読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

ゼロからやりなおす「政治と経済」

政治と経済について、いまさら聞けない知識を整理しつつ、ニュースがよりよくわかるデータを紹介していきます。

【百条委員会】浜渦元副知事の証人質疑 豊洲で環境基準100倍のベンゼン検出の背景は?

国内政治 小池都政 全記事一覧

f:id:minamiblog:20170319154230j:plain

(東京湾の風景。出所はWIKIパブリックドメイン画像)

  東京都議会の百条委員会は19日午後、証人として浜渦武生元副知事を呼び、質疑を行っています。用地取得に際して東京ガスとの交渉役となった浜渦氏を呼び、豊洲市場移転の背景を探るためです。

 浜渦氏は2000年以降、約5年ほど副知事を務めており、各紙報道では、東京ガスとの間で「水面下の交渉」を行ったとされています。

 最近、豊洲市場の地下水モニタリング再調査で環境基準の約100倍のベンゼンが検出され、関心が集まる「豊洲問題」の真相解明の手掛かりが見つかるのでしょうか。

 今回は、この問題について考えてみます。

百条委員会では19日に浜渦氏、20日に石原氏を招致

 日経電子版(3/19)では、東京ガスに水面下での交渉をもちかけた浜渦氏の発言に関する質疑に焦点を当てています。

 浜渦氏が「『水面下』は東ガスからの提案だった」と答弁し、その理由を株主対策等に帰し、「交渉というのは先方の意向を忖度(そんたく)しないとうまくいかないので、(東ガスに)『水面下で結構です』と申し上げた」と説明したことが報じられています。同記事によれば、浜渦氏は、市場移転の判断権は石原知事にあることを指摘し、「(市場用地が)どこがいいとか悪いとかの判断は、私にはなかった」と答えたそうです(『「水面下で交渉」は東ガス提案 浜渦氏、百条委証人喚問』)。

 18日に行われた質疑でも、元中央卸売市場長(岡田至氏)が汚染対策のための東京ガスの追加費用負担(上限78億円)を石原知事に説明したと証言しており、報告されていないとする石原氏との発言とは食い違っています。

(※豊洲の土壌汚染対策費には約860億円が費やされたが、東京ガスの負担は78億円止まりの契約になっている)

 19日の浜渦氏への質疑の後、20日には石原氏への質疑が行われますが、その際に、元都知事が関係者たちの発言に対して、どのような見解を明らかにするのかが注目されています。

 移転における不適切な取引や交渉の有無は、小池都知事の豊洲移転可否の判断材料の一つになるからです。

「環境基準百倍のベンゼン」を識者はどう見ている?

 百条委員会では、交渉の経緯を明らかにすることに力が注がれていますが、そもそも「環境基準百倍」のベンゼンのリスクはどの程度なのでしょうか。

 これに関しても、幾つかの見解がネット記事で公にされています。

 中西準子氏(産業技術総合研究所 名誉フェロー)は、地下水を飲んだり、それを用いて調理するわけでもないので、摂取経路が遮断されれば、問題は発生しないとしていました。

「豊洲市場は地下水を使って魚を洗ったり、調理したりするわけではないので有害物質が体内に入る可能性は低い。土壌汚染対策として、摂取経路をきれいな土やコンクリートなどで遮断する方法がある。地下に盛り土がされていなかったことが問題になっているが、建屋の床のコンクリートで遮断されている」「表面の土壌を掘削し、洗浄や加熱処理した上で戻したり、地下水に汚染があれば浄化して排水したりするなど十分な対策を取っている」「有害物質があったとしても拡散していくような状況は考えにくい」

(日経BP「豊洲市場の土壌汚染問題、健康被害はあるのか」相馬 隆宏/半沢 智 2016/11/10)

  これは、現在、石原氏が行っている小池氏への反論と似ています。日経BP社の前掲記事では藤井聡氏(内閣官房参与 京都大学大学院教授)の見解も紹介されていますが、表現は違うものの、地下水を遮断できれば問題ないとする立場は共通しています。

 では、豊洲移転に否定的なトーンの強いメディアは、この問題に対して、どう見ているのでしょうか。

 毎日新聞では「質問なるほドリ(2017/2/28)」のコーナーで「豊洲の有害物質、大丈夫?=回答・小島正美」という記事を掲載しています。

 同記事では、消費者に与えた不安を重視しながらも、科学的には健康に被害が出るという結論は導きがたいことを説明していました。

「環境基準」では、毎日2リットルの水を70年間飲み続けた時にどうなるかという設定でつくられており、その場合、10万分の1でガンが発生する程度のリスク設定なので、飲料水でもなく調理にも使われない地下水で、その百倍の値が検出されても、食の安全を脅かすとは考えにくいからです。

 毎日記事では「環境基準の設定にかかわった」関澤純氏(元徳島大教授)の発言を紹介していました。

「仮にベンゼンが揮発して、その一部が飲み水や食品に付着したとしても、量は微々(びび)たるもので、食の安全を脅かすリスクにはならない」

 豊洲移転に否定的な同紙でも、このたびの基準超えが健康被害に直結するとまでは言えないと見ています。

(※地下水の汚染物質の濃度が上がった理由は不明ですが、地下水管理システムが稼働し、水をくみ上げる中で、地下水が井戸に向かって移動し、モニタリング調査の際に、地下水に溶けていたベンゼン等の汚染物質が発見された可能性などが指摘されています)

移転延期補償は90億円 可否の判断は比較衡量しだい

 築地市場移転の延期にも毎日、お金がかかっているわけですが、その補償額は90億円にものぼるようです。

 これもまた都民の税金で賄われています。

 その詳細を毎日新聞(1/26)が報じていました(「豊洲市場 移転延期補償は90億円台半ば 最終調整」)

「市場業者への補償について、都が総額90億円台半ばの新年度補正予算案を組む方針で最終調整に入ったことが26日、関係者への取材で分かった」

 これは、16年11月から18年3月までにかかる費用の累計で、4月から市場業者への補償金の支払いが始まります。

「昨年11月下旬~12月中旬には卸売業者など47の会社・団体と青果、水産の仲卸業者など275業者にヒアリングを実施し、各業者の平均投資額は水産仲卸が約870万円、青果仲卸が約400万円など、業界全体の投資総額は約300億円と判明していた【川畑さおり】」

 300億円の投資のうち、90億円が補償されるとのことですが、残りの210億円はどうなるのかが気になるところです。これは「延期」の場合のケースなので、豊洲移転が「凍結」された場合は、また違った議論になるのでしょう(凍結の場合、豊洲への投資はすべてオジャンになるため)。

 豊洲移転可否の判断の基準としては、1)百条委員会で議論されている東京ガスとの取引・交渉の過程、2)汚染物質の検出の度合い、3)移転延期のコスト、という三点が考慮に加えられるはずですが、筆者は、三番目のコストが都民の税金で賄われていることが気になります。

 新しく豊洲の移転先を探せば、また数年がかりの仕事を再開しなければならず、今までの費用は全て無駄になります。さらには、移転延期のコストまで都民は負担しなければいけないわけです。

 2)は専門家意見として、健康に問題が出ることは考え難いとも言われているので、利害を比較衡量すれば、遅かれ早かれ、豊洲移転は実行せざるをえないのではないでしょうか。

 1)に関して、不適切な取引が明らかになる可能性がありますが、その際は、東京ガスにもっと土壌対策の費用を負担してもらうよう、裁判もしくは裁判外での解決(仲裁等)を働き掛けるべきでしょう。