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DeNA「まとめサイト」を第三者委員会報告書はどう評した? 74万件超の権利侵害の猛威

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 (出所はWIKIパブリックドメイン画像)

 DeNA社の「まとめサイト」を巡る第三者委員会の調査報告書が13日の昼頃に公開されました。

 7000~21000件の記事と746000件の画像で著作権等の侵害が行われたというショッキングな調査結果が明らかになり、今後のDeNA社の対応が注目されています。

 DeNA社は創業者の南場氏を加えて代表取締役を2人とし、守安功社長は月額報酬の半分を半年間減給。10サイトを統括した村田マリ氏はDeNA社の執行役員と「iemo」と「FindTravel」の代表取締役を辞任することになりました。

 報告書では全編と要約版の双方が公開されましたが、そこには顧客のクレームや法務部の忠告に耳を傾けずに爆走し、事故で炎上。最後に10のサイト全てが燃え尽きてしまったーーという顛末が淡々とした記述で描かれています。

 権利侵害としては未曾有の規模ですが、小規模の被害額の案件が多く、被害者がばらばらに訴訟すると割が合わないため、筆者は、今後、DeNAに対する「被害者の会」ができ、団体対企業という形で訴訟がなされるのではないかと予想しています。

 DeNA社は検索システムの弱点を突いて商売に利用したので、その後、17年2月にグーグルの検索システムのアップデートが行われました。

 はてなブロガーの記事を見ていると、2月以降、アクセス数が減ったという悲鳴があちこちで飛びかっています。

 当ブログもその影響を受け、1割~2割ほどアクセスが減っていますが、筆者の所感では、頑張って読者に評価される記事を書けば、1記事で〇が三個つくアクセス数を取れることも分かっています。

 検索システムの変更によって真面目に書いても報われなかった記事の幾つかが浮上したりもしているので、その変更が一概にマイナスに働いたわけでもありません。

 時間をかけて質を高めながら記事を増やせばアクセスアップは望めるので、要するに、DeNA社みたいに濡れ手で粟をつかもうとすべきではない、ということなのでしょう。

 今回は、ブロガーにとっては気になるDeNA社のまとめサイト問題の報告書について考えてみます。

第三者委員会の報告書は74万超の著作権侵害を指摘

 報告書では著作権侵害について、画像は747463件と断定されていますが、文書の記事は376671件の中の「1.9%~5.6%」という形でぼかしています。

(以下、本稿で参照しているのは、第三者委員会報告書の要約版

 そうなるのは文書における著作権侵害はグレーゾーンの範囲が大きいからです。総数を比率で割ると、7156件~21093件になるのですが、ネットニュース等では最大の数字を用いて「21000件の著作権違反」と報じています。

 中央値を取れば、だいたい1万4000件ぐらいの著作権侵害と見るべきなのかもしれません。

 なお、この事件を忘れてしまった方のために復習すると、この問題に該当するDeNA社の「まとめサイト」は以下の通りです。

  • WELQ(ウェルク):美容、健康、医療
  • iemo(イエモ):住まい、暮らし
  • FindTravel(ファインドトラベル):旅行
  • cuta(キュータ):妊娠、出産、子育て
  • UpIn(アップイン):保険、投資
  • CAFY(カフィ):食
  • JOOY(ジョーイ):男性ファッション
  • GOIN(ゴーイン):自動車
  • PUUL(プウル):エンターテイメント
  • MERY(メリー):女性ファッション

 この中にあるイエモとメリーは「株式会社ペロリ」(変な名前・・・)が運営していたのですが、この企業をDeNA社が買収。その後、DeNA社は2つのまとめサイトを運営し、ペロリ社の人材とノウハウを活かして、ほかの8つのサイトを増やしました。

「メディア」と「プラットフォーム」の違いとは?

 顧客からのクレームや外部からの批判、内部社員からの声で、まとめサイトには著作権違反の懸念があるのではないか、という懸念も浮上したのですが、同社の法務部は企業が責任を負って運営する「メディア」ではなく、ユーザーが投稿によってつくりあげる「プラットフォーム」なのだ、という論理を建てています。

 これは、いまだに粘っている「NAVERまとめ」が自社を正当化している理由と同じものです。

 普通、ブログやSNS等の1メンバーが著作権法違反をして記事を書いたら、その個人の責任となり、ブログ運営会社(プラットホーム)のせいにはなりません。運営会社は問題発生後にその記事を公開停止にすればよいわけです。

 しかし、ニュースサイトのような「メディア」に運営する社員が著作権法違反の記事を書いたり、お金を払ってライターにその種の記事を書くように求めたら、その責任が運営企業に問われます。

 これはプラットホームの枠を超えて、雑誌や新聞などのように自分自身で書く「メディア」の世界に入ってきたからです。

 この問題に関して、DeNA社の報告書は、以下のように結論を出しました。

DeNAが運営する10サイトは、いずれも、一般ユーザーが投稿できる機能を備えていたので、プラットフォームの部分が存在したことは間違いない。しかし、全記事に占める一般ユーザーの投稿の割合は、MERYは約14.5%、Find Travelは約10%あったものの、他の8サイトはおおむね5%以下であり、そのほかの記事は、サイトの運営主体であるDeNAがその作成過程に様々な形で関わっていたので、その部分に関しては、プラットフォームではなくメディアであったと評価される

 プラットフォームとメディアが混ざっているのに、プラットフォームだと言い逃れたことを、報告書は「不適切だ」と批判しています。

記事の質を担保できなかったDeNA社

 そして、記事の内容の質を担保するための編集体制、外部ライターに執筆を依頼する上でのマニュアルも不適切だったと評価されています。

 質の担保という点で、特に致命的だったのが、人命と健康にまつわる医療サイトのWELQでガセネタ記事が大量生産されてしまったことでした。

 DeNA社の医療系まとめサイトに関して、報告書は以下のように断じています。

DeNAが運営するサイトにおいて、これらの記事につき内容の確認を行っていたのは編集担当者や外部編集ディレクターであり、これらの者は医療や医薬品の効能効果についての専門的知見を有していなかった。医師等の専門家の監修を付けることが必須であると認識されていたにもかかわらず、記事の大量生産という方針とそぐわないことや、コストがかかり過ぎるといった考え方から、医師等の専門家の監修を付けることが見送られ、2016年9月頃になってようやく、その具体的な検討が開始されたにすぎなかった。

 要するに、命や健康にかかわる問題について、記事の粗製乱造が繰り返されてしまいました。最後の一文は、暗に「後の祭りだ」と言っているように見えます。

 DeNA社はペロリ社を買収した後、まとめサイトの大量展開を急いだわけですが、記事の質を担保する方策も、法令順守の意識や体制も不十分なままでした。

まとめサイト問題発生の原因は「反・大企業病」の称揚?

 この報告書の中で気になるのは、DeNA社においては「”反・大企業病”に対する行き過ぎた称揚」が問題を生んだと見られています。

「DeNAは『永久ベンチャー』を標ぼうし、スピード感のある意思決定が重視されていた」「『永久ベンチャー』という理念は、組織の硬直化、意思決定の鈍化といった大企業病に陥るまいとする誇り高き理念であったにもかかわらず、キュレーション事業においては、それが『速ければ易きに流れてもよい』ことを意味するかのごとく曲解されて、慎重な意思決定やリスク分析がないがしろにされ、当たり前のことを当たり前にやることへの軽視に繋がってしまった」

 近年、話題になった東芝は「大企業病」が問題視されていましたが、こちらはその逆の「拙速な判断」が危機を生んだとみられています。

 ここで、東芝とは真逆の失敗事例が出現したと言えるのかもしれません。

他山の石に学ばない「NAVARまとめ」は大丈夫?

 筆者が気になるのは、こうしたDeNA社の失敗を他山の石にしない企業が残っていることです。

 リクルート、サイバーエージェント、ヤフーでも記事公開停止が起きたのに、NAVERまとめを運用するLINE社はいまだに粘っています。

 LINE社は、前掲例で言えば、プラットホームの枠内にいるからセーフだ、という主張を繰り返しています。しかし、著作権法違反や無断盗用であることが明白なものを延々と放置しているプラットホームは責任を問われないままでよいのか? という疑問は残ります。

 プラットホームに管理責任がないとは考えにくいからです。数が多すぎるとその種の違反を全部、監督できなくなるのは当然ですが、まとめサイトの場合は、オリジナルの文章や画像なしで転用のみでページをつくっているものが多すぎます。

 ブログが「オリジナル記事をユーザーが自分で書く」という信義則(よく破られていますが)を元に運営されているのに比べると、まとめサイトの場合は「オリジナル記事なし。画像は他から断りなくもらってくる」ということが常態化しているので、プラットホームの質の水準に大きな問題を抱えているように見えて仕方がありません。

 運営の仕方そのもののなかに、著作権法違反、無断盗用は当然、という開き直りがあるのであれば、今後、この種のまとめサイトを見る社会の目が厳しくなってくるのは避けられないでしょう。

 LINE社(NAVARまとめ)は、今の著作権法の解釈上、運営継続は可能と見ているわけですが、今回の事件をきっかけにした訴訟が起き、違った法解釈が出てきた場合は、運営のあり方を見直さざるをえなくなるかもしれません。 

※LINEの「NAVERまとめ」の記事の品質は限りなく怪しい

 Withニュースの記事 (信原一貴「まとめサイトの盗用、ある“浴衣画像”が「収拾つかない」事態に」2016年12月7日)では、浴衣の着付けを例に画像無断転載のサイトの例に「NAVARまとめ」を筆頭に挙げていました。

「浴衣結」の運営会社エスアイピー(大阪市)に連絡をしてみると「画像を盗まれすぎて、収拾がつかなくなっている」と回答が返って来ました。浴衣結には着付け手順を解説するイラストも多数載っていますが、これらも一緒に盗用されているといいます。担当者は「さまざまな面で多大な迷惑をこうむっている」。転載許可の問い合わせが来ることは「ほとんどない」といい、使用許諾を出したまとめサイトは「nanapi」と「OKWAVE ガイド」だけです。まず目についたのが、まとめサイトの代表格「NAVERまとめ」です。

 信原氏が挙げたNAVERまとめの記事リンク先があったので、そのページに飛んで使われている画像を見ると、17個の着付けの画像が二種類のサイトから転用されていました。www.yukatamusubi.comが12個、www.yukatakitsuke.net/が5個。本文の文字要素には元記事に似た着付けの説明が並んでいます。許可なく他社がサイトで用いている独自画像だけで記事を構成しているのですが、LINE社の基準ではこれでよいらしいのです。