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ゼロからやりなおす「政治と経済」

政治と経済について、いまさら聞けない知識を整理しつつ、ニュースがよりよくわかるデータを紹介していきます。

浜鍋元副知事ら2名を告発 百条委員会終了 いまだ豊洲市場移転の結論見えず

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(東京湾の風景。出所はWIKIパブリックドメイン画像)

 東京都の百条委員会は、東京ガスとの交渉も含めた豊洲市場の土地購入の経緯や「盛り土」問題、整備費の膨張(6000億円規模)等を調査し(関係者等の24人を証人喚問)、26日に調査終了を決めました。

 百条委員会の理事会が新たな証人喚問をしない方針を決定し、5会派は、浜渦武生氏(元副知事)とその部下である赤星経昭氏(元政策報道室理事)の証言を偽証罪で告発する方針を固めたことが報じられています

 偽証とされた浜渦氏の証言は、都と東ガスの本格交渉に際して、2001年以降に担当を外れ、相談を受けず、支持もしていないとして関与を否定した箇所です。赤星氏のほうは、2001年に東京ガスとの土壌汚染対策に関する協議事項の決定を記した文書の存在を知らないと述べたことが問題視されました。(理由はいずれも都の記録と他の証言との食い違い等)

 自民党以外の5会派は賛成なので、可決される見通しですが、自民党の桜井浩之委員長は反対しています(浜渦氏らの偽証認定へ=自民委員長が辞任表明-都議会百条委:時事ドットコム 4/26)。 

桜井氏は記者団に「(浜渦氏らの)証言は偽証というより、記憶違い程度のものだ。委員長としてこれ以上関与できない」と説明。これに対し、公明党、民進党系の東京改革議員団、共産党、都民ファーストの会など5会派は「無責任だ」と反発し、桜井氏の不信任案を提出する構えだ。

 合理的に考えれば、口頭で十数年前の記憶を完全に再現するのは難しいので、食い違いが発生すること自体は不思議な話ではありません。

 「記憶に食い違いがあるから偽証の罪だ」という主張が出てくることは分かりますが、何しろ15年前の話なので、食い違った内容の重要性を考慮しないと、あまりにも四面四角な話になってしまいます(浜鍋氏の案件は「担当者だったかどうか」という大きな論点に関わってはいるので、どうでもよい話ではないとは思いますが・・・)。

 今後は、内容の軽重を踏まえた上で、二人の発言が偽証の罪にを相当するかどうかが問われることになるわけです。

百条委員会で大騒ぎして、結局、何になったの?

 3月19日に浜渦氏、20日に石原氏を招致して始まった百条委員会に関しては、筆者は何か釈然としないものを感じています。

 豊洲の土壌汚染対策費には約860億円が費やされたのに、東京ガスの負担は78億円止まりの契約になっているなど、調査を要する問題はありますが、今となってみれば、もはや後の祭りです。結局、かかる費用を最小限にするには、さっさと豊洲市場への移転を終わらせるのが一番だからです。

  産経ニュース(2017.4.21 )では、都の市場問題プロジェクトチームの小島敏郎座長らが、築地市場の再整備プランを提出し、豊洲市場を解体し、用地を業者に売却する「私案」を出したことが報じられていました(「小池百合子知事ピンチ 築地再整備、豊洲売却案『空論だ』…市場関係者『検討に値しない』」)

 しかし、その内容が市場関係者の反発を買っているようなのです。

小島氏らの築地再整備案は工事の企画から完成まで7年を想定。総工事費を約734億円とし、業者が部分的に市場施設などへの移動を繰り返し、営業を続けながら建て替えを進めるとした。

 小島氏の主張は、結局、1999年に都と市場団体が諦めたプランの繰り返しになります。 同記事では、築地の仲卸業者(生田与克氏)の怒りの声を紹介していました。

「移動しながら改修するというが、今その場を使っている業者とどう折り合いをつけていくのか、生鮮食品を扱うのに必要不可欠な冷蔵庫などはどうするのかといった非常に重要な問題が何も考慮されていない。市場のことを何も分かっていない人が考えた空論との印象で、検討にも値しない」

  山崎孝明区長(江東区)も4月11日の記者会見で、前掲案について「憤慨している」と批判しました。

豊洲の用地をマンションや商業施設にした場合、学校の新設や交通網の整備といった問題が浮上し、区が整備の当事者となるにもかかわらず、何の相談もなく提案がなされた 

 豊洲市場に関しては、科学的には健康被害が発生することが証明されていません。

 そのため、20年近くかけて形にした事業を全部なし崩しにし、もう一度、築地市場に移転する必然性はないわけです。

 取引や意思決定の過程において疑わしい点があるのは事実ですが、すでにそれは「後の祭り」なので、これが市場移転を取りやめにする理由に直結するのかどうかは疑問が残ります。 

 結局、早く豊洲移転の決着をつけ、東京五輪の準備を進めたほうがよほど都民の利益につながったのではないでしょうか。

(※築地市場が移転できない場合は、移転後の築地の要地を五輪で駐車場として使えなくなり、選手村と国立競技場を結ぶ大事な道路が通らなくなってしまいます。このプランの作り直しになるので、余計な行政コストがかかるのです)

 昨年のオリンピック会場移転と同じく「大山鳴動してネズミ一匹」というから騒ぎが繰り返されたような気がしてしかたがありません。

豊洲移転を阻む「環境基準百倍のベンゼン」の内実とは

 百条委員会では、交渉の経緯を明らかにすることに力が注がれていますが、そもそも、豊洲移転の障害となった「環境基準百倍」のベンゼンのリスクはどの程度なのでしょうか。

 これに関しても、幾つかの見解がネット記事で公にされています。

 中西準子氏(産業技術総合研究所 名誉フェロー)は、地下水を飲んだり、それを用いて調理するわけでもないので、摂取経路が遮断されれば、問題は発生しないとしていました。

「豊洲市場は地下水を使って魚を洗ったり、調理したりするわけではないので有害物質が体内に入る可能性は低い。土壌汚染対策として、摂取経路をきれいな土やコンクリートなどで遮断する方法がある。地下に盛り土がされていなかったことが問題になっているが、建屋の床のコンクリートで遮断されている」「表面の土壌を掘削し、洗浄や加熱処理した上で戻したり、地下水に汚染があれば浄化して排水したりするなど十分な対策を取っている」「有害物質があったとしても拡散していくような状況は考えにくい」(日経BP「豊洲市場の土壌汚染問題、健康被害はあるのか」相馬 隆宏/半沢 智 2016/11/10)

  石原氏も類似の見解を述べていましたが、その際には中西氏にもヒアリングをしたと述べていました。日経BP社の前掲記事では藤井聡氏(内閣官房参与 京都大学大学院教授)の見解も紹介されていますが、表現は違うものの、地下水を遮断できれば問題ないとする立場は共通しています。

 では、豊洲移転に否定的なトーンの強いメディアは、この問題に対して、どう見ているのでしょうか。

 毎日新聞では「質問なるほドリ(2017/2/28)」のコーナーで「豊洲の有害物質、大丈夫?=回答・小島正美」という記事を掲載しています。

 同記事では、消費者に与えた不安を重視しながらも、科学的には健康に被害が出るという結論は導きがたいことを説明していました。

「環境基準」では、毎日2リットルの水を70年間飲み続けた時にどうなるかという設定でつくられており、その場合、10万分の1でガンが発生する程度のリスク設定なので、飲料水でもなく調理にも使われない地下水で、その百倍の値が検出されても、食の安全を脅かすとは考えにくいからです。

 毎日記事では「環境基準の設定にかかわった」関澤純氏(元徳島大教授)の発言を紹介していました。

「仮にベンゼンが揮発して、その一部が飲み水や食品に付着したとしても、量は微々(びび)たるもので、食の安全を脅かすリスクにはならない」

 豊洲移転に否定的な同紙でも、このたびの基準超えが健康被害に直結するとまでは言えないと見ています。

(※地下水の汚染物質の濃度が上がった理由は不明ですが、地下水管理システムが稼働し、水をくみ上げる中で、地下水が井戸に向かって移動し、モニタリング調査の際に、地下水に溶けていたベンゼン等の汚染物質が発見された可能性などが指摘されています)

移転延期補償は90億円 可否の判断は比較衡量しだい

 築地市場移転の延期にも毎日、お金がかかっているわけですが、その補償額は90億円にものぼるようです。

 これもまた都民の税金で賄われています。

 その詳細を毎日新聞(1/26)が報じていました(「豊洲市場 移転延期補償は90億円台半ば 最終調整」)

「市場業者への補償について、都が総額90億円台半ばの新年度補正予算案を組む方針で最終調整に入ったことが26日、関係者への取材で分かった」

 これは、16年11月から18年3月までにかかる費用の累計で、4月から市場業者への補償金の支払いが始まります。

「昨年11月下旬~12月中旬には卸売業者など47の会社・団体と青果、水産の仲卸業者など275業者にヒアリングを実施し、各業者の平均投資額は水産仲卸が約870万円、青果仲卸が約400万円など、業界全体の投資総額は約300億円と判明していた【川畑さおり】」

 300億円の投資のうち、90億円が補償されるとのことですが、残りの210億円はどうなるのかが気になるところです。これは「延期」の場合のケースなので、豊洲移転が「凍結」された場合は、また違った議論になるのでしょう(凍結の場合、豊洲への投資はすべてオジャンになるため)。

 豊洲移転可否の判断の基準としては、1)百条委員会で議論されている東京ガスとの取引・交渉の過程、2)汚染物質の検出の度合い、3)移転延期のコスト、という三点が考慮に加えられるはずですが、筆者は、三番目のコストが都民の税金で賄われていることが気になります。

 新しく豊洲の移転先を探せば、また数年がかりの仕事を再開しなければならず、今までの費用は全て無駄になります。さらには、移転延期のコストまで都民は負担しなければいけないわけです。

 2)は専門家意見として、健康に問題が出ることは考え難いとも言われているので、利害を比較衡量すれば、遅かれ早かれ、豊洲移転は実行せざるをえないのではないでしょうか。

 1)について考えてみると、不適切な交渉が行われたとしても、すでに支払は終わっているので、今後、追加費用が発生するわけではありません。これはサンクコストにすぎないので、経済的合理性から見れば、これは先延ばしの理由としては不適切です。

 ただ、不適切な取引の存在が明確になった場合は、東京ガスにもっと土壌対策の費用を負担してもらうよう、裁判もしくは裁判外での解決(仲裁等)を働き掛けるべきでしょう。