トランプ政権と日本・アジア 2017

米国株や為替に影響する時事問題を中心に政治動向をウォッチ。今さら聞けない常識も再確認。

北朝鮮の戦力とは? 脅威の実態はミサイルと特殊部隊、核と化学兵器

f:id:minamiblog:20170415085946j:plain

(北朝鮮も運用する59式戦車。製造元は中国。出所はWIKIパブリックドメイン画像)

  4月15日は北朝鮮の建国者である金日成の誕生日なので、軍事パレードが行われ、金正恩氏が閲兵をしました。

 これに伴って、ミサイル発射実験や核実験等の実施が警戒されています。

 そして、25日には建軍節(北朝鮮軍創設の祝祭。17年で85周年)があるので、この15日~25日頃に、北朝鮮が挑発的な行動を起こす可能性が危険視されているわけです。

 安倍首相が、北朝鮮軍がサリン弾頭のミサイル発射能力を持っていることや、空自戦闘機に敵基地攻撃能力がないことに言及したりと、日増しに緊張が高まっていますが、そもそも、北朝鮮の軍事力の中で、日韓両国と米軍にとって脅威となるものは何なのでしょうか。

北朝鮮軍の規模とは?

 まず、基本的な情報から見てみます。

 『軍事研究(2016年8月号)』所収の福好昌治氏の記事(「『米韓連合師団』の誕生」)によれば、合算値で見た北朝鮮軍の実態は以下の通りです。

  • 総兵力:119万人
  • 陸軍:102万人
  • 戦車:3500両
  • 艦艇:780隻(10.3万トン)
  • フリゲート;3隻
  • 潜水艦:20隻
  • 作戦機:560機

 人口は2470万人しかいないのに、軍人が120万人程度なので、だいたい20人に1人ぐらいの割合で軍人がいることになります。

(※以下、『防衛省・自衛隊|平成28年版防衛白書|1 北朝鮮』)

f:id:minamiblog:20170529032547g:plain

(防衛白書のリンク:http://www.mod.go.jp/j/publication/wp/wp2016/html/n1221000.html

やたらと多い陸軍

 異常に軍人比率が高いのですが、そのほとんどは陸軍です。

 ただ、戦車はソ連製の旧型機や中国製の59式戦車(1980年代頃につくられた機種)なので、現代戦ができる水準ではありません。実際に開戦したら、最初にソウル市に猛攻をしかけることは可能ですが、イラク軍以上にあっさり米韓連合軍に撃破されてしまうでしょう。

 平成28年度の防衛白書では「陸上戦力は、約102万人を擁し、兵力の約3分の2をDMZ付近に展開している」「戦車3,500両以上を含む機甲戦力と火砲を有し、また、240mm多連装ロケットや170mm自走砲といった長射程火砲をDMZ沿いに常時配備している」とも述べています。

 米韓連合軍に殲滅されることが必定でも、この火砲の猛攻はソウル市に甚大な被害を生むため、北朝鮮にとっては韓国側からの攻撃を防ぐ機能を果たしています。

海軍で要注意なのは潜水艦

 艦艇数は多いのですが、実際に戦力となる艦艇は旧型のフリゲート艦3隻と潜水艦20隻です。

(※フリゲート艦の機能は駆逐艦と似ているが、艦艇の規模が一回り小さい。フリゲート艦と潜水艦の隻数に関しては他のデータもある)

 フリゲート艦は旧ソ連の巡視船や掃海艇を改造した艦艇らしく、たいした戦闘能力はありません。潜水艦も旧型ですが、魚雷発射や特殊部隊の輸送等で力を発揮するので、これは要警戒の対象とされています。近年では弾道ミサイルの発射実験にも力を入れているので、「まさか」の一撃の可能性も「浮上」してきています。騒音をふりまく旧型マシンなので、中国の潜水艦よりも発見しやすいのですが、潜水艦特有の奇襲能力が警戒されているわけです。

 海軍戦力は限定的ですが、この部隊は特殊部隊の運搬に用いられます。冷戦初期にソ連がつくった旧式のロメオ級潜水艦(約20隻)や小型潜水艦約70隻、エアクッション揚陸艇約140隻等が、海戦以外の特殊部隊運搬に用いられることが警戒されているわけです。

戦闘機は旧型ばかり

 福好氏の調査によれば、北朝鮮は旧ソ連製のミグ23を56機、ミグ29を18機、スホイ25(こちらは対地攻撃用とみられる)を34機持っています。

 ミグ23は1967年初飛行。ミグ29は1977年に初飛行。スホイ25は1975年初飛行。

 自衛隊のF15とF2(※F2はF16の日本版)は第四世代戦闘機に分類されますが、この世代に入れるのは18機のミグ29のみです。

 要するに、こちらも旧型機ばかりなので、空軍戦力で米韓連合軍に戦えるわけではありません。

 ただ、北朝鮮には旧型機すぎてレーダーに映らない木製輸送機があり、これを用いて特殊部隊を韓国に輸送する作戦があるとも言われています。これは別の意味でのステルス機になっているので、思わぬ反撃がなされる可能性があります。

脅威の中心はミサイルと特殊部隊

 結局、通常戦力は大したことがないので、その脅威の中心はミサイル部隊と特殊部隊、何個あるかわからない「核兵器」と「化学兵器」になります。

 核兵器と化学兵器はミサイルで飛ばすことが主たる運用法で、化学兵器は特殊部隊を通じても用いられるため、結局、ミサイル戦力と特殊部隊あたりが脅威の中心に収斂されます。

北朝鮮のミサイル戦力

 著名なミサイルは、韓国と日本西部(九州や中国地方)あたりを射程に入れたスカッドミサイルとノドンミサイルです。米軍グアム基地までを狙うムスダンも完成に近づいていますが、一応、実験中と見るべきなのでしょう。

 テポドンミサイルはアメリカ本土を狙う長距離弾道ミサイルですが、これは固定発射台から液体燃料をコトコトと入れて撃つので、発射前に米軍に破壊される可能性が高いと見てよさそうです。

 ミサイルは隠されているため、正確な数は不明ですが、この中で脅威の中心になるのは、やはり、スカッドとノドンです。

 北朝鮮のスカッドミサイルは改良版の「スカッドER」(射程距離800~1000km)なので、北朝鮮南部から大阪、阪神、長崎までが射程に入ると言われています。準中距離弾道ミサイル「ノドン」は(射程1300キロ)は日本全域を攻撃可能です。 

 そして、テポドンとは違い、この二種類は移動式発射台から撃てるので、発射前に隠されたミサイルを全て破壊するのは難しいのです。

 そのため、特に我が国にとって危険なこの二種のミサイルの報道例などを紹介してみます。

  • 09年4月2日に、産経新聞は「ノドン」が最大で320基に上る可能性があるとした国際研究機関「インターナショナル・クライシス・グループ」の報告書の記述を紹介。
  • 北村淳氏(米海兵隊アドバイザー)は、「ノドン」200発、「スカッドER」350発の550発が日本を狙えるミサイルだと見なしている。(JB PRESS 2012.12.25)
  • 2014年3月の米国防省報告書によればスカッド用の発射台は最大100両、ノドン用の発射台は最大50両、新型ミサイル「ムスダン」(グアム等を狙う)用の発射台最大50両を保有しているとされる。(防衛白書2014)
  • また、2012年のジェーンズ・インフォーメーション・グループの報告書によれば、北朝鮮はスカッドを約600基、ノドンを約200基、その他の中・長距離ミサイルを約50~150基保有しているとみられている。(防衛白書2014)
  • 前掲の北村氏は2015年の著書『巡航ミサイル1000億円で、中国も北朝鮮も怖くない』(P127)で、北朝鮮は外貨獲得のために150発以上のノドンミサイルをイランに輸出したと指摘している。

 こうした報道を見ると、スカッドの数は350~600発程度。ノドンは100~350発程度の範囲で見積もられていることになります。

核兵器は何個ある?

 そして、問題の核兵器に関しては、すでに2012年時点で、産経デジタルで「『北朝鮮は16年に核爆弾20個保有』米物理学者が推定」(2012/12/11)と題した記事が公開されていました。

(※以下は筆者のメモですが、現在はネット上で削除されている模様)

「聯合ニュースによると、訪韓中の米核物理学者、ヘッカー元ロスアラモス国立研究所長は10日、韓国国会議員らと会い、「北朝鮮は2016年までに核爆弾約20個を保有する」との推定を語った」

「ヘッカー氏は「北朝鮮は現在、年に4個程度の核爆弾を製造する能力があると推定される」と指摘。弾道ミサイル搭載のための核弾頭の小型化については「まだ(技術の確立を)確信していないとみられ、今後も核実験を行う可能性がある」とした」

「韓国政府のシンクタンク、統一研究院も、北朝鮮が15年末には計27個の核爆弾を保有する恐れがあるとする報告書をまとめている」

 当時、ヘッカー博士は 「北朝鮮は大変精巧な第2世代遠心分離機を保有している」「遠心分離機で毎年1個の核爆弾製造が可能な高濃縮ウランを生産することができる」等と述べたことが報じられていました(聯合ニュース日本語版:11年1月24日 ヘッカー博士へのインタビュー記事)

 その後、2016年には北朝鮮の核保有数で「10~20個」という報道が流れています。

 日経電子版(2016/2/10)では、「ファインスタイン米上院議員(民主党)は9日の上院情報特別委員会の公聴会で『北朝鮮はプルトニウム型とウラン型を合わせて核兵器10~20個を保有している』と述べた」と報じています。同議員が米情報機関の非公開報告を受けていることを重視し、「米政府の最新推計の可能性がある」としていたのです(米上院議員「北朝鮮、核兵器10~20個保有」 )

 2017年には、科学国際安全保障研究所(ISIS)所長のデビッド・オルブライト氏が「北朝鮮は16年末までにプルトニウムを33キロ、濃縮ウランを175~645キロ保有し、核兵器を13~30発製造した。さらに実験用軽水炉を稼働させれば、最悪の場合、20年末までに最大60発まで増産される」との見通しを明かしました(産経ニュース「2020年末に核兵器60発保有も 日本、韓国に届く小型核弾頭少数保有か 米研究所試算」2017.4.15)

北朝鮮は世界第三位の化学兵器大国

 毎日新聞(2017/2/25)では、韓国国防研究院(KIDA)関係者が「北朝鮮は化学兵器を大量に製造しており、保有量は米国、ロシアに続き世界3位だ」と述べた聯合ニュースの報道を紹介していました。

「KIDAなどによると、北朝鮮は1980年代から化学兵器の生産を開始し、現在はVXやサリンなどを計2500~5000トン保有している」としていたのです。 

北朝鮮の最精鋭は「特殊部隊」

 北朝鮮の特殊部隊はかつてビンラディンの配下が北朝鮮人から化学兵器対策の特訓を受けたともいわれる最精鋭部隊です。日本人を拉致したのもこの部隊のメンバーでした。その数は10万~20万程度で見積もられています。

 この部隊の練度の高さが証明されたのは1996年9月の江陵浸透事件です。

 韓国の江原道江陵市近辺で工作員を回収する北朝鮮特殊潜水艦が座礁した時、乗組員と工作員を合わせた26名が韓国内に逃亡。軍と警察の掃討作戦は二か月を要し、韓国側は軍人12名、警察官1名、民間人4名の犠牲者を出しました(負傷者17名)。

 1名の工作員を追うのに数十人規模の人員が動員される有様だったのです。

 海保巡視船が北朝鮮の不審船を撃ち、沈めた時も、北朝鮮工作員は自沈を選んだことから見ても、彼らは本国への強い忠誠心を見せています。

 日本人拉致事件を見れば分かるように、すでにこの工作員メンバーはスパイ天国の日本に多数、入り込んでいると見られています。

 朝鮮有事勃発とあらば、彼らが日本各地で活動を開始する危険性が高まります。

 金正男暗殺のような事態が日本の要人を狙って引き起こされる可能性がありますし、原発に向けてテロ部隊が夜半に上陸してくる可能性も否定できません。