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ゼロからやりなおす「政治と経済」

政治と経済について、いまさら聞けない知識を整理しつつ、ニュースがよりよくわかるデータを紹介していきます。

蓮舫代表「2030年原発ゼロ」に固執 連合は反発 民進党内にも困惑広がる

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(福島原発入口 出所はWIKIパブリックドメイン画像)

  民進党の蓮舫代表が根回しなしに「2030年代に原発ゼロを実現する」という政策を掲げようと試み、最大の支持団体である「連合」(日本労働組合総連合会)とぶつかり、それ以降、党の内外で様々な抵抗に直面していることが報じられています。

 これは「連合」の神津里季生(こうず・りきお)会長との16日の会談の折の出来事ですが、その時のやりとりが同日付の産経ニュースで報じられていました。

 蓮舫氏「『2030年ゼロ』でまとめたい」

 神津氏「中身なしに数字だけ『前倒しできる』と出すならば、政権を任せられる政党として、国民の支持を集められるのか」

 蓮舫氏は神津氏との会談で「原発ゼロ」を達成する目標を最大9年間前倒しする方針を示したが、いきなりの提示に神津氏は「2030“年代”でも相当に高いハードルだ」と突き放した。神津氏は会談後も「民進党の基本政策が揺らぐことがあれば、通常の形で意見交換会を行えない」と、怒りを隠さなかった。

(「連合が『蓮舫降ろし』を開始 『原発ゼロ前倒し』根回しなしに反発」2/16)

  その後、17日の民進党と連合幹部の意見交換の会合がキャンセルされたことが各紙で報じられています。

  この記事で「9日には、神津氏の出身産別である基幹労連の組合員調査で、自民党支持率が民進党支持率を約5ポイント上回ったことが判明した」と報じられていますが、蓮舫氏が独走を続ければ、連合の支持を失うリスクもあるので、民進党はかなり危機的な状況です。

 そのほか、この結論ありきの原発政策に関しては、電力総連出身の議員からも批判を受け、蓮舫代表は足元が怪しくなってきています。

 そのため、今回は、日本で原発ゼロになったらどうなるのか、という問題と、民主党が次の選挙で戦えるのかどうか、という微妙な問題について考えてみます。

「原発ゼロ⇒火力発電依存の常態化」という問題

 原発ゼロ論は東日本大震災以来、日本では根強いわけですが、原発問題を考える上では、まず、日本の発電量を占める電源の比率を見なければいけません。

 この数字は、毎年、電気事業連合会が発表していますが、2015年度の発電電力量の割合は、LNG(液化天然ガス)が44%、石炭が31.6%、石油等が9%、水力が9.6%、地熱・新エネルギーが4.7%、原子力が1.1%になっています(16年5月20日発表)。 

 このデータで見る限り、原発をゼロにしなくとも、現時点で火力依存度は84.6%に達しているわけです。

 原発には、オイルショック以降「火力依存では資源が途絶えたらこの国は終わりだ」という危機意識から開発が進められてきた経緯があるので、原発をゼロにした場合、この問題ともう一度直面しなければいけなくなります。

 蓮舫氏は、こうしたエネルギー政策の基本を無視して、数字的な裏付け抜きに「原発ゼロ」を掲げたので、連合の会長から手痛い反撃をくらいました。

▼火力発電の資源は外国からの輸入に依存

 問題なのは、84.6%を占める火力発電に使う資源のほとんどが輸入に依存しているところです。2016年度のエネルギー白書には、その数字が生々しく書かれています。

 輸入の割合は、原油が99.7%、LNGが97.8%、石炭が99.3%。日本の発電の8割以上を担う火力発電は外国の資源に依存しているわけです。

※なお、日本のエネルギー消費(18兆円)の構成は以下の通り(出所:資源エネルギー庁

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 次節では原油・LNG・石炭の輸入元の比率を見ていきますが、そのデータの出所はいずれも2016年度のエネルギー白書です。

▼原油の輸入元

 原油の82.7%は中東から輸入しており、他に目につく国は8.4%のロシアぐらいです。輸入元ベスト5を上げると、中東の国ばかりです。

  1. サウジアラビア:32.5%
  2. アラブ首長国連邦:24.9%
  3. カタール:9.6%
  4. クウェート:6.9%
  5. イラン:5.2%

 ▼LNG(液化天然ガス)の輸入元

 こちらは中東からの輸入比率は29.4%です。ベスト8の輸入元を見ると、かなり地域が分かれているので、リスク分散がなされています。

  1. オーストラリア:20.6%
  2. カタール:18.5%
  3. マレーシア:17.2%
  4. ロシア:9.6% 
  5. アラブ首長国連邦:6.4%
  6. インドネシア:5.8%
  7. ナイジェリア:5.7%
  8. ブルネイ:5.0%

 ▼石炭の輸入元

 石炭には製鉄用の原料炭と火力発電用の一般炭がありますが、一般炭の輸入は、オーストラリア(74.3%)、インドネシア(12.9%)、ロシア(8.7%)で大部分が占められています。豪州依存ですが、石油ほどの高水準ではなく、政情が安定しているので、石油に比べると供給不安は心配されていないようです。 

火力依存は、外国から資源が来なくなったらヤバい

 こうして見ると、火力発電に依存するのは、日本の発電を外国資源に依存するのと同じです。火力発電には、資源を運ぶ航海路が地域紛争などで閉ざされた場合、エネルギー危機になる、という怖さもあるのです。

  JOGMECによれば、日本に原油の備蓄は、政府と民間を足した総量で197日分です(2015年3月時点)。半年の間に同盟国のアメリカ等が助けてくれるかもしれませんが、その間は、みんなでケチケチ生活をしなければいけません。やはり、火力発電依存のリスクというものは、無視しがたいものがあります。 

火力発電所の負担は重くなっている

 火力依存度が高まると、発電所の負荷の限界という問題も出てきます。例えば、『VOICE』の平成24年度12月号では、夏目幸明氏(ジャーナリスト)が火力発電所の状況を以下のようにレポートしていました。

  • 原発停止で火力発電所の稼働率が上がり、老朽化が進んだ火力発電所での災害発生のリスクも上がった。
  • 例えば、関西電力海南火力発電所の施設は全て昭和40年代(65~74)に操業開始。愛知県田原市にある渥美火力発電所の施設は、71年(1基)と81年(2基)に操業開始。
  • 脱原発によりこうした古い機械までもフル稼働させるようになった。その結果、海南発電所では9月5日に電流検出器の不調により、一時、発電が緊急停止されている。また、渥美発電所では9月18日に熱水管に10数ミリの亀裂が生じた。
  • これらは現場作業員の努力により、課題の即時解決・発電復旧がなされたが、原発停止でこれ以上火力発電所の負担を上げれば、大規模災害が起きかねない

  こうした現場を支える発電所スタッフの頑張りによって、日本の電力は途絶えずに回っています。

 安全性は最大限に高めなければいけませんが、電気料金の上昇は中小企業にとっては大きな痛手になりますし、今の資源価格の低下がいつまで続くかもよく分かりません。

 そのため、筆者は、安全性が確認された原発は再稼働する、という路線は不可避ではないかと考えています。

やはり、宣伝力だけで党首は務まらない?

 蓮舫代表の強みは知名度や宣伝力、当意即妙な言論力ですが、前掲の発言を見る限り、政策を詰める能力はあまりないようです。

 率直に言えば、連合代表の神津氏のほうが日本の現状とエネルギー政策を理解しているようにも思えます。

 蓮舫氏は、選挙ではキャッチフレーズになる印象的な政策(原発ゼロなど)を並べたがっていますが、神津氏は、裏付けのない政策を掲げ、その後に破綻することを憂慮しているわけです。これは09年の政権交代後に「子ども手当」等の主要政策が破綻したことを振返れば、非常によく分かる話です。

 その後、産経1面(2017/2/23)では、連合の傘下労組の「電力総連」会長の岸本薫氏は「エネルギー政策は広く国民生活や雇用、経済を勘案しなければならない」と反発し、2030年原発ゼロを「このまま党大会で表明するならば(※支持を)白紙に戻さざるをえない」とまで警告しています。

 こうした蓮舫代表の姿に民主党議員も危惧を抱いたのか、昨今では3月の民主党大会に向けて「蓮舫おろし」が始まりつつあるとも報じられています。

 それ以外にも、蓮舫代表には「二重国籍」を長らく是正しなかったという問題も抱えているので、党首の資質を問う内外の声は、今後、蓮舫代表に重くのしかかってくることになりそうです(本当に是正されたことを確認するための物証は公開されていない)。

蓮舫氏が抱える「二重国籍」という火種

 その経緯を忘れてしまった人もいるかもしれないので、一応、念のために整理しておきます(本人は昭和60年に17歳で日本国籍を取得したと主張)。

  • 9月6日:台湾当局に台湾籍離脱の照会と離脱申請
  • 9月12日:台湾籍を離脱していないことが判明
  • 9月15日:民進党代表に就任
  • 9月23日:台湾籍離脱証明書を受領。都内区役所に提出。
  • 10月6日:日本国籍の取得時期を巡り、戸籍を公開しないと明言
  • 10月13日:会見で戸籍法に則った適正手続きをしたと主張

 蓮舫候補は9月11日の記者会見で台湾籍を放棄したと主張し、「一つの中国」論を持ち出して二重国籍と言われることに対して驚きの意を表明しました。

  ところが、民進党の党員とサポーターが郵送で投票する締切(12日必着)が過ぎた13日になって蓮舫候補は改めて記者会見。一転して台湾籍が残っていた事実を明らかにし、その是非が様々に論じられることになりました。

 蓮舫候補の二重国籍疑惑が出た時点で「二重国籍の代表は望ましくない」と考えた方の多くは他の候補者を選んだのかもしれませんが、党員とサポーターの投票後にこれが発覚したわけですから、今回の代表選では「まさか台湾籍は残ってないだろう」と考えて蓮舫候補に投票した方も一定の割合でいたはずです。

 その事実の公表が13日になったのが故意なのか、やむをえない事情があったのかは定かではありませんが、結果的に民主党は「蓮舫候補は二重国籍ではないはずだ」と期待した投票者を裏切る形で代表選を行ってしまったわけです。

 しかし、その後に蓮舫代表は戸籍謄本の公開を拒否しました。

 産経記事「蓮舫氏、戸籍謄本公開せず」(10/14朝刊5面)によれば、「外国籍のみを有する人が日本国籍を単独で取得する場合」は、以下の三つの手続きが必要だと言われています。

  1. 日本国籍を取得
  2. 日本籍と外国籍のどちらかの選択を宣言
  3. 外国籍離脱+証明書を自治体に送付

「日本国籍を選択宣言すると、戸籍に宣言日が明記される」が、蓮舫氏の場合、1の国籍取得と3の外国籍離脱は確かだが、現状では2の日本国籍選択の選択宣言の日時がいつなのかがはっきりしません。

 国籍選択の宣言が17歳取得時点なのか、それとも外国籍離脱後なのか、第三者に分かる状態にないので、これは国会議員として望ましくない状態だと言われているわけです。こうした点を不明瞭にしたままだと、次回の選挙結果に響くのではないかと思うのですが・・・。  

二重国籍の何が問題なのか

 この疑惑が出た時、共産党の小池晃書記局長は「(台湾人の)父親が外国籍との理由で排除するのは極めて差別的だ」と述べています(産経ニュース9/12)

 しかし、議員は日本国民の利益を代表し、議決を通して政治的な案件の是非を判断しますが、国会議員になると、その案件の中に、他国と利害関係が衝突するものが混じってきます。例えば、北方領土返還交渉をし、安倍首相とプーチン大統領が条約にサインした後、国会で条約の是非を議決した時、アメリカと日本の二重国籍の議員がいた場合、この議員の賛否の判断は、アメリカ国民の利益を代表してなされたのか、日本国民の利益を代表してなされたのか、よく分からなくなります。

 選挙では日本国民に尽くすために国会に行くと言いながら、この二重国籍の議員がアメリカのために議決の賛否を決めたりしたら、日本国民に対する背信になってしまいます。TPP等の通商・貿易問題や外交や防衛に関しては、他国と利害が一致しない案件が多いので、日本国民の利益を代表する国会議員が二重国籍ではよくないでしょう。