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ゼロからやりなおす「政治と経済」

政治と経済について、いまさら聞けない知識を整理しつつ、ニュースがよりよくわかるデータを紹介していきます。

G20開幕 自由貿易VS保護貿易 ムニューチン米財務省は何を発言するのか?

国際 トランプ政権2017 経済 全記事一覧

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(ドイツ、バーデンバーデンの僧院協会:出所はWIKIパブリックドメイン画像)

 G20(主要20カ国)の財務省・中央銀行総裁会議がドイツのバーデン=バーデンで17日(日本時間18日、深夜0時)に開幕しました。

 バーデン=バーデン? 同じ文字が連呼されるので、書き間違いではないかと思った人もいるかもしれません。

 しかし、これはドイツ南西部にある実際の都市の名前です。シュヴァルツヴァルト(黒い森)の北にある観光地で、音楽家のブラームスやシューマンも保養した由緒ある都市として知られています。

 話が脇道にそれましたが、今回の会合はトランプ政権発足後、初めてG20の財務相と中央銀行総裁が顔合わせをするので、従来の自由貿易路線とトランプ氏の保護貿易路線がぶつかるのかどうかが注目されています。

(※G20の参加国はアメリカ、日本、イギリス、カナダ、フランス、ドイツ、イタリア〔←ここまでがG7〕、中国、インド、インドネシア、韓国、メキシコ、アルゼンチン、オーストラリア、ブラジル、ロシア、サウジアラビア、南アフリカ、トルコ、欧州連合・欧州中央銀行からなる20か国・地域)

 ムニューチン米財務長官にとってはこれが外交デビューの場にもなるので、二重の意味で、米国の動向が気になるところです。

 今回は、この会議についての報道と、ムニューチン米財務長官のプロフィール等を追ってみます。

G20に先立って麻生財務相とムニューチン財務長官が会談

 G20前に麻生副総理兼財務大臣とムニューチン財務長官との35分ほどの会談が行われました。

(その席で)麻生副総理兼財務大臣は「自由貿易は経済の繁栄に大いに寄与しており保護主義には対抗していく必要がある」という考えを直接伝えました。また、麻生副総理兼財務大臣とムニューシン財務長官は、為替相場の安定に向けたこれまでのG20などの合意を維持することが重要だという認識で一致し、為替相場の過度な変動は経済に悪影響を与えるという認識や、輸出を有利にするため意図的に通貨を安く誘導しないという合意を確認しました。

(NHKニュースWEB「G20開幕 自由貿易推進などの合意維持は?」3/18)

 トランプ大統領は日本が円安・ドル高誘導を何年間も行っていた等と発言したこともありますが、日米の財務省の間では通貨政策に関して過去の合意を再確認することになりました。

 麻生氏はムニューチン氏が就任した2月13日にも電話会談を行っていましたが、その際にも特に為替の話題は出なかったと述べていたので、現時点で、ムニューチン氏が日本の円安を問題視しているわけではなさそうです。

(同氏は「強いドル」は長期的に米国にとってプラスだと発言したこともある)

 そして、ムニューチン氏は、就任後に中国を為替操作国指定するとしたトランプ氏の政策に反して、中国に対しても「4月の報告書公表前に為替操作に関して発表することは何もないと述べた」ことがあります(ブルームバーグ「米財務長官:中国の為替操作国認定、4月の為替報告前に判断せず」2/23)。

 現時点では、トランプ政権は他国の通貨安政策への批判のトーンを弱めていると言えます。

G20共同声明案で「保護貿易に対抗」を削除?

 焦点となるのは、トランプ氏が力を入れる保護貿易と、従来、保護貿易に対抗してきたG20の方針との矛盾です。

 朝日新聞は、これに関連して、保護貿易反対の文言が共同声明案から削除されたと報じていました。

昨年7月に中国・成都で開かれたG20財務相会議の共同声明は、「我々はあらゆる形態の保護主義に対抗する」と明記していた。しかし、複数の関係者によると、今回の声明原案には入っておらず、代わりに「公平で開かれた貿易システムを維持する」という米国の主張に近い表現を盛り込むことも検討されたという。ただ、最新の案では、この表現も削除され、調整が続いている。

(朝日デジタル「G20声明案、「保護主義に対抗」を削除 米国に配慮か」3/15)

 前掲のムニューチン氏の発言でも出ていましたが、為替に関しては米国からの反対は出ておらず、従来の通貨安競争反対の合意が踏襲される模様です。

G20で外交デビューするムニューチン氏の経歴と政策

 今回、注目されるスティーブン・ムニューチン氏はもともとは投資家です。

 ムニューチン氏は元ゴールドマン・サックス幹部で、2000年代に一時期、ジョージ・ソロス氏のもとで働いたり、アメリカの西海岸で金融業を行い、破綻したカリフォルニアの銀行(インディマック)買収し、ワンウェストとして再出発させたりしています。映画制作会社も設立し、20世紀フォックスと組んだ「アバター」、ワーナー・ブラザーズと組んだ「ゼロ・グラビティ」を大ヒットさせたりもしました。

 こうしたユニークな経歴を持ち、1億1800~3億9200万ドルもの資産を持つ富豪が財務長官になりました。

(※ムニューチン氏は1月に財務長官との利益背反という批判を回避するために、9400万ドル以上の財産を売却することを明らかにした)

 上院財政委員会での公聴会では、規制緩和や減税政策(労働者や企業向け)による米国経済の活性化、ドル高の容認、アメリカの労働者を第一とする通商政策(貿易不均衡の是正)等を訴えました。

 個人的な経歴に関しては、リーマン・ショック後に住宅金融大手を買収し再建した時に、借り手の住まいへの強引な差し押さえを行ったのではないかとも批判され、事実関係を巡って反論してもいます(ムニューチンは旧経営陣の責任だとした)。

 時事ドットコム(2017/1/20)」では以下のように報じられていました(「強いドル維持、雇用守る=次期米財務長官-上院公聴会)。

 トランプ氏は、輸出に逆風となる最近のドル高傾向について「(ドルが)強過ぎる」と発言していたが、ムニューチン氏は歴代財務長官と同様に、ドル高を容認する姿勢を示した。また、過度な規制を緩和するとも述べた。
 トランプ氏は、巨額インフラ投資や法人税・所得税の引き下げなどによって経済成長率を4%以上に押し上げると主張。中国は人民元安を誘導しており、「為替操作国」に認定するよう財務長官に指示すると表明している。
 ムニューチン氏は財政や為替、金融規制など経済政策の要を担う。米テレビとのインタビューでは「レーガン政権以来の税制改革を目指す」などと意欲を示している。

 ABCニュース記事(2017/1/19)ではロシアへの経済制裁の是非に関しても注目していました(”Steve Mnuchin Failed to Reveal $100 Million in Assets, Links to Tax Haven Company By LAUREN PEARLE)(※日本語は筆者訳)。

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ムニューチンは国税法の改革を支持し、それらは「より簡素で有効に」すべきだとした。

Mnuchin said he supported changing the nation's tax laws so they’re “simpler and more effective.”

「私の第一の優先事項は経済成長だ。中でも税制改革が最も重要である」

“My number one priority is growth in the economy,” Mnuchin said. “Tax reform will be our first and most important part of that.”

「過剰な規制が経済成長を損なっている」

He added: “There is excess regulation that is hurting growth.”

ムニューチン氏は「100%」モスクワへの制裁強化に賛同すると述べた

 Mnuchin said he was "100 percent" committed to enforcing sanctions against Moscow.

「法の中で最大限の制裁を行う」と誓った。

"I will use [sanctions] to the maximum amount of the law," he vowed.

ムニューチンは現在のロシアへの制裁解除に反対したが、追加制裁を勧める質問に対しては答えることを拒んだ。

 Mnuchin testified that he opposes lifting current sanctions on Russia. But he refused to answer if he would recommend additional sanctions on the country

ムニューチン氏は必要ならばアメリカの財政破綻を回避するために債務上限の引き上げに支持することも示した。

Mnuchin indicated that he would support raising the debt ceiling if necessary to avoid a U.S. default.

「トランプは経済成長志向の減税政策を持っており、我々はその計画の費用に対しては敏感だ」(※引用者注:無謀な減税をしたいわけではない、という趣旨と思われる)

“Trump has a pro-economic growth tax plan and we are sensitive to the cost of that plan,” Mnuchin said.

ムニューチン氏はNAFTAは再交渉されるべきだと繰返し、我々はメキシコに対する再交渉に有利な立場を利用できるという楽観的な見通しを示した

Mnuchin replied that NAFTA should be reopened, but he was "optimistic that we can renegotiate a deal that’s advantageous to us and to Mexico."

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 そのほか、公共投資に関しては、必ずしもトランプ氏と同意見ではありません。

 大統領選の頃のトランプ氏はクリントン氏のインフラ銀行創設計画を「政治家と官僚に牛耳られる」と批判していました。

 そして、税優遇を用いて民間投資を勧めることを提言しましたが、ムニューチン氏は11月中旬に新政権はインフラ銀行の創設を検討することを示唆したのです。

 トランプ氏は巨額の税控除というインセンティブを与えて民間企業に投資してもらうことを考えていましたが、ムニューチン氏の案は、それだけだと儲からない地域への公共投資が手薄になる、という面を考慮したプランです。

(※民間企業は儲からない投資はしないので、公的機関としてインフラ銀行を立ち上げ、全国へのインフラ補修投資などを展開しようとする考え)

 トランプ氏の1兆ドルのインフラ投資の具体策が見えないので、今後、ムニューチン氏がこの面でどう動くのかも注目を集めています。