トランプ政権と日本・アジア 2017

米国株や為替に影響する時事問題を中心に政治動向をウォッチ。今さら聞けない常識も再確認。

もし朝鮮有事が起きたらどうなる・・・米軍の北朝鮮攻撃シナリオ/作戦計画5027とは

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(在韓米軍のF-16とA-10。出所はWIKIパブリックドメイン画像)

  米中首脳会談後、米空母カールビンソンが朝鮮半島近海へと北上して以来、東アジアの国際情勢が緊迫し続けています。

 トランプ政権は中国の協調なしに単独行動を取ることを明らかにし、北朝鮮側は反発。11日にはトランプ氏は「非常に強い大艦隊を送った。空母以上に強い潜水艦も持っている」とツィート(※空母打撃群は通常、原子力潜水艦が同行する)。

 その後、12日にはトランプ大統領と習近平主席が電話会談を行い、中国側は米新政権に自重を促しました。韓国に高官を送るなどして、偶発的な紛争勃発を回避する道筋を模索しています。

 安倍政権はトランプ政権に軍事行動開始時には事前協議をしてほしいと要望し、米国側もそれを受入れましたが、これは、トランプ政権が軍事行動を起こす前に在韓邦人が退避する時間を確保することを狙っているのでしょう。

 金政権が自制すれば何も起きないはずですが、朝鮮半島では予断を許さない状況が続いています。

 そのため、今回は「朝鮮半島で有事が起きたら、どうなるのか?」という予測の例を幾つか紹介してみます。

米軍の北朝鮮攻撃シナリオとは?

 産経WEST(2017.4.2)では、そのシナリオの例が紹介されていました(「北朝鮮をめぐる“危険” 米は武力行使まで言及も「日本も無傷では済まない」 内部崩壊の可能性も」)。

 そこには米紙ウォールストリート・ジャーナルと経済専門サイトのビジネスインサイダー(BI)に書かれた有事シナリオの概略が紹介されています。

  • 米軍の作戦目的⇒北朝鮮の核兵器破壊/金正恩“除去”
  • 絶対的な制空権の確立が必要。空戦では米韓軍が圧倒的に優勢。
  • 核施設攻撃はステルス機の爆撃とトマホーク巡航ミサイルで行われる
  • B2ステルス爆撃機から地下施設破壊用の「バンカーバスター」を投下。
  • F22戦闘機とF35戦闘攻撃機で山岳地帯の移動式ミサイル発射台を狙う。
  • ただ、移動式ミサイル発射台の全ては破壊し切れない。
  • ノドンやスカッド等の弾道ミサイルは北朝鮮全域で200発あるともいわれる
  • 北朝鮮は残ったミサイルで反撃。ソウルを火砲で攻撃。
  • 38度線の非武装地帯(DMZ)近辺からソウルまでの距離は約50キロ。北朝鮮軍は山間部の横穴に隠したロケット砲を大量発射
  • 防空壕にソウル市民は退避するが、都市機能に大規模の被害が発生
  • 北朝鮮軍はDMZ地下の「南侵トンネル」を使って韓国に侵入。DMZ近辺が米韓軍の戦場となる。北朝鮮軍の侵入を防ぐ
  • 弾道ミサイルは日本にも発射され、我が国にも被害者は発生
  • ミサイルには化学兵器を搭載した弾頭が含まれる危険性がある

 むろん、米韓軍の勝利に終わるという見立てなのですが、韓国と日本で被害が発生することは避けられず、中国軍が朝鮮半島になだれ込んでくる危険性もあります。

 90年代に米軍が朝鮮半島で軍事行動を検討した際には、北朝鮮側の反撃で韓国に50万人~100万人の死傷者が出ると見積もられ、結局、その計画は中止されることになりました。

 米韓軍の装備は大幅に発展しているのですが、ソウルが国境線に近すぎるために、北朝鮮は旧型兵器でも韓国に大打撃を与えることが可能なのです。

 これを通常兵器による「相互確証破壊」が成立していると見る人もいます。

 紛争が起きた時に、お互いが大ダメージを受けるので、今まで、北朝鮮と韓国は決定的な軍事行動を取れなかったわけです。

米韓連合軍の代表的な作戦計画

 米韓軍の連合作戦には多様なシナリオがあるといわれていますが、その中で得に有名なのは、以下の3ケースです。

作戦計画5027:全面戦争計画①

 最近、米韓連合軍の「作戦計画5027」が北朝鮮のサイバー攻撃によって流出したことが報じられました。

 産経ニュース(2017/4/4)は、韓国KBSテレビが3日に朝鮮戦争が全面的に再開された場合の米韓軍の「作戦計画5027」が流出したと報じたことを紹介しています。ハッキングは16年9月に行われ、12月に発覚したといわれていますが、この作戦は「北朝鮮の朝鮮人民軍の南侵による朝鮮戦争再開を想定し、1970年代から改定が重ねられてきた」最高機密だとされています。

 その詳細は不明ですが、韓国海軍で特殊部隊に在籍していたコウヨンチョル氏はこの計画について、米軍は「海軍・空軍戦力による爆撃を集中し」、「韓国軍は地上軍を投入して軍事分界線を越えて北朝鮮を攻め、北朝鮮を占領して統治する」と説明していました(『北朝鮮特殊部隊白頭山3号作戦』)

作戦計画5015:全面戦争計画②

 これは、北朝鮮が核攻撃もしくは核威嚇を行うことが確実になった時に、米軍がそれを破壊する「予防攻撃」と、金正恩への直接攻撃(断首作戦)を含んだ全面戦争計画です(予防攻撃も断首作戦も全面戦争を招来するので、この二つだけが単独で作戦計画5015を構成しているとは考えにくい)。

 この「5015」に関して、古森義久氏(産経新聞ワシントン駐在客員特派員)は『月刊Hanada 2017年6月号』にて「米韓軍による北朝鮮の国家指導部への奇襲攻撃や通信ネットワークの破壊攻撃、さらには北朝鮮全土に点在する主要軍事拠点への攻撃をも含む」(P64)と説明していました。

 同氏は、これは2015年に米韓連合軍に承認され、従来の「5027計画」に替わる有事の戦略方針として採用された作戦だとも述べています。だとすれば「作戦計画5027」が北朝鮮のサイバー攻撃によって流出しても、最重要の情報はまだ米韓連合軍の中でキープされているとも言えるのかもしれません。

作戦計画5026:限定攻撃計画

 それ以外にも、限定的な攻撃計画として「5026計画」があるといわれています。

 前掲書によれば、これは「寧辺核施設をはじめ弾道ミサイル基地および生物化学兵器施設をピンポイントで空爆する」計画で、「国家の指揮・通信施設や空軍基地や防空基地も集中爆撃して、全面戦争を回避する」ことを意図したものです。この中には北朝鮮の指導者の排除を狙ったピンポイント攻撃も含まれています。

作戦計画5029:北朝鮮側の異変に対応

 これに関しては、国家基本問題研究所が「北朝鮮に対する政策提言:新政権は北朝鮮急変事態に備えよ」(2009/9/11)と題した論文の中で紹介していました。

 その中身に関して、「北朝鮮における、①クーデター、住民暴動、金正日死去などで内戦が発生、②反乱軍が核、化学兵器など大量破壊兵器を奪取、③住民の大量脱出、④韓国人人質事件の発生、⑤大規模な自然災害の発生-とされている。作戦計画では兵力や装備の配備・運用まで具体的に定めている」と述べています。

 ・・・

 こうして見ると、今、検討されているとしたら、作戦計画5026に近いプランである可能性が高そうです。

 韓国が朴大統領罷免後の大統領選中なので、統治不全状態なのが一つの難点ではありますが・・・。

北朝鮮危機は杞憂に終わるのか?  それとも・・・

  いずれにせよ、これらの恐るべきシナリオが杞憂に終わり、何もなければそれに越したことはありません。

 ただ、何もない場合は金正恩政権は延命し、隙を見てこれからも核開発やミサイル実験を断続的に続ける可能性が高く、未来に危機が先送りされる構図になります。

 今、紛争が起きても地獄ですが、先送りの結果、未来に地獄絵図が展開するーーという危険性もあるわけです。

 そのせいもあって、昨今、在韓米軍に再び核兵器を配備すべきだ、という案が米政府内で浮上したことが報じられています。

 元を辿れば、ソ連崩壊の後、90年代初めに米軍は朝鮮半島から核兵器を撤去しました。その後、北朝鮮が核開発とミサイル開発を本格化させてきたわけですから、結局、ゲームが振り出しに戻ってしまったのです。

 冷戦期は、結局、米ソ両国が核兵器でにらみ合うことで、両国が戦争できない状態を維持していました。そして、西ヨーロッパや朝鮮半島などでは核兵器を配備することで、抑止力強化を図っていたわけです。

 冷戦期の戦略を用いるならば、結局、北朝鮮の核に対して、在韓米軍が核配備し、日本は在日米軍の「核持ち込み」を公認するしかなくなってきます。話し合いが利かない相手の場合、結局、「核には核で」という形で抑止力を強化し、暴走を止めるしかなくなるからです。

 話し合いや交渉で北朝鮮の核兵器を放棄できなかったここ20数年を振返ると、もはや、非核三原則の「持ち込ませず」を緩和するしかないーーこれは日本人には抵抗の強い案ですが、この案が提起されるのは、もうそんなに先の話ではなさそうです。

 冷戦期のアジアの安定を図る上で、日本への核持ち込みの密約(非核三原則のため表ざたにできず)は重要な施策になっていました。

(※民主党政権の頃、この核密約を公開したことに対して、米国の安保関係者から怒りの声が広がったことを日高義樹氏は強調していました。これは重要政策だったからです)

 結局、話し合いや交渉で解決の道が見えないのならば、米軍も韓国も日本も、さらに高度な抑止力が必要になります。そして、そのため具体策を見ると、結局、今までの「タブー」を破らざるをえなくなりそうなのです。