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ゼロからやりなおす「政治と経済」

政治と経済について、いまさら聞けない知識を整理しつつ、ニュースがよりよくわかるデータを紹介していきます。

トランプ閣僚人事 マクマスター大統領補佐官、アコスタ労働長官 どちらも新政権の要職 

トランプ政権2017 国際 全記事一覧

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(ホワイトハウス イーストガーデン冬景色:出所はWIKIパブリックドメイン画像)

  今日はトランプ政権の最近の閣僚人事を取り上げてみます。いろいろと注目すべきニュースが飛び交っていたので、最近のトランプ政権の動きを人事の面から追っていきます。

 2/23時点では、上院で、マティス国防大臣、ジョン・ケリー国土安全保障長官、セッションズ司法長官、ニッキー・ヘイリー国連大使、ティラーソン国務長官、イレイン・チャオ運輸長官、デボス教育長官、トム・プライス厚生長官、ムニューチン財務長官、スコット・プルイット環境保護局(EPA)長官が承認されています。

 国家安全保障問題担当の大統領補佐官だったマイケル・フリン氏は辞任し、後任にベテランの軍人のマクマスター氏が就任。そして、すでに労働長官として指名を受けたアンドリュー・パズダー氏は辞退。公認としてアコスタ氏が指名されています。

なかなか人事が決まらないトランプ政権

 WEDGEの記事では佐々木伸 (星槎大学客員教授)がトランプ政権の難航ぶりを諭評しています(「過去の批判許さず、トランプ政権、高官ポスト埋まらず」2017/02/20)

 2/20時点で15閣僚のうち9閣僚しか承認されず、副長官ポストはわずか3人しか決まっていない。そして4000を超える政治任用ポストも未定者続出。そうなるのは、トランプ政権が「過去にトランプ氏への批判歴のある人材の起用を断固認めない方針だからだ」というのです。

 この異常事態が特に深刻なのは外交を取り仕切る国務省だ。政権発足直前、副長官や次官、実務の責任者である局長ポストの次官補クラスが辞任するか、解任されるかでほとんどいなくなった。

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 現在は1人高官として残ったナンバー3のシャノン国務次官が長官を補佐しているが、このほどドイツで行われたG20外相会議に出席の長官に同行した国務省幹部8人のうち、5人は臨時の肩書きで随行した。

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 ティラーソン氏は最近、副長官候補として、レーガン、ブッシュ両政権に仕え熟練の外交専門家であるエリオット・エイブラムズ氏の就任をホワイトハウスに具申したが、拒否されてしまった。大統領選挙期間中にトランプ氏に批判的な発言をしたことがあったというのが拒否の理由だ。最近、国務省の幹部外交官6人が解雇されたのも同じような理屈だった、という。

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 このように政治任用ポストが決まらない理由はホワイトハウスが過去にトランプ批判をした人間を認めず、起用には絶対的な忠誠を要求しているからに他ならない。トランプ氏自身が自分を軽んじた人間を許せず、また共に選挙を戦ってきたバノン首席戦略官兼上級顧問ら側近が厳しくチェックしている。

 とかく目立つのはトランプ大統領と閣僚も、膨大な案件に対処する上で政府高官の補佐がなければ手足がないのと同じ状態に陥ってしまいます。

 トランプ氏は民主党の反対で上院の閣僚承認が遅れていると不満をぶちまけていますが、同氏のスタンスの中にも人事を難しくする要素が多分に含まれているので、閣僚と政府高官人事が固まるのには、もう少し時間がかかるのかもしれません。

 この記事では、トランプ氏が反対意見を受け入れないことが強調されていますが、安全保障担当の大統領補佐官人事では、外交路線が必ずしも一致しないマクマスター氏を選びました。正確に言えば、マティス国防長官ほか、他の閣僚の路線がトランプ大統領と完全一致するわけではないので、今後、トランプ路線と閣僚とのスタンスの違いが政策にどう反映されるのかが、非常に重要な問題になりそうです(※マティス氏はトランプ氏と一致しなくとも、一目置かれ、政権の中で意見が尊重されているとも報じられています)。

国家安全保障担当大統領補佐官:フリン氏⇒マクマスター氏

 アメリカの閣僚や大統領補佐官の人事を見ると、いろいろな役職があるので何が何だか分からなくなります。

 この国家安全保障問題担当の大統領補佐官というのは、NSC(アメリカ合衆国国家安全保障会議:United States National Security Council)を司り、大統領に安全保障問題について献策する要職です。かつてキッシンジャー氏やコンドリーザ・ライス氏が務めていたことからわかるように、時には大統領への指南役にもなります。

 元陸軍中将のマイケル・フリン氏は政権発足前にロシア政府関係者と対露制裁緩和について協議したことが民間人の外交を禁じる規定に触れたために辞任。そこで、トランプ氏は30年以上の軍歴を誇るハーバート・マクマスター陸軍中将を指名します。

 マクマスター氏(ペンシルヴァニア州出身。1962年7月24日生:54歳)は1984年にウェストポイントの陸軍士官学校を卒業。91年の湾岸戦争では機甲騎兵中隊(戦車+装甲車の部隊編成)を指揮し、イラク軍の戦車隊を撃破して軍功をあげました。イラク戦争では北部でテロ活動の鎮圧に努め、治安維持を強化する作戦がその後、07年にイラク統治策に採用されてもいます。

 同氏はその後、イラクでは現地司令官の特別補佐官、アフガンでは合同調整機動部隊司令官を歴任。その後、本国で米軍高等機動作戦センター司令長官(2012年~)、陸軍能力統合センター長(2014年~)を務めます。

 マクマスター氏は、フリン氏やトランプ氏とは違い、ロシアを危険視しているので、共和党のマケイン氏もこの人選を喜んでいます。そして、日本の菅官房長官も、経験豊富で優れた戦略家であるマクマスター氏の就任を歓迎し、谷内正太郎国家安全保障局長とマクマスター氏との会談を早めに実現したいと述べています。

 どちらかというと、これはマティス氏やケリー氏(※国土安全保障長官)のような軍経験者の意向が反映された人事のようにも見えます。

 トランプ氏はマクマスター氏に国家安全保障チーム編成の権限を与えたとも報じられていますが、今後の焦点は、こうした軍歴豊富な閣僚陣と、選挙戦以来、トランプ氏に影響力を持つスティーブン・バノン氏との綱引きになりそうです。バノン氏は首席戦略官ですが、トランプ氏から異例の厚遇を得て、NSC入りを果たしているからです。

 ロイターの記事は、両者の立場の違いに注目しています(「トランプ氏の新補佐官、安全保障上の意見に食い違い」2017/2/22)

 バノン氏は昨年6月、米国と西側同盟国はイスラム過激派と「世界的に存亡をかけた戦争」を遂行していると発言。しかしマクマスター氏のイスラム教スンニ派過激組織を打倒するやり方はもっと慎重で、過激派と地元の大多数の住民を分離する戦略に依拠するものだ。

 マクマスター氏は陸軍大佐だった2005年、米第3装甲騎兵連隊長としてイスラム過激派に占拠されたイラク・シリア国境の都市タルアガル奪回に向けた侵攻に際して、部隊将兵の一部にアラブの伝統衣装を身に付けさせ、アラブ系米国人を募って地元民に扮する役割を演じさせた。また、壁に掛けられた絵を見てその世帯がスンニ派かシーア派かを区別する方法を部隊に伝えるなど、実にきめ細かい準備作業を行った。

 さらに部下に対して、イラク人と出会っても、多くの米国人がメッカ巡礼者を軽蔑して使う「ハジ(hajji)」と呼ぶなと命令している。

 こうした経験を踏まえ、マクマスター氏は専門誌で、トランプ氏がスンニ派過激派組織ISを爆撃で根絶すると表明しているようなむやみな強硬策は裏目に出る恐れがあると警鐘を鳴らした。

トランプ氏のマクマスター氏評は?

 ホワイトハウスHPに掲載されたマクマスター氏指名に関する記事を抜粋で見てみます。 

「マクマスター中将は30年にわたって米国陸軍に目を見張る献身を示してきた。そして、今、とほうもない経験をもって国家安全保障問題担当の大統領補佐官に就任しようとしている」とトランプ大統領は述べた。

“General McMaster has served with distinction in the United States Army for over three decades and will now bring that tremendous experience to his new post as my National Security Advisor,” said President Trump.

「私の大統領としての第一の義務は、アメリカ国民の安全を保障することだ。マクマスター中将は、アメリカの本国と海外での国益を守るために知識と先見力をもって私に助言することができる。私は、彼の政権入りを歓迎する」

“My first duty as President is to keep the American people safe. General McMaster has the knowledge and foresight necessary to provide me with expert advice as we work to protect America’s interests at home and abroad. I am pleased to welcome him to our team.”

「トランプ大統領から国家安全保障問題担当の大統領補佐官に指名されたことを光栄に思います」とマクマスター中将は述べた。

“I am honored to serve as President Trump’s National Security Advisor,” General McMaster said.

「アメリカ国民の安全とアメリカ本国の安全は、我々の最優先事項だ」

“The safety of the American people and the security of the American homeland are our top priorities.

「私は大統領を助けるためにうまずたゆまずに働く。彼が複雑で拡大する我が国と世界の脅威に対処できるように」

I will work tirelessly in this new role to assist the President as he addresses the complex and growing threats our country is facing around the globe.”

(出所:President Donald J. Trump Names Lieutenant General H.R. McMaster as Assistant to the President for National Security Affairs | whitehouse.gov 2017/2/20)

 これはベテラン軍人の経験と見識を尊重するという趣旨の発言です。もう一つの記事でも「tremendous experience」(とほうもない経験)が強調されているので、うがった見方をすれば、トランプ氏は軍事への経験不足を補える人材を欲しているとも言えます。

「彼はとほうもない才能ととほうもない経験をもった人物だ」

He's a man of tremendous talent and tremendous experience.

「陸軍の中では誰もが彼を尊敬している」

 He is highly respected by everybody in the military.

(出所:Remarks by President Trump Announcing the Designation of Lieutenant General H.R. McMaster to National Security Advisor | whitehouse.gov 2017/2/20)

 マクマスター氏が今後、マティス氏のようにトランプ氏から一目置かれる立場になるのかどうかが気になるところです。

 混迷の労働長官人事:パズダー氏⇒アコスタ氏

 もう一つ、混乱したのが労働長官人事です。

 労働長官に指名されていたCKEレストランツ・ホールディングスCEOのアンドリュー・パズダー氏は不法移民の就労が発覚し、店舗従業員から不祥事(低賃金で働く従業員への賃金引上げ拒否が原因)で訴えられたこと等の事情で上院での承認の見通しが立たなくなりました。

 トランプ氏は、労働省から「監督される」側にいたファストフードチェーン経営者を労働長官に据えることで行政を変えようと試みたのですが、パズダー氏は指名を辞退。その後、フロリダ国際大学法科大学院長のアレキサンダー・アコスタ氏を指名しました。 

 これは、もう少し堅めな人材を求めたようにも見えます。

 大統領府での記事を見てみます。

アコスタ氏は長い間、公共行政で際立った経歴を築いてきた。

Mr. Acosta has had a long and distinguished career in public service.

彼は三代にわたって大統領から指名され、上院の承認を得てきた。その地位の中には全米労働委員会委員も含まれている(※これはブッシュ政権時代)

He has served in three Presidentially appointed, Senate-confirmed positions, including as a member of the National Labor Relations Board.

アコスタ氏はヒスパニックで初めて司法次官補となり、フロリダの南部で合衆国地方検事として働いた。

Mr. Acosta was the first Hispanic to hold the rank of Assistant Attorney General and went on to serve as the United States Attorney for the Southern District of Florida.

2013年以来、アコスタ氏は、フロリダのヒスパニックコミュニティで最も大きな地方銀行であるUSセンチュリーバンクの議長を務めてもいる。

Since 2013, Mr. Acosta has also served as Chairman of U.S. Century Bank, the largest domestically owned Hispanic community bank in Florida.

「そのキャリアを通じて、アレックス・アコスタはアメリカ人の機会均等を熱心に訴えてきた」とトランプ大統領は述べた。

“Throughout his career, Alex Acosta has been a passionate advocate for equal opportunity for all Americans,” said President Trump.

「彼の広範な経験と強力な感化力は、私と私の政権に最大限の能力と決意をもってアメリカの労働者を支援すべく労働省を率いる自信を与えてくれる」

“His extensive experience has tremendously impressed me and my team and makes us confident that he will lead the Department of Labor with the utmost competence and determination to support the American worker.

「アメリカの労働者たちは長らく忘れられ、隅に置かれてきた」

The American worker had been forgotten and left behind.

「それは私が大統領になった1月20日をもって終わる」

That ended when I became President on January 20.

「アレックスはアメリカ経済、製造業、労働力を再活性させるわが政権の目標を達成するためのキーパーソン(原文はキーパーツだが、人間なので、キーパーソンと意訳)になる」

Alex is going to be a key part of achieving our goal of revitalizing the American economy, manufacturing, and labor force.

(以下略)

(出所:President Donald J. Trump Nominates R. Alexander Acosta to be Secretary of Labor | whitehouse.gov 2/16)

  トランプ氏のコメントはかなり力が入っています。

 もともと白人労働者票を得て当選したので、労働長官人事は同政権にとって非常に重要な位置づけにあります。

 ヒスパニック系の取り込みも図っていることも見落とせない重要なポイントです。