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ゼロからやりなおす「政治と経済」

政治と経済について、いまさら聞けない知識を整理しつつ、ニュースがよりよくわかるデータを紹介していきます。

森友学園問題を4月に「電撃解散」で清算? 予算成立後の国会はどうなる

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(帝国議会議事堂の絵:出所はWIKIパブリックドメイン画像)

  平成29年度予算(97兆4500億円)が27日に参院本会議で成立し、ちょうど森友学園の籠池泰典理事長の証言が終わったことから、にわかに「電撃解散」説が浮上しました。

 予算成立前の解散は筋が通らず、籠池理事長の主張も公の場で明らかにしないと、どの程度の信憑性があるのかがはっきりしません。そのため、今までは解散はしにくかったのですが、これでちょうど解散がしやすい状況になったのではないかーーという見方が出てきたわけです。

 7月には東京都議選があるので、夏に衆院選と都議選をかぶらせることには公明党が難色を示しますし、小池氏の都政バトルに巻き込まれて東京選出の国会議員が被害を被る可能性も出てきます(公明党が小池氏の都民ファーストの会と連携してしまうので、国政選挙との矛盾も生じる)。

 そのあたりを含めると、4月解散は与党にとって悪くない案だという考える人もいるようです。

 ただ、現実問題としてそれが可能なのかどうか。

 後ほど紹介する世論調査では、安倍政権の支持率は5割以上ですが、森友学園問題に関して政府側の説明が不十分だと考える人が6割を超えているので、過半数の議席が取れても与党の総数が減り、首相が願う憲法改正は遠のいてしまうのかもしれません。

 筆者は、首相の一番の願いから推測すると、4月解散は厳しいのではないかと思うのですが、「ない」とも言い切れないのが現状です。

 そこで、今回は、このたびの予算成立と森友学園問題、そして、支持率の変動等を振り返ってみます。

まともに審議されなかった97兆円の巨大予算 

 27日に成立した予算案は過去最大規模の97兆4547億円。

 大多数の家計は万の単位のお金しか扱っていないので、もはや国民の想像も及ばぬほど巨額のお金が動いています。

 歳入の内訳は税収が57兆7120億円(前年度比1080億増)、公債金が34兆3698億円(同622億減)、その他収入が5兆3729億円(同6871億増)。歳入のうち公債が占める割合は35.3%になります(前年度は35.6%)。

 歳出を見ると、国債費が23兆5285億円(前年度比836億減)で、一般歳出が58兆3591億円(同5305億増)、地方交付税交付金が15兆5671億円(同2860億増)。国債の利払いや償還に約24%が消えるので、見かけほど政府がお金を使えない状況が毎年、続いています。

(※平成29年度予算については、当ブログの2016/8/15記事に詳しく書いたので、各省庁予算に関しては、そちらを参照していただければと思います)

 それにしても、巨額のお金です。万単位のお金しか使わない筆者にとって「兆円」というのは、まったく実感がわかない数字です。「1兆円」というお金の実感を持てるのは、一定の規模を超えた企業の経営者や財務担当者ぐらいで、大多数のサラリーマンには、まったく実感がわかないに違いありません。

  一般国民なら、それで何も問題は起きないのですが、このたびの「森友学園問題」に明け暮れた3月の国会を見て、筆者は「国会議員の先生方も『兆円』単位のお金には実感がわかないのではないか?」という疑問を感じざるをえませんでした。

 森友学園に払い下げられた土地の値段の値引き額は8億円程度。全国から総選挙で選ばれた国会議員(特に野党議員)の多くは、97兆4547億円の予算の中身を検証する時間を割いてまで、この8億円の問題に関して血眼になって議論しています。

 森友学園問題は首相の政治倫理の問題なので、違った意味合いがあることは分かるのですが、本来、予算の中身の是非を問う場である国会で、籠池理事長が主役のように姿を現してくることに、筆者は違和感を感じざるをえませんでした。

 そうなったのは、野党議員の多くが「97兆4547億円の中身を問うことよりも森友学園問題を追及するほうが大事だ」という価値判断をしたためですし、視聴率と部数の競争のためにマスコミがこぞって取り上げたからでもあります。

国会で大事な案件が議論されないのはなぜ?

 これを見て、筆者は、評論家の日下公人氏が、大きなお金ほどノーチェックになりやすいという逆説を指摘していたことを思い出しました。

 日下氏は、ずいぶん昔に『「質の経済」が始まった』(2005)という著書で、「昭和40年以降、日本人が生み出したGDPが1兆1409兆円で、そこから政府が3000兆円ほど使ったが、そのうち3割ぐらいは無駄なんじゃないの・・・」という議論を展開していました。

「一般会計と特別会計を足したら3000兆円で済まないのでは?」と思い、筆者はその計算の正確性を疑っているのですが、実感がわかない大きな予算を検証するのは難しく、意外とノーチェックになりがちだという日下氏の主張は正しいと思うのです。

 イギリスの歴史と政治を研究したパーキンソン氏も『パーキンソンの法則』という著書で「難しい事案はすぐに議決され、誰にもわかる簡単な事案の審議は長くなる」と述べています。

 同氏が挙げた例で言えば、原発の中身は参加者のほとんどが分からないので議論が盛り上がらず、役所の事務用品の費用の議論ならみんなが分かるので、議論が盛り上がって長くなったりするわけです。

 過去の日本でも、大本営の軍人が主要作戦の議論をすぐに終わらせ、東京の港場で用いる艀人夫の数を延々と議論していたという逸話が残っています。

 自分が務める会社の会議を振り返った時、大事な案件が議論されずにあっさり決まり、どうでもよい差末事で管理職とスタッフが長く議論していたことはないでしょうか。

 国会でも、そういうことがよく起こり、その結果、無駄な予算が垂れ流されるわけです。

 難しい「97兆円の予算」を放り出して、誰でもわかる「森友学園問題」をみんなで議論しようとした国会議員の方々は、「パーキンソンの法則」にひっかかってしまったーーというと、言い過ぎになるのかもしれませんが、結果的には、本年度も国民のあずかり知らぬところで、税金の無駄遣いがあちこちで発生することになりそうです。

森友学園問題を振り返ってみると・・・

 筆者は予算審議が事実上、放り出されたことに腹を立てていたので、政治と経済のブログを標榜しながらも、森友学園問題をシカトしていました。

 しかし、解散にも影響を及ぼす可能性が出てきたので、一応、これを振り返ってみます。

 話が拡散していますが、もともと、問題視されたのは国交省(大阪航空局)が伊丹空港の騒音対策のために管理していた土地(8770㎡)を学校法人「森友学園」に払い下げる際に9億5600万円と評価された値段が、結果的に1億3400億円で売却されたことでした(8億1900億円は、土地内にあるゴミ撤去費とされた)。

 安倍昭恵氏が名誉校長になっていたことから、売却への首相の関与が問われ、晋三氏が「関係していたら、首相も国会議員も辞める」と答えたので、野党は必死に追及を続けます。

 民進党の蓮舫代表は、主要政策で原発ゼロを打ち出す際に支持母体の「連合」の代表の賛同を得られず、内部からも突き上げをくらったので、何とか挽回したかったのだろうと思います。

 その後、3月10日に森友学園が建設した「瑞穂の国記念小学院」の設置が不認可となり、籠池理事長が退任の意向を明らかにしました。

 3日には昭恵夫人が森友学園が運営する幼稚園で講演する際に政府職員が同行していたことが明らかになり、14日には稲田防衛相が所属する法律事務所と同学園との顧問契約を巡って間違った内容を答弁したりと、火種が拡大。

 23日には、籠池氏の証人喚問が行われ、以下の四点が争点となりましたが、政府側は首相の関与を否定します。

  1. 2015年9月に昭恵夫人を通じて100万円の寄付金を受け取った
  2. 10万円の講演料をお菓子の袋に入れて昭恵夫人に渡した
  3. 森友問題発覚後、昭恵夫人から籠池氏の妻に口止めのためのメールが届いた。
  4. 昭恵夫人付きの政府職員が口利きに関して現状では希望に添えないというファックスをもらった。

 2はまるでマンガみたいな話です。3にしても、そんなことを記録が残るメールで送る人がいるんだろうか、という疑問が残ります。4に関しては、政府側は口利きはしないと答えただけだとの説明です。

 真実性が疑われる証言も出てきた(資金集めのために首相の名を一瞬使ったといったが、実際は2年用いていた等)ので、籠池氏に関しては虚偽証言での告訴も検討されています。

 それにしても、よくもここまで炎上したものです。

 国会議員は予算審議をしっかり行い、この森友学園に関しては週刊誌の記者が一生懸命に調べれば、ベストの役割分担になったと思うのですが、そうはなりませんでした。

 法案審議もたくさん残っているのに、蓮舫代表をはじめとした野党議員はまだまだこの森友学園問題を追及したがっているので、どこか優先順位がねじ曲がっているような気がしてなりません。

 予算も法案もそっちのけで森友学園問題ばかりを延々と追及していると、国会議員としての職務は、事実上、蒸発してしまうのではないかと思うのですが・・・。

「電撃解散」は可能なのか? 支持率から考える

 ZAKZAKニュース(3/27)は「森友問題リセットへ“電撃解散”急浮上 アベノミクスか民共連携か」と題した記事を公開しています。

 228件の議案が提出されているが、森友問題で重要法案の審議が停滞している。これを突破するためにも、「電撃解散」で仕切り直そうという意見が浮上しているのだ。

 「安倍首相とドナルド・トランプ米大統領の信頼関係は強固で、アジアの平和と安定を支えている。『二重国籍』問題を抱える蓮舫代表率いる民進党と、党綱領に『日米安保条約を廃棄』『自衛隊解消』を掲げる共産党が主導する野党連合に日本を任せられるのか」(自民党ベテラン議員)

 この記事によれば、天皇陛下の退位関連法案等の他の案件は後半国会で審議すべきとの声もあるようです。

 理屈上は、ありそうな話にも思えますが、支持率のほうは、どうなっているのでしょうか。

 アンチ安倍と目されるテレビ朝日「報道ステーション」HPで見てみましょう。

  • 2017/3/26:内閣50.5% 自民47.8% 民進13.9%
  • 2017/2/26:内閣54.5% 自民49.7% 民進10.8%
  • 2017/1/19:内閣55.3% 自民48.6% 民進13.3%
  • 2016/12/18:内閣 51.6% 自民 47.5% 民進14.9%
  • 2016/11/27:内閣 50% 自民 46.3% 民進13.3%

 こうしてみると、内閣と自民党の支持率が下がったものの、民進党の支持率が大幅に増えたわけでもありません。

 内閣と自民党の支持率を足した「青木率」は98.3%という高水準なので、解散も不可能ではなさそうです(青木率:青木参院議員の名前に由来した命名)。

 14年11月辞典の青木率はFNNで87%、読売で90%程度しかないのですが、あとは「民意」と「マスコミ」を取り込めるかどうかが問題になります。

 当時の国民は消費税増税延期を望んでいたと思うのですが、「森友学園問題」がそれと並ぶ解散理由になるのでしょうか。

 今一つ、パッとしないですね。

 また、首相は憲法改正のための衆院3分の2議席を狙っているのですが、これを中心にして、そこまでの議席増が望めるのかどうかという問題もあります。

 小泉氏の郵政民営化解散のように、当時の民意と世論の後押しを得られるかどうかも重要な要因となりますが、「森友解散」ではアゲインストにしかなりません。

 共同通信社が3/25~26に行った全国電話世論調査では森友学園問題に関して「納得できない」人が62.6%。「納得できる」人は28.7%しかいません。

 支持率だけを見ると解散はありそうに見えますが、大衆心理的な要因まで考慮すると、解散は難しそうにも見えてきます。

※追記

 3月28日に産経ニュースで「安倍首相、4月総選挙見送り 『森友疑惑隠し』の批判を回避」という記事が出ました。解散が疑惑隠しと見られることを恐れ、「11日告示、23日投開票」というシナリオはなくなったようです。