トランプ政権と日本・アジア 2017

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国民保護ポータル 開けてびっくりの内容紹介 北朝鮮危機で関心が高まったが・・・

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  金正恩政権の暴走が警戒され、内閣HPの「国民保護ポータルサイト」のアクセス数が3月に45万件にまで急増したことが注目されています。

 普段は見向きもされないページが急遽、注目され、プロブロガーの記事に近いレベルのアクセス数になったわけです。

「そもそも、国民保護って何?」

 しかし、大部分の人にとって「国民保護」というのは縁が遠い言葉です。

 そのため、今回は、にわかに関心が高まった「国民保護」の中身について考えてみます。

やっとミサイル攻撃の避難訓練が始まった

 北朝鮮がミサイル実験をした際にサイレンが鳴り、退避した人たちの姿がニュースで報じられますが、わかりやすく言えば、この種のアクションが「国民保護」の範疇に入ります。

 軍事的な危機だけでなく、テロ等も範囲に含み、非常時に国民が避難し、それを救援できるような仕組みがつくられているわけです。

 この仕組みは「国民保護法」のもとに都道府県と市町村で作成されていますが、実際のところ、大多数の国民はその中身を知りません(地震の避難訓練はあってもミサイルの避難訓練等はほとんど行われていない)。

 弾道ミサイルが着弾すると想定して避難訓練が行われたのは、2017年3月の秋田県男鹿市が初めてでした。

 その中身を見ると「X国から弾道ミサイルが発射され、秋田県沖の日本海(領海内)に落下する」という想定で以下の三項目を訓練した模様です。

  • 国からJアラート、エムネットを使った情報伝達を実施
  • 防災行政無線及び登録制メールによる住民への情報伝達を実施
  • 男鹿市北浦地区の北浦公民館及び北陽小学校で住民が屋内避難を実施

 「Jアラート」というのはミサイル攻撃などの危険がある地域に避難を呼びかける警報で、「エムネット」というのは行政専用回線を通じて官邸と地方自治体の間で緊急情報を双方向通信するシステムです。エムネットを通じてアラートメールが来ると、自動的に非常サイレンが鳴り始めると言われています。

 しかし、計画の概要を見ると、「荒天の場合には内容を変更することがあります」と書かれており、ミサイルが悪天候の中で落ちてくることは想定外にされていました。

 社会不安を煽るという理由で死傷者の想定なしで行われたとも報じられています。

 実に平和な有事対策の訓練です。

 結局、名義上、存在しても実態が薄かった国民保護法が、北朝鮮危機に伴い、やっと実感をもって国民の心に迫ってくるようになったのだとも言えそうです。

主な想定は北朝鮮のミサイル攻撃と工作員のテロ

 国民保護法の中身は非常にわかりにくいので、まず、実例のほうを先に見てみます。

 岡山県では1月27日に、岡山県庁と岡山市保健福祉会館で以下の想定の訓練を行いました。

岡山市内の大規模商業施設で生物剤(炭疽菌)が散布されるとともに、市内の大規模集客施設において多数の死傷者を伴う爆破事案が発生する。その後、爆発物を所持した犯行グループが市内の飲食店に人質を取って立てこもる。

 なかなか物騒な話ですが、これは有事になったら北朝鮮の工作員がやりそうなテロを想定しています。初動対応を確認し、関係機関との情報共有・調整要領の確認を進めると書かれていました。

 北朝鮮に近い岡山県では危機感が高まっているのでしょう。

 他の地域を見ると、神奈川県では日産スタジアムでテロが起きたら・・・という想定で図上訓練が2月に開催されています。

 京都でも2月に京都競馬場で開催される国際競走レースで、1階投票所付近に並んだ観客の列に「サリン」が散布されるという想定で図上訓練が行われました。

 こうしてみると、想定しているのは北朝鮮が強みを持つミサイルとテロ攻撃が特に警戒されていることが分かります。

わかりにくい国民保護法

 国民保護法では武力攻撃が発生した場合の対策として、以下の項目を規定しています。

  1. 警報の発令、避難の指示、避難住民等の救援、消防等に関する措置
  2. 施設及び設備の応急の復旧に関する措置
  3. 保健衛生の確保及び社会秩序の維持に関する措置
  4. 運送及び通信に関する措置
  5. 国民の生活の安定に関する措置
  6. 被害の復旧に関する措置

 法律の条文は分かりにくいのですが、その中で重要なのは、やはり、国と地方自治体の協力関係です。有事に自衛隊等が国民救済にあたろうとしても、地方自治体のほうにやる気がないと、その力が半減してしまうからです。

 知事や市長などがアンチ自衛隊の人だと、自衛隊の出動に難色を示したり、非常時の展開がやりにくくなる可能性があるので、これを機能させる上では、地方自治体とのやり取りの成否が非常に大事になるわけです。

 実際のところ、知事や首長の間に、どの程度、ミサイル着弾への危機感があるのかは疑問が残ります。

 市議会で国民保護計画の中身について質問をする議員もまれにいますが、市の側にさほど危機感がないため、国民保護計画はあっても訓練はなされず、形骸化することが多いという問題もあるからです。

 筆者は、北朝鮮の対日攻撃目標の筆頭にあがる東京都に住んでいますが、当然、国民保護のための訓練などを経験したことはありません。あるとしたら、せいぜい、震災時の避難訓練程度です。

具体的に国民はどう避難する?

 国民保護ポータルサイトからダウンロードできるパンフレットを見ると、警報を聞いた後の対処について書かれています。

 屋内にいる場合はドアや窓を閉め切り、ガス、水道、換気扇を止める。ドアや壁、窓ガラスから離れて座ってくださいと書かれています。

 屋外にいる場合は堅牢な建物や地下街などの屋内避難を呼びかけています。

 ドライバーに対しては、できる限り道路外の場所に車両を止め、やむを得ず道路に置いて避難する場合は道路の左側端に鍵をかけて駐車してくれと要望していました。

(参考:都道府県避難施設一覧 - 内閣官房 国民保護ポータルサイト

 ざっと見ると、何だか地震の時の避難訓練みたいなのですが、「堅牢な建物」に退避するだけで大丈夫なのか・・・という疑問が残ります。

 ノドンミサイルが落ちたら、どんな堅牢な建物もイチコロで吹っ飛びますので、この場合はどうにもなりません。

 東京都庁や各県の県庁は「堅牢な建物」ですが、同時に攻撃目標になっている可能性があるので、ミサイル攻撃の逃げ場として適切なのかどうかは何とも言えません。

 国民は地下シェルターに入れて万全を期すというのであれば話は分かりますが・・・。

 実際のところ、日本の国民保護のネックは地下シェルターの不足にあるので、とりあえず、ミサイル攻撃に対しては、地下街に逃げ込むことが具体策になりそうです。

 日本核シェルター協会によれば、シェルター普及率は、イスラエルとスイスは100%、ノルウェーが98%、アメリカが82%、ロシアが78%、イギリスが67%、シンガポールが54%。そして、日本はなんと0.02%なのだそうです。

なかなかすさまじいパンフレットの中身

 初めのページは災害避難パンフレットに似ているのですが、途中からすごい想定が出てきます。

 有事対策なので、当然なのですが、改めて文字に書かれると、目がテンになってしまいました。

②留意点 

◎核爆発の場合

閃光や火球が発生した場合には、失明するおそれがあるので見ないでください(P12)

 どこで発生するのかが一番の問題ですが、見ている余裕さえないかもしれませんね。

 筆者は東京在住なので、このケースでは生き残っていないかもしれません (+_+)。

とっさに遮蔽物の陰に身を隠しましょう。近隣に建物があればその中へ避難しましょう。地下施設やコンクリート建物であればより安全です (P12)

 直撃弾だったら隠れても無駄ですが、遠距離にいる人の場合、原爆でもとっさに大きな塀の影に隠れて助かったりした事例はあるようです。これは放射線対策です。

 そのほかの想定例を見てみましょう。

  1. ゲリラや特殊部隊による攻撃の場合
  2. 弾道ミサイルによる攻撃の場合
  3. 着上陸侵攻の場合
  4. 航空攻撃の場合
  5. 武力攻撃やテロなどの手段として化学剤、生物剤、核物質が用いられた場合

 不慣れな顔文字を使いたくなるぐらい、末期的な想定がずらりと並んでいます (゚ロ゚;ノ)。

 1は原発への攻撃がありうることにアラートを鳴らしています。

 3は上陸地点の予測に基づいて国民に退避を促すという内容。

 そして、4の航空攻撃のケースは、やや微妙な内容になっています。

「都市部の主要な施設やライフラインのインフラ施設が目標となることも想定されます」とあり、同時に「屋内への避難にあたっては、近隣の堅牢な建物や地下街などに避難しましょう」と書かれているわけですが、近隣の堅牢な建物が「都市部の主要施設」や「インフラ施設」だったら、どうしたらいいんでしょう。

 前節であげたように、「堅牢な建物」が北朝鮮の攻撃目標になりうるという懸念があるからです。

 やはり、これはシェルターを増やさないことにはどうにもなりません。

 そして、特に注意を要するのが5の想定です。

 化学兵器などで汚染されてしまった場合、みんなパニックになるので、化学物質のついた服を脱ぐことを忘れてしまいます。実際に、サリン事件対策で動いた自衛官によれば、当時はそうだったらしく、その方は服の外側が頭に触れるような脱ぎ方だと被災してしまうことにも注意を喚起していました。

汚染された服、時計、コンタクトレンズなどは速やかに処分する必要がありますが、汚染された衣服などをうかつに脱ぐと、露出している皮膚に衣服の汚染された部分が触れるおそれがあります。特に頭からかぶる服を着ている場合には、はさみを使用して切り裂いてから、ビニール袋に密閉しましょう。その後、水と石けんで手、顔、体をよく洗いましょう。(P9)

  化学防護の知見が国民保護パンフレットにも反映されています。

 そのほか、口を覆い、風上や建物の上部への避難が薦められていました。

 かなりホラーな内容が入っているのですが、もう、日本も、この種の対策を考えなければいけないご時世になってきたのでしょう。