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ゼロからやりなおす「政治と経済」

政治と経済について、いまさら聞けない知識を整理しつつ、ニュースがよりよくわかるデータを紹介していきます。

石原慎太郎vs小池百合子 新旧都知事の記者会見バトル

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(出所はWIKIパブリックドメイン画像)

 石原慎太郎氏が、本日の15時に記者会見を行います。

(それに先立ち、小池知事も14時に記者会見)

 豊洲市場の移転に関して、新旧都知事のバトルが始まるのです。

 移転の内容の是非の問題とは別に、自民党には容れなかった二人の個性派政治家がボクシングのようにバトルをするので、どんなやり取りがなされるのかは、非常に興味深いところがあります。

 世間の報道では、小池氏の主張を多めに取り上げているのですが、実際のところ、石原慎太郎氏の主張は、どんな内容なのでしょうか。

 過去に小池氏の主張をブログで紹介していたので、今日は、議論の公平を期するために、まずは石原慎太郎氏の言い分をふりかえってみます。

『週刊新潮』が報じた石原氏の言い分

 まず、週刊新潮のインタビュー(2017/3/2号 2/23発売)の抜粋を見てみます。 

(※豊洲移転は)就任した1999年4月の時点で既定路線となっていました。先代の青島(幸男)君からの『引き継ぎ事項』があって、そのなかに豊洲移転に関する項目も含まれていた。

 石原氏は既定路線であったことを指摘した後、他案を石原氏が都庁スタッフに述べた後の反応についても述べています。

 都庁の各担当部局の職員は『それではダメです』の一点張り。とにかく豊洲ありきだった。つまり、総合的な判断により豊洲移転への機運は私の就任前に既に整っていたと認識している。

    築地市場は老朽化して、冷暖房の整備も覚束ないため衛生面の不安も残る。それに、工期・工費そして、アスベスト問題もある。市場として存続させるのが好ましくないというのは、全くその通りだ

<小池百合子は総理の器にあらず 「石原慎太郎」独占インタビュー第1弾(上)>

     石原氏は、その後、当時の福永副知事は温和な人なので、都庁スタッフの給料カットを実現した濱渦氏(後の副知事)に東京ガスとの交渉を一任したと述べています。

意外と都知事には力がない?

    昨年、小池都知事が石原氏に質問状を送ったころの返答に比べると、切羽詰まったせいか、判断の根拠を明確にしてきています。

 この判断の是非が争点になるわけですが、石原氏の発言からは都知事には意外と力がないことがわかります。

    都民に選ばれても、トランプみたいに前任者の路線を覆せなかったわけです。

    就任早々、都庁スタッフを掌握できているわけでもないし、地方自治では権限が知事と議会に分立されてもいる。自民党都連の意向を無視しがたい状況だったと思われます。

なぜ豊洲になった? 築地移転の経緯

    そして、築地ではまずい理由が挙げられていますが、これに関して異論がある人は少ないでしょう。  問題は、どうして移転先が豊洲になったのかです。

    この経緯は、東京都中央卸売市場のHPで移転先の条件が挙げられています(※以下、Q&Aの「なぜ移転整備が必要なの?」の要旨)

  • 〔用地〕高度な品質管理・衛生管理が可能な卸・仲卸売場だけでなく、広い駐車場や荷さばきの場を配置できる約40ヘクタールの敷地
  • 〔交通〕高速道路や幹線道路にアクセスしやすい交通条件
  • 〔商圏〕築地が築いた商圏に近いこと。機能・経営面での継続性。

    この三要件を満たす場所が豊洲しかなかったわけです。

 前掲のHP記事では「豊洲地区、晴海地区、有明北地区、石川島播磨重工業豊洲工場跡地、中央防波堤内側の5地区」が挙げられています。

 環境面も配慮した?

    そして、石原慎太郎氏は前掲インタビューで、環境面に関しても言及しています。

     土壌の汚染についての議論はあったと記憶しています。移転関連費を盛り込んだ予算案を巡っては都議会も紛糾して、63対62という僅差で可決された経緯もある。

 そのため、都の幹部が『議会の承認が得られたので裁可をお願いします』と言ってきた際、私は『汚染の問題があるようだけど、本当に大丈夫なのか』と尋ねています。

 その時、都の幹部は『いまの日本の技術をもってすれば問題ありません』と答えた。

    環境面も考慮したと主張しています。

    ただ、その過程はどうなのかが、今後、詰問されていくはずです。

用地、交通、商圏、環境の四要件で移転の是非を判断すべき

    今回は、無視されがちな石原慎太郎氏の主張を築地市場HPの論述で補いながら振り返ってみたのですが、豊洲市場移転に関しては、用地、交通、商圏、環境の四要件の考慮が必要なことが分かります。

    昨年以降の豊洲報道は、環境面に偏りすぎているのかもしれません。

    環境が悪いという理由で豊洲市場移転をなくした場合、前掲の十数年がかりの議論をゼロから差し戻すことになるおそれがあります。

    それは膨大な行政コストを生むので、小池氏の「もったいない精神」に反するのではないかーー。

 筆者はそう感じざるをえませんでした。

 記者会見や今後の都議会での質疑では環境問題がクローズアップされそうですが、前掲の四要件に配慮したバランス感覚が都政に反映されることを期待したいものです。

追記①:小池都知事の記者会見

 小池都知事は3月3日の記者会見の質疑では、石原氏の「小池知事は安心と安全を混同して迷路に迷い込んでしまっている」という発言についてどう考えるかが問われました。

(※以下、出所:小池知事「知事の部屋」/記者会見(平成29年3月3日)|東京都

 小池氏は安全は「科学的、法律的な根拠」をベースにすべきであり、安心に関しては、都民に消費者として信頼を持ってもらうことが大事だと述べています。

 そして、豊洲の現状について安全確認の重要性を強調しました。

「食品については、なかなか日本の消費者というのは厳しいわけですから、そこの部分はきちんとした科学的な、そしてまた法律的な根拠を示すことによって、正確な情報を示すことによって、それが得られる」

 そして、豊洲のモニタリングによって安心と安全が崩れたと述べています。

「あのような数字が出てしまって、この安心の部分、ましてや安全の部分でさえ、かなり崩れてしまったわけであります」「だからこそ再調査をするのであって、さもなければ、きちんとした安全も安心も得られない」

  石原氏は、豊洲の地下水で環境基準を超えても、現状では都民の健康に影響が出るわけではないから、「安全」は崩れていないとみているのですが、小池氏のほうは、現状で「安全」の部分が崩れていると考えています。

 その意味で、両者の見解はすれ違っています。

 石原氏は、小池氏が豊洲移転を止め、業者に実害を負わせたことを批判していますが、小池氏はその被害には補償を行っていると反論(そのお金も都民の税金から出ているのですが・・・)。

 そして、最後に、小池氏は石原氏への問いとして、費用負担の問題を取り上げました。

「なぜこのように、この土壌対策費用がかかり、そしてまた、それを都の市場の方で負うようになったのか」「瑕疵担保責任の部分というのが一番大きな部分ではないか」「お金、建設費も、途中から、もううわーっと膨らんでいくわけです。今後の都政運営で同じようなことが起こらないためにも、私は知っておきたい」「誰が、このガバナンスを握っていたのですか」「実際に、真のリーダーがいたのかどうかということなども、これも確認はしなければいけない」

 確かに、石原氏の過去の発言を見ると、このあたりはあいまいです。石原氏の主張にも理に適った部分はあると思うのですが、この不透明感が、同氏の印象を非常に悪くしているように思えます。

追記②:石原氏、小池知事を「不作為の責任」と激しく批判

 石原氏は3月3日の記者会見で、豊洲移転を止め、多額の損失を発生させたとして小池知事に「不作為の責任」(なすべきことをしなかった責任)があると批判しています(以下、産経ニュース〔2017.3.3〕の発言詳報からの抜粋)。

「行政の責任は裁可した最高責任者にある、これは私認めます。しかし、やるべきことをやらずにことを看過して、しかも日々、築地で働いている人を生殺しにしたままほったらかしにして、ランニングコストや築地で働く人への補償にべらぼうなお金がかかる、こんな混迷迷走の責任は今の都知事、小池さんにある」

「米田さんという京大の最高権威の話をじかに聞きました。また、彼から紹介された女性の中西さん、その方の意見も、『豊洲の現況は全く危険がない、なんで豊洲に早く移さないのか、風評に負けて豊洲がこのまま放置されるのは科学が風評に負けたことになる。国辱だ、世界に日本が恥をかくことになる』という忠告、コメントもいただきました。小池さんは今、権限をもって豊洲に移転すべきだと思いますし、しないなら告発すべきだと。要するに不作為の責任だ」

(産経ニュース【豊洲問題 石原元知事会見詳報(1)】3/3) 

 地下水で環境基準を超えた汚染物質が発見されても、その水を直接飲むわけではないし、水はコンクリートで遮られます。それが万一、地表で蒸発しても健康被害が出るレベルになるとは考えにくいのが現状です。

 何でそのレベルで豊洲移転をストップし、多額の被害を出さなければいけないのか、というわけです。

 筆者は豊洲市場移転を止めてやり直した場合には、多額のコストが発生するので、石原氏の発言にも理があると思うのですが、実際問題、小池氏批判に終始した石原氏の印象はさほど良くないようです。

 ヤフーニュースのコメント等では、石原氏への失望や批判が列挙されています。

 中でも気になったのは、「猪瀬氏やマスゾエ氏に言及せず、なぜ小池氏だけを批判したのか?」というコメントです。前掲の二名も豊洲の環境保全をスルーしていたのは事実なので、これは説明が欠けていると言わざるをえないでしょう。

 好感度の低さから見ると、石原氏の前途は厳しいとも言えそうです。