも中国は安心して見ていられる国ではありません、

 例えば、ロシアの極東地域は人口がまばらで領土はだだっ広いのですが、そこに人口過多の中国から訪れる移住者が増えています。

 また、近年、中国は新型の原子力潜水艦(晋級)から大陸間弾道弾を撃てる能力を持ちましたので、核兵器の技術でもロシアに近づいてきました。防衛省防衛研究所が出した『東アジア戦略概観』(2014年版)では、ロシアの安全保障の専門家にとって、この「核戦力の差が縮小する」ことが「最大の懸念」になりつつあることや、ロシア人識者が有事に中国軍がロシア極東地域に進撃し、領土を奪取する可能性を示唆したことなどが紹介されています。 

 日本にとって、核大国の中国とロシアにタッグを組まれるのは、非常に恐ろしい話なので、こうした中露間の埋まらない溝をついて、日露関係強化のクサビを打つことは、非常に大事です。
 ロシアが中国だけでなくインドやベトナムにも兵器を売っているのは、やはり、隣国の軍事大国を警戒しているからです。

 日本では「日ロ経済活動はロシア側の食い逃げに終わる」「ロシアに騙されるな」という声も根強いのですが、こうした観点から見れば、日露関係の強化というのは、進めるべき価値のある政策だと言えるのではないでしょうか。

ロシアは親日国だが、政治面では壁がある

 日露関係の難しさばかり挙げてきたので、一つの希望を挙げると、ロシアがわりと親日的な国であることが挙げられます。

 外務省は定期的にロシアの対日世論の調査をしていますが、2016年春のロシア全国成人3600名(18歳以上)への電話調査では「ロシアにとって日本との友好関係は重要か」と聞いたところ、48%が「重要」、49%がどちらかと言えば「重要」と答えています。

 日本の平和国家としての戦後の歴史について、「おおいに評価する」と答えたのは44%、「どちらかというと評価する」と答えたのは37%でした。
「日本に対して抱いているイメージ」を聞いたところ、「先進技術をもった経済力の高い国」(86%)、「豊かな伝統,歴史と文化を持つ国」(84%)、「自然の美しい国」(69%)、「アニメ,ファッション,和食など新しい文化を発信する国」(66%)、「戦後一貫して平和国家の道を歩んでいる国」(60%)等、肯定的な答えが並びます。(否定的な回答は「理解が難しい国」(41%)、「保守的で閉鎖的な国」(40%)など)

 それ以前の調査でも、日露関係について「重要」と「絶対に重要」を足した比率を見ると、90%(2010年度)、89%(2004年度)と9割近い水準を保っています。

 日本への賛否を見ると、2010年度では「信頼できる」が41%、「信頼できない」が38%であり、2004年度では「好き」が37%、「部分的に好きで部分的に嫌い」が24%、「嫌い」が3%、「無関心」が30%でした。プーチン政権発足時から日本への好感度は高かったわけです(2000年度でも日本が「好き」なのは45%、「嫌い」は2%)。

 日本への国民感情は良いのですが、先の大戦のしこりや冷戦期に対立した歴史などが、友好関係を広げる上で障害になっています。

 ロシアのフィギュアスケートの女王・エフゲニア・メドベージェワ選手が日本のアニメ『ユーリ!!! on ICE』についてツィートしたり、セーラームーンのコスプレをしたりしたのを見て驚かれた方もいると思いますが、どうも、民衆レベルではロシアの親日度はかなり高いようなのです。

    日露の交流が深まれば、今後、平和友好条約締結の気運も高まっていくのかもしれません。