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ゼロからやりなおす「政治と経済」

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東日本大震災から6年 もし南海トラフ巨大地震が起きたらどうなる

いまさら聞けない基礎知識 全記事一覧

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(東日本大震災 宮城県塩竃市の道路 出典:一般財団法人消防防災科学センター「災害写真データベース」)

 今日は「3.11」。東日本大震災からちょうど6年になります。

 いろいろなメディアが「3.11」について書きたてているので、今回は東日本大震災を振り返りながら、今後、南海トラフ巨大地震が起きたらどうなるかを考えてみます。

「3.11 東日本大震災」を振り返る

 まず、2011年3月11日に何が起きたのでしょうか。

 その概要を、消防庁災害対策本部が出した「平成 23 年(2011 年)東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)について」の第155報(2017/3/8)をもとに整理してみます。

東日本大震災の概要

  • 名称:東北地方太平洋沖地震
  • 発生日時:2011年3月11日 14時46分
  • 震央地名:三陸沖(北緯38.1度/東経142.9度)
  • 震源の深さ:地下24㎞
  • マグニチュード(M)9.0

震度6~7の地域

 宮城県栗原市は震度7。以下の地域で震度6の揺れが観測された(広域で観測された地域は市町村の表記を省略)。

  • 震度6強:宮城県、福島県、茨城県、栃木県。
  • 震度6弱:岩手県、宮城県、福島県、茨城県、栃木県(那須近辺)、群馬県(桐生市)、埼玉県(宮代町)、千葉県(成田市、印西市)。 

被害の規模

 2017年3月1日時点のデータで以下の被害が確認されています。

  • 死 者:19533人
  • 行方不明者: 2585人
  • 負傷者: 6230人
  • 住家全壊 :121768棟
  • 住家半壊 :280160棟
  • 住家一部破損: 744396棟
  • 床上浸水:3352棟
  • 床下浸水:10230棟
  • 被害を受けた公共建物:14562棟
  • その他の非住家被害:91913棟
  • 火災発生:330件

津波の発生状況

 いずれも最大波。3月11日の15時~16時に最大規模の津波が沿岸に来ています。

  • 相馬:9.3m以上
  • 石巻市鮎川:8.6m以上
  • 宮古:8.5m以上
  • 大船渡:8m以上 
  • 八戸:4.2m以上
  • 釜石:4.2m以上
  • 大洗:4m
  • えりも町庶野:3.5m

「3.11」の予測成否について

 未曾有の規模の被害が発生しましたが、専門家もこの大震災と津波の被害を予測できませんでした。

 中西輝政氏(京都大学名誉教授)は『正論』(2011年6月号)にて、震災前に国内各地の原発を見学し、巨大地震の発生を想定しているかどうかを尋ねた時、原発側の説明者は以下のように答えたと記しています。

「『関東大震災はM8.2でチリ(1960年)ではM9.5以上の地震が起きた。そのクラスの巨大地震がきたら、どうなりますか』と質問した。すると、原発側の説明者は、『そんな規模の地震が起きるはずもない』と言わんばかりに軽侮の表情を浮かべ、真面目に取り合おうとはしなかった」(P53)

 これは日米の戦争で、本土空襲や海上封鎖を想定せずに、戦闘機や潜水艦の増産に及び腰だった日本軍のスタンスとよく似ていると嘆いていたのです。

 ただ、自衛隊はこの規模の震災発生がありうると考え、その時のオペレーションを用意していました。

 震災発生時の非常招集は「極めて迅速」に行われたと宗像久男氏(元陸自東北方面総監)が同じく『正論』(2011年5月号)で述べています。

「東北方面隊を中心に海空自衛隊の救難ヘリ部隊など2万5千名に及ぶ災害救援体制を立ち上げ、災害派遣計画に基づき隷下の各部隊は所定の地域に移動を開始した」「『宮城県沖地震』は30年以内に99%の確率で発生すると言われており、それに備えるため日頃から各自治体と災害派遣計画を積み重ねてきた」(P101)

 ただ、震災の被害規模は自衛隊の想定をはるかに超え、その後は悪戦苦闘の日々が続きました。自衛隊は菅首相が指示した「10万人体制」という難題にも応え、国民からの信頼感を高めました。

 震災の予知は難しいのですが、常時、有事への対策を備えることは可能です。

 そこで、現在、南海トラフ地震について、政府が想定する被害規模とその対策を見てみましょう。

もし南海トラフ巨大地震が起きたら・・・

 今の日本では、静岡県沖から九州沖の海底にある南海トラフ(水深4200mにある巨大な溝)で巨大地震が起きる危険性があると言われています。

 これに関して、2013年の5月28日に有識者会議がまとめた報告書(「南海トラフ巨大地震対策について(最終報告)【別添資料2】」)では以下の被害が想定され、四地方別の家屋被害と死者数が試算されました(前掲資料P4)。

地方別の被災想定

① 東海地方が大きく被災するケース
全壊及び焼失棟数:約95万4千棟~約238万2千棟
死者数:約8万人~約32万3千人
② 近畿地方が大きく被災するケース
全壊及び焼失棟数:約95万1千棟~約237万1千棟
死者数:約5万人~約27万5千人
③ 四国地方が大きく被災するケース
全壊及び焼失棟数:約94万棟~約 236万4千棟
死者数:約3万2千人~約 22万6千人
④ 九州地方が大きく被災するケース
全壊及び焼失棟数:約 96万5千棟~約 238万6千棟
死者数:約3万2千人~約22万9千人 

被害額の推計

 そして「被害額の推計結果」も見積もられています(P13)。これは「モデル検討会で検討された地震動 5 ケースのうち『基本ケース』と揺れによる被害が最大となると想定される『陸側ケース』」のタイプ別の試算です(※陸側で大きな被害が出るという想定が「陸側ケース」)。

○資産等への被害【被災地】

【基本ケース 】97.6兆円

・民間部門 83.4兆円 ・準公共部門(電気・ガス・通信、鉄道) 0.6兆円 ・公共部門 13.6兆円 経済活動への影響【全国】 ・生産・サービス低下に起因するもの 30.2兆円 ・交通寸断に起因するもの(上記とは別の独立した推計) 道路、鉄道の寸断 4.9兆円 《参考》港湾被害 (10.8兆円)

【陸側ケース】169.5兆円

・民間部門 148.4兆円
・準公共部門(電気・ガス・通信、鉄道) 0.9兆円
・公共部門  20.2兆円
経済活動への影響【全国】
・生産・サービス低下に起因するもの  44.7兆円
・交通寸断に起因するもの(上記とは別の独立した推計)道路、鉄道の寸断  6.1兆円
《参考》港湾被害  (16.9兆円)

※傍線筆者

  被害想定には最小値~最大値まで大きな幅がありますが、これに関する各紙報道では、基本的に最大値が強調されています。

南海トラフ被害想定の最終報告の内容

 日経記事(2013年5月29日:朝刊37面)の記事では、以下の想定が紹介されていますが、これは最大規模の被害が出た時の数字です。

【M9.1南海トラフ巨大地震被害想定】

  • 津波高は最大34m
  • 被害総額220兆円(民間148兆、公共+準公共21兆、経済活動の停滞分51兆)
  • 死者32万人、全壊・焼失棟数238万">棟、避難者数(一週間後の最大値)950万人、
  • 断水3440万人、停電2710万人
  • 食料不足3200万食、飲料不足4800万リットル(食料と飲料は震災後3日間合計)
  • 帰宅困難者 大阪圏660万人、名古屋圏400万人、
  • 対応困難な患者数 入院15万人、外来14万人

 途方もない規模の想定ですが、前掲の【基本ケース】は【陸上ケース】の58%程度の被害想定なので、基本ケースであっても、被害総額は130兆円、死者数は20万人近くの想定となると思われます。

 何しろM9.1の想定(※M9の発生確率は低いとされる)なので、まるで日本終末を思わせるような恐ろしい数字のオンパレードになっています。

 これだけ見ると希望はもうないかのようにも見えますが、この報告書では対策次第では被害は減らせることも指摘していました(以下、概要版を参照)。

 その一つは「事前防災」で、これは「津波防災対策、建築物の耐震化、火災対策、土砂災害・液状化対策、ライフライン・インフラの確保対策、教育・訓練、ボランティア活動、総合的な防災の向上」等を含んでいます。

 二つ目は「災害発生時対応とそれへの備え」であり、「救助・救命、消火活動、緊急輸送活動、物資調達、避難者・帰宅困難者対応、ライフライン・インフラの復旧、防災情報対策、広域連携・支援体制」などを通して被災時の被害を減らすことが可能です。

 対策次第で死者数は32万3千人から6万1千人にまで減るといわれているのです。

災害対策で何をしたらいいのか?

 前掲の二つの対策は政府の側にやるべきことがたくさんありますが、企業と個人にも求められる対策があります。

 企業の対策はインフラ復旧への協力や自前の燃料備蓄、資源調達先分散などですが、個人の場合では、特に生き延びるための食料や飲料の備蓄が大事です。

 読売新聞(2013/5/19:朝刊3面)では、一週間分の備蓄例を紹介しています。

  • 飲料水21リットル(1人1日当たり3リットル)
  • 缶詰やクラッカーなどの非常食
  • カセットコンロ、コンロ用ボンベ14本
  • 簡易トイレ
  • ラジオ、乾電池
  • 携帯電話の電池式充電器

 非常事態では他人を助ける余裕がなくなってくるので、各自が自衛しなければいけなくなります。上記の備品のほか、折たたみ傘や雨合羽、カイロなども必要でしょう。

 前掲の被害想定によれば全員が避難所に入れないと見られているので、その場合でも雨露や寒さをしのがなければいけないからです。野宿になっても耐え忍べる準備が必要になります。

 震災直後の『日経ビジネス』(2011/3/21:P20~21)は、「ローソンでは東北地方と茨城県にある913店舗のうち3月13日時点で半数を超える524店が営業している」とコンビニの強靭さを紹介しながらも、当時は「ダイエー目当てに1km以上の行列」ができたことを紹介しています。

 物資のひっ迫が起きるので、可能な限り、備えておかなければいけません。

 また、安否確認サービスも含めて携帯電話が機能しなくなったので、前掲の日経ビジネス記事(P21~22)では、ネット上でツィッター等を通しての安否確認や情報収集が盛んにおこなわれたとも指摘しています。

 ただ、SNS上ではデマも飛び交うので、情報の見極める注意深さが求められるでしょう。

 最後に一言、付け加えるならば、東京湾にも2.5mの津波が来ると想定されています。

 そのため、地震発生時に海辺に近づくのは禁物です。恐ろしい話ではありますが、対策次第で被害は減らせると信じて、時間のある間に備えを固めておきたいものです。