トランプ政権と日本・アジア 2017

米国株や為替に影響する時事問題を中心に政治動向をウォッチ。今さら聞けない常識も再確認。

【北朝鮮危機】外務省が在韓邦人に安全対策を呼びかけ 避難勧告の日が近づいた?

f:id:minamiblog:20170412071632j:plain

(朝鮮半島の南北国境線の風景。出所はWIKIパブリックドメイン画像)

  米空母カール・ビンソンを中心とした第一空母打撃群が朝鮮半島に接近し、有事に即応できる体制を整えていることに対して、北朝鮮外務省は激しく抗議しています。

 緊張がますます高まっているので、今回も引き続き、この問題を取り上げてみます。

北朝鮮外務省が米国に反発

 BBCの記事(2017/4/11)には、北朝鮮外務省のコメントが紹介されています(「強力な武力で防衛する」 北朝鮮外務省、米空母派遣に抗議)。

  • 「強力な武力で防衛する」
  • (打撃群の派遣は)「向こう見ずな侵略に向けた行為」が「深刻な状況に達した」
  • 「米国の不埒(ふらち)な行為によって引き起こされる破滅的帰結の責任は、すべて米国にある」
  • 「米国が望むいかなる戦争の形態にも、我々は対応する用意がある」

 米空母が来たことで核開発の正当性が証明されたとも述べているようです。

 これに対して、中国の武大偉・朝鮮半島問題特別代表は10日に訪韓し、韓国外相らと会談。北朝鮮が核実験やミサイル発射試験に踏み込んだ場合、「強力な措置」を取ることで中韓が一致したとも報じられています(中国は2月以降、北朝鮮からの石炭輸入を禁止している)。

 金日成主席の生誕105周年となる4月15日、北朝鮮軍の創設記念日である建軍節(4月25日)を経て、米韓共同軍事演習の終了日(4月末を予定)頃までは核実験やミサイル発射の危険性が高まります(ミサイル発射に対して、米国はその場合は迎撃する用意があることを近隣諸国に通知)。

 先般、米国はシリアにトマホークミサイル(巡航ミサイル)で限定攻撃をしかけたばかりなので、限定的に北朝鮮のミサイル実験施設等を狙う可能性も高まりました。

 ただ、北朝鮮はシリアと違い、数百発のノドンミサイルやスカッドミサイルで反撃でき、さらには火砲等で国境線に近いソウル市を火の海にすることができます。

 そのため、米国が限定攻撃を仕掛けた場合、北朝鮮がソウルに大規模攻撃で応え、全面戦争になってしまう危険性があります。その死傷者数は数十万人から百万人の規模に及ぶと見られていたため、米国の歴代政権は武力を行使できないでいました。

 しかし、今回は、トランプ大統領がその一線を超えるのかどうかが注目されています。

 米中首脳会談後なので、中国側とも何か裏取引がなされたのかと勘繰る見方もありますが、今後の展開次第では、我々の見ている世界が一変する危険性もあるわけです。

外務省が韓国滞在者に安全対策を呼びかけ

 トランプ大統領は11日に北朝鮮を問題視し、「中国が(米国を)助けると決めるのならよいが、そうでなければ、我々は彼ら抜きで解決するつもりだ」とツィート。

(原文:North Korea is looking for trouble. If China decides to help, that would be great. If not, we will solve the problem without them! U.S.A.)

 米国の本気度が高まる中で、日本の外務省は「海外安全ホームページ: スポット情報詳細」に以下のコメントを掲載しました。

現在,韓国については,直ちに邦人の皆様の安全に影響がある状況ではなく,危険情報は出ておりません。他方,北朝鮮は核実験や弾道ミサイル発射を繰り返していることから,今回改めてお知らせを出させていただきました。朝鮮半島情勢に関する情報には,引き続き注意してください。 

  そして、韓国への滞在・渡航を予定する方や滞在者に最新情報への注意や連絡先の外務省への登録を呼びかけています(登録方法は二通りあり、韓国滞在が3ヶ月未満の場合は外務省海外旅行登録「たびレジ」を用い,3ヶ月以上の場合は「在留届」の提出となる)。

 北朝鮮の動向に関する問い合わせが増えたため、外務省はスポット情報で北朝鮮の核とミサイル開発実験に注意を喚起しているわけです。 

在韓邦人に避難勧告を出すべき時節が来た?

    外務省はまだ、注意を喚起するぐらいのメッセージしか出していません。

    しかし、この朝鮮有事の恐ろしさは、一度起きてしまったら後戻りがきかないことにあります。

    北朝鮮もミサイルをもち、ソウルを火の海にすべく国境近辺に火砲部隊を並べているので、米軍が限定攻撃を仕掛けてもワンサイドゲームにはなりません。

 北朝鮮が本格的な反撃を行い、短期間で地域紛争にまで戦火が広がる危険性があります。

(地域紛争となれば米韓連合軍の勝利が確実視されているが、朝鮮半島北部に展開した中国軍が南進を開始する危険性もある)

    要するに、朝鮮有事が起きた場合、短期間で危機レベルが最高度にまで上がってしまうので、在韓邦人がその時に動き始めても、危機から逃れる手段が失われている可能性が高いのです。

   空港や港から逃れようとしても、そうした要所には北朝鮮からミサイルが打ち込まれ、機能が停止しているかもしれません。

 有事となれば、民間機や民間船での邦人救済は困難です(韓国にもシェルターはあるが、そこに日本人が入れる保障はない)。

 しかし、自衛隊機や自衛隊の艦船で邦人救済を行う場合、韓国の領海・領空内に入る際に韓国政府の承認が必要になります。この場合、韓国政府に拒絶される可能性が高いでしょう。

『VOICE 2017年6月号』でも、野口裕之氏(産経新聞専門委員)が「韓国では自衛隊の入国を、反日的国民の顔色をうかがう韓国政府が拒否する恐れが高い」「自衛隊に代わり米軍が救出・誘導した邦人を日本に輸送すべく出動する空自機や海自機の着陸・接岸さえ許可せぬ懸念も残る」(P83)と指摘していました。

 また、ソウルが火の海になった場合、大統領府の機能停止の可能性もあります。朝鮮戦争の頃、李承晩大統領が首都から遁走してしまった、という歴史の故事を忘れてはなりません。

 そして、一番恐ろしいのは、北朝鮮がサリン弾等を用いた場合です。

 これは、あまり新聞記事等では出てこない話ですが、北朝鮮軍がソウル総攻撃を決意した場合、撃ち込まれる砲弾に化学兵器が混ぜられる可能性があるのです。

 北朝鮮は世界有数の化学兵器大国なので、軍近代化の遅れを「化学兵器」で埋めようとする可能性が懸念されています。

  この場合、サリンなどに汚染された民間人を輸送できるかどうかという困難な問題が発生しますが、韓国で除染しながら万の単位の民間人を輸送することは困難の極みです(化学兵器による汚染が発生したことが判明すれば民間機や民間船での輸送はほぼ絶望的になる)。

 自衛隊には除染部隊がいますが、万の単位の汚染にまではとても手が回らないでしょう。

 今の輸送機や艦艇でも万の単位の輸送は困難なのに、その上に「除染」という難題が上乗せされた場合、朝鮮有事発生後の在韓邦人救済は絶望的な状況になりそうです。

  ・・・

 そのため、筆者は、在韓邦人の安全のためには、早めに高いレベルのアラートを出すべきだと考えています。

 「社会不安を煽るのはよくない」という考え方もありますが、今のレベルの注意勧告は不十分に見えて仕方がありません。事後的な救済は難しいからです。

 「すぐに日本に帰れ」とまで言いにくいのは事実ですが、朝鮮有事が発生した際のリスクに関しては、もう一段、しっかりと在韓邦人に伝える必要があります。