トランプ政権と日本・アジア 2017

米国株や為替に影響する時事問題を中心に政治動向をウォッチ。今さら聞けない常識も再確認。

人工知能(AI)VS人間の結果一覧 ポーカー、碁、ゲーム、翻訳、執筆、CM作成、操縦・・・

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(出所はWIKI画像)

  近年、人工知能(AI)の発達が著しく、チェスだけでなく、様々な分野で人間とのバトルの結果が明らかになってきています。

 3月にはポーカーで人工知能がプロに勝利を収めたことが報じられました。

 しかし、この種のニュースは、断片的に何かのバトルで結果が出た時には注目されますが、全体的に見た戦績は意外とあいまいです。確かな情報がないまま、「人間の仕事が奪われる」という恐怖がかき立てられていることが多いのです。

 そこで、今回は、近年の人工知能と人間との戦績をざっと眺めてみます。どこに人間の強みがあるのか。どこが人工知能に脅かされようとしているのかを考えてみたいからです。

ポーカー:人工知能の勝利(17年3月)

 朝日デジタルの記事(2017/3/18)でカーネギーメロン大学がつくったAIがポーカーのプロ四名に勝ったことが報じられています(「AIがプロに勝利 白熱のポーカー対決」)。

 ピッツバーグのカジノにて、1対1のポーカー勝負という形式で4回戦い、人工知能の側が4勝を収めた模様です。通常のポーカーは6人でやるので、やや異例の形式です。

 お互いの手札が見えず、「心理戦」の性格が強いカードゲームでAI側が勝ったので、この事例は注目されました。AI「リブラトゥス」を開発したメロン大のサンドホルム教授が「チェスや囲碁のチャンピオンに勝った時より画期的だ」と述べています。

 違う地域のニュースでは、マイケルボーリング教授が作成した人工知能「ディープスタック」がオンライントーナメントで11人のポーカープレイヤーに勝利を収めたことも報じられています(sputnik「人工知能、破竹の勢いーポーカーのトッププレイヤーが機械に敗れる」17/3/3)

 ポーカーは6人対戦の形式なので、AIの勝利とまでは言えないという見方もありますが、大勢で見れば、AIが優勢であることは間違いないようです。

囲碁:人工知能の勝利(16年3月)

 2016年の3月にはグーグルのグループ企業がつくった「アルファ碁」と韓国の棋士(イセドル9段)が対戦し、4勝1敗の戦績を残しました。人工知能はチェスで1996年に世界チャンピオンに勝ち、2012年開始の人間対人工知能の将棋バトル「電王戦」ではAI側が12勝5敗1引き分けなので、ほぼ勝負はついています。

 盤面の大きさで比べると、囲碁は19×19、チェスは8×8、将棋は9×9なので、碁のほうが難しいと見られていたのですが、16年3月にはAI側が大きく人間に差をつけてしまいました。

 本年春にも、3月18~19日に電気通信大にて「UEC杯コンピュータ囲碁大会」が開催され、中国産AIの「絶芸」(Fine Art)が勝利しています。

 2017年5月には、人類最強とまでたたえられた柯潔(かけつ)九段と「アルファ碁」が3番勝負を行い、人工知能の側が全勝しています。アルファ碁の開発元であるディープマインド社のCEOは人間との対決を終わりにする方針を明かしました。

 また、7月14日~17日には、世界から囲碁ファンが集う「第2回ジャパン碁コングレス」が宝塚で開催され、囲碁ソフト「ZEN」と河英一・六段の公開対局が行われました。

 ZENはノートパソコンで稼働したようですが、それでもZENが5目半勝ちしています。

 もはや人間は碁で人工知能に勝てないようです。

格闘ゲーム:人工知能の勝利(2016年11月)

 WIRED(2016/11/15)の記事で、イスラエルにて、スーパーファミコンの格闘ゲームで人間とAIの対戦を実験したことが報じられています(「人工知能、今度は『格闘ゲーム』で人間を上回る)。

 イスラエルのチームが作成した人工知能は「Retro Learning Environment」(RLE)。

「スーパーマリオ」「F-ZERO」「モータルコンバット」「グラディウスIII」「Wolfenstein」等をプレイさせ、人間の優秀ゲーマーを上回る記録を出したことが報じられています。

翻訳:人間の勝利(17年2月)

 韓国にて 世宗大学と国際通訳翻訳協会が主催する「人間対人工知能の翻訳対決」(2/21)では、「人間、人工知能と『翻訳対決』で24.5対10の圧勝」(ハンギョレ新聞,17/2/22)という結果が出たことが報じられています。

 4人の翻訳士4人と3台の人工知能翻訳ソフトが同じ文章を翻訳。翻訳協会のメンバーが訳文を採点した結果で勝負しました。30点満点で人間側が24.5点、AI側は10点となった模様。使われた言語はハングルと英語。

 まだ、この領域では人間の尊厳が保たれているようです。

速報記事:勝敗の判定困難(17年3月3日)

 日経の決算短信の執筆の一部が「AI記者」の手で書かれ始めています。

 決算短信は論説のように価値観や判断は入らず、データ整理なので、AIでも書けるというわけです。

 アルゴリズムの中に、売上高や利益の前年同期比の比較や要因分析を取り込むアクセントの付け方を取り込みました。記者と同じように、論理的に整合性のない情報を切捨てさせるなどの工夫をこらし、決算短信をAIに書かせるわけです。

 読者からは「想像以上に違和感がない。本当に人の手が入っていないのか」等、驚きの声が上がっていることが報じられています(出所:日経「AI記者」の衝撃 開発の背景に「危機感」 (2/4) - ITmedia NEWS

 記事作成における人間とAIとの勝敗の判定は困難ですが、AIには「数字を間違えない」という強みがあります。結果的に人間の仕事が奪われれば、AIの勝利と言えるのかもしれません。

 これに関しては、日経BP記事で「AI記者に生身の記者が勝負を挑んでみた」(2017/2/3)と題した記事が公開されています。武田健太郎記者が早書き対決を2月1日に三回行いました。

  • カルビー決算短信では、武田氏が未完成品の記事を書いている間に、AIは完成品を出稿。出来栄えは武田氏から見ても悪くない(2分間バトル)
  • IHIの決算短信では、AI側は数字の羅列に終始。武田氏は要因分析まで書くことができました(こちらは事前に10分間で用意した準備原稿を作成し、そのうえで2分間バトル)。
  • カシオ計算機の決算短信では、勝負前にざっとカシオの過去業績だけを見てから勝負に臨みます。カシオの決算短信は業績は純利益前年同期時57%減なのに、よいニュースばかりが並ぶというわかりにくい発表。武田氏は書くことが思いつかなかったが、AIは迷わずに数字だけを記録してきた(2分間バトル)

 武田氏の評価は1勝1負1引き分け。人工知能はなかなか手ごわいようです。

※追記

 『週刊東洋経済(2017/7/8)』の最新号は、ベンチャー企業のSpectee社が記事を作成するAIを開発したことを紹介しています。同社のAIは、事実関係を列挙する短信記事をわずか10秒で作成。SNSなどの投稿文をもとに事件記事等の執筆も可能。すでに報道機関100社が導入していると紹介しています。 

CM制作:人間の勝利(2016/8/31)

 モンデリーズ・ジャパン株式会社が「クロレッツ ミントタブ」の特徴に関して、10分間のCM作成を人間とAIの双方に行わせ、WEB上の投票でその勝敗を決するという実験を行いました。

 その結果は、46%対54%で人間の勝利となりました。

 ただ、その差はわずか8%。

 作曲の領域でもAIが入り込んできており、XーJAPANのYOSHIKIは「AIにはライブはできないんだ!」と臨場感の大切さを訴えたりしていますが、今後のCMは人間のライブ感がないとAIに負けてしまうのかもしれません。

 クリエイティブの領域にもAIが入り込んできているので、油断は大敵です。

戦闘機模擬戦:人工知能の勝利(2016年6月)

 米シンシナティ大学がつくったAI「ALPHA」が空戦シミュレーターで退役空軍将官(パイロット)に勝利。

 トップガンの教官のように何千人ものパイロットを育てたツワモノ(Gene Lee大佐)がAIと戦ったところ、1勝もできませんでした。「今まで出会った中で最も攻撃的で反応が素早く、ダイナミックで信頼できるAIだった」と評したことが報じられています(戦闘機AIが空中戦シミュレーターでベテランパイロットに圧勝。無人戦闘機が空を支配する未来は近い?」16/6/29)

 戦闘機の世界では、人間に耐えられるGの限界があるので、次世代高速戦闘機は無人機になるのではないか、とも言われています。すでに無人戦闘機や無人爆撃機の開発は進んでいますが、これが本格化すると、米軍パイロットの「雇用」が脅かされます。AI技術を「雇用」を重視するトランプ大統領は採用するのでしょうか。

 人間の雇用喪失の危機にどう備えるか?

 結構、クリエイティブな領域にまで入り込んできているので、AIの進化には要注意です。

 機械の操縦に関しては、自動運転車の普及が、今後、予想されます。

 人間の大量失業時代が近づいているのかもしれませんが、交渉事や価値判断、倫理性、美しい表現など、人間の特性を生かすことで、何とかその時代を乗り切りたいものです。

(※人工知能がもたらす雇用喪失の危機については関連記事「これからなくなる職業ベスト10とその理由」を参照)

 筆者はX-JAPANのYOSHIKIがハンフィントンポストで人工知能と音楽で競うには「パフォーマンス」が大事だと言っていたことが一つのヒントになるような気がしてなりません。

 YOSHIKIは「人工知能と僕ら作曲家は競うことになる」と言っていました。

「音楽って聴くだけじゃない、体感するものだし視覚的な要素も入ってくる」と述べ、人工知能の音楽ではライブはできないが、人間のアーティストにはライブができるのが大きな違いだと指摘していたのです。

  やはり、人工知能のサービスが拡大しても、人間の心の隙間を満たせるのは人間だけだ、という原点が大事なのでしょう。