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ゼロからやりなおす「政治と経済」

政治と経済について、いまさら聞けない知識を整理しつつ、ニュースがよりよくわかるデータを紹介していきます。

ボーイング社 トランプラリーで株価が上がっても人員削減 次の買い目はいつ?

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(チャールストン市、レインボー通り。出所はWIKIパブリックドメイン画像)

 ボーイング社はトランプ氏当選後、株価が急上昇した企業の一つです。

 昨年12月にはトランプ氏が「ロッキード・マーティンのF35はとほうもない費用だ。この費用超過のため、私はボーイングに、競合機のF18スーパーホーネットの見積価格を出すことを求めた」(22日)とツィートしたことが注目されました。

 その後、新政権が発足し、軍事予算の1割増という方針が出され、その期待から防衛部門を掲げるボーイング社の株価も上がり続けました。

【ボーイング(BA)社の株価】

132.99(9/6)⇒139.54(11/4)⇒147.69(11/10)⇒155.68(12/30)⇒169.12(1/26)⇒162.4(2/3)⇒183.91(3/1)⇒175.96(3/21)⇒178.4(4/19)

 しかし、意外にも、4月18日のニュースでは、同社がエンジニア数百名の追加削減を行うことが報じられています。

 産経BIZによれば、ボーイング社は17年に入ってからすでに1500人の機械工と305人のエンジニア等が希望退職に応じており、この上に追加で人員削減が6月23日に行われる予定です。その理由には「航空機の売上げ減少」が挙げられ、同社が「ここ1年以上、新規採用を抑制し」、「全社従業員数は2016年3月末と比べて7.6%減の14万6962人になった」ことが指摘されています。

(出所:ボーイング、エンジニア数百人追加削減 航空機売り上げ減少 - SankeiBiz(サンケイビズ)

「株価が上がりまくっているのに、なんで人員削減なんだろう」という疑問を感じたので、今回はボーイング社についてざっと調べてみました。

ボーイング社の売上と一株当たり利益を見ると・・・

 ボーイングの年次報告書(2016年)を見ると、確かに16年の売上高は減っています。

 817億ドル(12年)⇒866億ドル(13年)⇒908億ドル(14年)⇒961億ドル(15年)⇒946億ドル(16年)

 一株当たり利益(Core Earnings Per Share)も15年以降は下がっていました。

 5.88ドル(12年)⇒7.07(13年)⇒ 8.6ドル(14年)⇒ 7.72ドル(15年)⇒ 7.24ドル(16年)

  前掲記事には「世界的に高まる環境保全気運を背景に、同社は受注が減少しているジャンボ機「747」や双発ジェット機「777」の生産比率を下げる見通しを示している」とも書かれていますが、同社では意外と堅実に切り詰めが行われているようです。

 一株当たり利益は下がっていますが、営業キャッシュフローは増え続けているので、安全運転の経営を目指しているとも言えそうです。

 75億ドル(12年)⇒82億ドル(13年)⇒89億ドル(14年)⇒ 94億ドル(15年)⇒ 105億ドル(16年)

 最近はトランプラリーの熱も冷めてきたので、株価が上がりすぎて買いにくくなったボーイング株もどこかで株価が下がり、次の買い目がやってくるかもしれません。

 2007年以降のボーイング社の株価の推移を見ると、104.99ドル(2007/9/28)から30.1ドル(2009/3/6)にまで下がり、その後は反転。2010年~12年には70ドル前後で推移し、その後、136.67ドル(2013/12/20)にまで急上昇。その後、158.31ドル(2015/2/20)と108.63(2016/2/12)の間で振幅を繰り返していました。

 トランプ氏当選後、わずか半年の間で130ドル台から180ドル台にまで株価が大きく伸びたので、ここには相当、期待値が盛り込まれています。

 トランプ政権も「期待」の段階から「現実」との対決を迫られる段階に移行しているので、3月のオバマケア撤回断念のように、今後はうまくいかないケースも増えてくるでしょう。

 ボーイング社に関しては、とうてい、今が買い時とは思えないのですが、適度に株価が下がった時に、もう一回、買いのタイミングが来るかもしれません。

ボーイング社幹部が米国防総省ナンバーツーに

 最近のニュースを見ると、3月にトランプ大統領がボーイング社幹部を国防総省のナンバーツーに起用する方針を発表したことが報じられています。

 ブルームバーグ(2017/3/17)は「シャナハン氏は軍事、宇宙、民間航空機などの部門で30年の経験」と題した記事を公開し、「既に緊密な同社と新政権の関係がさらに強まる」と述べていました。

ボーイングのシニアバイスプレジデント、パトリック・シャナハン氏(54)が国防副長官に指名されたと、ホワイトハウスが16日の声明で発表した。上院に承認されれば、政権の方針の下、2年にわたってボーイング関連案件への関与を控えることが義務付けられる。

 エンジニア出身のシャナハン氏に関しては「デニス・ムーレンバーグ最高経営責任者(CEO)の直属の部下」で「軍事、宇宙、民間航空機などの中核部門」において30年の経験を積んだ人材として紹介されています。 

ボーイング社とトランプ政権の相性は良好?

 2月17日には、トランプ大統領はボーイング社787ドリームエアライナーのお披露目式典で演説しているので、同社との関係は良好のようです。

 サウスカロライナ州の北チャールストンにある工場での式典にトランプ大統領と南カリフォルニア知事(ヘンリー・マクマスター氏)が呼ばれ、製造ライン等を視察後、3000人の聴衆(ボーイング社社員)に向け、製造業従事者に向けたメッセージを送りました。 

 ボーイング社HPには、式典でのボーイングCEOのデニース・ミュレンバーグ氏の発言が掲載されています。

(以下、筆者訳)

ーーー

「ここボーイングのサウスカロライナで起きているのはアメリカの成功物語だ」

「わずか数年で、わが社のチームは緑の土地を近代的な航空機工場に変えた。この工場は世界中に787エアラインを送り、アメリカに数千の雇用を支えている」

("Boeing Debuts 787-10 Dreamliner Airplane scheduled to fly in the coming weeks, deliver to customers in 2018":MediaRoom - News Releases/Statements

ーーー 

 ボーイングの航空機販売部門のCEOであるケビン・マクアリスター氏はサウスカロライナと世界中にいるボーイング社のメンバーがつくったこの機体は世界で最も効率的だとも宣伝しています。

 この式典では、トランプ大統領が「アメリカファースト」を訴えかけています。

 ワシントンポストは2月17日の記事で以下の発言を紹介しました(以下、筆者訳)。

ーーー

「我々は今日、ここにアメリカのエンジニアリングと製造業を祝福するために立っている」

「我々は雇用が生まれたことも祝いたい。そうだ、雇用だ!」

「雇用は、私が今、ここに立っている主な理由の一つだ。私は決してあなたがたを失望させない。私を信じてくれ」ともつけ加えた。

(略)
あなたがたは雇用にまつわる出来事を見ている。あなたがたはこの国に工場が戻る光景を見ている。
(略)

あなたがたの大統領として、アメリカ人の魂の力を解き放ち、偉大なる国民が働くためにアメリカに帰ってくるために、私はなしうるすべてのことを行うつもりだ。
これが我々のマントラだ。「アメリカ製品を買え。アメリカ人を雇え」 

(出所:”At Boeing, Trump returns to an economic message after a week of controversy”By Abby Phillip and Max Ehrenfreund February 17

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 動画で見ると演説の間には何度も喝采が起きています(次節のヴォイスオブアメリカ記事には埋め込まれた動画を参照)。

 列席したボーイング社のメンバーは同氏のメッセージを肯定的に受け止めているようです。

 ボーイング社とトランプ氏の間ではエアフォースワンの価格交渉等も行われましたが、空母艦載機F18をはじめとした大口の発注を期待してか、同社はトランプ氏に肯定的なスタンスを取っています。

 ヴォイスオブアメリカの記事によれば、トランプ氏は「ボーイングの従業員に向けた発言の中で、大統領は従業員を解雇し、海外に移転した企業には『重罰を課す』と述べましたが、同時に、アメリカ空軍がボーイングが製造するF18に対して「大きな発注をかける」ともPRしています。

(出所:”Trump Touts 'America First', US Jobs During Boeing Factory Visit”  2017/2/17)

 飴と鞭の使い分けがなされていますが、ボーイング社は全体的には自社にプラスになると考えているのかもしれません。

 安倍首相訪米時の朝食会にボーイング社CEOが列席していたのは、トランプ氏の製造業振興や空軍再建などの政策を追い風にしたいという狙いがあったのでしょう。影響力が大きいボーイング社の動きには、今後も注視していきたいと思います。