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ゼロからやりなおす「政治と経済」

政治と経済について、いまさら聞けない知識を整理しつつ、ニュースがよりよくわかるデータを紹介していきます。

ペンス副大統領とロス商務長官の訪日 日米経済対話が始まる

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(米空母ロナルドレーガン。19日にペンス氏が艦上で演説。出所はWIKIパブリックドメイン画像)

  4月18日にはマイク・ペンス副大統領が訪日し、麻生副総理との日米経済対話を行い、安倍首相を表敬訪問しました。同日にはウィルバー・ロス商務長官と岸田外務大臣との会談も行われています。

 17日の訪韓にあたっては、米韓同盟を支持し、大統領選の「結果がどうなろうと、米国の韓国の安全と安全保障に対する意志は確固たるものだ」と韓国民に訴えました。その席では、米韓同盟に関して、「自由を守る前線での3万7500人の米陸海空軍、海兵隊の任務と警戒は、両国民の不朽の協力関係の証しだ」「韓国に対する米国の意志は鉄桶(てっとう)のように強固だ」とも述べています。北朝鮮に対しては「大統領の決意や、この地域の米軍の力を試すようなことはしない方がよい」と述べ、THAAD(高高度迎撃ミサイルシステム)配備を進めていくことを表明しました(出所:「我々はいかなる攻撃も退ける」 ペンス氏の発言全文:朝日新聞デジタル

  ペンス氏は自分の父が朝鮮戦争に従軍したことを挙げ、共に北朝鮮に対抗していくことを訴えています。

 今回のアジア歴訪の目的は、北朝鮮問題への同盟国との連携強化、日米経済対話、TPP離脱後に米国がアジア関与を続けることの確認などですが、訪日に際しては、経済問題が一つの目玉になっているとも言えます。

  こうした経緯を踏まえて、ペンス副大統領とロス商務長官の会談等を見てみます。

ロス商務長官と岸田外務大臣、世耕経産相が会談

 現在、79歳のロス氏はトランプ氏が事業に失敗し、赤字の山を築いた時に、再建を手伝った人物です。

 トランプ氏の経済面でのアドバイザーであり、米新政権の中の閣僚の中でも長老然とした雰囲気を漂わせているロス商務長官の顔立ちは、スターウォーズのヨーダに似ているような気もしてきます。

 このたびの岸田外務大臣との会談では、ロス氏が長年、ジャパン・ソサエティの理事と会長を務めていたことに謝意を表明し、その後、経済的な議論に入りました。

  会談では、世耕弘成経済産業相との間で貿易関係やサイバー防衛面での協力を確認し、その後、ロス氏が日米協議に関して「何らかの協定の形に落とし込みたい」と述べたこと等が報じられています。具体的にはサイバー防衛面での人材育成、ビッグデータの利活用促進策、対日貿易赤字の削減、米国のTPP離脱後の貿易のあり方等が議論されました(日経電子版「米商務長官、2国間協定に意欲 日米協議」2017/4/18)

 詳細は不明ですが、ロイター通信の記事では、この会談の席で東芝問題に関して日米間で情報共有を進めていくことが確認されたとも報じられています。

ペンス副大統領と麻生副総理の日米経済対話

 外務省のプレスリリースと各紙報道を見ると、とりあえず日米経済対話が始まったものの、今後の貿易のあり方について、明確な結論が出たわけではないようです。

 外務省の発表は、抽象的な言葉ばかりが並び、非常にわかりにくい内容になっていました。経済対話は以下の三点を中心に進められるそうです(「麻生日本国副総理とペンス米国副大統領による日米経済対話に関する共同プレス・リリース」2017年4月18日)

  • 貿易及び投資のルール/課題に関する共通戦略⇒貿易と投資に関する二国間の取り組み等も取り上げられる
  • 経済及び構造政策分野における協力⇒相互補完的な財政金融、構造政策の積極的活用や経済協力等を議論、
  • 分野別協力⇒相互の経済的利益及び雇用創出を促進する具体的な分野を議論した。

「で、だから何なんだ」

 そう言いたくなるのですが、ロイター通信の記事(2017/4/18)では「2国間協定の交渉に難色を示す日本側との温度差」が重視されていました。

 共同記者会見では、日米双方がこの会談は両国の利益になると述べ、麻生氏は日米間でできた基準をアジアに広げることが可能だと述べたわけですが、ペンス氏は「2国間のアプローチを通じて対日関係を強化しよう」とする同政権の方針を強調しています。そして、トランプ政権では日米間の自由貿易協定(FTA)の締結に前向きであり、「将来のある時点で、日本とのFTAを目指す可能性がある」と述べたのですが、麻生氏のほうはFTAに関する質問に対して、直接の発言がなかったと報じています。

 そして、ロス商務長官も会談後、「日本との貿易関係を強化したいと考えているし、協定の形でそうなることを望んでいる」と述べたのに対して、世耕経産相はこれに対して明確な希望を表明しませんでした。経産省幹部は、この会談の中では「FTAという言葉は出ていない」と述べたそうなのです。

(ロイター「日米経済対話、3本柱で推進 副大統領はFTAの可能性に言及」4/18)

ペンス副大統領と安倍首相との会談

 外務省HPを見ると、安倍首相との会談のほうはやけに長い記事が出てきます。

 日米経済対話は明確な結論が出ていませんが、日米同盟の強化に関しては、先行的に議論が進んでいるようなので、その中身を見てみます (外務省「ペンス米国副大統領による安倍総理大臣表敬」2017/4/18)。

  • 日米同盟は地域の平和と繁栄の礎だ。アジア歴訪は,米国の地域に対するコミットメントに揺るぎがないことを示している(安倍首相)
  • トランプ政権が北朝鮮への「戦略的忍耐」を捨て「全ての選択肢がテーブルの上にある」としたことを評価(安倍首相)
  • 米国は100%日本と共にある。日米同盟を強化する(ペンス副大統領)
  • 北朝鮮が脅威となったという認識を共有。中国への働きかけを行うことで一致
  • 拉致問題解決に向けての日米連携を確認
  • ペンス副大統領は19日に空母ロナルド・レーガンにおいて,米軍と自衛隊を激励する。
  • ペンス氏は在日米軍への日本政府の強い支持に謝意を表明。沖縄の負担軽減に取り組むことで合意 

 こうしてみると、経済対話は「とりあえず始めてみました」という段階にすぎないので、今回の副大統領訪問で、一番、インパクトがあるのは空母ロナルドレーガンの上での演説になりそうです。

 これは、トランプ政権では、いまだUSTR(米国通商代表部)長官のロバート・ライトハイザー氏が上院で承認されていないので、経済対話を本格的に開始できないでいる、ということなのかもしれません。

 しかし、USTRは3月31日に貿易障壁に関する年次報告書を公表し、日本に対しては、自動車や農産品等の分野で市場開放を求めたことが報じられています。日本の牛肉、豚肉、乳製品等で高関税が残っていることや、自動車市場での非関税障壁の存在を指摘しました。

 これに関して、農産品分野の特定品目で高関税が残っているのは事実ですが、日本でアメ車が売れないのは非関税障壁が原因だという議論には疑問が残ります。後者にはデカすぎる仕様が我が国の狭い道に合わないなど、政府で協議してもラチがあかない問題も含まれているのではないでしょうか。

 今後、貿易交渉が本格化すれば、いろいろと面倒な問題も出てきます。

 とりあえず、日本側は、米国側は本格的な交渉に入れない状態にあるのを見越して、時間稼ぎをしているのでしょう。