トランプ政権と日本・アジア 2017

米国株や為替に影響する時事問題を中心に政治動向をウォッチ。今さら聞けない常識も再確認。

北朝鮮Xデーが迫る? そのわりには米国民は韓国から逃げていないようですが・・・

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(朝鮮戦争時の米軍機。出所はWIKIパブリックドメイン画像)

  トランプ大統領が23日に安倍首相と習主席にそれぞれ電話会談を行い、緊張回避を求めたことが報じられています。安倍首相は「全ての選択肢がテーブルの上にある」ことを示したトランプ大統領の姿勢を評価し、日米が連携することを強調。習氏は北朝鮮が国連安保理決議に反した行動を取ることに反対の意を表明しました。

 25日に北朝鮮が朝鮮人民軍の建設から85周年を迎えるので、この日に核実験やミサイル発射実験などが行われるとみて、各国が警戒しているわけです。

 すでに米空母カールビンソンを中心とした第一空母打撃群は23日にフィリピン海で海自と共同訓練を開始し、今後は朝鮮半島付近の日本海へと向かいます。

 何度も取り上げた話ではありますが、Xデーともいわれる25日が迫ってきたので、改めて、もう一度、この問題について考えてみます。

4月25日に向けてヒートアップする北朝鮮危機報道

 意外とニュースには出ていませんが、25日には東京で日米韓の外交実務担当者が三者会談を行うことが米国務省HPでは明かされていました(米:Joseph Yun/日:Kenji Kanasugi/韓:Kim Hong-kyun)。

 そして、26日にはトランプ氏がティラーソン国務長官とマティス国防長官、コーツ国家情報長官、ダンフォード統合参謀本部議長をホワイトハウスに集め、上院議員等に向けて北朝鮮情勢について説明を行います。

 北朝鮮抑止に向けてやる気満々のポーズを取っているためか、ネットニュースを見ると、米国は金正恩の居場所を把握できるから断首作戦をいつでも実行可能だとか、米国は先制攻撃をしかけるとか、勇ましい話も次々と飛び交っているようです。

 もっとも、当ブログでも、「朝鮮有事が起きたらヤバいよ」「有事後に在韓邦人の事後救済は絶望的だから、政府はもう一段高いアラートを在韓邦人に出してくれ」とか書いているので、あまり人のことは言えないのかもしれません。

 ただ、筆者はいろいろと軍事ネタを調べる中で、朝鮮有事の際には韓国にいる米国人20万人の命が脅かされることや、北朝鮮のソウル総攻撃で韓国側に数十万人以上の被害が出る可能性があることを考えると、米国であっても、かつてのイラクのように攻撃をしかけるのはなかなか難しいのではないかとも感じています。

 中国から圧力をかけさせるなど、世界最強国にしては意外と遠回りな手法を用いているのは、トランプ大統領であっても中国とロシアが睨みをきかせる朝鮮半島が炎上した場合の恐ろしさを感じているからなのかもしれません。

 シリアとは違い、累計で数百発~千発程度のミサイルを持つとみられる北朝鮮の場合、そうやたらとトマホークを撃てないわけです。

米軍による北朝鮮への攻撃に関しては懐疑論も根強い

 ネットニュースや週刊誌は稼ぎ時と言わんばかりに北朝鮮危機を取り上げていますが、その一方では、「本当にやるの?」という懐疑的な見方もあります。

 例えば、デイリーNKジャパンの高英起編集長は「米軍の先制攻撃はない」論拠として以下の2点を挙げています。

  • 在韓アメリカ人20万人に避難の動きがない
  • 米大使館も避難勧告を出していない

 高氏は、米国が「レッドラインと考えるのは長距離弾道ミサイルを完成させた時点」であり、これは「北朝鮮側も同様に考えている」ため、「アメリカ側に直接被害が及ばない核実験を強行しても「先制攻撃はないと北朝鮮は見ているのではないか」と述べています。同氏によれば核実験強行の確率は5割程度とのことでした(J-CASTテレビウォッチ「韓国に米国人がまだ20万人、避難の動きなし...「先制攻撃はない」と見る根拠に」2017/4/24)。 

米国務省も米大使館も自国民に韓国からの退避勧告を出していない

 当ブログにも、米国が自国民に退避勧告を出していないことを重視すべきだと書いた過去記事がありますが、実際、米国務省や韓国にある米国大使館のHPを見ると、まったくその種の気配は感じられないのです。

 国務省HPには「Alerts and Warnings」というページがあり、世界各国の米国民の旅行者に様々な警告を出しています(HP上の解説によればワーニングのほうが重度の危機で、アラートのほうが短期的な危機という意味合いらしい)。しかし、そこには韓国や朝鮮半島は出てきません。

  • 4/12:パキスタン Travel Warning
  • 4/11:イスラエル西岸とガザ地区 Travel Warning
  • 4/11:ニジェール Travel Warning
  • 4/6:ケニア Travel Alert
  • 4/5:ナイジェリア Travel Warning
  • 3/30:スーダン Travel Warning
  • 3/29:コンゴ Travel Warning
  • 3/29:サウジアラビア Travel Warning
  • 3/28:トルコ Travel Warning

 中東とアフリカの国々がやたらと目につきます。

 そして韓国にある米国大使館が4月に公開した米国人向けの最新のレターの目次を見ても、特に不穏な気配はありません。「2018年の冬季オリンピックチケットをゲットする最後のチャンス」とか「法律面での支援が必要な人への参考資料」とか「2016年の税務申告ガイダンス」とか、ごく普通の内容が並んでいます。

 国防総省HPを見ても、マティス国防長官は中東行脚で忙しく、21日にはイスラエルのネタニヤフ首相と会談。22日にはカタールの防衛相と会談をこなしていました。4月6日にはシンガポールにも来ていましたが、マティス氏の訪問先は欧州や中東がわりと多いようなのです。

 むろん、北朝鮮が冒険的に長距離弾道ミサイルを撃ったり、核実験をしたりすれば、シナリオが一変する可能性が出てきますが、在韓米国人に向けたアナウンスには、戦争が起きそうな気配はありません。

結局、予測が難しいのは金正恩のキャラのせいなのか?

 当然、北朝鮮も米国が自国民に朝鮮有事に対して何の警報も出していないことを認識しています。

 平壌空港で出国手続きをしていた韓国系アメリカ人の身柄を拘束するなど、挑発的な行動を見せたのは、暗に「どうせ、本気じゃないんでしょ」と言っているかのようです。

 普通の理性が残っていれば、北朝鮮が取るべき行動はただ一つしかありません。国内で軍建設を祝うイベントをしながら、米軍の演習が終わるのを待てばよいのです。そして、5月9日の韓国大統領選で左派候補者を当選させたかったら、北朝鮮はミサイル実験も核実験もしないほうが有利なことも明らかだと言えます。

 まともな理性が残っている指導者ならば、おそらく、5月まで何もしないで死んだふりをしているはずですが、北朝鮮は金正恩という特殊なキャラのために、結局、「何が起きるかわからない」という状況になっているわけです。

北朝鮮危機でトランプは威信回復を狙う?

 そして、トランプ政権のほうを見ると、4月には予算成立のめどがつくかどうかという難題が本格化しています。

 3月にはオバマケア廃止法案の提出を断念。4月には税制改革法案(減税法案)が出せるかどうかが試されるのですが、17年予算が決まらないと、また政府閉鎖という喜劇が起きるリスクを抱えてもいるわけです。

 トランプ氏の場合、もともと支持率が低いので、政権運営を進めるうえでは、何とかして注目を集めなければいけません。筆者の印象では、3月のオバマケア廃止の断念という大失敗を巻き返すべく、トランプ氏は4月の米中首脳会談以降、外交・安保問題で攻勢に出てきたようにも見えます。

 シリアへのミサイル攻撃以降、トランプ氏には注目が集まり、大統領の威信が回復しつつあるのかもしれません。

 そして、日本を見ても、この北朝鮮危機によって、森友学園問題は一気に注目が薄れ、安倍政権は支持率上昇。3月末から6.3%上がり、4月23日の報道(産経ニュース)では58.7%になっています。

 北朝鮮危機は外交・安保の問題ではありますが、これがヒートアップしてきた原因は、意外と各国の政権の台所事情とも関係があるのかもしれません。